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ITコーディネータCBK(専門知識体系)に関するQ&A
                                                     
(2010年7月7日更新)

 

Q19: プロセスガイドライン改定のポイントの第7回目です。今回は前回に引き続き、内部統制フレームとしてのCOSO ERMを取りげてみたいと思います。   
Q18: プロセスガイドライン改訂のポイントの第6回目です。いよいよ個別フェーズに入ってきました。今回は経営戦略フェーズです。
Q17: プロセスガイドライン改訂のポイントの第5回目です。今回は「モニタリグ&コントロール」でリファレンスに挙げられているCOBITRについて取り上げたいとみたいと思います。
Q16: プロセスガイドライン改訂のポイントの第4回目です。今回は「モニタリング&コントロール」について取り上げたいとみたいと思います。
Q15: プロセスガイドライン改訂のポイントの第3回目です。今回は「コミュニケーション」について取り上げたいとみたいと思います。
Q14: プロセスガイドライン改訂のポイントの第2回目です。今回は「プロセス&プロジェクトマネジメント」について取り上げたいとみたいと思います。プロセスガイドラインβ版で共通フェーズに位置付けられていた「プロジェクトマネジメント」が、Version 1.1では、共通ガイドラインの中で「プロセス&プロジェクトマネジメント」として位置付けられています。ここに、新たにプロセスマネジメントという概念が導入されていることは注目に値します。そこで、今回は、「プロセス」と「プロジェクト」との関係について考えてみたいと思います。
Q13: プロセスガイドラインの改定に伴い、ITコーディネータ認定制度も大幅に変更になります。これから数回に分けて新プロセスガイドライン改定のポイントについて解説します。ITコーディネータ試験にチャレンジされる方々に、少しでもお役に立つ情報を提供できれば幸いです。
Q12: 2005年6月30日に改定されたITコーディネータプロセスガイドラインとカリキュラムガイドラインは旧ガイドラインとどこが違うのでしょうか。
Q11: プロジェクトマネジメントに関する情報をインターネット等で検索すると、PMBOKTMという表記とPMBOKRという表記を見かけるのですが、これらはどう違うのでしょうか。
Q10: ITの成熟度に関するリファレンスツールとして、COBITやCMM 、そしてSPAなどがとりあげられていますが、  これらの違いがよくわかりません。解説をお願いします。
Q9: ITコーディネータプロセスガイドラインに定義されているモニタリング/コントロールの概念に疑問があります。
ITコーディネータ協会が引用しているCOSOは本当にこのような定義をしているのでしょうか。
Q8: 品質管理、目標管理、あるいは方針管理に関する手法として、ISO 9000、 6σ、あるいは、TQM、また成熟度モデルとして、CMMやSPA等がありますが、これらとバランス・スコアカードとはどんな関係に立つのでしょうか。
Q7: プロジェクトマネジメントにおけるスケジュール管理手法として PERTやCPMが効果的であると考えられる適用事例を挙げて解説していただけないでしょうか。
Q6: KGI(Key Goal Indicators)とKPI(Key Performance Indicators)の違いがよくわかりません。
Q5: RFIとRFPの違いがよくわかりません。 どうしてRFIを出す必要があるのかも、よく理解できません。
Q4: ITコーディネータに求められる専門知識体系(CBK)を学習するために、何を参照すればよろしいでしょうか
Q3: バランス・スコアカードの4つのバランスをとるための客観的評価基準は何になるのでしょうか。
Q2: プロジェクトマネジメントに関する話の中によく出てくるPMBOKとはいったい何のことなのでしょうか。
Q1: ITコーディネータプロジェクトマネジメントガイドラインとPMBOKガイドで、プロジェクトマネジメントの主要要件に差が生じるのはなぜなのでしょうか。

   ●旧ガイドラインに関するCBKはこちらをご参照ください。

Q1: ITコーディネータプロセスガイドラインでは、プロジェクトの実行については、スコープ、コスト、スケジュール、コミュニケーション、リスクおよび品質等に関してマネジメントを行うこと、と記載されています。ところが、PMBOKでは、知識領域として、この他に、調達マネジメントが挙げられています。
ITコーディネータプロジェクトマネジメントガイドラインとPMBOKガイドで、このような差が生じるのはなぜなのでしょうか。
A1:


よく勉強されていますね。
プロジェクトマネジメントの知識領域と聞かれれば、PMBOKの9の知識領域を答えるのが普通だと思います。ではなぜ、ITCのプロセスガイドラインでは知識領域は9ではなく、8なのでしょうか。それは、ITCのプロセスフローをもう一度思い起こしていただくといいと思います。

この図からもわかるように、ITCの活動フェーズはプロセス&プロジェクトマネジメント/コミュニケーション、モニタリング/コントロールといった共通フェーズと、経営戦略に始まり、ITサービス活用にいたる個別フェーズから成り立っています。
そして、ITCプロセスでは、PMBOKでいう調達マネジメントは、個別フェーズのIT資源調達の部分で実施されることになります。
ITCプロセスガイドラインには、必ずしもPMBOKでいう調達マネジメントが含まれないのではなく、この部分を共通フェーズではなく、個別フェーズに落とし込んで実施することにしたと考えていただくのがいいのではないかと思います。

Q2: プロジェクトマネジメントに関する話の中によくPMBOKという言葉が出てきますが、PMBOKとはいったい何のことなのでしょうか。
A2:

PMBOKとは、米国ペンシルバニア州フィラデルフィア市郊外アッパーダービーに本部を置くプロジェクトマネジメントのプロフェッショナル協会であるPMI(Project Management Institute)が発行した『A Guide to the
Project Management Body of Knowledge』の略称です。PMBOKの第3版(2004年版)[最新版]の和訳版が出ています。詳しくはPMI本部にお問い合わせ下さい。E-mail: booked@pmi.org
PMBOKは、PMIの設立・活動目的のうち、特に、「プロジェクトマネジメントの基礎プロセスを明確にして、プロジェクト遂行管理を成功に導くためのプロジェクトマネジメントの知識体系を整備する」という目的に対応する成果物です。
また、PMBOKは、プロジェクトマネジメントという高度専門職業の知識体系を包括的に意味する用語でもあります。

PMBOKの使命は、
・プロジェクトマネジメントの適用分野(業界)を超えた標準知識体系を定めて、プロジェクトマネジメントプロセスの共通概念・用語を設定し、
・プロジェクトマネジメント実践者の知識面での自己啓発のベンチマークとし、
・PMIが行うPMI PMP資格認定や大学でのプロジェクトマネジメント教育のカリキュラム認定の基準とする
とされています。

Q3: BSCは正確には、Balanced Scorecardであり、すなわちバランスの取れたスコアカードという意味になると思います。それでは、何についてバランスがとられているのかを考えると、当然、財務の視点、顧客の視点、学習と成長の視点、そして社内ビジネスプロセスの視点の4つのバランスということになると思いますが、4つのバランスをとるための客観的評価基準は何になるのでしょうか。財務に関する評価指標ということになるのでしょうか。
A3: おっしゃるようにBalanced Scorecardですから、何かについてバランスをとるための業績評価指標ということになります。
まず、バランス・スコアカード登場の背景について少し説明した方がいいかもしれません。

バランス・スコアカードは、従来の財務的業績評価指標のみでは、顧客、サプライヤー、従業員、プロセス、イノベーション等に投資して、将来の企業価値を創造したり、企業行動を評価することが困難であるとの認識から生まれたものです。

次に、バランスの意味についてですが、それは、財務、顧客、社内ビジネスプロセス、そして、学習と成長の4つのバランスということではありません。この点、よく誤解があるようです。
これらの4つは、企業の業績を評価するためのバランスのとれた4つの視点です。つまり、バランスの取れた業績評価をするために設けられた視点、換言すれば、フレームワークだとお考えいただいたほうがいいと思います。

では、何についてのバランスかといえば、松原恭司郎著『バランス・スコアカード』(日刊工業新聞社)にそのひとつの解答があります。
松原氏によれば、バランスとは、@財務評価指標項目と非財務評価項目、 A外部評価項目と内部評価項目、B短期目的と長期目的、C遅行指標と先行指標とされています。
なお、松原氏は、バランス・スコアカードの「戦略的経営システム」への発展的変容の視点から、これら4つのバランスでは不十分で、新たに、@ステークホルダー間、A時系列間、B組織間、C戦略と実行間というバランスをあげています。

これに対し、日本のBSCの第一人者横浜国立大学吉川武男教授による翻訳、キャプランとノートンの『バランス・スコアカード』、いわば本家本元によれば、その序文で、「バランスという言葉は、@短期目標と長期目標のバランス、A財務的業績評価指標と非財務的業績評価指標のバランス、B過去と将来の業績評価指標のバランス、C外部的視点と内部的視点のバランスを意味している」とされています。

また、バランスに関する誤解は、財務の視点、顧客の視点、業務プロセスの視点、人材と変革の視点を
1/4ずつバランスさせるという誤解です。そうではなく、財務の視点ばかりに目を向けてはダメですよ、顧客の視点や業務プロセスの視点にも目を向け、企業経営しなさい、ということです。
また、短期的指向に走らず長期視点にも立って企業経営しなさい、という意味でのバランスでもあります。

テクノファは、この吉川先生の翻訳に従うのが妥当ではないかと考えています。なぜなら、著者、すなわち、キャプラン教授とノートン氏の意図をなるべく変えない方が、バランス・スコアカードの本質をつかむのに都合がよいと考えるからです。

また、このバランスについて、同書本文で、「バランススコアカードは、4つの視点により、短期目標と長期目標、目標とする成果と成果のパフォーマンスドライバー、定型的な客観的業績評価指標と弾力的な主観的業績評価指標というようにバランスを保っている」との表現もあります。

詳細は、吉川先生の翻訳によるキャプランとノートンの『バランス・スコアカード』(生産性出版)をご参照下さい。
なお、バランス・スコアカードについて詳細に学習されたい方は、吉川武男著『バランス・スコアカード入門』(生産性出版)、吉川武男訳 『戦略的バランス・スコアカード』(生産性出版)等をご参照下さい。

                 (監修 横浜国立大学教授 吉川武男)

