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『3分でわかるISO入門 ~イソ子さん奮闘記~』Vol.10
『第10回(最終回):イソ子さんの旅立ち』
登場人物
■矢田イソ子さん(25):
大手アパレルでの総務職(派遣)を経てミシマテクノファクトリーに入社。ブレイク前のアイドルの追っかけが趣味。ちょっと天然キャラで早とちりの名人。
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今日のイソ子さんはなんだか変です。
笑っているような困っているような…。何かナイーブな問題でもあるのでしょうか。
気になりますね。ひとまず声をかけてみましょう。
イソ子さんイソ子さん、何かありましたか?
イソ子さん:
あ、いつもの天の声が…。
そうなんですよ、重大なことがあったんです。
実は…絢香先輩が結婚することになりまして。
それはおめでたいですね!喜ばしいことです!
では何故、イソ子さんはちょっと困っている感じなのですか?
イソ子さん:
すごくおめでたくて、私も嬉しいんですけど…。
絢香先輩からはいろいろ教えてもらっていて頼りにしてきたのですが、2か月後には退職の予定なんです。
そうなると、これからは何でも自分の力でやっていかなければなりません。そればかりか、絢香先輩が担当していた仕事のいくつかが私の分担になるから、ますます大変になるんです。
うまくやっていけるのかと思うと不安で…。
ああ、それで嬉しい気持ちと不安な気持ちが押し寄せてきていたのですね?
少し冷静に整理してみましょうか。
具体的には、どんなことが不安ですか?
イソ子さん:
何かミスをしでかしそうで…。
それなら、イソ子さんはもう対策方法を知っているはずですよ!
イソ子さん:
(メモを見直しながら)えーと、対策方法は…あった、これだ!
《手順書》をこまめにチェックすることでミスを減らすことができます!
それに、大きなミスは《報告書》で根本的な原因を解決していけます!
確かにミスに対する不安は解消しそうですね。
『第2回:思い込みでやる仕事はミスのもと!』
『第5回:謝るだけではミスは解決しないの?』
うーん…でも…ミスは無くしていけるとしても、それぞれの仕事の目的をちゃんとクリアすることはできるのかなあ…。
目的達成の方法なら、イソ子さんはとっくに知っていますよ。ほら、ダイエットを思い出して!
イソ子さん:
え、ダイエット? ダイエット、ダイエット…あ、そうか!《PDCA》だ!
『第3回:ダイエットで効果を出す!』
ダイエットと聞いて《PDCA》がスンナリと出てくるなんて…もはや条件反射ですね(笑)
では、次はこちらから質問です。
仕事を安定化させるためにはどうしたらいいでしょうか?
イソ子さん:
仕事が安定しない原因は《ムリ》《ムダ》《ムラ》だから対策は…えーとつまり…そうそう!《標準化》と《プロセス》ですね!
『第4回:継続はムダ?継続しないことがムダ?』
『第6回:ISOは個性を認めてくれないの?』
『第7回:結果良ければすべて良し?』
よくできました(笑)
イソ子さん:
どうです! 成長してるでしょ!
これまで教えてきたことはしっかりと知識になっているみたいですね。まぁ、チラチラとメモを読んでいましたけどね…(笑)
でも、それもメモをとる習慣がついた証拠です。いいですよ!
これでもうイソ子さんは、ビジネスパーソンとして物事を正しく動かしていくことができるはずですよ。
少なくとも、動かす方法をちゃんと考えていくことができるでしょう。
イソ子さん:
てへへ。それほどでもぉ…。
もしもし?イソ子さん?
まだまだその気になるのは早すぎます。言い忘れましたが、もっともっと勉強を続けることが条件ですからね。
そのことをお忘れなく!
イソ子さん:
たはは。調子に乗りすぎたらダメですよね…。天の声さんにいろいろと教えてもらったから、ここまで来られたわけですもんね。
いえいえ、それほどでもぉ(笑)
自信はキチンと持って、ガンガンと前に進んでください。
どうやらイソ子さん、今のステージはもう卒業できそうですね。次は、ここまでに覚えたことを活かしていく新しいステージが始まりますよ。
イソ子さん:
卒業かぁ。ちょうどいい機会だから話しておこうかな。
実は、密かに考えていることがあるんです。
何ですか?
