よくある質問

ISO 14001規格の概要

1. ISO 14000シリーズ規格発行の背景

 1992年6月、ブラジルのリオデジャネイロで「地球サミット」(UNCED:国連環境開発会議)が開催された。ISO14000シリーズは、この会議の準備段階でISO(国際標準化機構:International Organization for Standardization)が環境マネジメントの規格化を要請されたことに始まる。
 地球サミットに先立つ1990年、これを成功に導くため世界の産業界のリーダー48名からなるBCSD(持続可能な発展のための産業人会議:Business Council for Sustainable Development)が創設された。BCSDは翌1991年7月、ISOに環境マネジメントの国際規格化を要請した。産業界として、地球サミットに向けて環境問題にどのように取り組むべきかを検討した結果の一つだ。
 また、BCSDは報告書「チャンジング・コース」をまとめた。破滅に向けて航海している「地球丸」を、持続的発展が可能な社会へ向けて進路を変更すべき(チェンジング・コース)であるとした内容である。
 この意味において、ISO 14000シリーズの原点は「持続的発展が可能な社会」を目指すことにあるといってよいだろう。
 「持続可能な発展(Sustainable Development)」は、環境と経済の持続的両立を求め、1980年にIUCN(国際自然保護連合)、UNEP(国連環境計画)、WWF(世界自然保護基金)による「世界自然保全戦略(World Conservation Strategy)」で用いられた概念である。その後1987年、WCED(環境と発展に関する世界委員会)の「われら共通の未来(Our Common Future)」等で、「将来の世代の欲求を充たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような発展」として世代間のバランスの考慮が付け加えられた。「持続可能な発展」は、1992年にブラジルで開催された地球サミットにおいても、重要なキーワードとして用いられた。
 BCSDからの要請を受けたISOは1993年6月、カナダのトロントで開催した第1回TC(Technical Committee :専門委員会)207総会から環境マネジメントシステムの標準化作業を開始した。
 そして1996年9月1日、ISO 14001(環境マネジメントシステム-仕様及び利用の手引)及び14004(環境マネジメントシステム-原則、システム及び支援技法の一般指針)を発行した。日本では、通産省工業技術院(当時)がISO 14001及び14004を速やかに翻訳JIS化し同年10月20日、国際規格と整合した日本工業規格(国際一致規格)としてJIS Q 14001及び14004を制定した。
 その後、LCA(ライフサイクルアセスメント)、環境ラベル、環境パフォーマンス評価など当初予定されたほとんどのISO規格が発行され、順次翻訳JIS化が進められてきた。

2. ISO 14000シリーズ規格の概要

 環境マネジメントを扱う規格はISO 14001規格に限らず他にも多くの規格が存在する(図1.1)。これを総称して「ISO 14000シリーズ規格」という。

 

ISO14001シリーズ規格 図1.1

図1.1 ISO 14000シリーズ規格

 主要な規格群は次の通りである。

  1. 環境マネジメントシステム(EMS)を扱うものにISO 14001とISO 14004がある。いずれも環境経営(環境マネジメント) の仕組み(システム)を扱う。前者は規格のタイトルが「要求事項」となっており、規格本文中に「~すること(英文ではshall)」という表現で要求事項が含まれている。これに対し、後者はタイトルが「指針」となっているように、規格本文中に「~するとよい」「~することができる」などという表現で組織が仕組みを構築する際の参考情報が含まれ、ガイドとしての性格を持つ。
     ISO 14001規格は要求事項が含まれているからこそ、この要求事項に適合した仕組みとなっているかどうかの評価 (審査登録や自己宣言)に使用されることがある。
     ISO規格は最低5年に1度見直しをするルールがある。これらISO14001とISO14004は見直しの結果改訂されることになり、2004年11月15日にそれぞれ第2版(改訂版)が発行されている。
  2. ISO 14020番台は環境ラベル(EL)のガイド規格であり、消費者が商品を選択するときに環境負荷の少ない商品を選択しやすくするために、一定の基準を定めてラベルを表示する手法を扱う。
  3. ISO 14030番台は環境パフォーマンス評価(EPE)のガイド規格であり、組織の環境行動、実績を定性的、定量的パラメータを使って評価する手法を扱う。
  4. ISO 14040番台はライフサイクルアセスメント(LCA)のガイド規格であり、原料調達段階から廃棄に至る段階まで(ライフサイクル)の製品の環境負荷を分析・評価するものである。
  5. ISO 19011は、品質/環境のマネジメントシステム監査のための共通規格として2002年10月に発行されたシステム監査のガイド規格である。品質監査の規格でもあったISO 10011-1/2/3と環境監査のISO 14010/11/12が一つにまとめられ、また新たな概念も追加された。
  6. ISO 14064-1~3及びISO 14065は、温室効果ガスの定量化、削減量、妥当性確認や検証などに関する規格である。

