2026年3月25日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.550 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「内部監査」:AIエージェントの活用6 ***
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前回はAIエージェントにX社(機械部品製造)設計部のナレッジを教え込む際のポイン
トと課題についてお話をしましたが、今回は内部監査をする手続きに関するナレッジにつ
いてお話しします。AIエージェントには3タイプのナレッジを教え込みますが、最初のタ
イプが基準であり、2つ目のタイプが今回の監査手順及出力形式に関するナレッジです。
3つ目は記録(エビデンス)に関するナレッジです。これらのナレッジが曖昧だと、AIエ
ージェントによる内部監査は中途半端に終わってしまいます。
■□■ 監査計画及びチェックリスト ■□■
監査計画は監査の設計図です。AIエージェントは、監査目的、範囲、基準、日程、対象
部署、監査員、サンプリング方針、現場確認ポイント等を理解しなければなりません。特
に現場監査を含むならば、現場で見るべき証拠(試作品の識別、図面改訂の掲示、試験設
備の校正表示、作業指示書の最新版管理など)を監査計画に入れておくことで、AIは「適
合している/していない」を客観的証拠によって判断できます。
チェックリストは、監査すべきことを網羅的に明記することでチェック漏れを防止するこ
とができます。AIには、単なるチェックの質問集ではなく「要求事項→確認方法→客観証
拠→評価→コメント」のつながりを意識して展開させるようにします。インタビュー(質
問)に加えて文書/記録、現場観察の監査3要素をカバーすることで監査の品質を上げるこ
とができます。インタビューでの質問は人間が代行しますが、箇条7.3「認識」を意識する
とよいと思います。「手順を知っているか」という質問ではなく、「なぜそうしているか」、
「逸脱したら何が起きるか」などの回答を引き出す質問設計がいいと思います。AIエージ
ェントを使うことで、回答の中に出てくる暗黙ルールや近道などの兆候を抽出し、対象プ
ロセスの要求と照合してリスクの存在を明確にすることが可能になります。
■□■ 不適合指摘書、是正処置報告書、総括報告書 ■□■
AIエージェントによる内部監査で起こりそうな失敗は、指摘が抽象的になってしまうこと
で、そうなるとリスク除去の対処が難しくなります。
したがって、不適合指摘書、是正処置報告書、総括報告書などのアウトプットは以下のこ
とを含むことが必須であることを教え込みます。
・不適合の根拠(どの標準のどの項目)
・事実(いつ・どこで・何が観察されたか)
・証拠(記録番号、画面、写真、インタビュー引用)
・影響(品質・納期・顧客要求への影響)
以上のことを企業のフォーマットに書きこむことを教えます。
■□■ 前回の内部監査結果を教え込む ■□■
AIエージェントに前回の内部監査の結果を教え込む目的は、監査の連続性(前回→今回)
にあります。AIの行う監査は、PDCAのC/Aであることから前回のCが確実にAに繋が
っているかを明確にすることを教え込みます。内部監査は前回指摘の是正が適切に行われ
ているかを確認して「システムが良くなっているか」を見る活動であることを教えます。
次の4点がポイントです。
(1)前回是正処置の効果確認
前回の是正要求及び回答の内容(原因分析、対策:標準改訂、教育、監視方法)が
「実行され維持されているか」を確認します。AIは、前回の是正の予定と、今回の記
録の実際を突合して不十分となれば効果確認の証拠(教育記録、改訂履歴、運用ログ)
を要求します。
(2)類似再発防止
前回の不適合と類似なものが出ていないかを重点的に見ます。たとえば前回「設計審
査記録の承認者が不明確」という不適合があったなら、今回は「承認されているが判
定基準の一つが不足」、「審査は行っているが審査へのインプットの一つが欠落」など、
同じ工程に不適合がないかをチェックします。AIは今までの指摘記録を重層的に蓄積
し、今回監査の目の付け所、サンプリング箇所決定に活かします。
(3)監査計画の重点領域
前回結果から、設計部の弱点領域(例:変更管理、設計インプットの明確化、試験・
検証、図面改訂配布、外注管理との境界など)を推定し、今後の監査計画の重点領域
を決め、監査配分(時間・質問・現場確認点)を適切に調整します。
(4)ISO9001 7.3認識の変化
設計部スタッフが「なぜそれが重要か」を理解し、日常行動が変わったかをインタビ
ューで確認します。AIは前回の指摘を踏まえ、「前回の指摘は何だったと思うか」、
「自分の業務で何を変えたか」、「変えた結果、何が良くなったか」を質問し、品質文
化の向上に貢献させます。前回結果を過去の記録に終わらせず、認識の変化に結びつ
けさせます。
※ (お願い)本シリーズでは、 “AI”と“AIエージェント”が文の前後つながりによっ
て混在していますが、ほぼ同じ意味で使っています(正確には違うのですが・・・)。
