ISO9001キーワード 文書化した情報7 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年2月12日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.544 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード:文書化した情報 7:AIエージェントと文書管理 ***
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AIエージェントに「DR(デザインレビュー)」の補助役をやってもらうという話をしてい
ます。ISO9001箇条7.5「文書化した情報」で要求されている「文書の最新化」とAIエー
ジェントの活用には強い関係があります。AIに教え込む文書には最新の状況が記載されて
いなければなりません。AIエージェントは遅かれ早かれ企業の中で使われると思います。
その時に重要になるのが組織固有の規定文書です。

■□■ コンプライアンス規定 ■□■
人間が行う場合は状況に合わせて仕事をしますが、AIエージェントには人間のような冗長
性は無く、教えられたことだけをベースに仕事をします(教え方により人間に近くなるか
もしれませんが・・・)。
例えば、「コンプライアンス規定」が最新化されず古い状態だとどうなるでしょうか。DR
に提出されるデータには、日程確保に関係するGo要素がたくさん含まれています。社会
におけるコンプライアンスの要求は、年々厳しいものになっています。コンプライアンス
規定が最新化されていないと、DR意思決定において不正、隠蔽、実行不可能日程などを
見過ごし甘い結果(Go)を出しやすくなります。

産業界のすそ野が広い自動車産業、航空宇宙産業、防衛産業などでは、世界的な競争から
納期プレッシャーが強く、DRにおいて「見込みGo」で進めたくなる局面があります。コ
ンプライアンス規定に近年の「品質不正」などについての対応が織り込まれていないと、
(1) データ改ざんや都合の悪い結果の未報告、(2)測定条件の恣意的変更、(3)外注の工程変
更の黙認、(4)不適合品の混入や手直しの未記録などが起きる可能性があります。
従来のDRでは、ともすると「問題を出すと遅れるから言わない」、「記録すると面倒だか
ら残さない」という雰囲気ができDRが甘いと後から言われる場面があります。AIだった
らこうした「空気を読むことはしない」であろうと期待していたことが、「文書が最新化さ
れていない」という思わぬ落とし穴によって裏切られるリスクがあります。

■□■ 顧客情報の文書管理 ■□■
顧客取引に関係する文書、例えば、図面、コスト情報、競合情報、外注取引データなどの
管理が甘いと次のような問題をAIエージェントは起こすかもしれません。例えば「複数
顧客の図面を同一フォルダで管理する」、「見積根拠に顧客機密を混在させる」、「外注先に
必要以上の顧客情報を渡す」といったようなことが起きるかもしれません。
AIエージェントにDRを補助させるならば、顧客情報については次のことを教え込んでお
かなければならないでしょう。
「顧客IDごとにファイルを作成し顧客IDに合った情報を適切に管理する」、「次のものは
機密事項であるから見積情報には含めない」、「次のものは機密情報であるから外注先には
出さない」など『次のものを明確にして』文書管理することを教え込むことが必要です。

■□■ 法規関係情報が古いと・・・ ■□■
法規情報が最新化されていないと、AIエージェントの行うDRチェック項目から法令、規
制、提出義務などに抜け漏れがでます。金属部品製造では、材料成分、表面処理薬品、洗
浄剤、防錆油、廃液処理、輸出入規制、化学物質管理など、法令に規制値が書かれている
ことが多くあり、チェックを確実にしなけれなりません。法規関係情報が更新されていな
いと、「使用禁止物質の見落とし」、「材料証明や成分証明の取得漏れ」、「外注工程が規制
に抵触」、「表示・トレーサビリティ要件の未充足」など重要な事項がDRで検知されなく
なってしまいます。DRが終った後になって、「適合証明が出せない」とか「顧客要求書類
が揃わない」などの問題が発覚し、出荷停止や緊急切替、あるいは回収や取引停止にまで
至ることもあり得ます。
法令は「誰が最新情報を収集し、どのタイミングで設計、工程に反映するか」が要点にな
ります。責任者、確認頻度、改訂手順などをAIにチェックさせることも大切です。EU
(欧州連合)では、化学物質への規制が厳しく何百種類もの化学物質に規制の網がかかっ
ています。金属部品加工では表面処理条件の微変更や、材料の代替(供給逼迫時)などが
起きやすいので、EU規制の最新化の仕組みをしっかりとしておかないと法令適合性への
信頼性が崩れかねません。

■□■ 社内ルールの最新化 ■□■
繰り返しになりますが、AIがDRにおいて「この材料で問題ない」、「この処理でOK」と
推論しても、根拠となる社内ルールが古ければ誤った結論を導いてしまいます。法令/規制
は施行令、省令などの細部になると頻繁に変更がありますので、AIがGo決定をしたあと、
「最新情報の参照元」、「不明確な時は人が判断」、「最終確認の責任者」などについて社内
ルールを作っておくことが必要です。
さらに、DRからは離れますが、法規関係情報が最新化されていないと会社のガバナンス
に影響を及ぼします。AIによる内部監査が行なわれる場合、内部統制監査、ISO監査(第
1者、第2者/顧客監査、第3者)などは、係わる法規関係情報に準拠して行う必要があり
ます。法令、規制違反は、一度違反を起こすと経営ダメージが大きく、AIによる監査に関
しては厳密な社内ルールを必要とします。最低限、「法令要求の抽出」、「(2)社内業務への反
映」、「実施記録の保存」、「最終結論の承認者」などについての社内ルールを作っておく必
要があります。