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『3分でわかるISO入門 ~イソ子さん奮闘記~』Vol.5

『第5回:謝るだけではミスは解決しないの?』

登場人物
■矢田イソ子さん(25)
大手アパレルでの総務職(派遣)を経てミシマテクノファクトリーに入社。ブレイク前のアイドルの追っかけが趣味。ちょっと天然キャラで早とちりの名人。

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《手順書》も《PDCA》も覚えたイソ子さんは、それを忠実に守って張り切っている…はず…なのですが…あれれ? 今日のイソ子さんは何やら落ち着かない様子です。深刻そうな顔をしているし。
もしかして何かありましたか?

イソ子さん:
それが大変なんですよ。営業部の渡辺さんっていう社員がいて、彼女も私と同じ中途採用なんですけど、同じ歳だってこともあって仲がいいんです。私はワタナベって呼んでいるんですけど。
で、ワタナベがやらかしちゃったんですよー。
ほら有名な芝富士電機って会社がありますよね。ウチのお客様は一般消費者さんではなくてメーカーさんになるんですけど、芝富士電機さんはウチのお得意様なんです。で、昨日、その芝富士電機さんに“ある部品”を納品したらしいんですけど、ワタナベったら納品書を入れ間違えてしまったんですって。足立製作所さんに届けるはずだった納品書を芝富士電機さんに送ってしまったっていうんです…。
ウチの営業部の片桐部長が芝富士電機さんにお詫びして、どうにか許してもらえたらしいんですけど、ワタナベは落ち込んでしまっているんですよ。
私はどうしたらいいんだろう?

なるほど。
まず、ワタナベさんのことはうまく慰めてあげてくださいね。それは同僚の役目ですから。
問題は、今後の対応なのですが…。
イソ子さんなら、どうしたらいいと思いますか?

イソ子さん:
悪かったのは「ワタナベの不注意」だから、ワタナベが今後は気をつけるということでいいんじゃないでしょうか。ワタナベはすごく反省しているから、きっともうミスはしなくなりますよ。私だって失敗して反省するたびにミスが減っているんですから、間違いありません。
あ、そうだ! いっそのこと、芝富士電機の担当者さんにワタナベが直接に謝りに行って、お説教でもされればもっと深く反省すると思いませんか! それだけ反省すれば、さすがにもう失敗はしなくなりますよね! 芝富士電機さんだってワタナベが謝れば納得して許してくれるでしょうし、これで解決ですね!素晴らしい!(自画自賛)

うーん、なんだか子供同士の喧嘩を解決するみたいな話ですねぇ…。
今イソ子さんが言ったことは「一時しのぎの対処」に過ぎません。それでは本当の解決にはならず、また同じ問題が起きる可能性があるんですよ。
えーと、こんな例がわかりやすいかな…。

例えば、パイプに水漏れがあったとして、「水が漏れている穴をふさぐ」というのは《応急処置》としては有効であっても、《再発防止》にはなりません。なぜなら、また別の箇所に穴があいてしまったら水漏れは再発してしまうからです。
まずは、本当の原因を突き詰めるべきなんです。水漏れは直接的には「パイプに穴があいている」ということが原因であるかもしれませんが、もっと突き詰めていけば、「パイプ自体が老朽化していた」とか「一定量の排水を越えると穴があいてしまう素材のパイプだった」などの原因が見つかるかもしれませんよね。
そして、それが原因であるならば、もっと新しいパイプや強いパイプに取り換えることで、根本的な原因を取り除くことができるわけです。そうやって本質的な手を打てば、一時的にはコストや手間がかかりますけど、再発を防ぐことができますよね。
再発を防ぐために原因を明らかにして対策することをISOでは《是正処置》といいます。
会社で《是正処置》が取りざたされる時というのは、たいがいは問題が発生したとか、お客様からのクレームが届いたときになるのですが、今回のワタナベさんの件もまさにそれにあたりますね。
そして、《是正処置》の第一歩目は、報告書を書くことです。

イソ子さん:
えー! 報告書を書かなければいけないんですか! それこそ、子供みたいじゃないですか。「あなたが悪いんだから反省文を書きなさい」的な…。なんだかバカにされているみたいで嫌だなぁ。

いやいや、《報告書》は《反省文》とは違うんですよ。《反省文》は謝罪が目的ですが、《報告書》は「同じ問題を起こさないための重要な記録」なんです。
イソ子さんだったら、どんなことを《報告書》に書きますか?

