Monthly Archives: 4月 2021

平林良人の『つなげるツボ』Vol.307

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.307 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査11 ***
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我々は日常生活で当たり前と思っていることが多くあります。
しかし、あることについて見方を変えると、今まで「当たり前と
思っていたこと」が違って見えることをいろいろな場面で経験し
ています。例えば、景色がそうです。正面から見ていると一枚の
絵としか見えないものが、横から見ると隠されていたものが見え
ます。角度を変えて見ると従来と異なった景色が見えてくるとい
うことはよくあります。

■□■ 高層建物の30階から地上をみる ■□■
例えば、高層建物30階から走っている地上の車の車種は判別
できません。1階から見たら同じ地上を走っている車の車種はわ
かるでしょう。車種どころか車の中にいる人まで見えるかもしれ
ません。
京都にある三十三間堂を正面から見ても普通の神社の構えにしか
見えませんが、横に回ってみると33間もある長い回廊に驚くか
もしれません。
あまり通い慣れない道ですと、行った時の風景と帰りの風景が随
分異なることに驚くことがあります。
ナラティブと関係する言葉にディスコース (discourse)という言
葉があります。辞書には「言葉による思想の伝達」とありますが、
いろいろな考えがあることを言い表しています。見方が変わると
は、いわゆる通説という社会的に当たり前だと思っていることが
異なって見える考えを言います。

■□■ ディスコース ■□■

清宮徹(西南学院大学)氏は「ディスコース的視座と組織化」で
2011年の東日本大震災時の経験を次のように語っています。

「東日本大震災の被災地の一つ、南三陸町に、年に2-3回ほど赴き、
現地の人々との多様な対話を通して得られたコミュニティーの語り
を研究している。
南三陸町の被災から復興へのディスコースを観察することが可能と
なった。
地域の人々とのコミットメントをより深めることで、多様なディス
コース
が織りなす被災地の社会的現実を垣間見ることができた。筆
者はデータを取りに行くという意識より、仮設住宅のご老人と語る、
現地のコミュニティー・リーダーと語る、商店街の人々の話を聞く、
被災地が復興に向かっていく応援団の一人として、新しいコミュニ
ティーの再生に手助けしたいという姿勢であった。家族や友人を失
い、当たり前だった日常の機能をすべて失い、人々はどのようにコ
ミュニティーを再生するか、応援すると同時に、私たちが学ぶべき
ことがたくさんあると確信していた。
そして被災地の語りはまさに、多声的ディスコースのダイナミクス
であり、言説が言説を生み出す人々の語りから現実が作り出されて
いた。」

■□■ ディスコースのオルタナティブ ■□■
内部監査にも先輩から語り繋がれた思想?の伝達があります。東北
大震災の前の南三陸町に震災前にあったディスコースと同じように、
内部監査にも今までのディスコースがどの組織にもあります。

清宮氏の話を続けます。
「これまでの訪問で理解したことは、南三陸町の復興を支えるコミュ
ニティー・リーダーたちの献身的な働きであった。これは地域の「内
的ボランティア行為」といえ、復興の大きな原動力となっている。
人々のディスコースは、被災直後は「喪失」のディスコースであった。
同時に、被災地に駆けつける外部ボランティアや日本社会が発信す
る絆または連帯のディスコースである。被災地の語りでもう一つ顕
著なのは、「感謝」の語りである。これが「復興」のディスコースに連
動している。もちろん今でも被災地の中には「喪失」のディスコース
は消えていない。しかし、外部ボランティアを中心とした「絆・連帯」
という語りは、それに対する「感謝」のディスコースとともに、復興
の語りを支え、コミュニティー・レジリアンスを推進している。これ
らの語りは明らかに相互言説的である。「悲しんでいるだけじゃだめ
だ」、「みんなのために復興市を開こう」、「みんなが応援してくれ
るから、やらなくては」など、相互言説的な語りのダイナミクスは、
人々がコミュニティー内部から生み出す復興の力となっていること
が理解できる。」

■□■ 内部監査を変えることは難しい ■□■
20年間(例えば)行ってきたことを変えようとすることは難しいこ
とです。内部監査のディスコースをこの機会に異なるディスコース
に変えていきましょう。
・内部監査がマンネリ化してきている。
・有効な内部監査をさらに追求したい。
・内部監査で何らかの具体的成果を出したい。
・内部監査が組織のパフォーマンス向上に寄与するようにしたい。

