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『3分でわかるISO入門 ~イソ子さん奮闘記~』Vol.4

『第4回:継続はムダ?継続しないことがムダ?』

登場人物
■矢田イソ子さん(25)
大手アパレルでの総務職(派遣)を経てミシマテクノファクトリーに入社。ブレイク前のアイドルの追っかけが趣味。ちょっと天然キャラで早とちりの名人。

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イソ子さんは覚えたばかりの《手順書》や《PDCA》を活かして、今日も頑張っています。
とてもいいですよ! そうやって、社員各自がISOの効果を理解して働くようになれば、きっと会社全体が良くなります。
目標を立て(P)、実行し(D)、立ち止まって確認し(C)、そして改善する(A)。それを繰り返すことで会社はどんどん良くなっていくんです。

イソ子さん:
え? 今、「繰り返す」って言いました? まだ続けなければいけないっていう意味ですか?
えー!なんだか違和感があるんですけどー。 だって…、私はもう《手順書》の内容はほとんど覚えているし、今では《手順書》を確認しなくても仕事を順調にやっているんですよ!それに、《PDCA》はダイエットでバリバリ実践中だし、仕事でも応用できるようになってきたという自信があります。だから、もう大丈夫です!
ISO的に言えば、「私はとっくに改善された」と思います。だから、もうISOは卒業ではないかと…。
それでもずっと続けていかなければいけないのだとしたら、ISOってムダじゃないですか?
そもそも、ISOは確認することや考えることが多過ぎてすごくムダな感じがします。時間がかかりすぎて、むしろ業務のジャマになっている感じ。だって、そんなことを考えている時間に少しでも働けばいいじゃないですか。ISOってムダです。私にはムリかも…。

うぐぐ。『ISOムダ論』が出ちゃいましたか…。今日のイソ子さんはすごい迫力だ。

ここはひとつ、気を取り直して。(オホン)

イソ子さん、それは違いますよ。
ISOで改善を継続する手間よりも、継続的な改善をしないことの方が実はムダは多いんです。そして結果的には、改善を継続していない方が手間がかかることが多いんです。
何故なら、会社にはイソ子さんが直面したり自覚している問題だけでなく、「隠れている問題」も多かったりする上に、「新しい問題」が次から次へと出てくるからなんですよ。
今日は、そのことをお話しますね。

その前に…。
ねぇイソ子さん、最近、お仕事で大変だったことはありませんでしたか?

イソ子さん:
あります、あります! 聞いてくださいよ!
先週のことなんですけど、定期健康診断のために全社員のスケジュール調整をしなければならなくて。ウチの会社は、たった1日で全社員が受信するので、社員さんから集めた受診可能時間を調整するわけなんですけど、その仕事を私一人でやったんですよ。でも、私はまだ入社から日が浅いので、社員さんの名前を把握していなくてちょっと大変でした。田中幸一さんと田中実さんを取り違えてしまったりして、何度も調整し直すハメになって…。でも、これが社員さんの名前を覚えるいい機会だからと頑張っちゃいました。三日連続で夜の9時まで残業しちゃって。「もうムリ!」ってくらい仕事しました!
それからそれから…

まだあるんだ…。

イソ子さん:
昨日は磯貝課長から「清掃業者との契約が切れるので、新しい業者さんの情報を調べて欲しい」と言われて、絢香先輩と私でどちらが多く調べられるか競争したんですよ。私、勝っちゃいました〜。絢香先輩が調べた業者さんは全部私が調べた中に入っていたし。絢香先輩には悪いけど、私に挑戦するなんでムダだわ〜。でも、絢香先輩に負けたくなくていつも以上に集中しちゃったので、すごく疲れました~。

うーん、いろいろと問題があるなぁ。でもその前に、イソ子さんは本当に「今どきの若手社員」なんですね。さっきから会話の中に《ムリ》が多いし、先輩の絢香さんの挑戦を《ムダ》だと言い切っちゃう大胆さも…。なんだか、今日のイソ子さんは感情に《ムラ》があるなぁ…。

