| 非常に難問です。簡単には説明できないかもしれません。少し長くなりますが、私なりにモニタリング/コントロールの定義を比較・検討しましたのでその結果をもって回答に代えさせていただきたいと思います。
まず、ご指摘いただいたプロセスガイドラインから見てみましょう。
プロセスガイドライン44pに定義が解説されています。
すなわち、「モニタリングとは、現業部門の状況がその管理担当及びそれよりも上位の管理者によってタイムリーに把握され、それをあらかじめ設定した目標と比較し、差に対しての対応を機敏に行うことで環境変化に対応しようとするものであり、COSO
の内部統制のフレームワークで新たに定義されたコントロールの要素のひとつであり最も上位に位置づけられている。」とされています。
一方で、「コントロールの概念は、広義で用いられれば政策、経営戦略、戦術策定から日常管理、現業業務、機器制御までも含むチェック機能を一般的に総称するものであり、対象とする機能が一定の目的を達成しているかどうかを機能の対象物の状況を記録にとり継続的または定期的にチェックを行うことであり、モニタリングもそのひとつである。一般的に狭義で用いるときは、日常管理、現業業務、機器制御レベルのチェック機能を言う。コントロール機能はTQC
活動においてもPDCA(Plan, Do, Check, Action)のCheck として明確に示されている。」とコントロールを定義付けています。
この概念定義の特徴は、モニタリングを単に、1)状況をタイムリーに把握する機能にとどまらず、2)設定目標との比較機能、さらには3)ギャップに対してのアクションという環境変化対応機能まで持たせ、コントロールの要素の最上位に位置づけているということです。
これに対して、コントロールについては、対象とする機能が目的を達成しているか否かを記録にとって継続的又は定期的にチェックを行うこととしており、専らチェック機能のみを対象としているという点が特徴的です。
改めて、モニタリングとコントロールの概念の峻別がほとんど困難ではないかと思うほど重なりあってしまっています。そこで、一旦ITコーディネータプロセスガイドラインから目を転じて、一般定義を見てみましょう。
まず、岩波広辞苑は、コントロールを「制御すること。統制。抑制。管理・調節。」とし、モニターを「機械などが正常な状態に保たれるように監視する装置。」としています。したがって、モニタリングは、「機械など
が正常な状態に保たれるように監視すること」という定義になるのではないかと思います。
また、研究社:英語語源辞典によると、monitorは(ラジオ・テレビなどの送信状態を)監視する、(一般的に)監督することであり、controlは照らし合わせて調べる、抑制する;支配するといった定義づけがなされています。
さらに、小学館ランダムハウス英和大辞典では、monitorは<ラジオ電波・電話の声など送信の状態を>(監視装置によって)モニターする、監視する、(テレビ・ラジオ放送)画質・音質をチェックするためにモニターする;<番組などを>モニターとして見る[聞く]、(無線電話・ラジオ放送を>傍受する、<人・仕事などを>監視[監督]する、統制[管理]する。
<機械などを>(作業の具合を見るために)観察[記録、探知]する;<脈拍数などを>機器で測定する、(管理・監督のために)観察[検討]する、; 監査する;<飛行機などを>(レーダーで)追跡する、などと定義されています。
また、controlは、<社会・機構・機械などを>支配する、管理[監督、統制]する;操作する、<感情・支出>を抑制する、制御する;規制する、<実験などを>(類似の実験結果・基準)と照合して確かめる、照査する;…を確認する、といった定義がなされています。
最後にOxford現代英英辞典(第6版)は、
monitorを、to watch and check something over
a period of time in order to see how it
develops, so that you can make any
necessary changesとし、
他方で、controlを[Have power] 1 to have power over
a person, company, country, etc. so that you
are able to decide what they
must do or how it is run:
[Limit/Manage] 2 to limit something or
make it happen in a particular way:
3 to stop something from spreading
or getting worse:
[Machine] 1 to make something, such
as a machine or system, work in the way that you
want it to:
と定義しています。