このような思いを実現させることを皆で考えていくことが組織のパ
フォーマンスを向上させる原動力になると思います。

平林良人の『つなげるツボ』Vol.306

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.306 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査10 ***
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ナラティブとは「語り口」のことですが、語ることが変われば生み
出される物語は違ったものになります。ナラティブは今まで「当た
り前と思っていたこと」を「そうではない」と考えることが一つの
特長です。しかし、従来慣れ親しんできた当たり前のことを変える
ことは相当に難しいことです。しかも周りの人々も、今までと違っ
たことを行おうとするとそれなりに抵抗も大きいでしょう。しかし、
内部監査を変えたいと思っている人にはこのメルマガシリーズは参
考になると思います。

■□■ サービス・ドミナント・ロジックス ■□■
最近 サービス・ドミナント・ロジックスという顧客価値を探索す
る理論がマーケティング分野で研究されています。私も最近聞いた
ばかりですが、サービス・ドミナント・ロジックスの神髄は「プロ
セスとナラティブ」にあるとある講師が言っておりました。今まで
とは異なった視点で顧客の潜在ニーズを掘り起こそうという理論の
ようです。

前にも話しましたが「ガンダムNT」は、ガンダムナラティブのこ
とであるとある方から教えられました。これもガンダム伝説の新し
い物語を意味していると思います。
ナラティブセラピーは心理療法として有名です。これもいままで
「当たり前」と思ってきたことを、見方を変えることで異なった世
界が見えて悩んでたことが解消される手法であると聞いています。
コロナ後の世界をどのように見るのかの議論においても時々ナラテ
ィブという用語が出てきます。NHKBS番組での議論を聴いていて
感じたことは、前後のコンテックス(文脈)から、今まで当たり前
と思っていたことを変えなければならないという意味で使われてい
ました。

■□■ 見方を変える ■□■
「見方を変えること」はいろいろなところで説明されていますが、
人は簡単には見方を変えられません。見方を変えるには、私たちが
いままで「当たり前」と思っていたことから離れなければならない
からです。
よく聞く話ですが、コップに半分の水が入っているが、もう半分し
かないと見るか、まだ半分もあると見るかでその後の行動が変わる
といいます。本当でしょうか?理屈としては本当で面白い話ですが、
いままで「半分しかない」と思って暮らしてきた人が自分の頭の中
を「まだ半分もある」と切り替えることは至難の業です。

山登りの例も良く出されます。もう半分も登ったとみるか、まだ半
分もあるとみるかで気持ちの持ち方がずいぶん変わるという話をよ
く聞きます。
人には染みついた思考回路があります。その回路を変えることは容
易にはできません。見方を変えることはそれなりの訓練と努力が必
要です。さらに重要なことは、本人がその結果得られるであろう便
益を確信することです。

■□■ 内部監査を変えることは難しい ■□■
内部監査も同じで、20年間(例えば)同じやり方で行ってきたこと
を変えようとすることは容易にはできません。まず今のやり方を変
えたいという強い意志が必要です。今に満足していれば変えたいと
いう気持ちは出てきません。
・内部監査がマンネリ化してきている。
・有効な内部監査をさらに追求したい。
・内部監査で何らかの具体的成果を出したい。
・内部監査が組織のパフォーマンス向上に寄与するようにしたい。

ナラティブ内部監査を導入するには、このような内部監査を「変え
たい」という思いがまず必要です。私は研修の場において上記の例
のように内部監査を変えたいという声をよく聞いてきました。でも、
どうしたら変えていけるのかよく分からないという声が圧倒的でし
た。

ナラティブ内部監査は「どのようにして内部監査を変えるのか」に
ついての具体的方法を提示するものです。前述しましたように、頭
では理解できても実践するにはいろいろなチャレンジが必要です。
コップの水の例のように、半分もあるとポジティブに考えるアイディ
アは分っていても実践する方法はすぐには考えられません。どのよ
うに実践するのかという、次の段階になると、それなりの理論武装、
具体的方法を会得しなければならないと思います。