Q4: ITコーディネータに求められる専門知識体系(CBK)を学習するために、何を参照すればよろしいでしょうか。ITコーディネータ協会のWEB には、ITコーディネータ制度資料として、さまざまなものが掲載されて
います。これほどたくさんあると、一体どれを参照したらいいのか困ってしまいます。アドバイスをお願いします。
A4:

確かにおっしゃるように多くのガイドラインがあります。
ITコーディネータ協会のWEBには、現在次のものがあります。
 「ITコーディネータ専門知識教材・研修コース認定ガイドライン」、
 「ITコーディネータ資格更新条件に関する運用ガイドライン」、
 「ITコーディネータ資格認定制度ガイドライン」、
 「ITコーディネータ報告書」、
 「ITコーディネータプロセスガイドライン」、そして
 「ITコーディネータカリキュラム作成ガイドライン」

このうち、ITコーディネータのCBKに関するものは、「ITコーディネータプロセスガイドライン」です。確かに「ITコーディネータカリキュラム作成ガイドライン」もITコーディネータに求められるパフォーマンス基準が提示されていますが、主として、教育機関及び教材開発会社等がITコーディネータを養成するためのカリキュラムを開発する際の指針を示したものと理解していただいていいと思います。

そうすると、ITコーディネータのCBKを身に付けるために主として参照すべきは、ITコーディネータプロセスガイドラインということになります。プロセスガイラインには、プロセス&プロジェクトマネジメント、コミュニケーション、モニタリング/コントロールの3つの共通フェーズと経営戦略、戦略情報企画、IT資源調達、IT導入、そしてサービス・デリバリーという5つの個別フェーズごとにITコーディネータ活動の標準がまとめられています。
ITコーディネータに求められる専門知識体系をマスターするためには、このプロセスガイドラインを熟読されることをお奨めします。

その他のガイドラインについて簡単に説明しておきますと、「ITコーディネータ専門知識教材・研修コース認定ガイドライン」は教材開発・研修コース開発の際、研修機関が遵守すべきガイドラインであり、「ITコーディネータ資格更新条件に関する運用ガイドライン」はITコーディネータが資格認定及び資格更新に際して管理すべきガイドです。また、「ITコーディネータ資格認定制度ガイドライン」は、ITコーディネータの資格認定の基準を提示したものであり、「ITコーディネータ報告書」はITSSP(経営情報化推進協議会)がITコーディネータ制度の趣旨および活動内容に関する最終的な提言をおこなったものです。

Q5: RFIとRFPの違いがよくわからないですが、ご指導いただけますか。
どうしてRFIを出す必要があるのかも、よく理解できません。
A5: RFIとRFPを具体的なケースでどう使い分けるべきかはまさにケースバイケースということになると思います。
RFI(Request For Information)は「情報提供要請」であり、RFPを作成するために必要な情報提供を依頼する文書です。RFIは一般的にRFPに先立って発行されますが、必ずしもRFI発行先は発注先の選定候補にはなりません。

これに対して、RFP(Request For Proposal)は、調達の目的を達成するために調達対象の情報化資源に対する提案を求め、最適な調達先を決定するための「提案要請」です。
また、短期間で目的に適った効率的な調達先選定のため、RFP発行対象は最大でも7〜8社程度に抑えたほうがいいとされています。
そうはいっても、実際にはRFIとRFPとでは、基本的に記載事項が重複するかもしれません。

それでは、何故RFPに先立ってRFIを発行するのかといえば、昨今の企業を取り巻く環境の変化が背景にあるといえましょう。これほどまでにITの進歩が早く、状況が刻々と変化すると、ITベンダーについての自己調査にもおのずと限界が生じてきます。正確な情報を持たない状況ではRFPを作成することも困難になってきます。
ここにRFIを発行する必要性が生じてきます。逆に言えば、自己調査による情報並びにRFI以外の方法でRFPが作成できるのであれば、かならずしもRFIを発行する必要はないかもしれません。
一般に、高額の調達で、調達内容の定義が困難な場合、あるいはITベンダーからの提案が多くないような場合には、RFP発行に先立ってRFIを発行するようです。

Q6: KGI(Key Goal Indicators)とKPI(Key Performance Indicators)の違いがよくわかりません。ご指導下さい。
A6: 専門知識研修をご受講いただいた方々の中にも、KGIとKPIの違いがイメージできないので、具体的な解説をいただきたいと要望される方がいらっしゃいます。
おっしゃるように、具体的なイメージができなければ実際には、ITコーディネータとしてのミッションを果たせないことになりますので、この質問はまさに、ITコーディネータにとって避けては通れないテーマのように思われます。ITコーディネータにとって、モニタリング/コントロール能力こそは他の資格とITコーディネータ資格とを明確に峻別するメルクマールだと考えるからです。
ITコーディネータには、モニタリング/コントロールツールとしてのバランス・スコアカードやCOBITを駆使できる能力が求められています。

さて、その違いですが、一般には、KGIはKey Goal Indicatorsの略ですから、「何を達成すべきか」という評価指標であり、一方、KPIは、Key Performance Indicatorsの略で、「どのレベルで」を意味し、IT活動が「どのようにうまく」実行されているかを評価する指標であると解説されています。また、KGIは「事後的に」報告する指標であり、KPIは、「事前に」示す指標で、将来の成功または失敗の可能性を予測可能なものとするための指標であるとされています。

具体的なイメージを持っていただくために、ここでは、バランス・スコアカードを例にとって説明します。

戦略的目標 パフォーマンスドライバー
(KPIに相当)
成果指標
(KGIに相当)
顧客満足度の向上 リードタイム短縮率 顧客満足度調査
顧客定着率

顧客満足度の向上を戦略的目標とした場合、これを事後的に評価する成果指標、すなわち、KGIの一つとして、顧客満足度調査や顧客定着率があげられると思います。また、顧客満足度の向上を予測可能なものとするための事前指標、すなわち、KPIとしてリードタイムの短縮があげられるのではないかと思います。

この表から、KGIの対象はWhatであり、「ビジネス指向」であるとされるのに対して、KPIの対象は Howであり、「プロセス指向」であるということがお分かりいただけたのではないかと思います。

なお、KGIとKPIの例をもっと多く知りたいという方は、「ITコーディネータ専門知識教材テキスト07 モニタリングとコントロール」等をご参照下さい。COBITの34のITプロセス定義それぞれについて、CSF(重要成功要因)、KGI及びKPIの具体的な例が掲載されています。

テクノファでは、バランス・スコアカードの第一人者横浜国立大学吉川武男教授による「バランス・スコアカードマスターコース」を開講しております。本コースは、バランス・スコアカードの本質をご理解いただくと共に、実際にケースを通じてバランス・スコアカードを作成いただくコースです。

Q7: プロジェクトマネジメントにおけるスケジュール管理手法としてPERT(Project Evaluation Review Technique)やCPM(Critical Path Method)が効果的であると研修コースで指導を受けました。しかし、私自身はWBS(Work Breakdown Structure)で十分ではないかと考えています。
PERTやCPMが効果的であると考えられる適用事例を挙げて解説していただけないでしょうか。
A7:

プラクティスを十分経験しておられる方ならではのご意見ではないかと思います。
確かに、プロジェクト計画・管理手法として一般的にPERTやCPMが効果的であると説明されることが多いようです。ただし、実際のスケジュール管理では、まずWBSで、もれなく作業(タスク)を定義することが前提となります。作業が体系的にもれなく定義できていなくては、PERTもCPMもその効果は半減してしまいます。
また、WBSは、利用の仕方によっては、スケジュール管理にも使用でき、また、機能分析(ファンクションアナリシス)にも用いることができるという点から考えても、利用効果は非常に高いと思われます。

下図は、WBSの一般的な例ですが、これにガントチャート式に、作業開始と作業終了予定日を書き入れれば、スケジュール管理ツールとしても利用可能だと思います。

ただ、WBSでは、作業間の優先順位を決定することはできません。作業工程数が非常に多く、関連する作業が多数ある場合には、精緻なスケジュール管理をすることは難しくなります。そこで、各作業の工程にプライオリティをつけ、「作業スケジュールを最適パスに基づいて策定する手法」としてPERTやCPMが必要になってくるというわけです。


プロジェクトマネジメントに関する、主要ツールを使いこなし、プロジェクトマネジメントに関する実践力をアップしたいと考えておられる是非、以下のコースへのご受講下さい。
@PMBOKに基づくプロジェクトマネジメント実践コース
AMicrosoft Project活用によるPM実践【Advanced】コース
BMicrosoft Project活用によるPM実践【Standard】コース
CEVMS活用によるプロジェクトマネジメント実践【Advanced】コース
Dプロジェクト・リスク・マネジメント実践【Advanced】コース

また、こうした複雑なスケジュールを管理するツールとして、マイクロソフト社のプロジェクト管理ソフト『Microsoft Project 2007』  http://office.microsoft.com/ja-jp/project/FX100487771041.aspxやEVMS(Earned Value Management System)対応プロジェクト管理ソフトウエア Primavera Project Planner(プリマベーラ・プロジェクト・プランナー)通称:P3(http://www.ite.co.jp/products/primavera/ )が知られています。ご興味・ご関心のある方は是非これらのサイトをご訪問してみてください。

Q8: 品質管理、目標管理、あるいは方針管理に関する手法として、ISO 9000(品質マネジメントシステム)、
6σ、あるいは、TQM、また成熟度モデルとして、CMMやSPA等がありますが、これらとバランス・スコアカードとはどんな関係に立つのでしょうか。
バランス・スコアカードの導入を考えていますが、弊社のこれまでの取り組みが無駄にならないかを危惧しております。ご指導下さい。
A8: おっしゃるように、品質、目標、方針等を管理するツール、あるいは経営やITの成熟度モデル等がいろいろ取り上げられています。そして、一般には、企業はこれらツールを独立したものとして、最も機能的ないずれかまたはパフォーマンスが最も高いいずれかを選択し、個別に取り組んできたのではないかと思います。

もちろん、バランス・スコアカードについて、これを「戦略的マネジメントシステム」として位置づけ、個別に導入することも可能でしょう。

しかし、最近、統合マネジメントシステムへの取り組みの動きが活発化している例からも明らかなように、実は、品質や目標あるいは方針を管理する手法(すなわち、マネジメントシステム)や、成熟度モデルには、共通する部分も多くあるのではないかと思います。

