2026年4月8日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.552 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「内部監査」:AIエージェントの活用 最終 ***
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AIエージェントが設計部においてスタッフにインタビューする話をしています。内部監査
の証拠の一つに口頭によるインタビューがあります。文書記録を確認することに加えて、
インタビューにおける口頭回答も指摘の証拠にすることで監査の信頼性を高めることがで
きます。
■□■ AIのインタビュー質問 ■□■
スタッフにインタビューする要点は、ISO9001 7.3「認識」、7.2「力量」、8.1「運用の計
画・管理」などに書かれています。
まずは ISO箇条7.3「認識」にある要点を元に次のような質問を考えてみます。
・品質方針を自分の業務に置き換えるとどんな表現になりますか?
・自分の工程にミス(不適合)があると顧客にどう影響しますか?
・その場合の顧客とは具体的に誰になりますか?
・標準から逸脱しそうになって時、あるいは逸脱した時、誰に相談し何を根拠に判断し
ますか?
規格にある要求事項を自分の業務に置き換えた時、日常業務にどのように反映させるのか
を考えなければなりません。この置換え力を測ることでギャップの重要性を決める判断の
一つが得られます。
Vol.551において、記録の証拠力としてA(公式記録)、B(準公式記録)、C(口頭記録)
をあげ、Cに行くほど証拠力が落ちると言いましたが、A,B,Cのスコアは単独で評価
せず、組み合わせて評価するとより信頼性が上がります。例えば、次のような言行不一致
は検出しやすくなります。
・記録(A)はある、しかし業務の実態(C)は違う。
・担当者はやっているつもりであるが(C)、記録(AorB)には残っていない。
■□■ 監査における3つの要素 ■□■
内部監査に限りませんが、監査には3つの証拠があると言われています。それが上記のA
(公式記録)、B(準公式記録)、C(インタビュー記録)です。AIにナレッジとして教え
込む記録3つにISO要求事項を紐付けることができます。
・記録A(標準に基づく公式記録)
・記録B(メールなど準公式記録)
・記録C(インタビューによる記録)

この3点がAIに教え込むナレッジになります。
AIがギャップとして摘出する不適合には3つの典型があります。
・標準が要求していることを実行していない。(例外扱いの常態化、標準が古い)
・標準は改訂済みであるが現場では旧版を運用している(周知・配布の不全)
・記録は整っているが運用はされていない(代理、後追いチェック)
AIにこの型を教え込み、分類させることで「事実」と「推定原因(仮説)」が分けられて
是正処置へと繋げることができます。
■□■ 不適合の根拠を可視化する ■□■
インタビューによる口頭記録は、後から「言っていない」となる可能性があるので、可能
な限りその場で確認できる証拠に落とし込みます(画面・ファイル・現物など)。
AIエージェントのインタビュー質問も「それを示す記録(画面など)を見せてください」
を常に加えることが大切です。
インタビュー回答に基づく指摘は、個人攻撃に見えやすいので、「誰が」については表現
せず、「どのプロセスで、どの要求が、どう満たされていないか」を表現します。
このようにしてAIエージェントが不適合を指摘した次には、不適合を個別に是正処置要
求するステップに行きます。監査を「指摘して終わり」にさせずに不適合を再発させない
重要な過程です。ここで重要なのは、1件の不適合に対して「原因分析→修正→是正(再
発防止)→効果確認」までの筋道を、過不足なく表現することです。
不適合原因は多くの場合「教育不足、認識不足」で終わらせがちですので、AIには事前
に原因の典型的なパターンを教え込んでおく必要があります。もちろん原因はいくつかの
組合せによる場合も多いので単純ではありません。
・標準の不備(要求が曖昧である)
・周知の不備(最新化が徹底されていない)
・ツールの不備(メンテ不足、出来るようになっていない)
・責任権限不明確(確認チェックがされていない)
・監視測定の不足(異常が検出されていない)など
これらの原因のパターンを教え込み、原因候補を人・方法・設備・測定・環境・管理など
のカテゴリと組み合わせることを覚えさせ、不適合と推定原因をセットで表現するように
させます。
是正処置で重要なことは 修正と是正(再発防止)を分けることです。
・修正:起きた問題の解消(欠落記録の補完、未承認の是正など)
・是正(再発防止):仕組み変更(標準改訂、チェック機構、教育、監視指標など)
AIにはこの区別を強制的に実行させ、期限・責任者・成果物(改訂版、教育記録、監視ロ
グ)まで書かせると、効果的な内部監査となります。
効果確認(いつ、何を見るか)は後回しにされがちです。AIには「次回DRで確認」、「次
回監査で確認」などと曖昧に書かせず、例えば「次期の2案件で設計審査の必須項目を
100%実行したかを確認する」など、評価が可能な表現で報告書を書かせます。
最後に;
アメリカのテック企業からいろいろなAIエージェントが次から次と売り出されています。
そのような大規模なAIエージェントではなく、ごく小規模なAIエージェントを自分たち
で作成するとよいと思います。