イソ子さん:
えーと、そうだなぁ、私がワタナベと同じ失敗をしてしまったとしたら…。
《報告書》は上司に提出するんですよねぇ? 先方の芝富士電機さんだけでなく、上司や同僚の人達も怒ったり呆れたりしているはずだから…。心からの謝罪と、「今後はこうしていきます」という心からの約束を誠心誠意で書くのがいいんじゃないでしょうか。えーと、つまり…
「まだ仕事に不慣れなところもありましたが、これからは心を入れ替えて納品書を何度も確認します」というのはどうですか!
改善策も入っているし、かなりいいんじゃないでしょうか!(またも自画自賛)

うーん、その答えは感心しませんね。だって、それでは「許してもらいたいがための言い訳」と「根拠のない精神論的対処」のレベルですから。それこそ《子供の反省文》になってしまいますよ。 問題が発生したときに、最も悪い対処はさっきも話した「一時しのぎの対処」ですが、誰かの怒りを収めるための《報告書》では、まさに「一時しのぎ」です。そして、仮にその《報告書》で相手が納得してくれたりしたら、その場が収められたことで満足してしまって、根本的な問題は解決していないにもかかわらず、「全てが完了した」と勘違いしてしまうことがとても危険なのです。

そもそも、《報告書》は問題が起きたときに、その流れを記録に残すことで同じようなトラブルが発生することを防止することが目的です。だから原因を明確に示し、それに紐づいた対策を記すべきなのです。そして、重要なのは、その対策が適正かどうかということです。
従って、《報告書》の内容はこんな感じになります。

・問題の根本的な原因は何なのか
・再発防止のためにどんな対策をするのか
・その対策を実施した結果はどうだったか
・その対策には効果があるのか

ほら、計画した対策を実施して効果を評価するところは《PDCA》と同じですよね。
こういった内容でキチンと記録を続けていけば再発は防止できますし、その記録は会社にとって貴重な財産にもなるんですよ。
だから、この《報告書》は全社的に共有されるべきだし、全社員がその問題を意識して対策することで一層の効果があがりますよね。

イソ子さん:
あ、そうか。《報告書》は全社で共有するものなんですね。上司だけに見せるものだと思い込んでいました…。

それから大事なことがもう一点。《真の原因》を見つける時に注意しなければならないことがあるんです。
問題の原因が、例えば「担当者のミス」や「担当者の理解不足」「担当者への教育・訓練不足」といった《担当者の問題》だと結論づけられたとしたならば、それは疑うべきです。
なぜなら、「特定の誰かが原因である」としてしまうと、その人のやり方を改善することで一応の解決や対策をすることができるかもしれませんが、いずれ何らかの形で再発する可能性が消えていないからです。だから、今回の一件ならば、「ワタナベさんの不注意」などを原因にすることは正しくないということです。その意味でも、精神論的な解決というのはあり得ません。
《真の原因》は、仕組みの中に探すべきです。仕組みとは手順や方法ですね。仕組みの中に不備や弱点を見つけ、そこを改善することで再発防止につなげるんです。

イソ子さん:
あ、わかった! つまり、さっきの水漏れの例で言えば、パイプ自体が原因ではなくて、パイプの選び方や管理方法といった仕組みの中に原因があるということですね!

お、イソ子さん、さえてる!
では最後に、問題を起こしてしまって《報告書》をまとめる上での心得についてお話しましょう。
問題を起こしてしまったとき、その当事者は慌てふためいてパニックになってしまうことが多いと思います。感情的になってしまい冷静に物事を考えられなくなってしまうんですね。

イソ子さん:
わかります!パニックになって頭が真っ白になってしまいます!

しかし、そんな時こそ冷静にならなければいけません。「何が悪かったのか」という《真の原因》をつきとめることが重要だからです。
そのために大切なことは、「なぜ」を5回繰り返すことです。
最初に出た結論で満足せず、さらに「なぜ」と自分に問いかけて原因を探す。それを5回は繰り返す。それでやっと「根っこにある真の原因」に突き当たると言われているんですよ。 「なぜ」「なぜ」「なぜ」「なぜ」「なぜ」と5回です!

 


イソ子さん:
それ、ワタナベにも教えてあげます!
「なぜ」を5回かぁ。それは確かに大事なことですね。
よーし、私は「なぜ」を8回でいきます!
いや、10回の方がいいかな。いっそのこと、20回ぐらいいっとくかぁ!
なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ…

もしもし?イソ子さん?
回数が多ければいいってもんじゃないからね…。

〔次回に続く〕

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【イソ子のつぶやきメモ(5)】
今日も私が気づいたことをメモっておきます。

・問題が起きたら、それが二度と起きないための対策をすべし
・そのためには処置の結果の記録として、《報告書》をまとめること
・《真の原因》をつきとめ、その原因を取り除く方法を考えること
・冷静になって、「なぜ」を5回繰り返して考えることで《真の原因》が見つかる

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【(ちょっと中級者向け)ISO用語辞典】
■ISOでは、例えば社内ルールや、何らかの規格や法規制、またはお客さまからの要求などにおける必要とされる基準を「要求事項」といいます。
■そして、この「要求事項」が合致していなかったり、満たしていないことを「不適合」といい、その場合の対処のひとつとして求められるものが「報告書」です。
■不適合が発生したときに、原因を特定し同じことが二度と起こらないように原因を取り除く処置のことを「是正処置」といいます。

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次号:2019年6月26日(水)配信 『第6回:ISOは個性を認めてくれないの?』

お楽しみに!