例えば、ISO 9000認証取得済企業が、環境経営を経営理念として掲げ、ISO 14000(環境マネジメントシステム)に取り組み、さらには労働災害防止という観点からOHS/MSに取り組むばあいには、統合認証の取得を目指す傾向にあります。このようなことが可能なのは、文書管理といった要求事項が共通であるためです。

それでは、バランス・スコアカードとの関係はどうなるのでしょうか。バランス・スコアカードもまた、他のマネジメントシステムや成熟度モデルと共通している点が多々あります。例えば、ビジョンと戦略を各部門、各部署、各担当者というふうに  ブレークダウン (落とし込み) し、最終的に、ビジョンや戦略の達成度を測定するというシステムは、品質方針や品質目標を文書化し、マネジメントレビューにより達成度を把握し、継続的改善につなげるというISO 9000品質マネジメントシステムと共通しています。 

また、バランス・スコアカードが4つの視点の結びつき(各視点に基づく戦略指標の因果関係)を重視しているという点は、ISO 9000のプロセスアプローチという観点に通ずるのではないかと思います。

つまり、バランス・スコアカードを用いようと、他のマネジメントシステムを用いようと、基本的な要素は共通しており、決して矛盾関係を生ぜしめたり、あるいは一つのマネジメントシステムが他に対して絶対的に優越的な地位に立つということはないのではないかと思います。ただ、階層的にやや複雑なシステムになりうる可能性はあるかもしれません。問題はこれらマネジメントシステムをどんな目的で導入するかということではないかと思います。

バランス・スコアカードは、これらのマネジメントシステムが効果的に機能しているかどうかを、ITを用いてモニタリング/コントロールするための画期的なツールです。その機能は、飛行機のコックピットにたとえられます。

これまでに導入したマネジメントシステムや、成熟度モデルや、他の経営管理ツールの「パフォーマンスを測定するためのモニタリングツール」として効果的に活用していただける戦略的マネジメントシステムであると位置づけていただくのがバランス・スコアカードの正しい理解の仕方ではないかと考えます。

バランス・スコアカードの第一人者吉川武男教授は、この点について、「バランス・スコアカードは、他のマネジメントシステムと決して競合関係に立つものではなく、TQM、ISO、6σといったエンジンと一体となって企業を成功に導く戦略的マネジメントシステムである」と述べられています(テクノファ主催ITコーディネータシンポジウム報告より)。

それぞれの個別機能を融合させた、「バランス・スコアカードに基づく融合マネジメントシステム」こそが、求められる理想のマネジメントシステムではないのかと考えます。

Q9: ITコーディネータプロセスガイドラインに定義されているモニタリング/コントロールの概念に疑問があります。ITコーディネータ協会が引用しているCOSOは本当にこのような定義をしているのでしょうか。
例えば、ISO 9001:2000のモニタリング/コントロール概念と大きくかけ離れているように思います。解説をお願いします。
A9: 非常に難問です。簡単には説明できないかもしれません。少し長くなりますが、私なりにモニタリング/コントロールの定義を比較・検討しましたのでその結果をもって回答に代えさせていただきたいと思います。

まず、ご指摘いただいたプロセスガイドラインから見てみましょう。
プロセスガイドライン44pに定義が解説されています。
すなわち、「モニタリングとは、現業部門の状況がその管理担当及びそれよりも上位の管理者によってタイムリーに把握され、それをあらかじめ設定した目標と比較し、差に対しての対応を機敏に行うことで環境変化に対応しようとするものであり、COSO の内部統制のフレームワークで新たに定義されたコントロールの要素のひとつであり最も上位に位置づけられている。」とされています。

一方で、「コントロールの概念は、広義で用いられれば政策、経営戦略、戦術策定から日常管理、現業業務、機器制御までも含むチェック機能を一般的に総称するものであり、対象とする機能が一定の目的を達成しているかどうかを機能の対象物の状況を記録にとり継続的または定期的にチェックを行うことであり、モニタリングもそのひとつである。一般的に狭義で用いるときは、日常管理、現業業務、機器制御レベルのチェック機能を言う。コントロール機能はTQC 活動においてもPDCA(Plan, Do, Check, Action)のCheck として明確に示されている。」とコントロールを定義付けています。

この概念定義の特徴は、モニタリングを単に、1)状況をタイムリーに把握する機能にとどまらず、2)設定目標との比較機能、さらには3)ギャップに対してのアクションという環境変化対応機能まで持たせ、コントロールの要素の最上位に位置づけているということです。

これに対して、コントロールについては、対象とする機能が目的を達成しているか否かを記録にとって継続的又は定期的にチェックを行うこととしており、専らチェック機能のみを対象としているという点が特徴的です。

改めて、モニタリングとコントロールの概念の峻別がほとんど困難ではないかと思うほど重なりあってしまっています。そこで、一旦ITコーディネータプロセスガイドラインから目を転じて、一般定義を見てみましょう。

まず、岩波広辞苑は、コントロールを「制御すること。統制。抑制。管理・調節。」とし、モニターを「機械などが正常な状態に保たれるように監視する装置。」としています。したがって、モニタリングは、「機械など
が正常な状態に保たれるように監視すること」という定義になるのではないかと思います。
また、研究社:英語語源辞典によると、monitorは(ラジオ・テレビなどの送信状態を)監視する、(一般的に)監督することであり、controlは照らし合わせて調べる、抑制する;支配するといった定義づけがなされています。

さらに、小学館ランダムハウス英和大辞典では、monitorは<ラジオ電波・電話の声など送信の状態を>(監視装置によって)モニターする、監視する、(テレビ・ラジオ放送)画質・音質をチェックするためにモニターする;<番組などを>モニターとして見る[聞く]、(無線電話・ラジオ放送を>傍受する、<人・仕事などを>監視[監督]する、統制[管理]する。
<機械などを>(作業の具合を見るために)観察[記録、探知]する;<脈拍数などを>機器で測定する、(管理・監督のために)観察[検討]する、; 監査する;<飛行機などを>(レーダーで)追跡する、などと定義されています。

また、controlは、<社会・機構・機械などを>支配する、管理[監督、統制]する;操作する、<感情・支出>を抑制する、制御する;規制する、<実験などを>(類似の実験結果・基準)と照合して確かめる、照査する;…を確認する、といった定義がなされています。

最後にOxford現代英英辞典(第6版)は、
     monitorを、to watch and check something over a period of time in order to see how it
     develops, so that you can make any
     necessary changesとし、
他方で、controlを[Have power] 1 to have power over a person, company, country, etc. so that you
                   are able to decide what they must do or how it is run:
         [Limit/Manage] 2 to limit something or make it happen in a particular way:
                   3 to stop something from spreading or getting worse:
         [Machine]  1 to make something, such as a machine or system, work in the way that                    you want it to:
と定義しています。

これらの辞書の定義を総合すると、モニタリングとは、状況に応じて必要な変更ができるように、対象がどう機能しているのかを一定期間、監視・観察することであり、他方、コントロールとは、ある特定の結果が生じるよう、管理、統制・制御することである、と一般的に定義することができるのではないかと思います。

本定義を一つの事例を基に当てはめて見ましょう。

これから、12000キロメートル離れた地点のターゲットに向けて、ロケットを発射するとします。
この場合、1)発射前状況から発射直後そしてターゲット到着まで、レーダーでミサイルの位置を確認し、2)ターゲットとの誤差を測定し、3)軌道を修正し、4)最終的にターゲットに正確に的中させる、という一連
のプロセスは、それぞれモニタリングにあたるのでしょうか、それともコントロールにあたるのでしょうか。

なお、本定義は、ビジネス目標を設定し、これを達成するためにモニタリングし、コントロールするというプロセスにもまったく同じように当てはまります。

これを表にすると以下のようになるのではないかと思います。

プロセス プロセスガイドライン 一般定義
1) モニタリング/コントロール モニタリング
2) モニタリング/ モニタリング
3) モニタリング コントロール
4) モニタリング/コントロール コントロール

プロセスガイドラインの定義が重複してしまうのは、モニタリングがコントロールの一部であると規定しているためです。

翻って、これらの一般的な定義をITコーディネータプロセスガイドラインの定義と比較してみると、その違いが歴然だと思います。
つまり、一般定義は、モニタリング(monitor)を「対象の監視」機能に限定しているのに対し、プロセスガイドラインはモニタリングに捕捉機能、設定目標との比較機能、そして環境変化対応機能(アクション)まで広範な機能を持たせているということです。逆に、プロセスガイドラインでは、チェック機能にとどまっているコントロールという概念は、一般定義では、管理、統制・制御するという広範な機能が与えられています。

この一般定義は、ISO 9001:2000年版の定義とも合致しています。
すなわち、ISOの規格では、モニタリングを監視と訳し、コントロールを管理と訳しています。この訳語は、一般定義に適っているため、非常にわかりやすいように思います。

このように見てくると、ご質問にありましたように、ITコーディネータプロセスガイドラインの定義はむしろ逆ではないのかという疑問も当然出てまいります。

それでは、COSO(The Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission)が公表している内部統制の統合フレームワーク(Internal Control - Integrated Framework)ではどう定義されているのでしょうか。   

モニタリングについては、一定期間システムパフォーマンスの品質を評価するプロセスであると定義され、定常のマネジメント及び監視活動や、任務遂行上のその他の活動を含むと規定されています。また、
コントロールは一定目標が達成されるよう管理、統制することと定義されています。コントロールについては、さほど違和感はありませんが、モニタリングについては、やはりしっくりこない感じがします。
この定義は、パフォーマンスの品質を評価する機能までも含んでいるという点で、一般定義よりも広範であり、プロセスガイドラインのモニタリングの定義と近いようにも思いますが、以下の点を忘れてはならないと思います。

すなわち、COSOの定義は、内部統制という特定の目的から演繹的に導かれた定義であり、@効果的かつ効率的な運用、A信頼性ある財務報告、B法令遵守という3つの目的に資するために、内部統制は如何にあるべきかという視点からモニタリングとコントロールを捉えているということです。特に不正な財務報告を排除するという目的が主であるところから、本定義では、モニタリングそのものに、広範な機能をもたせる必要があったのではないかと考えられます。

