ナラティブ内部監査4 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.300 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査4 ***
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内部監査は現在ISO要求事項に基づいてごく普通に行われて
いますが、ISO9000初版が発行された1987年頃は日
本企業にとっては初めて行うもので、内部監査を通じてどんな
成果を上げようかといろいろ議論をしたものです。最初に議論
したことは、規格要求事項へ適合するとはどういう状態をいう
のかということでした。
「ナラティブ内部監査」の目的は適合性の確認だけでなく、発
見した事項の問題解決、改善、そして革新へのインプットまで
をターゲットにしています。

■□■ ISO 19011:2018の序文 ■□■
ISO19011は組織の内部監査をどのように行うのかのガイドを示
した規格ですが、その序文には、「内部監査結果は,事業計画策
定の分析の側面に対してインプットを提供し,改善の必要性及び
活動の特定に寄与することができる。」と述べています。
そして、それ以降の箇条に「改善」の字句が出てきます。組織に
とって「改善」は永遠の課題です。事業活動を進めている限り、
改善することは組織の使命であり、それなくして継続的に社会に
存在していけません。

改善に関与する人は、一般従業員、課長、部長、役員そして社長
まで組織のあらゆる人であって、内部監査はその機会の一部です。
決して内部監査だけが組織の改善の機会ではありません。組織活
動のあらゆるところで改善は行われていかなければなりません。
日常活動を始め、年間計画、中長期計画の実行などにおいても改
善は不可欠なことです。

■□■ 共通テキスト(附属書SL) ■□■
全てのマネジメントシステム規格には、トップの責任として「継続
的改善へのコミットメント」が要求されています。つまり、改善を
行うことは内部監査の実施だけでなく、内部監査を超えて組織全体
で行わなければならない非常に大きな課題であるということです。

管理職から「内部監査では枝葉末節な細かな些細な指摘ではなく、
改善に寄与するようなシステムの弱さを指摘してほしい」というよ
うな要望が出されることがあります。しかし、細かなことにこそ改
善のヒントがたくさん含まれているものです。

ISO 19011が規定しているように、組織が内部監査を「改善の機会」
のための手段として位置づけるならば、内部監査は大向こうを唸ら
すようなことは狙わずに、決められた手順にそって愚直に実行する
ことが大切ですし、そうしてこそ目的を達成することができるので
す。そして、何よりも改善のために行うとしたら、まず「改善する
ための方法」を知る必要があります。今の状態よりも更に良い状態
にすることを改善と言いますから、まずは今の状態を知ることが必
要になります。

■□■ すべてを疑うことから・・・ ■□■
疑うとは嫌な言葉です。しかもすべてを疑うなんてその人の性格?
を疑うと言われそうです。でもここで言う「疑う」とは疑問に思う
ことを言います。社会一般に使われている「うそを言っている」
「悪いことを行っている」「本当のことを隠している」という背景、
ニュアンスではありません。

疑問に思うとは、目の前で行われていることが本当に必要であるか、
行われている事は価値があるのか、価値があるとすればどのような
付加価値があるのか、などを考えることを意味しています。
組織における多くの仕事、出来事は今に始まったことではありませ
ん。先輩、そのまた先輩など10年、20年の昔から行っていること
が組織には多くあります。そして、その行われていることを誰も不
思議とは思わない世界が我々の組織にはあります。

なぜ行っているのかを不思議に思う感覚が改善には必要です。ちょ
うど物心がついた子供がお母さんに何でも「どうして・・・」と聞
くようなセンスです。

■□■ ナラティブ内部監査で疑うこと ■□■
「ナラティブ内部監査」では次のことを提唱しています。
 -その業務はやめられないか
 -その業務の順番は変えられないか
 -その業務は一緒に出来ないか
 -その業務は別の職場で行っていないか
 -その業務のプロセスは変えられないか
 -そのインプットは必要か
 -そのインプットは変更できないか
 -そのインプットは別のところから得られないか
 -そのアウトプットの価値は上げられないか
 -その監視・測定は必要か
 -その方法は人が変わっても同じ質を保証できるか
 -その方法は標準化されているか
 -新しいアイディアはないか