品質不祥事に思う ― 再発防止 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.196 ■□■    
*** 品質不祥事に思う ― 再発防止 ***
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品質不祥事は(良心の咎めを感じながらも)悪いことと分かって行った、
又は意図的に行ったというものがほとんどのようです。
ただ、中には気が付かずに行ってしまい、結果的に不良品を市場に出して
しまったという例もあります。

このような場合、要因に目を向け不良品を作らない工夫をすることがTQMの
本質です。
残念なことですが、昨今の不祥事は、要因に目を向けずに結果に目を向け、
しかも結果を覆い隠すという全く正反対の行為をしています。

■□■ちょっとした気の緩みから不良品を発生■□■

手順書は理解していた、その通り実施する技能もやる気もあったにもかかわらず、
ちょっとした気の緩みから不良品を発生させてしまう場合も少なくありません。

これらのミスを効果的に防止するためには、作業方法(部品、材料、設備、
治工具、作業指示書、手順などを含む)に関する総合的な工夫、改善、
そして作業のエラープルーフ化が不可欠です。

■□■ エラープルーフ化 ■□■

実際の生産、サービス提供、設計開発などで行なわれているエラープルーフ化の
方法には様々なものがあります。

それらは、

1) 作業ミスが起こらないようにする。
2) 作業ミスしても品質事故にならないようにする。

の二つに分けられます。

ミスを発生させない最も効果的な方法は「作業から除外する」ことですが、
これが不可能な場合には、「作業を機械に代える」あるいは「作業を容易にする」
ことが考えられます。

それぞれ「排除」、「代替化」、「容易化」と呼ばれるこれらは、未然防止の立場から
対策を行う場合の基本となる考え方です。

一方、2)のミスによる影響が拡大するのを防ぐ方法としては「ミスを検出し処置する」、
「ミスの影響を緩和するための作業や緩衝物を組込む」の2つがあり、それぞれ
「異常検出」、「影響緩和」と呼ばれます。

■□■ 排除のエラープルーフ例 ■□■

引っ越しにおいて、タンスなどを2人で持ち上げるとき、気の利いた業者は
タンスにキズを付けないため、ロープとの間に段ボールなどを当てます。
しかし、作業者によっては、当て忘れるというミスをしますので、ロープの
代わりに布製の帯具を用いるということを考える業者がいます(最近は当たり前?)。

布製の帯具はそもそも柔らかいので、段ボールを当てるという作業そのものが
いらなくなります。このような対策を「排除」のエラープルーフ化といいます。

■□■ 代替化のエラープルーフ例 ■□■

家電の組立工場などでは、作業指示表を見間違えて間違った組立部品を
組み立ててしまう、というミスが昔はありました。
このような場合に、人が見るという作業を機械(センサー)に置き換えると
いうことが行われてきました。

組立する部品の形状をセンサーで検知し、この部品で良いか悪いかを
判断させる方法です。

■□■ 容易化のエラープルーフ例 ■□■

組立の作業を容易にするための工夫を意味します。
組立順序の一覧表をイラストで作成したり、出庫作業における部品の
数え間違いを防止するために内部を仕切って入る部品の数を一定にする
工夫もこの考え方に基づくエラープルーフ化の例です。

テクノファではいろいろな種類のA4用紙(薄い、厚い、中間)を
教材の印刷に使いますが、種類を間違えないように紙棚の高さを、
薄い、厚い、中間としています。

また白紙とキンバリー(黄色)の紙は棚の淵を色分けしています。
足をすべらしたり、踏み外しそうな段差のある場所に黄色のペンキを
塗って注意をうながしたり、搬送用のパレットに取っ手を付けて
持ち易くする等も、容易化のエラープルーフ化の例です。

■□■ 異常検出のエラープルーフ例 ■□■

車の両側に誤った種類のタイヤを組み付けるというミスに対して、
タイヤ置き場の取り出し口にセンサーを取付け、取ったタイヤの
種類が右と左で一致しない場合には工具が作動しないようにする、
または警報ブザーがなるという方法がとられています。

機器の分解の際に組立忘れがないよう、分解部品を予め準備した
区切箱に入れ、分解した逆の順序で組立て、最後に部品がないことを
確認するのもやはり同じ考え方に基づいています。

■□■ 影響緩和のエラープルーフ例 ■□■

職場の機械電源スイッチを切り忘れてモータを焼き付かせてしまうことが
昔はありましたが、タイマーによって1時間後には主電源が切れるように
工夫したことなどはこの影響緩和のエラープルーフ化です。

製品を棚に乗せる時に誤って支柱にぶつけてもキズが付かないように
支柱に緩衝材をまいておく、他の作業者が物を落としても怪我しないように
ヘルメットをかぶる等も影響緩和によるエラープルーフ化の例と言えます。

ミス防止のためのエラープルーフ化は、多くの組織で実施しされ成果を
あげています。
起きてしまったことは仕方がない、二度起こさないとの観点で、品質トラブルや
事故に対して対策を取っていますので、昨今の品質不祥事もこのように
原因に遡って、本質的な再発防止を考えていただきたいと思います。