平林良人の『つなげるツボ』Vol.305

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.305 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査9 ***
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前回ナラティブ内部監査の監査基準としての事業マニュアルの事例
を示しました。事業マニュアルは、ISOの分野固有(品質、安全衛
生、環境、情報セキュリティなど)の要求事項を参考にしながら自
分たちの事業活動、すなわち事業プロセスにビルトイン(統合)し
た状態を書き表したものであり、組織はそれに沿って全員参加によ
り組織の各種パフォーマンスを上げることを目標にマネジメントシ
ステムを運用することが肝になります。
ナラティブ内部監査はこの組織固有のマネジメントシステムが事業
マニュアルどおりに運用されているかを確認し、改善することを内
部監査員、被監査者が共同で実施することを目的としています。

■□■ 事業マニュアルの下位標準書 ■□■
事業マニュアルは事業推進の方針書ですので、ナラティブ内部監査
の基準として活用するには打って付けな文書です。しかし、ナラテ
ィブ内部監査は業務改善を目的としますので、業務実施現場の標準
書が必要になります。現場の標準書にもメッシュの細かさがいろい
ろあります。ナラティブ内部監査の実践にはまず業務標準書(2次
文書)が必要です。必要に応じてさらに業務実施の手順を規定した
手順書レベル(3次文書)の文書も必要になります。
ここでいう、2次文書とか3次文書とかの表現は一般的な呼び方で
、2次と3次を分ける基準が明確にあるわけではありません。組織
によって業務を規定する細かさは組織が固有に決めてよいと思いま
す。

以下にナラティブ株式会社の2次文書一覧の例を示します。

1 企画室 組織標準
分課分掌標準
経営会議運営標準
市場クレーム処理標準
2 総務部 SDGs活動標準
文書管理標準
業務改善提案制度標準
環境保全委員会運営標準
廃棄物適正管理標準
環境影響評価標準
安全衛生委員会運営標準
安全衛生計画標準
無災害表彰制度標準
情報セキュリティ委員会運営標準
リスクアセスメント標準
情報セキュリティ管理運用標準
3 人事部 人事適性評価標準
人事考課標準
人事組織変更標準
教育訓練標準
4 経理部 経理会計標準
5 開発部 市場調査標準
6 営業部 契約管理標準
注文書管理標準
仕様検討・制定標準
サービス・パーツ管理標準
サービス標準
7 生産管理部 作業指示書制定標準
工程異常処理標準
4M変動管理標準
標準書制定標準
製品・部品保管標準
特殊工程管理標準
生産管理コンピュータ管理標準
製品・部品取扱標準
製品・部品梱包標準
検査規格制定標準
ロット管理標準
物品識別管理標準
8 購買部 購買要求書発行標準
外注契約書標準
取引先管理標準
取引先評価標準
購入物品特別採用処理標準
製品・部品コード管理標準
OEM客先支給品管理標準
外注品質監査標準
9 設計部 設計業務標準
製品企画標準
設計試作標準
設計審査標準
加工図面管理標準
量産試作標準
量産認定標準
設計通知管理標準
10 技術部 技術通知管理標準
機械設備仕様書標準
11 品質保証部 事業マニュアルアクセス標準
事業マニュアル改訂標準
事業マネジメントシステム体系標準
標準書制定標準
品質記録管理標準
設計計画標準
部品受入検査標準
工程内検査標準
製品出荷検査標準
品質関連文書管理標準
計測器類選定標準
検査規格制定標準
QC工程表標準
限度見本制定標準
内部監査標準
製品監査標準
計測器類管理標準
計測器類校正標準
開発計測器管理標準
製品特別採用処理標準
重要品質問題処理標準
QCサークル活動推進標準
試作評価標準
12 製造部 工程品質管理標準
機械設備日常点検標準

このように事業マニュアルの各項目についてどんな内容のことを、
どんな方法で実行するのかが書かれた「〇〇標準」を一覧として添
付します。事業マニュアルを作成するときに新たに「〇〇標準」を
作ることは原則ありません。現在使用している、あるいは保有して
いる標準を一覧にすることがポイントになります。ナラティブ株式
会社の例では2次文書の数は100種を超えますが、会社の規模によ
ってはもっと多くの標準書があると思います。

