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『3分でわかるISO入門 ~イソ子さん奮闘記~』Vol.8

『第8回:お客様は神様なの?』

登場人物
■矢田イソ子さん(25)
大手アパレルでの総務職(派遣)を経てミシマテクノファクトリーに入社。ブレイク前のアイドルの追っかけが趣味。ちょっと天然キャラで早とちりの名人。

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もう会社にもすっかり慣れたイソ子さんは、今日も仕事に打ち込んでいます。持ち前の明るさで他の社員さん達の気分もアゲてしまうのがイソ子さんのいいところ…と思ったら、あれ?なんだか表情がさえません。
これは心配ですね。ちょっとちょっと、イソ子さん?

イソ子さん:
あのぉ、実は…、さっき総合受付の電話に取引先のメーカーの方から電話があって…。その方がちょっとキレ気味と言うか…。
ウチの営業部の田宮さんが担当者だから電話を回してくれということだったんですけど、田宮さんが出張中で不在だと伝えたら、苦情が私に向いてしまったんです。
なんでも、商品を買ったお客様…つまりエンドユーザーさんから「スマホケースの表面に丸みが足りないから握りにくい」というクレームが入ったらしいんですよ。だから、ミシマテクノファクトリーは設計を見直して欲しいって。
スマホケースはウチの主力製品のひとつですからね。

なるほど、それは大切な電話でしたね。

イソ子さん:
そうですか~? 私、な〜んか納得できないんですよぉ。
だって、手の大きさなんか人によってバラバラだし、握りやすいと感じる基準も人によって違うはずだから、たった一人のお客さんの文句につきあってなんかいられませんよね。それに、そもそもスマホケースの形はそのメーカーさんも納得の上で納品したものなのだから、今さらそんなことを言うのもどうなんだか…。

でも、使いづらいと感じたお客様がいたということは事実ですから、これは重大なことですよ。

イソ子さん:
え〜!! でもぉ、それを私に言われても困りますよぉ〜!
だって私は、エンドユーザーさんに直接かかわっている立場ではないし、電話をかけてきたメーカーの担当者さんとも面識がないんですよ。それなのに、「申し訳ありません」なんてペコペコさせられて…。最終的にはウチの営業部に電話を回しましたけど、ホント大変だったわ〜。あの後、営業部はもっと大変だったんじゃないかな…。

まぁまぁ!落ち着いてください、イソ子さん。大変だったことはよくわかりましたよ。ご苦労様でした。
でも、今回のことは「大変なだけ」ではなくて、とても重要なことなのです。
いい機会ですので、今日はその話をさせていただきますね。

ところでイソ子さんは、会社が存在する目的は何だと思いますか?

イソ子さん:
それは…えーと…社員がお給料をもらって生活するため…ですかね。それから、取引先に製品を納品することも目的かな。

あはは、最初に「社員の生活」を挙げましたね。もちろん、それも大事なことです。そして、イソ子さんの言う「取引先に製品を納品すること」は、会社の目的としてはほんの一部に過ぎません。
会社が活動している目的を突き詰めれば、それは「お客様を満足させるため」なのです。そのために会社は存在し、活動しています。社員一人ひとりがお客様のために仕事をしているのです。
そもそも、お客様が存在しなかったら会社は成り立ちません。なぜなら、お客様からいただく費用が社員のお給料や会社が継続するためのコストなどにあてられるからです。だから、お客様は「会社の財産」であり、お客様があってこそ会社が存在できるのです。
では、ミシマテクノファクトリーにとってのお客様とは誰のことを指すと思いますか?

イソ子さん;
もちろん取引先の会社さんですよね。ウチの取引先はメーカーさんがメインですから。

それは半分正解です。
なぜ半分だけかと言えば…、会社にとってのお客様とは、会社が提供する製品やサービスに関係する全ての人のことを指すからです。従って、売り買いをするなどの「金銭のやり取り」が直接発生する相手だけでは正解ではありません。つまり、ミシマテクノファクトリーにとっては、取引先のメーカーさんだけでなく、その製品を購入するエンドユーザーさんもお客様になるわけです。
だって考えてもみてください。エンドユーザーさんが商品を買ってくれなければ事業は成り立たず、メーカーさんとミシマテクノファクトリーの取り引き関係自体が終わってしまうことになるわけです。そう考えるとエンドユーザーさんは大事なお客様だということがわかるはずです。
さっきも言いましたが、お客様は「会社の財産」ですから、その財産を失ってしまったら大変なことになってしまいます。もしも、一度でも「顧客離れ」を起こしてしまうと、失った信用を取り戻すために会社は膨大な時間や労力を使うことになるんですよ。

イソ子さん;
あぁ、わかります!確かに、お客様は簡単に離れていってしまいますよね。私も使い続けていた化粧品ブランドを変えたことがあります。ほら、某ブランドで不祥事があったでしょ。あれに嫌気がさして。

ですです!
お客様はメーカーの動向にもとても敏感ですから、不祥事は命取りになりかねません。それにお客様は移り気ですから、少しでも良いと思える製品やサービスの方に走ってしまうし、お客様のニーズや満足レベル自体が社会情勢に合わせて刻々と変化し続けているので、それを追い続けることは容易ではありません。でも、会社はお客様のために全力を尽くすべきなんです。

イソ子さん:
まさに、『お客様は神様』なんですね。
昔、それをキャッチフレーズにしていた歌手がいたっておばあちゃんから聞いたことがあります。

そんな古い「昭和のフレーズ」をよく知っていましたね(笑)
お客様に過剰に媚びるという意味でなく、お客様の満足度のために尽くすという意味では確かに『お客様は神様』なのです。
そして、そこで重要になるのが「お客様の声」なんですよ!
会社はお客様の「気持ち」や「要求」を知るために、「お客様の声」に耳を傾けることが重要です。
今日イソ子さんが受けた電話が、まさに「お客様の声」だったんですよ。

イソ子さん:
え~!あれは単に「取引先の担当者さんからの苦情の声」だったのでは…?