内容 ISO14001規格は引用規格を持たない独立規格である。つまり、この規格の要求事項に従って環境マネジメントシステム(EMS)を構築する際は、他の規格に従う必要はない。しかし、前述の通りISO 14000シリーズ規格には、ISO14001の支援規格としてさまざまな規格群がある。
 例えば構築の際、EMS計画段階において、1)LCA規格を環境側面の順位付けに活用する、2)環境配慮設計規格を設計開発における環境側面の特定に活用する。実施及び運用段階において、3)環境ラベル規格や環境コミュニケーション規格を環境パフォーマンスのコミュニケーションに活用する。点検及び是正処置段階では、4)環境パフォーマンス評価規格を環境パフォーマンスの監視に活用する、5)監査規格を内部監査に活用するなど、組織の状況に応じて活用できるところは「良いとこ取り」で活用するのがよい。

 この他ISO規格にはないが、環境経営のツールとして有用なものに環境会計、環境報告書などがある。環境パフォーマンスを改善するためのツールとして、これらを組織の判断によってEMSに取り入れることも、環境経営に有効であろう。

3. ISO 14001規格の特徴

ISO 14001規格には次のような特徴がある。

  1. 環境マネジメントシステム(EMS)について規定した国際規格である。いわば環境経営の仕組みを扱ったもので、環境目的・目標など環境パフォーマンス(環境実績、達成度)のレベルや、規格が要求する仕組みの具体的内容は組織が自ら定めることになる。
  2. 法律のような強制力をもった存在ではない。EMS構築に取り組むかどうかは、組織が任意に決める位置付けである。
  3. 業種、規模、地域を問わず、世界中のどのような組織でも適用できるように作成された規格である。
  4. 審査登録のためにだけ使われることを意図した規格ではない。自己宣言に使っても良いし、規格をただ活用するだけでも良い。
  5. EMSは「PDCAサイクル」によってモデルが構成されている。計画(Plan)を立て、計画に沿って実行し(Do)、実行した結果をチェックし(Check)、その結果を反映して見直しを行い(Act)、システムを継続的に改善し、結果として環境パフォーマンスを改善することを意図している。
    ISO14001シリーズ規格 図1.2

    図1.2 ISO14001規格のマネジメントシステムモデル

  6. 組織の活動・製品・サービスが環境に与える影響の原因となるものを「環境側面」とし、中でも大きな環境影響の原因となるものを「著しい環境側面」と位置付ける。その「著しい環境側面」が与える環境影響を改善するために、そのテーマを組織の環境目的・目標に掲げて、それを達成するための実施計画を立て、進捗チェックを含めた重点管理を進めようというものである。
  7. 組織が直接管理できる環境側面に加え、組織の上流・下流にある影響を及ぼすことができる環境側面を把握することで、サプライチェーン・マネジメントを指向している。
  8. 環境法規制については、トップマネジメントが法規制などを順守する誓約(コミットメント)をし、組織が守るべき法規制などの内容を特定・利用できるようにし、法規制などを順守しているかを定期的に評価するし、マネジメントレビューにおいてその順守状況を確認する仕組み作りを求めている。システム全体で環境法規制などの順守ができる仕組みとなる。
  9. 環境リスク対応の観点では、事故・緊急事態にあらかじめ備える仕組み作りを求めている。大きな環境影響を生じる可能性のある事態をあらかじめ想定し、予防・緩和・対応の手順作りが必要となる。
  10. 前述のPDCAのCの段階で、内部監査を実施することが求められている。また、内部監査の結果を経営層に提供することや、またマネジメントレビューの際に結果をインプットすることを要求しており、内部監査は改善の材料となる重要な位置付けにある。
  11. システムの成功には、全員参加と共に、特にトップマネジメントの関与(コミットメント)が重要視されている。規格中、トップマネジメントに直接要求されるのは、「環境方針の策定」、「管理責任者の任命」、「マネジメントレビューの実施」というシステムの運用・改善に不可欠な場面である。

4. 環境マネジメントシステム活用のメリット

 ISO 14001規格に従ってEMSを構築するためには、時間も資金も人材も必要となる。
それだけの資源を投入してどういうメリットが期待できるのか、一般的な項目を以下にまとめる。

  1. 環境保全への継続的な取り組み
  2. 利害関係者の評価
  3. 従業員の動機付けと職場の活性化
  4. マネジメントリスクの回避
  5. コスト削減
  6. サプライチェーン・マネジメント
  7. システム導入による組織体質の改善

次回の改訂

 ISO 14001規格の2004年改訂では、ISO 9001規格と可能な範囲で両立性の向上が図られた。
次回の改訂は当初2012年をめどに、ISO 14001規格とISO 9001規格の改訂時期を同期化させ、内容面でも両規格の「整合化(整列化)」を図る方向で検討が開始された。

その後、2006年2月に開催されたISO/TMB(技術管理評議会)会合において、ISOで作成されるマネジメントシステム規格に関する方向性や戦略立案、また実施のために、新体制の構築の必要性が承認された。これにより新しい検討グループが設置され、活動を始める一方、ISO 9001とISO 14001の調整を行っている既存のグループは、活動を一時休止することとなった。ISO 14001の次期改訂は、早くて2015年となる見込みである。