そうすると、COSOの定義は、ITコーディネータのプロセス一般には当てはまらないようにも思えます。

一方で、ITコーディネータプロセスガイドラインは、定義上は、モニタリングとコントロールを区別しているものの、ITコーディネータプロセスの共通フェーズでは、モニタリング/コントロールと表記し、機能的一体
性を持たせています。ITコーディネータの定義の中に、監理という用語が用いられていることからも如何にITコーディネータ制度がモニタリング/コントロール機能を重視しているかがわかります。

結論としては、ご質問にあるように、ITコーディネータプロセスガイドラインの定義は一般の定義やISO の定義から若干乖離しているといっていいと思います。また、この定義は、COSOの内部統制の統合フレームワークを参照しているということもご理解いただけたのではないかと思います。

Q10: ITの成熟度に関するリファレンスツールとして、COBITやCMM 、そしてSPAなどがとりあげられていますが、これらの違いがよくわかりません。解説をお願いします。
A10: ソフトウェア開発のプロセス改善に関する研究は非常に盛んになっており、今最もホットなテーマかもしれません。その背景には、経済産業省の「日本版CMM」構想があります。経済産業省の「日本版CMM」構想の詳細については別の機会に譲ることにして、ここでは、それぞれの違いについて簡潔に説明します。

まずは、ITの成熟度を、ITガバナンスに関する成熟度モデルとソフトウェア開発の成熟度モデルに分類することができると思います。前者には、COBIT (Control Objectives for Information and related Technology)が、後者には、SPA(Software Process Assessment):ISO/IEC TR15504やCMU/SEI(カーネギーメロン大学ソフトウェア工学研究所)によるCMMR (Capability Maturity Model)があります。そして、SPA(ISO/IEC TR15504)がソフトウェア開発プロセスの成熟度の国際標準とされるのに対して、CMM
はシステム/ソフトウェア開発能力の成熟度の国際標準(デファクトスタンダード)とされています。

もっともSPAについても、ISO/IEC TR15504に準じて実施されている試行プロジェクトであるPICE(Software Process Improvement and Capability Determination)のことを指すとされたり、あるいはISO/IEC TR15504に準拠して主としてイギリスで利用されているPPA(Process Professional Definition and Assessment)と混同して用いられるなど少し混乱が見られます。

また、CMMRについても、SW-CMM(Capability Maturity Model for Software)やSE-CMM(Systems Engineering Capability Maturity Model)、IPD-CMM(Integrated Product Development Capability Maturity Model)、SA-CMM(Software Acquisition Capability Maturity Model)、さらにはP-CMM(People Capability Maturity Model)、PST(Personal Software Process)、TSP(Team Software Process)など派生的なモデルが多く存在します。

こうした派生モデルをできるだけ一つにしようとの意図から、CMM は上述のアンダーラインのある4つのモデルを統合し、CMMI SM(Capability Maturity Model Integration)へと進化を遂げました。その背景には、ISO/IEC TR15504の国際標準化があります。ISO/IEC TR15504が2002年もしくは2003年に国際規格として制定される見込みだからです。CMM と言えども、グローバルスタンダードを参照せざるを得なかったというのが実情でしょう。

しかしながら、ISO/IEC TR15504もCMMR もSPI(Software Process  Improvement)、すなわち、ソフトウェアプロセス改善のためのアプローチ手法であるという点では共通しています。また、SPAには主として「ソフトウェアを開発する組織が自己のSPIを進めるために行う現状の自己組織の状態を調査・評価」と「ソフトウェアを調達する組織が、プロジェクトのリスクを軽減するために行うソフトウェアの発注先のプロセスの成熟度の評価」の2つがあります。

端的に言えば、企業・組織が自社のソフトウェアプロセス改善(SPI)のため、及び企業・組織が調達先企業のプロセスの成熟度を判定するために実施するのがソフトウェアプロセスアセスメント(SPA)であると考えていただいていいと思います。その上で、ソフトウェアプロセスアセスメントの手法として、一方にISO/IEC TR15504があり、他方にCMM があるということです。

さて、ISO/IEC TR15504とCMM の違いについてですが、ここでは、派生モデルの中でも最も導入が進んでいると考えられる、SW-CMMを取り上げます。
SW-CMMRは、各成熟度レベルで焦点を当てるべきKey Process Area(KPA) を特定しているため、「Stagedモデル」と呼ばれます。これに対して、ISO/IECTR15504は、レベルごとの活動要素をKPAのような形で特定せず、ソフトウェアのライフサイクルプロセスそれぞれに対して活動要素の能力を評価する形
式をとっているため、「Continuousモデル」と呼ばれます。 すなわち、SW-CMM がキープロセスエリアを特定し、これに基づいて成熟度、ゴールを設定するのに対して、ISO/IEC TR15504はその組織にあったプロセスだけを選択してその部分のみについて評価することができると言う意味で、SW-CMMに比してフレキシビリティに富むと言え、他方、SW-CMMは、ステージごとにキープロセスが設定されているため、目標を設定しやすく、かつインセンティブを働かせやすいといったメリットがあります。

なお、ご参考までに、ソフトウェア改善に関する最近の動向について若干ご紹介しておきます。    

まず、山本喜一慶應義塾大学理工学部助教授を委員長とするソフトウェアプロセス改善専門委員会報告書では、「我が国ITサービス産業の競争力強化等の観点からも、官民の役割分担を十分に踏まえつつ、ここで認定されたCMMISM やその他のSPI手法に関する施策も含め、SPI活動を推進するための施策をできるだけ早期かつ着実に実行に移していくべきである」との結論が導かれています。

また、2002年4月19日に公にされた経済産業省商務情報政策局情報処理振興課(ソフトウェア開発/調達プロセス改善協議会事務局)による「ソフトウェアプロセスの改善に向けて〜SPIへの今後の取り組み〜」では、「国際市場でも通用する競争力を涵養するため、ソフトウェアにおける改善活動の育成・普及を行わなければならない」とされ、また、「「SPIの推進に向けての体制整備」として、米国カーネギーメロン大学ソフトウェア工学研究所(CMU/SEI)のような公的な組織を特定し、中立的な立場から、SPI推進活動
全体のコーディネータ役を担わせるとともに、産業界や学界等の活動と十分連携を図っていくことが必要である」と述べられています。

なお、経済産業省の「日本版CMM」構想及びその後のSPI/SPAの動向については、機会を改めて詳しく紹介したいと思います。

Q11: PMPR資格に興味があり、現在、プロジェクトマネジメントに関する専門知識をマスターしたいと考えています。ところで、プロジェクトマネジメントに関する情報をインターネット等で検索すると、PMBOKTMという表記とPMBOKRという表記を見かけるのですが、これらはどう違うのでしょうか。PMBOK Guide 和訳版(1997年版)には、TMの表記もRの表記も無いため、どちらのことを指すのかわからず、困惑しています。解説を御願いします。

また、テクノファにはプロジェクトマネジメントに関するコースが複数あるようですが、これらの違いが分かりません。私自身はITコーディネータで、プロフェッショナル特別認定用専門知識研修コースの中で、ITCプロセスのプロジェクトマネジメントを学習しましたが、PMBOKそのものについての知識はあまりありません。どのコースが適切かご指導いただければ幸いです。

A11:

PMBOKTMとPMBOKRとの違いはありません。
この点、直接アメリカのPMI本部に問い合わせた際の回答は、次のようなものでした。すなわち、「TMもRも登録商標を指すという意味において差異はない。ただし、PMIとしては、現在TMという表記を削除するようにしている。」とのことでした。この回答からもわかるように、基本的な差異はないとの認識でいいと思います。変遷からすれば、TMという表記は97年版まで主として使用されており、2000年版以降はRという表記が使用されるようになったと考えていただくのがいいのではないかと思います。PMBOKR2000年版の翻訳がPMI本部から発行されておりますので、入手方法についてはPMI東京支部へお問い合わせ下さい。

次にテクノファのプロジェクトマネジメント(PM)に関するコースの違いについては、簡潔に以下のように考えていただきたいと思います。

プロジェクトマネジメントについての基礎知識の枠組みを理解したいとお考えの方は、TM73「PMBOK概要コース」PMP資格取得試験の出題範囲となるPMBOKを理解し、かつ人間関係のスキルについて学びたい方は、TM74「PMP取得対策コース」、

実践的なITケーススタディによりPMに関する実践力を身に付けたいとお考えの方は、以下のコースをご受講をお奨めいたします。

@PMBOKに基づくプロジェクトマネジメント実践コースPMBOKに基づくプロジェクトマネジメント実践コース 
AMicrosoft Project活用によるPM実践【Advanced】コース
BMicrosoft Project活用によるPM実践【Standard】コース
CEVMS活用によるプロジェクトマネジメント実践【Advanced】コース
Dプロジェクト・リスク・マネジメント実践【Advanced】コース