その担当者さんが感情的になっていたからイソ子さんにとっては「厳しい苦情」という印象が残ってしまったのかもしれませんが、その方はエンドユーザーさんから届いた声を伝えてくれたわけですから、立派に「お客様の声」ですよ。その方が「お客様の声」に一生懸命に向かい合おうとしているからこそ真剣に電話をしてきてくれたのだと思います。だから、それは「ただの苦情」とは違いますよね。
それにね、お客様からの苦情こそが「貴重な情報」だったりするんです。なぜなら、その言葉の中に「現状の問題点」や「今後の対策」「お客様のニーズ」といったヒントが含まれているからです。
だから、会社は「お客様の声」を積極的に受け取っていく努力をすべきですし、受けとった「お客様の声」を最大限に活かしながら改善を繰り返す努力もしなければいけません。その努力は、すべてお客様の満足度を高めるためなのです。
もう少し具体的に言えば、お客様の声を受け止め、社内に伝えて共有し、それを製品やサービスの質に反映させるということです。それを《フィードバック》と言います。

イソ子さん:
《フィードバック》かぁ…。ところで、「お客様の声」を受け取るというのは、さっきみたいな電話のことですか?

ええ、それもあります。でも、お客様からの声を集める手段は他にもたくさんありますよ。
接客しながら直接聞くというのもあるし、アンケートをとったり、製品のモニターになっていただいて意見や感想を聞くとか、座談会を開くなんていうのもありますよ。
他にも、商品のパッケージの裏にはコールセンターの連絡先が記載されていて電話やメールの窓口が開かれていますし、企業のホームページには問い合わせフォームがありますよね。スーパーマーケットに設置されている「ご意見箱」のような超アナログ手法もあれば、最近ではソーシャルメディアを利用してお客様の声を集めるケースも増えています。このように、多くの会社がコストをかけてまでも様々な手段を駆使してお客様の声を集めているのです。

イソ子さん:
お客様が言い放題だとクレームばかりになりませんか?「モンスタークレーマー」なんていう言葉もあるくらいですから…。

お客様の声というと、クレームを真っ先に思い出してしまうかもしれませんが、実際にはもっと多岐にわたっているんですよ。製品やサービスに対する感想や、「ここが使いにくい」とか「ここが良かった」という具体的な指摘もあります。時には、「こうしたらいい」というアイデアやご意見をいただくこともあるし、感謝や激励の声だってあるんですよ。
お客様からいただいたご指摘やアイデアは製品やサービスの改善に直接役に立つことが多いし、自分たちでは気づかなかった問題点を教えてくれるのです。それに、お客様から喜びの声をいただけると、とても嬉しいもので、「もっと良いモノやサービスを作って提供しよう!」と頑張ることが出来ます。
ほらね、《フィードバック》によって品質が向上するというわけです。
そして、《フィードバック》には社員全員が向かい合っていくべきです。お客様との直接の窓口や担当者ではなくても、お客様のことを真摯に考えて仕事をする姿勢が大事です。
その発想こそが『お客様は神様です』というフレーズに込められているんですよ。

イソ子さん:
どういうことですか?

『お客様は神様です』というフレーズは昭和の大歌手・三波春夫さんのものなのですが、このフレーズに関して三波さんは生前このようにおっしゃっていたそうです。
「私は、唄う時にあたかも神前で祈るときのように雑念を払って、心をまっさらにします。そうしなければ完璧な芸をお見せすることはできません。そのために、お客様を神様と見立てて歌を唄うのです。また、演者にとってお客様を歓ばせるということは絶対条件です。だからお客様は絶対者、神様なのです」

イソ子さん:
お客様を歓ばせることは絶対条件かぁ…。グッときますね。

イソ子さんも、その心構えでお客様と向かい合って仕事をしてくださいね!

イソ子さん:
はい! これからは、「お客様の声」にシッカリと向かい合っていきたいと思います!
それが例えクレームだとしても…。

その気になってくれたのはいいのですけど、あいかわらず、一言多いですね…

イソ子さん:
それに、これからはいろいろなメーカーやブランドに私からの「お客様の声」を届けていきたいと思います。私の声を活かしてもらって、サービスを向上させてもらうために!
よーし言うぞぉ! 私だって「お客様」だから「神様」だし!
えーと、前に使ってた化粧品メーカーと、あの食品メーカーと、この前壊れた家電のメーカーと…
アレも言ってやる!コレも言ってやるー!

もしもし?イソ子さん?
ただのモンスタークレーマーになりかけていませんか…? 顔怖いし…。

〔次回に続く〕

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【イソ子のつぶやきメモ(8)】
それにしても、メーカーさんからの電話はきびしかったです…。 忘れないうちに今日もメモメモ!

・会社はお客様の満足のために存在する。
・お客様を満足させることは絶対条件!
・「お客様の声」をフィードバックすることでお客様の満足は向上させられる。
・「お客様の声」には一部の社員だけでなく全社で向かい合うこと!

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【(ちょっと中級者向け)ISO用語辞典】
お客様に満足してもらうことを「顧客満足」と言います。
また、会社が「顧客満足」の向上を目指す考え方を「顧客重視」と言います。

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次号:2019年8月7日(水)配信 『第9回:審査はどうしても必要なの?』

お楽しみに!