聞かせてください。
イソ子さん:
実は私、内部監査員に立候補しようと考えているんです。
順当に行けば次は絢香先輩がなるはずだったわけですから、絢香先輩の欠員として後を継ぐという事情もありますけど…
何ていうか、そ-いう押しつけられるようなことではなくて…。
自主的な気持ちでやってみたいと思っているんです。
『第9回:内部監査はどうしても必要なの?』
ほぉ、イソ子さんが内部監査員ですか!
ぜひとも、その動機を聞かせてください。
イソ子さん:
会社をよくするために。自分を成長させるために。何かを変えていく自分の力を実感するために。そして、何よりも強い思いは、ウチの会社の事業を通して世の中を幸せにしていくために!
だから、これからは本気でISOを勉強しなくちゃ!
もう、「知らない」では済まされないと思うんです。…と言うか、もう私はISOを知りたくなっちゃったから!
そうですか。よかった。立派な動機を持っていることにも感心しましたよ。
ISOを深く知って、会社のために、いえ、社会のために力一杯に働いてくださいね。
…とは言え、内部監査員は立候補さえすれば誰でもなれるわけではありませんので、社内審査に通るための努力は必要ですよ。
頑張ってください!
イソ子さん:
はい。わかりました。
だからこそ、これからも私を助けてくださいね!
ISOのことをたくさん知っていきたいんです。私にISOのことを教えてください!天の声さんのことを頼りにしていますから!
いえ、とても残念なのですが…。
私の使命は終わりました。イソ子さんがISOへの一歩を踏み出すまでの助走期間のお手伝いをすることが私の役目だったんです。
だから、ここからはイソ子さんが自分で迷い、自分で模索し、自分で吸収して、自分で気づいていってください。
イソ子さん:
え? もう、天の声さんは教えてくれないんですか?
イソ子さんはもう一人で立派にやっていけますよ。何故なら、あなたにはISOのベースとなる意識が備わっていますからね。成長したイソ子さんを見させてもらって、私は安心しているんです。もはや、私から教えることは何もありません。だからもう、これでお別れです。
イソ子さん:
そんな!
もっと助けてくださいよ!
これからはISOがイソ子さんを助けてくれます。常にISOの基本に立ち返りながら、《PDCA》を回していけば、イソ子さんはどんな難題にも立ち向かっていけるし、きっと、解決することもできるはずですよ。
イソ子さん:
つまり…これからはISOが天の声さんの代わりに私と一緒に居続けてくれるということですか?
ええ、まぁ、そういうことになりますか…。
ひとつ覚えておいて欲しい重要なことがあります。それは、ISOは概念などではなくて、きわめて実用的な手法だということです。だから、これからはISOがとても現実的なレベルでイソ子さんのお仕事をガッチリと支えてくれるはずですよ。ISOは頼りがいがありますから、気を強く持ってくださいね!
さあ、もう時間です。
イソ子さん:
え、もう少しだけ!
もしもし?イソ子さん?
まだ、助走期間をウロウロしていたいのですか?
ここからISOを始めるんでしょ? だったら、スタートは早い方がいいです。いつまでも助走期間に留まっていては何も始まりませんよ。飛ばなければ助走に意味はないのですから。
イソ子さん:
でも…。
ISOの勉強を始めたいんでしょ?
イソ子さん:
始めたいです。
だったら、今すぐに始めなさい。
そして、立派な内部監査員になってくださいね。
イソ子さん:
はい。約束します!
その言葉を聞けて安心しました。
では、ここでお別れです。
イソ子さん:
…わかりました。
淋しいけれども、私は前に進みます。
さようなら。イソ子さん。
イソ子さん:
さようなら…。
イソ子は飛びます。
――翌日、イソ子さんはメモの代わりに日記をつけました。――
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【イソ子の日記より】
その夜は少し泣いてしまいましたが、翌朝は信じられないくらい空気が澄んでいました。
深呼吸しながら私は確信しました。
私は、きっと頑張れます。ISOを深く知り、実践し、人の役に立っていけると思います。
天の声さん、今までありがとうございました。
そして、ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
私はISOのことは何も知らない人間でしたが、今は「ISOの入り口」にやっと立つことができた気がします。
これから、私はISOを極めていきます。そして、約束どおりに立派な内部監査員になります。
イソ子の奮闘記が、あなたにも「ISOの入り口への道標」になりますように。
また、いつかお会いしましょうね。
その時は、お互いにISOを学び続ける身として。
その日まで、さようなら。
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〔ご愛読をありがとうございました〕