なお、ご参考までに受講マップも併せてご参照下さい。 

    「ITコーディネータ関連コースフローチャート」、及び 
    「ITコーディネータ関連コース専門性相関図」をご参照ください。

Q12: 一昨年ITコーディネータのためのプロジェクトマネジメント実践コースを受講したY・Aと申します。その節は、EA(Enterprise Architecture)について非常にわかりやすく解説いただき有難うございました。2005年6月30日にITコーディネータプロセスガイドラインとカリキュラムガイドラインが改定されたと聞きました。旧ガイドラインとどこが違うのでしょうか。また、新しいプロセスガイドライン改定のポイントを知るためのセミナー等をテクノファで企画しないのでしょうか。雑務に追われ全く勉強しておりません。新ガイドライン公表後、半年間も経ってしまっているのに内容が全くわからないため焦っております。ご指導の程宜しくお願いいたします。
A12: おそらくプロセスガイドラインが改定されたことはすでに多くの方がご存知なのではないかと思います。しかし、一体旧プロセスガイドラインと新プロセスガイドラインでどこが変わったのかと聞かれると答えられない方がほとんどではないでしょうか。とはいっても、ITコーディネータ資格認定制度の根幹である「e-Japan戦略U」重点計画の中で、依然として、「ITCが、日本が世界最先端のIT国家になるための重要なヒューマンリソースとして位置付けられている」ことには何ら変わりがないのです。ですから、プロセスガイドラインが改定されたからとって、その枠組自体に大幅な変更がもたらされたと考える必要はないでしょう。
ただ、以前と比べるとITコーディネータに求められるスキルがよりわかりやすく簡潔に表現されているということは言えると思います。
すなわち、 @ITCプロセスを効果的に実施するスキル
  ITを活用した戦略の立案とその実行に関するスキルを有していること。
  A経営者の経営改革推進を支援するスキル
  経営者の思いを理解し、経営者と経営戦略について検討できるスキルを有し、経営戦略を実現するために必須となるITの活用の重要性を経営者が理解できる言葉で説明できるスキルを有していること。
  Bステイクホルダーとのコミュニケーションスキル
  ITCが実際に活動する際には、経営者をはじめとする企業内外各層のステイクホルダーと、経営戦略あるいは戦略的IT化について、十分にコミュニケーションをとり、ときには説得し、合意を得る必要のある場合に、ステイクホルダーとの間の効果的なコミュニケーションを形成するスキルを有していること。
という具合に、従来に比べ、ITコーディネータの姿がより明確になっています。
また、プロセスガイドラインの改定に伴い、ITCプロセスフローの名称が、
@ プロジェクトマネジメント ⇒プロセス&プロジェクトマネジメント
A コミュニケーションマネジメント ⇒コミュニケーション
B モニタリング&コントロール ⇒モニタリング&コントロール
C 経営戦略策定フェーズ ⇒経営戦略フェーズ
D 戦略情報化企画フェーズ ⇒IT戦略策定フェーズ
E 情報化資源調達フェーズ ⇒IT資源調達フェーズ
F 情報システム開発/テスト/導入フェーズ ⇒IT導入フェーズ
G 運用サービス・デリバリーフェーズ ⇒ITサービス活用フェーズ
というふうに、情報技術という用語をより広い概念の「IT」に置き換えている点は注目に値します。
 さらに、ITコーディネータCommon Body of Knowledge(CBK)Ver1.0単元一覧をご覧いただければわかるように、従来49単元だったのが、50単元に増えています。そして、共通ガイドラインでは、プロジェクトマネジメントにプロセスマネジメントが入り、経営戦略フェーズにはCSRの概念が、また、リファレンスモデルとして、COSO(内部統制フレーム)やCOSO ERM、JIS Q 2001(リスクマネジメント構築のための指針)、ISO9004(品質マネジメントシステム−パフォーマンス改善のための指針)、EA(Enterprise Architecture)、個人情報保護ガイドライン類、ISMS/ISO17799(情報セキュリティマネジメント)、そしてITサービスマネジメント(ITIL)/BS15000等が新たに加えられています。
  総括すると、ITコーディネータには、経営戦略に係るリスクマネジメントの視点からのコンサルティングスキルがより高いレベルで求められるようになったといえるかも知れません。個人情報保護やISMS、また、JISQ2001等がこれらにあたります。また、ITILというITサービスにかかる品質マネジメント規格をリファレンスとして使えなければならないなど、ITに関するより実践的なスキルが求められるとともに、パフォーマンス改善のための指針であるISO9004をも範疇に入れなければならないなど、これまでよりもさらに広く、そしてまた深い知識とスキルが求められるようになったと言えるでしょう。
Q13: 前回ご質問のあった、新プロセスガイドラインの主な変更点については既にご回答致しました。これから数回に分けて新プロセスガイドライン改定のポイントについて解説してみたいと思います。プロセスガイドラインの改定に伴い、ITコーディネータ認定制度も大幅に変更になります。これからITコーディネータ試験にチャンレンジしてみたいと考えておられる方々に、少しでもお役に立つ情報を提供することができれば幸いです。
A13:

「シリーズ プロセスガイドライン改定のポイント」、今回はその第1回目で、プロセス全体フロー編です。ITCプロセスフローの構成や全体フローからみた変更点を取り上げてみないと思います。
以下は旧プロセスガイドラインと新プロセスガイドラインのそれぞれの構成図です。

旧プロセスガイドライン

新プロセスガイドライン

この図をご覧いただければ分かりますように、新プロセスガイドラインでは、これまで以上に経営戦略の重要性が明確に謳われていることは注目に値します。「指導原理は「経営戦略との整合性」」と謳われているように、経営改革プロセスが、各フェーズを通じて経営戦略とその具体的実施内容との整合性をチェックしながら進められる必要があることがこの図からも明らかです。すなわち、各フェーズ、各プロセスが経営戦略と乖離している場合には、プロセスをさかのぼって、経営戦略と整合するよう実施策を修正する必要が出てくるわけです。各フェーズが経営戦略を実行するためにあることをより明確にしたことによって、ITコーディネータの使命である、一気通貫の支援という本来の役割がより浮き彫りになっていると考えていただいていいと思います。
 今回は、ITCプロセス全体構成から見たプロセスガイドライン改定のポイントを解説いたしました。次回は、共通ガイドラインに新たに挿入された、プロセスマネジメント並びにプロセスマネジメントとプロジェクトマネジメントの関係について解説してみたいと思います。
Q14: プロセスガイドライン改訂のポイントの第2回目です。今回は「プロセス&プロジェクトマネジメント」について取り上げたいとみたいと思います。プロセスガイドラインβ版で共通フェーズに位置付けられていた「プロジェクトマネジメント」が、Version 1.1では、共通ガイドラインの中で「プロセス&プロジェクトマネジメント」として位置付けられています。ここに、新たにプロセスマネジメントという概念が導入されていることは注目に値します。そこで、今回は、「プロセス」と「プロジェクト」との関係について考えてみたいと思います。

A14:

Version1.1では、経営戦略は、プロセス改革により実行されるという視点が従前に比して色濃く出ていて、このプロセスの中から切り出されるのが「プロジェクト」であるという位置付けがなされています。また、プロジェクト化はプロセス改革の有効な手段の一つであるとされ、プロジェクトはプロセスを補完するものであるとされています。「プロセス」と「プロジェクト」との関係を最も端的に表しているのが次の記述です。すなわち、「プロセス改革課題の中から、優先度・重要度・影響を与える範囲等を考慮してプロジェクトとして切り出す範囲を判断する。」と。プロセス改革が目的であって、IT化はその手段であることを明記している点で、従前ともすればIT化が目的化されてしまっていた傾向が否めなかったのですが、こういったトレンドにも一石を投ずることになるかもしれません。この点、人と組織の呼び方で、業務プロセス改革部門:当該の経営戦略に従って業務プロセスを改革する責任を持つ部門、と定義しているところからも、主眼が経営戦略上のプロセス改革にあることが伺えます。このように、「プロセス&プロジェクトマネジメント」では、各フェーズの活動が適切に行われていることを「プロセスの視点」からマネジメントすることになります。

次に「プロセス」と「プロジェクト」についてそれぞれその意味するところを比較検討してみたいと思います。

T まず、プロセスについてですが、プロセスとは「ある一定の目的を達成するため、関連する業務を連結した業務の繋がりである。」と定義されています。
このプロセスはさらに大きく以下の2つに分類されています。
  @基幹業務プロセス: 顧客・市場の理解、経営戦略、マーケティング、商品開発、購買、生産、販売、サービスの提供、代金回収、顧客サービス等
  A支援業務プロセス: プロセス評価、人材開発、財務、ITサービス、環境管理等(ITが基幹業務となることもある)
  またプロセスマネジメントとは、
@プロセスを、最適な形で維持運営して経営戦略を実行し、経営戦略目標を達成すること
A経営環境変化に対応してプロセスを的確・スピーディーに改革すること
であると、としています。また、このプロセス改革には次の2つの場合があるとしています。すなわち、
@新たな経営課題を達成することを目的とする場合
  ● 新しいプロセスを創設、または既存のプロセスを抜本的に改革する。
Aすでに定義されているプロセスが予定通り機能せず、初期の成果を上げていない場合
  ●原因分析を行い、原因を除去し、再発防止策を講じる。類似プロセスへの水平展開を行う。
このようにプロセス改革にも2種類あることについては注意が必要です。
このプロセス改革のためのリファレンスモデルとされるのがAPQCビジネスプロセスモデルです。ベストプラクティスに基づくプロセスのフレームワーク(Process Classification Framework)で、上位モデルと下位モデルからなる、プロセス改革の対象となるプロセスを切り出すために有益なツールです。また、全社的なプロセス改善のためのツールとしても有益と考えられています。
U 「プロジェクト」とは「ある時点の経営戦略を実現するために、プロセスの改革課題を既存組織の通常の業務プロセスから切り出し、別チームを編成し、目的・期限等を明確に定めて実施するプロセス」であるとしています。

そして、「プロジェクトマネジメント」とは、プロジェクトを達成するために、現実的な実施条件の下で様々な要件のバランスを取りながら、以下を行うことであるとされています。

@ プロジェクトを立ち上げ、実行のための最適な計画を作成し、適切な手法やツールを選択し適用すること
A プロジェクトの実行については、スコープ、コスト、スケジュール、コミュニケーション、リスク及び品質等に関してマネジメントを行うこと
B プロジェクトのステイクホルダーと十分なコミュニケーションをとり、ステイクホルダーに適時的確な報告を行い目的に向かって統制すること

以上のように、プロセスガイドラインVersion1.1においては、プロジェクトマネジメントがITCがITCプロセスを有効適切に実施するうえで、重要なマネジメント手法であり、プロセス改革を達成するための有益な手段であると位置づけられている点、ITCには何が求められているのを従前に比し、より明確にされた点で積極的に評価されるべきではないかと考えます。

