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『3分でわかるISO入門 ~イソ子さん奮闘記~』Vol.9

『第9回:内部監査はどうしても必要なの?』

登場人物
■矢田イソ子さん(25)
大手アパレルでの総務職(派遣)を経てミシマテクノファクトリーに入社。ブレイク前のアイドルの追っかけが趣味。ちょっと天然キャラで早とちりの名人。

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なんだか最近のミシマテクノファクトリーは、ちょっとピリピリしたムードが漂っているような気がします。そんなピリピリムードをよそに、今日のイソ子さんはいつも以上に忙しそうですね。
あれ? そう言えば、今週に入ってから管理部のメンバーは部屋に閉じこもっているような気がするのですが。
何かありましたか?

イソ子さん:
なんだかウチの部はバタバタしてるんです。いや、バタバタしているのは私だけだな…。むしろ、部内は静まり返っているんですよ。なにしろ、ジッと机で資料とにらめっこしてるんですから。
磯貝課長は「全部の部署を回ってインタビューしなければならない」って言って何かの準備に追われているし、絢香先輩は「来週インタビューされるから」って緊張気味に手順書を再確認しているし。絢香先輩と一緒にインタビューされるっていう小滝課長代理もピリピリしている感じです。
それで、絢香先輩が担当している業務が私に回ってきているんです。

ほぉ、絢香さんの担当業務をイソ子さんが! 問題なく対応できていますか?

イソ子さん:
もちろんです!
ウチの部の仕事は、どれも《標準化》されていますからね!

さすが(笑)!

イソ子さん:
絢香先輩があまりにも緊張してるっぽいので、「インタビューされるだなんてアイドルみたいでステキ!」って言ってみたら、「内部監査なのよ、黙ってて!」って軽くキレられちゃったんです。なによ、緊張をほぐしてあげたかったのに!
ところで何ですか、《内部監査》って?

おー、ついに《内部監査》にたどり着きましたね、イソ子さん!
それでは説明いたしましょう。

《内部監査》を簡単に言えば、ISO の決まりごとや会社の決まりごとがキチンと実行されているかどうかを社内の人間が行なうチェックのことです。
《内部監査員》に選ばれた複数の社員が、客観的な視点で企業の事業の進め方などについてチェックするんです。

イソ子さん:
つまり、その《内部監査》をウチの管理部が担当しているということなんですね。

ええ、ミシマテクノファクトリーでは、管理部が主管部署になって《内部監査》を実施していますね。でも、会社によっては《内部監査》だけを専門的に行う部門を設置しているところもあれば、他の仕事をしている社員が《内部監査》を兼務で行っているところもあります。
《内部監査担当者》は会社で決めた時期に、各々の部署のリーダーや担当者と面談して、業務の進捗状況をチェックするのです。

チェックの内容はすごく大雑把に言えば、次の3つ。
■ルールはあるか?
■ルールを守っているか?
■ルールは役立っているか?

イソ子さん:
えー! そんな簡単なことなんですか!? 私に答えさせてください!
「ルールはある!」「ルールは守っている!」「ルールはほぼ役に立っている!」
はい、おしまい! 《内部監査》なんてチョロいじゃないですかぁ!
絢香先輩は、そんな簡単なことに焦っているのね…。

いや…イソ子さん、そうじゃなくて…。
それでは、もう少しだけ具体的に説明しましょう。各々の部署の業務についてチェックされるのはこんな項目についてです。
■手順は決まっているか?
■それは文書化されて管理されているか?
■担当者は手順を理解しているか?
■作業は手順書に従っているか?
■手順は有効か?

これは「はい・いいえ」で答えるわけではなく、実際に《手順書》を確認したり、《手順書》の内容を説明してもらったりするのです。そして、項目ごとに「うまくいっている・うまくいっていない」という結果を出します。合格と不合格を判断するわけですね。
この面談を「インタビュー」と呼ぶことがあります。だから、絢香さんはマスコミの取材を受けるわけではないんです(笑)。
わかりましたか?