平林良人の『つなげるツボ』Vol.304

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.304 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査8 ***
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事業マニュアルは、ISOの分野固有(品質、安全衛生、環境、情報セキュ
リティなど)の要求事項を参考にしながら自分たちの事業活動、すなわち
事業プロセスにビルトイン(統合)した状態を書き表したものです。
全員参加により組織の各種パフォーマンスを上げることは、経営の大きな
目標ですが、事業マニュアルに記載された事項はパフォーマンス向上のガ
イドになります。
ナラティブ内部監査は、この組織固有のマネジメントシステムが事業マ
ニュアルどおりに運用されているかを確認し改善することを、内部監査員、
被監査者が共同で実施することを目的としています。

■□■ 事業マニュアルの作成 ■□■ 
事業マニュアルはどのように作るのがよいのでしょうか。組織には「定款」
をはじめ取締役規定、分課分掌規定、部門規定、手順書、チェックリスト
などの多くの社内標準があります。
事業マニュアルは何百も何千もある社内規定の総括版ですので、ロジック
としては演繹法(積み上げ方式)的に作ることがよいと思いますが、膨大な
標準書を開いて読み解くことはナラティブ内部監査の趣旨ではありません。

事業マニュアルは事業推進の方針書です。組織が自分たちの事業経営の骨格
を書くことがよいので、帰納法(方針示達方式、上から下)的に経営者の観
点から書くことがよいと思います。
したがって、あまり細部にわたっての記述はしません、総ページ20、30ペー
ジ位が適切です。

■□■ 事業マニュアルの事例 ■□■
ナラティブ内部監査の監査基準としての事業マニュアルの事例を示します。
ナラティブ株式会社という機械部品を製造している会社(仮想)の事業マニュ
アルの構成例を掲載します。

【理 念】
当社の理念は次の通りである。
1. 社会に貢献する。
2. 社員を大切にする。
3. 独創性を伸ばす。

【事業マニュアル】
当社は事業運営の基本を定めた事業マニュアルを制定し、ISO 9001認証に活用
するとともに全従業員が守るべき標準と位置づけし、全社内部監査の基本文書
とする。

【適 用】
この事業マニュアルは,当社が製造する機械部品の営業から、企画、設計、製造、
出荷、サービスまでの製品・サービス提供活動、事業の基本と方向を定める経営
活動及び組織全体を支える管理活動に適用する。
 〔対象組織〕 ナラティブ株式会社 全社
 〔対象製品〕 シャフト製品、シリンダ製品,カバー製品

【目 次】

  1. 経営
    1.1 組織
    1.2 方針
    1.3 経営会議
    1.4 内部監査
  2. 事業マネジメントシステム
  3. 営業
  4. 設計
    4.1 全般
    4.2 設計及び開発の計画
    4.3 インプット
    4.4 アウトプット
    4.5 設計審査
    4.6 設計変更
  5. 購買
    5.1 全般
    5.2 下請負契約者の評価
    5.3 購買データ
    5.4 購買品の検証
    5.5 購入者による支給品
    5.6 購入検査
  6. 製造
    6.1 工程管理
    6.1.1 全般
    6.1.2 特殊工程
    6.2 製品の識別及びトレーサビリティ
    6.3 工程内の検査及び試験
    6.4 最終検査及び試験
  7. 検査及び試験
    7.1 検査,測定及び試験の装置
    7.2 検査及び試験の状態
    7.3 検査及び試験の記録
  8. 不適合品の管理
    8.1 不適合品の処置
  9. 是正処置
  10. 取扱い,保管,包装及び引渡し
    10.1 全般
    10.2 取扱い
    10.3 保管
    10.4 包装
    10.5 引渡し
  11. 11文書管理
    11.1 文書の承認及び発行
    11.2 文書の変更・改訂
    11.3 品質記録
  12. 教育・訓練
  13. サービス
  14. 小集団改善活動
  15. 環境保全
  16. 労働安全衛生
  17. 情報セキュリティ
  18. 人事労務
  19. 会計
  20. SDGs活動

このように、事業マニュアルは会社の主要な活動を網羅して書くことがポント
です。事業マニュアルには、経営者が行う活動、大多数の方が行っている製品・
サービス提供活動(バリューチェーン活動)、管理部門が行う活動(サポート
活動)など組織の主な活動の要点を書きます。
(つづく)