Q15: プロセスガイドライン改訂のポイントの第3回目です。今回は「コミュニケーション」について取り上げたいとみたいと思います。
A15:  コミュニケーションマネジメントガイドラインはVersion1.0になって大幅に改定されています。ITコーディネータに求められる最も重要なコンピテンシーであるという認識が根底にあるのかもしれません。すなわち、従来のコミュニケーションに関する考え方よりも一歩踏み込んで、コミュニケーションを「合意が形成されていく関係プロセス全体」と捉え、同時に「インタラクション・プロセス」と捉えられるべきことが明確に述べられています。また、ITCのコミュニケーションを交渉・折衝のプロセスと捉え、「合意形成型のインタラクション・モデル」へと発展してきたとも述べられています。   
 合意形成型のインタラクション・モデルはコミュニケーションプロセスにおけるメタ・フレーム=PRAM(Planning(交渉計画)・Relation (関係形成)・Agreement(合意形成)・Maintenance(関係維持)として位置付けられています。さらに、このメタ・フレームプロセスを実現するためのプロセスはDDP(ダイアローグ・ディシジョン・プロセス)として、段階的な定義が与えられています。すなわち、DDPは、@不確かさの検討・確認A不確かさの共有・理解B相互の仮説提示(認識・定義・評価)C相互作用による明確化(構造・要素・機能)D相互作用による創造、という段階的な意思決定プロセスを踏むことが謳われています。
 ダイアローグとは、「互いに仮説を提示しあいながら、理解や要求領域を拡大し、最終的に全面合意を形成しようとすることである」という定義はITコーディネータにとって非常に大きな意味を持つと考えることができます。なぜなら、ITコーディネータにとってのコミュニケーションは、クライエント(相手)自身が最終的に具体的な決定をし、実行することを促すものである必要があるからです。このDDPプロセスを適切に踏むことによって、クライエント(相手)は説得されたのではなく、自分で考え、決定したという当事者意識を持ち、従って、実行について強い動機(モチベーション)が生まれてくるという、DDPプロセスそのものが非常に重要であるという意識を持つことが求められているのです。
 コミュニケーションの基本原則を見ても、いかにITコーディネータにとってコミュニケーションスキルが重要であるかを見て取ることができます。たとえば、「効果的コミュニケーションスキルの原則」では「傾聴」の重要性が特に強調されています。さらに、「コミュニケーション・スタイルの原則」や「コミュニケーション・モデル」の原則では、相手のコミュニケーション・スタイルに応じたコミュニケーションスタイルを心がけるべきことや状況に合わせたコミュニケーション・モデルが用いられるべきことが謳われています。
 端的に言ってしまえば、プロセスガイドラインVersion1.0では、よりヒューマンスキル(対人関係スキル)が重要視されるようになったということができると思います。
 ところで、コミュニケーションについて語るとき、必ずといって参照されるのが、ジョハリの窓です。
 今回新たに提言されている、メタフレームPRAMにしても、DDPにしても、実はこのジョハリの窓を理解していれば理解するのにそれほど困難を伴わないのではないかと思います。そこで、ITコーディネータにとってなじみが深いジョハリの窓についてもう一度簡単に紹介してみたいと思います。ジョハリの窓とは、サンフランシスコ州立大学の心理学者である。ジョセフ・ルフトとハリー・インカムが発表した「対人関係における気付きのグラフモデル」をさし、コミュニケーションにおける自己の公開とコミュニケーションの円滑な進め方を理解するために提案されたモデルです(ジョハリは二人の名前から取られたものです【フリー百科事典「ウィキペディア」並びに下図参照】)。

ジョハリの窓

 
自分に分かっている

自分にわかっていない

他人に分かっている

T

開放の窓
「公開された自己」
(open self)

U

盲点の窓
「自分は気がついていないものの、
他人からは見られている自己」

(blind self)

他人に分かっていない

V

秘密の窓
「隠された自己」
(hidden self)

W

未知の窓
「誰からもまだ知られていない
自己」

(unknown self)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
 このジョハリの窓を理解するためのキーワードの一つが、「自己開示」であり、もう一つが「フィードバック」です。つまり、このコミュニケーションモデルが意図していることは、相互理解を図るためには、自己開示により「開放の窓」を広げるとともに、相手からフィードバックを貰うことによって「盲点の窓」や「未知の窓」を狭くすることが必要であるという点です。
 自己開示のために必要なスキルがアサーションスキル(いうなればさわやかな自己主張、換言すれば、I’m O.K and You’re O.Kの態度)であり、フィードバックを受け入れるために必要なスキルが傾聴(Active Listening)です。傾聴の基本的態度として挙げられているのが、@共感的理解 Aジュニュインネス(純粋性)/自己一致 B尊重・受容・配慮です。傾聴スキルがことさらに強調されているのは、クライエント(相手)のニーズが分からなければ支援のしようがなく、また、課題が何であるかが分かれば本人自身が課題解決にむけて自分で行動を起こすことができると考えられるからです。傾聴にとって最も重要なのは、「クライエント自信が問題解決の中心である」という明確な認識であり、かつまた、この認識を実際に実務で使えるスキルを有していることです。
 このように述べてくるとITコーディネータには、いかに高度の「アサーションスキル」と「傾聴」スキルが求められているかがお分かりになったかと思います。上で見てきた、コミュニケーションに関する諸原則も、PRAMも、そしてまたDDPも対話を通じて互いに分かり合おうとする姿勢が重要であり、可能な限り、合意できる範囲を明らかにしていこうという対話のプロセスが重要であるということを視点を変えて述べているに過ぎないのです。ITコーディネータにはこのことを明確に認識し、かつ、これを実践できるコンピテンシーを求められているということをもう一度再確認していただければ、本稿の意図を達することができたのではないかと考えます。
 最後になりましたが、これらコミュニケーション・モデルの基本に「自己理解」があるということを看過しないで頂きたいと思います。人は、他人のコミュニケーション・スタイルやコミュニケーション・モデルについてはいろいろ意見を言うことができます。しかし、こと自分のコミュニケーション・スタイルとはどんなスタイルなのか、また、自分のコミュニケーション・モデルはどんなモデルなのかということを知ることが実は前提にあるということを忘れがちです。「他者理解」の前にまず「自己理解」があることを努々忘れてはならないと思います。
 その「自己理解」のためには、他者評価(フィードバック)も重要ですが、アセスメントツールを使うことも効果的です。アセスメントツールを使用することで「気付き」が得られ、「自己理解」が深まり、今後の自分のキャリア開発の目標やキャリア・デザイン/キャリア・プランニングへと繋がってきます。ここで、アセスメントツールとしてご紹介申上げたいのが、「ハーマンモデル」です。ハーマンモデルはノーベル賞受賞学者の大脳生理学理論に基づいた脳優勢度調査により自己の行動特性(コミュニケーション・スタイルを含む)を知ることができる画期的なツールです。

Q16: プロセスガイドライン改訂のポイントの第4回目です。今回は「モニタリング&コントロール」について取り上げたいとみたいと思います。
A16:  改訂の最大のポイントは、モニタリング&コントロールガイドラインの全体概要と基本原則で、「【内部統制とモニタリング&コントロール】の重要性を理解し、助言または支援できる知識と能力」が目標とする知識・能力として明示されたことです。これにより、ITCはSOX法やJ-SOX法などの関連法規を理解し、説明できる能力が求められることになります。また、COSOの内部統制フレームとCOBITR等のリファレンスモデルが活用できなければならないことになります。
 ここでのキーワードは、「内部統制」ということになるでしょう。上場企業から見ても、また、内部統制フレーム構築ソリューションベンダーから見ても、そして、内部統制システム構築コンサルティング業務を展開するITコーディネータにとっても2008年施行予定のJ-SOX法は最大の関心事ではないかと思います。なぜなら、モニタリング&コントロールに関するコンピテンシーこそがITコーディネータに最も求められるところであり、内部統制ソリューションこそはITコーディネータのコンサルティングスキルが最も活かされる領域ではないかと考えるからです。
 ここでJ-SOX法制定の背景について少し触れておきたいと思います。アメリカでは、エンロンやワールドコムで問題となった虚偽の財務報告に対する教訓から、サーベンスオクスレー法が施行され、株式時価総額が一定額を超える企業は、内部統制システムを構築することが義務付けられました。このサーベンスオクスレー法に多大な影響を与えたのが、1992年に公表された、トレッドウェイ委員会( the Committee Of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission 、COSO)による「内部統制に関する統合的枠組み(a landmark report on internal control)」リポートです。不正な財務報告の再発防止には内部統制の整備充実が必要性を説き、そのための理論及びツールを提供しています。
内部統制に関するCOSOの定義は、以下のとおりです。
 Internal control is a process, effected by an entity's board of directors, management and other personnel, designed to provide reasonable assurance regarding the achievement of objectives in the following categories:
・ Effectiveness and efficiency of operations
・ Reliability of financial reporting
・ Compliance with applicable laws and regulations
 これを翻訳しますと、「内部統制とは、下記カテゴリーの目的を達成することについて合理的保証を提供しようとする、取締役会、経営者およびその他の人々によって実施されるプロセスである。」となります。
目的のカテゴリー:
・業務の有効性および効率性
・財務報告の信頼性
・該当する法律および規則への準拠性

