ナラティブ内部監査36 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.332■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査36***
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内部監査で発見された問題には、原因が明確である問題と、原因
が明確でない問題があり、ナラティブ内部監査では両方の問題を
扱うとお話ししました。前者の「原因が明確である問題」は原因
に対策を取る(これはこれで難しいが)という次のステップに比
較的容易に進んでいけますが、後者の「原因が明確でない問題」
は、原因が何なのかをはっきりさせることに時間がかかります。
また、第3のグループも存在します。それは何かおかしいことが、
時間が経つにつれて結果から原因らしきものが見えてくるグルー
プです。

■ 3番目のグループ ■
最初、原因はないと思えていたものが、一歩踏み込んでみるとそ
こには原因らしきものが見えてきます。ナラティブ内部監査で重
要なことは、問題を「問題として認識」することです。
「新しい物語」はスタートについたばかりです。おかしいと思っ
た問題を紐どいていく、そして解決にまでもっていくストーリー
を監査員と被監査者の両者で作っていきましょう。
最初はなにが問題なのか、はっきりしなかったものが、一歩踏み
込んでみると原因らしきものが見えてきたということを「廊下の
角で衝突した」例を皆さんと一緒に考えてみましょう。

■ 一歩踏み込んで ■
衝突したということは、その場所に両者が同時刻に移動したとい
うことですが、その移動した理由は何でしょうか。理由がはっき
りすればそこから原因を探ることが出来るでしょう。しかし、あ
る場所にある時刻に移動することは世の中では一般的なことで、
そこには特別な理由などない、と多くの人は考えると思います。
人がある場所にある時刻に移動するということは行動の結果であ
っても、2人の人が同じタイミングで出会ったということは事実
です。しかし、大きな怪我でも発生しない限り、多くの人は、衝
突事象をたまたま運が悪かっただけとして、そのまま何もせずに
忘れていきます。

■ 見えないことが見えてくる ■
でも何かおかしいと感じる人は、もう少し2人が衝突したという
事象に踏み込んで考えてみると思います。その場合理由を考える
のではなく、衝突したという事象そのものについて考えたらどう
でしょうか。
私には2人のうちどちらか1人が次のような状態にあったのでは
ないかと考えます。
・前を見ていなかった。
・考え事をしていた。
・衝突注意を忘れていた。
・急ぎ足だった。
・時間がなかった。
・悩み事があった。

■ 出来るだけ多くの発想 ■
しかし上で述べたことはすべて想像です。想像ですから中には突
飛なものも出てきます。ここで大切なことは全くあり得ないこと
は別として、現実にありそうなことはできるだけ多くの原因らし
きものとして上げることです。
質と量のどちらも大切だという言い方がありますが、新しい物語
を作るには最初は質より量を大切にします。
多くの原因らしきものが挙げられたら次は事実の確認です。上の
事例でいうならば、挙げた一つひとつの想像を当事者から聞くこ
とです。
ここで考えるべき拘束条件は時間です。組織において時間はコス
トそのものです。起こった事象の結果の影響度合いが高いと思わ
れれば、その事実確認には時間をかける価値があります。しかし、
この事例のような高い確率で大きな怪我にまではならないと思わ
れる事象には、あまり時間をかける価値はないでしょう。

■ 対策 ― 再発防止 ■
ここまでがナラティブ内部監査の新しい物語の前半ということに
なります。新しい物語の後半は、ではどのようにして同じことが
2度と起きないようにするのかを考える物語です。次回にお話し
したいと思います。