イソ子さん:
絢香先輩がスターになったわけではないってことは理解しましたけど(←おいおい、そこかよ!)
でもつまり、《内部監査》というのは社員が社員を監査するということなんですよねぇ…。
まずは、そのことに驚きです。それで監査は成立するんですか?
だって、「内部監査担当の磯貝課長」が「現場担当者の絢香先輩」にインタビューして仕事をチェックしたとしても、 磯貝課長にとって絢香先輩は直接の部下だから仕事の仕方はとっくに知っているわけだし、お互い知り合いの社員同士がインタビューしたりされたりするのって、なんだか茶番劇っぽくないですかぁ?
そもそも、磯貝課長と真顔で向かい合ってインタビューとか、私ならムリ…笑っちゃいそうで…(ボソッ)。

もしもし?イソ子さん?
最後の一言は余計だからね…。

《内部監査》はイソ子さんが思うような茶番劇では決してありません。
客観性と公平性を確保するために、監査員は自分がいつも関わっている業務をチェックしてはいけないルールになっているのです。だから、磯貝課長が管理部の監査をすることはできなくて、絢香さんは別の部署から選ばれた《内部監査員》と面談することになります。そうやって、客観的な見方を忘れたり、「なれあい」になったりしないような工夫がなされているのですよ。
だから、「なれあい」どころか、《内部監査》は社員にとってはむしろ緊張する場だと言えます。

イソ子さん:
うん、確かに!絢香先輩は今から緊張して顔が青ざめていますから!
でも、社員同士なのに緊張するというのが、私にはちょっと違和感があります。だって、なんだかチェックする方が偉くて、される方がオドオドしているみたいで。直接の上司でも先輩でもないのに「上から目線」でチェックされるなんて、なんか嫌な感じ。
ほら、高校生だった頃に校門前で生活指導の先生からスカートの丈を調べられたり、髪の毛を染めていないかとか、ケータイを持ってきていないかとか調べられるあの感じに近くないですか?
同じ会社の社員が生活指導の先生みたいになるなんて嫌だなぁ。

うーん、完全には否定できない…。
実際、監査される社員と《内部監査員》の間にはピリピリとした空気が流れることもあるみたいです。普段は仲がいいのに監査の時期になるとちょっと恐れてしまうと言うのか、敬遠してしまったりすることもあるという話は聞いたことがあります。
でも、《内部監査員》がちょっと怖く見えてしまうのは、それだけ真剣にやっているという証拠です。第三者としてふるまわなければいけないという大変な役割を果たすわけですし、チェックに見落としが無いようにと必死になって集中しているんです。《内部監査員》が真剣に向かい合ってくれるからこそ、監査される側も緊張するんです。お互いがそういう姿勢で臨んでこそ《内部監査》はうまくいくんですよ。

イソ子さん:
はぁ、そういうものですか…。

《内部監査員》は必要な教育訓練を受けて、ISOの重要性をキチンと認識し、社内の目標や課題などを理解した上で真剣に臨んできます。彼らは、自分の所属部署以外のこともちゃんと調べているんですよ。
そのために、リーダーの磯貝課長を中心に早くから《内部監査員》のチームをつくって、事前準備を綿密に行うんです。それはかなり時間もかかるし根気のいることなのですが、日常の業務をやりながら時間をつくって準備をしたり、勉強している姿には頭が下がります。
社員はそのことを知ってあげるべきだと思いますよ。

イソ子さん:
知りませんでした。そこまで頑張ってくれているのはホントにありがたいことですね!
でも、ありがたいと思うだけに、社員とのピリピリした緊張関係の中で頑張らなければならない《内部監査員》がツラすぎます。もっとユルくやれないのでしょうか?

《内部監査員》は、たとえ煙たがられても心を鬼にせざるを得ないところがあるんです。
なぜなら、監査は会社をよくしていくために、監査をする人と監査を受ける人の真剣勝負の場だからです。
でも間違って欲しくないのは、《内部監査》の第一の目的が、自分たちが決めたルールを確実に守って日々の仕事がキチンと行われていることを確認し、認め合うことだということです。つまり、「いい仕事をしていますね」としっかり認めることがとても大事なので、緩やかな雰囲気になる可能性は大いにあるんですよ。
ただし、それもルールに基づいていることが大原則ですから、万が一にもルールからの逸脱があれば、そこはダメ出しをしなければなりません。同じ会社の社員がやっている業務に「不合格」を出すのはツラい仕事ですよね。それこそ、生活指導の先生みたいにダメ出しをしなければいけないのですから。
だからこそ、《内部監査員》は心を鬼にせざるを得ないのです。