サーベンスオクスレー法については、今日なお、その厳格な運用を促すことを疑問視する声すらありますが、J-SOXへ多大な影響を及ぼしたことは間違いのないところです。
 ところで、わが国のJ-SOX法の枠組みはどのようなものでしょうか。
証券取引法の抜本改正である「金融商品取引法」がこれに該当します。同法は24条で、「有価証券報告書を提出しなければならない会社のうち、金融商品取引所に上場している有価証券の発行者である会社その他の政令で定めるものは、事業年度ごとに、当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要な体制について評価した報告書(内部統制報告書)を有価証券報告書と併せて内閣総理大臣に提出しなければならないこととする。また、内部統制報告書には、公認会計士または監査法人の監査証明を受けなければならないこととする」と規定しています。
 すなわち、ここでは、@内部統制報告書を提出することと、Aその内部統制報告書について監査を受けていること、が求められます。
 金融庁企業会計審議会内部統制部会が2005年12月に「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準の在り方について」を公表しています。この指針は、監査法人が企業の内部統制システムをチェックする際の基準に関する指針を示したものですが、その中で、「経営者が実施した内部統制の評価」について公認会計士が法定監査(財務諸表監査)の一環として監査を実施することとされています。
 では、本法公布前はどうであったかというと、2004年3月期決算から会社代表者による有価証券報告書の記載内容が適正であることの確認書を添付する制度が任意で始まっており、その中で財務報告に関わる内部統制システムの有効性の確認が求められてきました。主要な金融機関200社以上が2005年3月期決算で確認書を提出しているようです。
 さて、指針にもどって、少し詳しく見てみましょう。本報告書では、企業の4つの目的である、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守、資産の保全に対する6つの基本要素として、@統制環境、Aリスクの評価と対応、B統制活動、C情報と伝達、Dモニタリング、EITへの対応が挙げられています。この内部統制強化には、財務データだけでなく、あらゆる業務プロセス上のデータが適切に収集、処理された上で、これらが財務報告に反映される必要があるとされています。
 わが国のSOX法に対応する J-SOX法ともいうべきものは、上に見た通りですが、実は、この内部統制の枠組みの前提となっているのが、先に見たCOSOのフレームワークです。本報告書では、金融商品取引法が、もともとのCOSOのフレームワークの5つの構成要素になかった、「ITの利用」(IT統制)を挙げていることは注目に値します。すなわち、内部統制とIT活用とが密接不可分の関係にあることを物語っています。   
 このように、内部統制の仕組みについては、会社法と金融商品取引法で枠組みが与えられ、なおかつ、内部統制が経営者の説明責任の問題であることが明確にされたことにより、企業は従前にまして、ITガバナンスの問題に正面から取組まざるを得なくなったと言えるでしょう。
 新たな法規制が登場したことにより、これに対応するための、内部統制フレーム構築プロジェクトが至るところで立ち上げられ、全社的な取り組みをされている企業も多くあるようです。しかし、翻って考えてみれば、新たな法規制が登場したから、仕方なくITガバナンスの問題に取組むという姿勢は本来あるべき姿ではないようにも思います。冒頭にも述べましたように、このような法規制が登場したことで、これを契機として社内プロセスを見直し、全社の業務プロセスを可視化し、財務に関するリスクマネジメントを実践し、PDCAサイクルを回すことで業務プロセスのパフォーマンスを向上させ、コーポレートガバナンスの大きな柱であるITガバナンスに優れた企業としてブランド価値を向上させるのだという積極的な姿勢で取組む企業もあるようで、この点、内部統制フレーム構築コンサルティングを展開するITコーディネータにとっては朗報といえると思います。
 しかしながら、一方では、ことリスクマネジメントいう観点から考えれば、諸業務プロセスに潜む潜在リスクを明らかにし、影響度を評価して、これに対する対応策を講じる、というリスクマネジメントプロセスは、それがプロジェクトマネジメントであろうと、情報セキュリティーであろうと、どのマネジメントシステムに共通する、リスクアセスメントシステムの重要なポイントであることは論を待たないでしょう。内部統制を構築したある企業は、ISMSのリスクアセスメントを活用したと述べています。したがって、このようなプロセス自体はそれ程目新しいものとは言えないのではないかと思います。もちろん、後に述べる文書化やプロセスの可視化という課題への対応ではそれなりのコスト負担(IT資源のみならず、人的資源も含めて)が生じることは止むを得ないところです。

 それでは、最後にJ-SOXに対応するための具体的なプロセスを見てみることにしましょう。J-SOX法最大のポイントは、財務処理手続きそのものに誤りがないよう内部統制システムを構築する必要があるということです。つまり、財務報告が結果的に適正であったかどうかという視点から、財務プロセスそのものが適正であったかというプロセスの観点からの内部統制システムが必要になってくるわけです。そのプロセスですが、大きく3つに分けられるのではないかと思います。
 すなわち、@内部統制の対象となる業務プロセスの特定、A特定した業務手続の文書化並びに財務報告にかかるリスクの特定及び管理策の文書化、C構築された内部統制の整備・運用状況の評価するというプロセスです。
 内部統制構築の最大のポイントは、業務やリスクを誰でもわかるように可視化することにあります。そのために業務プロセスを書いた「業務記述書」、業務プロセスや承認手続きなどを図示した「フローチャート図」、業務で発生するリスクやこれに対する予防策や低減策(コントロール手法)を記述した「リスク・コントロール・マトリクス」の3種類の文書を整備する必要があります。これらの文書化プロセスがおそらくもっとも工数を要する部分ではないかと思います。

 内部統制システム構築プロジェクトを簡単に図示すると、以下のようになるのではないかと思います。

立上げ
  方針やスケジュールの決定
  スコープやプロジェクトメンバーの決定
文書化と有効性の評価
  文書化
  文書の有効性の検討・評価
  問題点の改善
運用テストと内部監査/外部監査
  運用テスト
  問題点の改善
  内部監査と外部監査の実施
運用改善

 このような内部統制システム構築プロジェクトのプロセスを実現するために各企業で様々な取り組みがなされているところだと思います。
 大手企業では、既にERPパーケージ導入による内部統制ソリューションを導入しているところも多いように聞きます。確かにERPパッケージを活用すれば、生産、販売業務に対応したサブシステムを組みあわせ、あらゆる業務データを収集し蓄積することが可能となります。データの一元化が図れることにより、帳票の重複化や複雑化を避けられるという利点もあります。またカスタマイズにより、ERPパーケージにモニタリングシステム機能を組み込み、監査リポートなどを用意に作成することも可能のようです。また、あるソリューションベンダーでは、ワークフローの機能による内部統制システム構築コンサルティングを展開しているようです。このワークフロー機能を使えば、アクセスや承認権限の設定変更などを一元的に管理することも可能になるようです。このように、ともすると情報システムに組み込む内部統制(アプリケーションコントロール、インテグリティコントロール、セキュリティコントロール)フレームの確立は企業に多大なコスト負担を強いることにもなります。このようなトレンドに対して、ERPパッケージを導入すれば直ちにJ-SOX法に対応が完了するなどと努々考えてはならないと警鐘をならすエキスパートもいることを付記しておく必要があるかもしれません。モニタリング&コントロールプロセスの可視化という機能を考えれば、むしろ、バランス・スコアカードの有効活用が考えられてもいいように思います。コックピット経営という標語にも表れているように、財務指標を含む経営に必要な視点を盛り込んだバランス・スコアカードこそは、常にジェット旅客機のコックピットのように定常的なモニタリング機能を果たすことができるからです。
 上に見てきたように、J-SOX法は、財務諸表の信頼性の担保という目的を達成するために何をなすべきかを真剣に考える好機を提供してくれたように思います。また、ITコーディネータにとっては、内部統制フレーム構築のためにどのような支援ができるのかが問われると同時に、ビジネス展開の好機が到来していると考えることができると思います。
 なお、最後にお断りを申上げておきたいと思います。10月25日現在で実務指針が公表されていない段階での分析ですので、今後実務指針が公表された後でここで述べたことについて訂正や修正が必要になる可能性もございますこと予めご了承いただきたいと存じます。また、内部統制監査と財務諸表監査における「内部統制の有効性の評価の検証」の相違、会社法の内部統制と金融商品取引法の内部統制の相違などについても、本来であれば検討が必要なところですが、CBKの範囲を超えることになりますので、取り上げませんでした。この点もご了承いただきたいと存じます。
 IT統制フレームとしてのCOBITやITILについては、また機会を改めて取り上げる予定です。