え?《ムリ》《ムダ》《ムラ》…?
それだ!
《ムリ》《ムダ》《ムラ》のことを説明するいい機会ですね。

えーと…。イソ子さん、どちらのお仕事もご苦労様でした。でも、そのお仕事はどちらもちょっと問題がありますね。

まず、先週やった定期健康診断のスケジュール調整なんですけど、それは明らかにイソ子さんのキャパをオーバーしていたんです。だから、遅くまで残業することになってしまったわけですよ。でも、イソ子さんには「社員の名前を早く覚えるために」という別の目的があって、それはとてもいいことだと思うんですけど、結果的には効率的ではなかったわけですね。 つまり、その業務には《ムリ》があったということなんです。

そして、昨日は絢香さんと一緒に新しい清掃業者を調べたのでしたよね。でも、それって絢香さんかイソ子さんのどちらか一人がやれば済んだことではなかったですか? 現に、絢香さんが調べた業者さんはイソ子さんが調べたものと重複しているわけだし、二人で同じことをやるのはとても《ムダ》ですよね。

イソ子さん:
言われてみれば、確かに…。

イソ子さんだけでなく、実は会社の中にはそのように「気づかないうちにやってしまっている《ムリ》や《ムダ》」がとても多いんですよ。
では、ここで《ムリ》と《ムダ》がどんなものなのかを説明しましょう。

《ムリ》とは、「〇〇し過ぎる」ということです。つまり、目的に比べて手段が小さい状態です。
先ほどのケースで言えば、「全社員との調整」という目的に比べて、入社から日が浅いイソ子さんの力が小さかったため、結果的に負担が大きくなり過ぎたのだと言えます。

イソ子さん:
私の能力が足りないという意味ですか?

いいえ、イソ子さんの能力の問題ではありませんよ。その業務に対して「今のイソ子さん」は最適な人選ではなかったというだけのことです。「半年後のイソ子さん」ならば、きっと効率的にやってのけたはずですから。現時点では、その業務を絢香さんが担当していたらもう少し時間を短縮していたでしょうし、ミスも軽減できたと思います。
この件だけでなく、担当者が就業時間内に仕事を処理できずに残業が増えている状況があったとしたら、《ムリ》が発生している可能性があるので要注意です。

イソ子さん:
残業が増えているのは《ムリ》な状況なのかぁ…。気をつけないといけませんね。

そして、《ムダ》とは価値を生みださない作業のことを言います。つまり、目的に比べて手段が大きくなってしまっている状態です。《ムリ》とは逆ですね。
会社には多くの《ムダ》がありますよ。例えば、仕事の進捗を報告する内部資料を作る時に、必要以上に手間をかけすぎて、余分な添付資料が多かったり、写真や画像に凝り過ぎていたり、意味なくアニメーションをつけたりするとか。それは、明らかに「やりすぎ」ですよね。

イソ子さん:
あはは、ありがちですよね〜(笑) 意味ないアニメーション! そもそも、ムダな会議が多いんですよね、会社って。

あはは(冷や汗)、言いますねぇイソ子さんは…。
でも実際、様々な《ムダ》が会社にはたくさんあって、《ムダ》な状況のことを「生産性が悪い」と言います。
《ムリ》や《ムダ》が多いと、その分、会社の仕事はスムーズにいかなくなるし、社員のモチベーションを大幅に下げてしまうんですよ。

そして、それとは別に《ムリ》と《ムダ》がバラツキながら混在している状態というのがあって、これを《ムラ》と言います。
つまり、目的に比べて手段が小さかったり大きかったりする状態のことです。
《ムラ》があると、1日の中に「バタバタと忙しくなる時間帯」と「何もすることがなくなってポカンと待ちに入ってしまう時間帯」ができてしまったりします。忙しい時間帯は《ムリ》があるので仕事の質よりもスピードが優先されますし、暇な時間帯は有り余った時間に合わせてノンビリと作業するので時間を損することになってしまいます。どちらも良くない状況です。それが交互にあるのだとしたら、会社の仕事の質が下がるし、社員もやる気を失ってしまいます。

イソ子さん:
わかります〜。イラッとしちゃいますよね。

《ムリ》《ムダ》《ムラ》は《あってはならない状況》なのです。そして、これを改善する極意があります。
それがISOです。

イソ子さん:
そろそろ来ると思ってましたよ、ISO!