イソ子さん:
私、思ったんですけど…。
そもそも、個々の社員本人が自己監査すればいいことではないですか。ISO って基本的に「自分の仕事をシビアにチェックする」というところがあると思うんですよ。だったら、自分でチェックできていれば、それでいいのではないか、と…。それなら、《内部監査員》の人たちにも苦労をかけないし…。

さっき、監査には「なれあい」が良くないという話をしましたが、自分で自分を評価することこそ危険ではないでしょうか。「自分には優しくなってしまう」などの甘さが出たり、都合のいいところばかり見てしまうといった見落としが出てくる可能性がありますよね。
つまり、客観的な監査でなければ、本当の目的を達成出来ないのです。そのためには、選び出された《内部監査員》が厳しい姿勢で監査に臨むことがベストではないでしょうか。

イソ子さん:
なるほど。
ところで、不合格だった場合はどうなるんですか? まさか処罰!?

いやいや。《内部監査》は誰かを罰するためのものではありませんから(笑)
不合格があった場合には、《内部監査員》がその部署の責任者に結果を報告します。そうなったら、責任者は改善策を考えて実行しなければいけなくて、そのことは全て社内で共有されます。もちろん、社長にも。
こうして経営者が社内の実態を掌握することで、経営に結びつけることができるというわけです。

どうですか、会社を効率的に回す仕組みを維持することこそが《内部監査》の目的だということがわかってもらえましたか?

イソ子さん:
はい、わかった気がします。《内部監査》の重要性も、《内部監査員》の気苦労も。
でもー、わたし、昔から誰かに評価されるとか苦手なんですよぉ〜。緊張してしまって、平常心の実力が出ないというか…。だから、私だけ面談ではなくて、日頃の仕事っぷりを陰からコッソリと観察して評価してもらうわけにはいきませんかぁ? その方が「合格」になりやすいと思うんですけどー。

イソ子さん、それはムリ!
監査は実際に行われている仕事の内容及びその結果の確認ですので、遠くから見ているだけではそれらの細かい確認ができないのですよ。
そして、知っておいて欲しいのは、あの社長ですら《内部監査員》からインタビューされるということ。なにしろ、内部監査の時期がくると緊張し始めるんですから、あの社長が!

イソ子さん:
え〜!社長も監査されちゃうんですかー! しかも、社員から監査されて、社員相手に緊張しちゃうんですかー!
ちょっと可愛いかも。それ、見てみたいです!
でも、いろいろとチェックされて逆ギレした社長が「無礼者!オマエはクビだー!」なんて言い出したりして…。そうなったら、《内部監査員》はたまったものじゃないですねー。

もしもし?イソ子さん?
今の発言もそこそこ無礼ですよ(汗)

イソ子さんもやっと「ISOの入り口」が見えてきたみたいですけど、まだまだ先が思いやられますね…(タメ息)

〔次回に続く〕

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【イソ子のつぶやきメモ(9)】
今日の話はちょっと難しかったなぁ。私の業務とは直接的に関係ないというか…。
でも、いつか《内部監査員》に選ばれる可能性もあるわけだから、その日のためにメモっておかなくちゃ!

・自分の仕事がしっかり回っているかどうかは客観的にチェックする必要がある
・ISO や会社の決まりごとが実行されているかどうかを社内の人間が定期的に行なうチェックを《内部監査》という
・チェックの結果、不合格だった業務は改善策を考えて実行しなければいけない

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【(ちょっと中級者向け)ISO用語辞典】
内部監査の結果などに基づいて、一定期間の経営管理の実績を振り返り、経営上の問題点や懸念、成果などを見直すことを「マネジメントレビュー」と言います。
「マネジメントレビュー」は「内部監査」とは異なり、経営トップ自らが対応するものです。
「経営層による見直し」とも訳されますが、決められた会社の仕組み通りにマネジメントシステムが運用されていることを確認し、必要に応じて改善の指示を出すなどの対応をします。

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次号:『最終回:イソ子さんの旅立ち』 2019年8月21日(水)配信(予定)

お楽しみに!