Q17: プロセスガイドライン改訂のポイントの第5回目です。今回は「モニタリグ&コントロール」でリファレンスに挙げられているCOBITRについて取り上げたいとみたいと思います。
A17:  2008年4月のJ-SOX法施行を控え、上場企業では、内部統制フレーム導入に向けた動きが急のようです。また、ソリューションとしてERPの導入事例が増えつつあるようです。前回解説したように、金融商品取引法の求める内部統制フレームが、参照モデルである、COSOのフレームワークの5つの構成要素になかった、「ITの利用」(IT統制)を挙げていることが背景にあるからです。内部統制とIT活用とが密接不可分であり、そのためにこれまで以上にITガバナンスに正面から取組む必要があることは前回解説したとおりです。
 「ITガバナンス」の定義については、一般的にJIPDEC(日本情報処理開発協会)の定義が知られています。すなわち、「企業が競争優位性構築を目的にIT(情報技術)戦略の策定・実行をコントロールし、あるべき方向へ導き組織能力」と定義されています。ITコーディネータプロセスガイドラインでは、ITガバナンスをより平易に、「IT化の目的が明確で業務が標準化され、モニタリング&コントロールできているか」と定義しています。ここで注視していただきたいのは、どちらの定義に従っても、「コントロール」が必要とされる機能であるということです。どんなに機能に優れたITを導入しても、それが、モニタリングされ、かつコントロールされていなければ、それは競争優位性の源泉とはならないということです。この定義は、ある意味では、安易にERPソリューションを選択しがちなトレンドに警鐘を鳴らすことにもなるのではないかと思います。
 ここで、ITガバナンスのフレームとして最近特に注目を浴びているのが冒頭に申し上げたCOBITRです。COBITRはControl Objectives for Information and Related Technologyの頭文字を取ったもので、米国のISACAが作成しています。日本ITガバナンス協会が発足したことにも象徴されているように、今後ITガバナンスに対する関心は増す一方ではないかと思います。実は、COBITRはリファレンスモデルとしてITコーディネータが用いるべきツールとして一般的に説明されてはいても、実際にCOBITRを導入している組織はまだそれほど多くはなく、ITコーディネータもその具体的な内容、活用法については、あまり認識されていない方が多いのではないかと思います。
 COBITRの内容を簡単に説明すると、ITガバナンスの領域を大きく、@計画と組織、A購入と実装、Bデリバリーとサポート、Cモニタリングに分け、さらにそれぞれの領域ごとに詳細なプロセスを規定しています。例えば、@の計画と組織については、戦略的IT計画の定義、情報アーキテクチャーの定義など11のプロセス、Aについては、自動化されたソリューションの検証、アプリケーションソフト購入・保守など6つのプロセス、Bについては、サービスレベルの定義と管理やサードバーティーのサービスの管理など13のプロセス、そしてCについては、プロセスのモニタリングや内部統制の妥当性評価など、4つのプロセスで全34のプロセスが定義されています。そしてこれらのプロセスのモニタリング対象となるIT資源として人間、アプリケーション、技術、設備、データの5つを規定し、これらのIT資源について、有効性、効率性、機密性、完全性、可用性、準拠性、信頼性という7つの情報化基準を設けて、それぞれについてKGI、KPIを設け、めざすべきITガバナンスの成熟度ごとに何をなすべきかが明確に定義されています。この意味では、ITガバナンス構築を目指す組織にとっては、何ができるようにならなければならないのかが明確にされている点、さらに、As IsモデルからTo Beモデルへの目標が持ちやすいという点で非常に有益なツールであると考えられます。特に、モニタリング機能という視点から捉えると、J-SOX対応への効果的なツールとして今後COBITRが益々注目を浴びてくるものと考えられます。同じくITガバナンス構築のツールと考えられているITILについては、別の機会にITサービス活用フェーズで取り上げたいと思います。
Q18: プロセスガイドライン改訂のポイントの第6回目です。いよいよ個別フェーズに入ってきました。今回は経営戦略フェーズです。
A18: まず、経営戦略フェーズにおけるプロセスガイドライン改定のポイントとして、経営戦略フェーズが、@経営戦略策定、A経営戦略展開、B経営戦略実行(プロセス改革)という3つのプロセスに分類されている点が挙げられるでしょう。「経営戦略策定フェーズ」と位置づけられていたプロセスガイドラインβ判に比し、プロセス改革によって経営戦略を実現することが明確に目的化されたことによって、Version1.1は、従来のプロセスガイドラインよりもかなりパフォーマンス指向のガイドラインになっていると言えるのではないかと思います。IT戦略策定フェーズ以降が経営戦略実行プロセスの一環であり、「IT化実行プロジェクト」として抽出されるのも、先に「種々の経営課題を解決するためのプロセス改革を実行することが重要」なのであって、「IT戦略の策定は新しいプロセスを支援することが目的である」ことを明確に謳っている点で積極的に評価したいと思います。
 また、従来からある、企業理念・使命や外部環境情報の収集、内部環境情報の収集から経営環境分析とあるべき姿を構築するというプロセスは踏襲されているものの、ここに「リスク評価」という新たなプロセスが追加されたことは注目に値すると共に、今回のガイドライン改定の最大のポイントといっても過言ではないのではないかと思います。経営戦略フェーズにこの「リスク評価」というプロセスを設けたことによって、Verision1.1は全体を通じてリスクマネジメントないしはエンタープライズリスクマネジメントという視点が貫かれていると考えることもできるのではないかと思います。
 さらに、ITC Common Body of Knowledge Ver.1.0 Kでは、T.2.7に   リスクマネジメントという独立したカテゴリーが設けられ、目標とする知識・能力として「企業の社会的責任を理解し、リスクマネジメントを実践するための知識と能力」が掲げられています。そこではさらに、
  @ 企業の社会的責任と継続的発展のためにリスクマネジメントの必要性を説明できる。
  A 「投機リスク」「セキュリティ・リスク」への対処方法について助言または支援ができる。
  B リスクマネジメント戦略の作成方法について助言または支援ができる。
  C 企業の実態に合ったリスクマネジメント管理体制の構築について助言または支援ができる。
という4つのKPIが並んでいます。
 したがって、ITコーディネータは個別のマネジメントシステムの中でのリスクマネジメント(例えば情報セキュリティや個人情報保護保護、あるいは内部統制等)の在り方だけではなく、企業ないし組織全体(エンタープライズレベル)のリスクマネジメントについて提言し、支援ができなければならないことになります。これは、かなり高度のコンピテンシーが求められる領域ということになるのではないかと思います。
 このようなエンタープライズレベルのリスクマネジメントを構築するためのリファレンスモデルと考えられているのが、JIS Q 2001(リスクマネジメント構築のための指針)やCOSO ERM(COSO Enterprise Risk Management-Integrated Framework)です。COSO ERMは、先にモニタリング・コントロールフェーズで紹介したCOSOにより2004年9月に公表された全社的(エンタープライズレベル)リスクマネジメントに関するフレームワークです。
 先に紹介した内部統制に関するフレームワークとCOSO ERMとの違いについては、前者が主として財務報告に対する信頼性を担保するための仕組みとしての内部統制に重きを置いているのに対し、後者は全社的なリスクマネジメントの観点に立っているということで、カバーする領域が内部統制よりも広範で、かつ経営戦略的な観点からのリスクマネジメントに適していると考えられるのではないかと思います。
 COSO ERMについては、内部統制フレームと並んでJ-SOX法対応のためのフレームワークとして注目を浴びているところです。次回は、もう少し詳しくCOSO ERMを見てみたいと思います。ご期待ください。
Q19: プロセスガイドライン改定のポイントの第7回目です。今回は前回に引き続き、内部統制フレームとしてのCOSO ERMを取りげてみたいと思います。
A19:

プロセスガイドラインVersion1.1【経営戦略フェーズ】のCBKにリスク・マネジメントが加えられたにより、経営戦略フェーズのプロセスも、より詳細に8つのプロセスになりました。具体的には、リスク・マネジメントはこのうちの3-5.リスク評価のプロセス(アクティビティ)になります。
すなわち、
   3-5-1.経営リスクの事前予防と発生を想定した予防
   3-5-2.経営リスクの発生と分析、対処
   3-5-3.経営リスクの実現による損失発生への対処
という3つの詳細プロセス(タスク)に落とし込まれています。

 ここで注目すべきは、この経営戦略フェーズにおけるリスク・マネジメントの対象は、全社的な、換言すれば、経営全体を通じてのリスク・マネジメントであり、個別の情報セキュリティや個人情報保護のみを対象にしているのではないという点です。ここに、ERM(Enterprise Risk Management:統合リスク管理)とう手法が必要になってくるわけです。
 そのERMの定義ですが、COSOの定義を引用し、一般に、「事業体の取締役会、マネジメントおよび他のスタッフの全てが関わるプロセスであり、事業体全体の戦略策定にも関連するとともに、事業体へ影響する可能性のある事象を識別し、事業体のリスク選定に応じて統合的にリスク管理を行い、事業体の目標達成に関して合理的な保証を提供することを目的とするプロセス」とされることが多いようです。ここに、COSO ERMがJ-SOX法対応のための有益なツールとして注目を浴びている理由があります。すなわち、経営者および取締役会にとってのERMは「保証」という機能を果たすことになり、また逆に、ERMを構築する場合には、それが経営者や取締役会にとって「保証」の機能を果たさなければ意味を成さないということになるからです。ただし、このERMが登場したからといって、従来のフレームワークに取って代わったわけではなく、従来のCOSOフレームワーク(内部統制フレームワーク)が補完的に拡張され、リスクの観点からマネジメントと内部統制が統合されているにとどまることには注意を要します。
より具体的には、下図COSO ERMの構造を示すキューブをご覧いただければわかるように、リスク許容度を経営や戦略の視点から設定・コントールすること、及び個々のリスクをポートフォリオという観点から統合管理することを意図しており、従来のフレームワークをいわば拡張したものと理解できます。
 

COSO ERMのキューブ
(COSO ERM Executive Summaryより)

 COSO ERMのフレームワークとしての特徴は、@内部環境、A目的設定、B事象認識、Cリスク評価、Dリスク対応、E統制活動、F情報とコミュニケーション、G監視活動、という8つの要素から成り、また、企業経営の目的として、1)戦略、2)業務活動、3)財務報告、4)コンプライアンスという4つのカテゴリが設定されている点です。ERMフレームワークには、事業体(全体)や部署(部分)といった「適用範囲」があり、それらが立方体(キューブ)の関係にあります。COSOフレームワークに比べると、目的に「戦略」が追加され、構成要素に「目的設定」が加わり、さらに「リスク評価」が「事象認識」「リスク評価」「リスク対応」に分割・詳細化されています。
 このように、COSO ERMは全社的な視点からリスク・マネジメントを実施する場合の非常に有益なフレームワークであるとともに、J-SOXで求められている内部統制フレームとしてもその機能を果たすべきことが期待されており、また、全社的にリスクを洗い出してこれらを評価し、これらのリスクに対して対策を漏れなく効果的に実施することがスコープになります。
 このように事前にリスク・マネジメントを実施するという手法そのものは、内部統制のためのフレームワークにも共通する理念であり、また、ISMSであろうとPMBOKであろうと、事前にリスクを洗い出し(識別し)、これらリスクの影響度を評価し(定性的リスク分析/定量的リスク分析)、これらのリスクに対する対応策を策定する(リスク対応計画/リスクの監視・コントロール)というプロセスに大きな差異はありません。ただCOSO ERMがそのリスク・マネジメントの対象を全社としており、なおかつ、事業体の目標達成に関して合理的な保証を提供することを目的としている点でJ-SOX法に対応できるその機能に注目が集まっているということができるのではないかと思います。これを、簡潔に図示したのが下図です。
 すなわち、コーポレートガバナンスという目的達成のための手段としてCOSO ERMがあり、コーポレートガバナンスの要素として内部統制があり、その達成手段としてCOSOの内部統制フレームがあり、内部統制の要素としてITガバナンスがあり、その達成手段としてCOBITやITIL、あるいはITSMがあり、さらにITガバナンスの要素としてISMSがあり、その達成手段としてISO/IEC27001がある、というふうにそれぞれが目的と手段の関係になるのではないかと思います。上位概念としてのコーポレートガバナンスの中に、内部統制も、ITガバナンスも、そしてまたCSRも包含されると考えると、最終的に目指すべきはいかにしてコーポレートガバナンスを構築するのかということに尽きるのではないかと思います。その最終目的を達成するために、それぞれのフレームワーク/ツールを有効に活用するというふうに考えると、コーポレートガバナンスとITガバナンスの関係も、あるいはCOSOとCOSO ERMとの関係も、COSOやCOBIT、COBITやITILとの関係もすっきり整理されてくるのではないでしょうか。


 「コーポレートガバナンスとITガバナンスとの関係図」

 なお、J-SOX法対応に必要とされる「IT統制」の具体例について、経済産業省(経産省)が2007年3月20日、システム部門向けに「システム管理基準 追補版(財務報告に係るIT統制ガイダンス)」を公表していますので、是非こちらもご参照いただきたいと思います。経産省は指針を作成した目的について、「システム管理基準等を活用している企業が、財務報告にかかる内部統制に必要な『ITへの対応』を行うために、システム管理基準等と『ITへの対応』との具体的な対応関係を明確すること」と説明しています。この 追補版は、(1)本追補版の構成と用語について、(2)IT統制の概要について、(3)IT統制の経営者評価、(4)IT統制の導入ガイダンス(IT統制の例示)、という4章で構成されており、約150ページほどあります。経産省が公表している「システム管理基準」や「情報セキュリティ管理基準」に加えて、日本版SOX法対応の実務指針として2007年2月15日に金融庁企業会計審議会内部統制部会が公表した「財務報告にかかる内部統制の評価および監査に関する実施基準」との対応関係も明記されています。

   
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