(笑) まずは社内の《ムリ》《ムダ》《ムラ》を徹底的に洗い出します。社員が一丸となって客観的に仕事を見つめ直すこと。その際には、チェックすべきポイントを定めることと、関係者との密接なコミュニケーションをとることが有効です。
そして、見つかった問題点を整理し、深刻さや重大さで優先順位をつけて、ひとつずつ問題点をつぶしていきます。そう、改善ですね。一度にすべての問題点を解決しようとすると、それ自体が《ムリ》になってしまい前に進めなくなる危険性がありますので、ひとつずつ集中することがポイントです。
この手順で《ムリ》《ムダ》《ムラ》をなくしていくことで、業務は飛躍的にスムーズになるんです。
それがISOの《ムリ・ムダ・ムラ改善》の手法です。

イソ子さん:
なるほど、「ISOで改善を継続する手間はムダではない」とは、そーいうことだったんですね!

その通りです!
会社は多くの社員で構成される組織なのであって、言わば「生き物」みたいなものですから、生き物が成長しながら活動しているだけで自然に《ムリ》《ムダ》《ムラ》は発生するものなんです。だからこそ、新しく生まれてくる《ムリ》《ムダ》《ムラ》を常に探し出して手を打つことが大事です。つまり、「継続的な改善」が必要なんですよ。 イソ子さん、理解できましたか?

イソ子さん:
はい。よくわかりました。
そうか、会社は「生き物」なんですね。だとしたら、「改善を継続させる必要はない」という考えは、変化することのない「人形」の発想だったような気がします。それでは成長はありませんよね。
つまり、《ムリ》《ムダ》《ムラ》は会社や社員が成長していることを示すバロメーターみたいなものなのかもしれませんね。
よく考えると、それって人生と同じじゃないですか。だって、「できること」が増えるたびに《ムリ》《ムダ》《ムラ》が出てくるし、それを解決したらもっと成長できるわけですもんね。

イソ子さん、いいことを言うなぁ。
どうやら、改善を継続するというISOの重要性を理解してもらえたようですね。

イソ子さん:
はい!さっそく実践したいと思います。
《ムリ》《ムダ》《ムラ》を排除します!

■ムリな背伸びをしない!
■ムダに余計なことはしない!
■ネイルに色ムラをつくらない!

もしもし?イソ子さん?
最後だけちょっと違ってない?

〔次回に続く〕

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【イソ子のつぶやきメモ(4)】
今日は「ISOがムダだ」なんて言ってちょっとムキになってしまいました。反省。
言葉の中に《ムリ》とか《ムダ》を使いすぎていることにも気づいたので改善したいと思います。
では、今日も私が気づいたことをメモっておきます。

・会社の業務には《ムリ》《ムダ》《ムラ》があって、業務の妨げになっている
・個人や会社が成長し続けているかぎり、《ムリ》《ムダ》《ムラ》は発生し続けるので継続的に対策する必要がある
・ひとつずつ対応していけば《ムリ》《ムダ》《ムラ》はなくしていくことができる

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【(ちょっと中級者向け)ISO用語辞典】
■組織内の仕事において、業務の工程(プロセス)を明確にし、複数の業務の工程の関連性を明確化することで、一連の工程を仕組みとして運営管理することを「プロセスアプローチ」といいます。 プロセスアプローチを効果的に実施する上で《PDCA》はとても有効です。

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次号:2019年6月12日(水)配信 『第5回:謝るだけではミスは解決しないの?』

お楽しみに!