これらの辞書の定義を総合すると、モニタリングとは、状況に応じて必要な変更ができるように、対象がどう機能しているのかを一定期間、監視・観察することであり、他方、コントロールとは、ある特定の結果が生じるよう、管理、統制・制御することである、と一般的に定義することができるのではないかと思います。
本定義を一つの事例を基に当てはめて見ましょう。
これから、12000キロメートル離れた地点のターゲットに向けて、ロケットを発射するとします。
この場合、1)発射前状況から発射直後そしてターゲット到着まで、レーダーでミサイルの位置を確認し、2)ターゲットとの誤差を測定し、3)軌道を修正し、4)最終的にターゲットに正確に的中させる、という一連
のプロセスは、それぞれモニタリングにあたるのでしょうか、それともコントロールにあたるのでしょうか。
なお、本定義は、ビジネス目標を設定し、これを達成するためにモニタリングし、コントロールするというプロセスにもまったく同じように当てはまります。
これを表にすると以下のようになるのではないかと思います。
| プロセス |
プロセスガイドライン |
一般定義 |
| 1) |
モニタリング/コントロール |
モニタリング |
| 2) |
モニタリング/ |
モニタリング |
| 3) |
モニタリング |
コントロール |
| 4) |
モニタリング/コントロール |
コントロール |
プロセスガイドラインの定義が重複してしまうのは、モニタリングがコントロールの一部であると規定しているためです。
翻って、これらの一般的な定義をITコーディネータプロセスガイドラインの定義と比較してみると、その違いが歴然だと思います。
つまり、一般定義は、モニタリング(monitor)を「対象の監視」機能に限定しているのに対し、プロセスガイドラインはモニタリングに捕捉機能、設定目標との比較機能、そして環境変化対応機能(アクション)まで広範な機能を持たせているということです。逆に、プロセスガイドラインでは、チェック機能にとどまっているコントロールという概念は、一般定義では、管理、統制・制御するという広範な機能が与えられています。
この一般定義は、ISO 9001:2000年版の定義とも合致しています。
すなわち、ISOの規格では、モニタリングを監視と訳し、コントロールを管理と訳しています。この訳語は、一般定義に適っているため、非常にわかりやすいように思います。
このように見てくると、ご質問にありましたように、ITコーディネータプロセスガイドラインの定義はむしろ逆ではないのかという疑問も当然出てまいります。
それでは、COSO(The Committee of Sponsoring Organizations of
the Treadway Commission)が公表している内部統制の統合フレームワーク(Internal
Control - Integrated Framework)ではどう定義されているのでしょうか。
モニタリングについては、一定期間システムパフォーマンスの品質を評価するプロセスであると定義され、定常のマネジメント及び監視活動や、任務遂行上のその他の活動を含むと規定されています。また、
コントロールは一定目標が達成されるよう管理、統制することと定義されています。コントロールについては、さほど違和感はありませんが、モニタリングについては、やはりしっくりこない感じがします。
この定義は、パフォーマンスの品質を評価する機能までも含んでいるという点で、一般定義よりも広範であり、プロセスガイドラインのモニタリングの定義と近いようにも思いますが、以下の点を忘れてはならないと思います。
すなわち、COSOの定義は、内部統制という特定の目的から演繹的に導かれた定義であり、@効果的かつ効率的な運用、A信頼性ある財務報告、B法令遵守という3つの目的に資するために、内部統制は如何にあるべきかという視点からモニタリングとコントロールを捉えているということです。特に不正な財務報告を排除するという目的が主であるところから、本定義では、モニタリングそのものに、広範な機能をもたせる必要があったのではないかと考えられます。
そうすると、COSOの定義は、ITコーディネータのプロセス一般には当てはまらないようにも思えます。
一方で、ITコーディネータプロセスガイドラインは、定義上は、モニタリングとコントロールを区別しているものの、ITコーディネータプロセスの共通フェーズでは、モニタリング/コントロールと表記し、機能的一体
性を持たせています。ITコーディネータの定義の中に、監理という用語が用いられていることからも如何にITコーディネータ制度がモニタリング/コントロール機能を重視しているかがわかります。
結論としては、ご質問にあるように、ITコーディネータプロセスガイドラインの定義は一般の定義やISO
の定義から若干乖離しているといっていいと思います。また、この定義は、COSOの内部統制の統合フレームワークを参照しているということもご理解いただけたのではないかと思います。 |