人生はプロセスである | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.118 ■□■
*** 人生はプロセスである ***
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■□■ 初めと終わりがある ■□■

これはプロセスとは何かを考えたときの一つのメタファである。こ
んなイメージを持つのは年を取ったということであろうか。

まず、プロセスには初めと終わりがあるが、人生にも、当たり前
であるが、初めと終わりがある。
人生は生で始まり、死で終わるただ、プロセスは目標も持って設
計され、意図する結果がアウトプットされなければならない。

アウトプットされる目標が明確に設定されてはじめてプロセス全
体が意味を持つ。プロセスの目標が明確でない、何のために活
動しているのか分からないようだったら、そのプロセスは中止す
るか、変更しなければならない。

■□■ 人生はなんとなく始まる ■□■

それに対して、我々の生は我々の意図には関係なく始まる、す
なわち気が付いたらこの世の中に存在している。

旧約聖書には、最初神は天地を創造し、「光あれ」と言われ
土から人(アダム)を作り、あばら骨の一部からエバを作った
と書かれている。また終わりも目標に関係なくある時突然くる。
それでも、「人生はプロセスである」と言いたい。なぜなら、我々
の人生は、意図しない初めと終わりの中に意図する初めと終わ
りがあると思うからである。

小学校に入学する、卒業する。中学校に入学する、卒業する。
高校に入学する、卒業する。大学に入学する、卒業する。このあ
たりになってくると道は分かれて大学に入学せずに就職する人
も現れてくる。大学を卒業して就職する人もいる。

この辺からますます道は分かれる。就職してもすぐ離職する人、
再就職する人もいる。結婚する人もいれば離婚する人もいる。
子供の生まれる人もいれば死ぬ人もでてくる。

■□■ 計画どおりにいかない人生 ■□■

プロセスは期待するものがアウトプットとして得られなければな
らない。そのため、プロセスを設計する時には何を得たいのか、
まず考えなければならない。

次にそのアウトプットを得るためにはどんなことをしなければな
らないのかを考える。

この思考の連続によって、プロセスを構成する一連の活動がデ
ザインされてくる。その結果、最初に何が必要なのかも決まって
くる。

一方、人生はこのようにはいかない。
計画的にことを進めたいと思っても偶発的なことが多すぎる。

自分ではコントロールできない環境変化がある。そもそも感情を
持つ人間は1週間たつと得たいものが変わってくる。得たいもの
が変われば活動も変わらなければならないが、一度そのプロセ
スに乗ってしまうとそれを変えることも難しい。

変えたいと思っても簡単には変えられない理由も多い。それが
人生である。

■□■ 思ったことは実現する ■□■

しかし、それでも「人生はプロセスである」と言いたい。

学校に入る時、将来何をしたいのか考えるであろう。漠然と考え
る人、明確に考える人、詳細にステップまで考える人、人さまざ
まであろう。100人いれば100通りの考えがあるが、すべての考
えに実は活動が伴うのがプロセスのコアである。

漠然と考える人は漠然とした活動をイメージする、明確に考える
人は明確な活動をイメージする、詳細に考える人は詳細なスケ
ジュール化された活動を考えるであろう。

この活動を考えることがプロセスのコアであるというのは、時間
の経過だけからは期待されるものは生み出せないからである。

我々は心で思ったことは現実の世界で具現化することを経験的
に知っている。どの程度具現化するかは別にして、心で思わな
ければ何も起こらないことを知っている。

ただ、この心で思ったこと、すなわち考えたことを展開する、進
化させる、実行する、実践するなどいろいろな言い方はあるが、
一歩踏み出すのが活動である。

■□■ 人生のアウトプット ■□■

プロセスの定義は「・・・一連の活動がある」としているが、プロセ
スの一連の活動の最後の活動からのアウトプットが目標として
いた得たいものであろう。最後の活動からのアウトプットがプロ
セスの目標と一致していることがまずは重要なことである。

そして、この最後の活動には何らかのインプットがあるはずであ
るが、このインプットはその前の活動のアウトプットであることが
ポイントになる。そのひとつ前の活動にはインプットがあるが、こ
れはもうひとつ前の活動のアウトプットである。

このように、最終の活動のアウトプットがプロセスの目標と一致
していることを前提として、活動ごとのインプット、アウトプットを
明確にしていくことがプロセスアプローチ設計のポイントである。

■□■ アウトプットをイメージする ■□■

学校に入る時、将来何になろうか考えたら、最後の活動をイメー
ジする。

例えば、国家資格を取得するというようなことである。
この国家資格を取得するという活動のインプットは何であろうか
と考えると受験資格などが考えられてくる。

ではこの受験資格を取得するというひとつ前の活動のアウトプッ
トは受験資格獲得であり、その活動のインプットは専門知識の
習得、あるいは経験の取得、人生経験の蓄積など国家資格の
持つ専門性からいろいろなものになるであろう。このようにして、
一番最後の活動から前の活動へとインプット、アウトプットをつ
なげて思考していくと、最終的に最初の活動を考えるところにくる
が、そこで最初のインプットが、すなわちどこを志望校にするのか
が決まってくる。

■□■ プロセスアプローチはやり易い ■□■

組織におけるプロセスアプローチは、活動する環境条件を固定
させることができるので、この設計はやり易い。しかし、人生にお
いては学校を選ぶばかりでなく、会社を選ぶ、伴侶を選ぶ、住ま
いを選ぶ、仕事を選ぶ、旅先を選ぶ、車を選ぶ、遊びを選ぶ
などあらゆる選択に不確定要素が付きまとう。決して、組織がプ
ロセスを設計するように、人は人生を設計できない。

しかし、ISOの主張するプロセスアプローチの概念の中には人生
のノーハウとして応用するものが濃厚に入っていると思う。