JIS法改正に向けて― 標準化戦略4 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.202 ■□■    
*** JIS法改正に向けて ― 標準化戦略4 ***
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世界の主要国でのルール形成競争が熾烈になってきています。
自国の産業に有利な世界標準をいかに作るかに欧米各国は多くの
エネルギーを注入しています。

この動きは官民を挙げての各国の総力戦の様相を呈しています。
標準化はISOだけが舞台ではありません。
ISO以外を含めて各国、各機関、各組織にどんな動きがあるので
しょうか。

■□■ 国としての動き ■□■

スエーデンは、福祉車両についての関連の標準化をすすめています。
福祉国家としての国の強みを生かし、福祉車両用具の技術基準、
試験方法などをISO規格にするよう提案しています。

さらに、ISO規格をEU指令に結び付けることでEU域外への影響力を
増す戦略を取ろうとしています
ドイツ自動車工業会は、タイとのFTA交渉開始を背景に、CO2排出量に
連動する自動車税制をEU基準に提案しようとしています。

日本は強みのある省エネ技術の普及を東南アジア各国で展開しています。
ベトナムの基準認証制度に省エネ制度の評価方法を入れることで制度の
支援をしています。

■□■ Global GAP(EU)の動き ■□■

民間業界規格の統一による公共での利便性向上の実現を図ろうと
しています。
農産品の生産工程管理について、環境にやさしい製法、労働に
やさしい製法など望ましい農場管理規範を取り入れることで、食品の
安全管理の向上を目指す認証制度を作っています。

欧州の小売業界は自社の監査コストの低減等を目指し、この
グローバルギャップの制度を積極的に導入しようとしています。

■□■ ウオルマートの動き(アメリカ) ■□■

自社のサプライチェーンを通じて、製品の仕入れにおいてサステナビリティ
目標を設定しています。さらに食品業界で最大の問題であるフードロス
(Food loss)削減を提案し、環境にやさしい製品比率を高めることを
宣言しています。

バイイングパワー(買い手パワー)の発揮により、実質的な国際標準化を
すすめています。ウオルマートでは、自社で販売する製品の環境への影響要素
(Co2、水、土壌など)を指標化して、新たな入札制度を推進しています。

■□■ 世界ダイヤモンド会議 ■□■

あまり聞きなれない会議名ですが、アントワープで世界最大のダイヤモンド
買い付け会社デビアス(De Beers)などが参加する世界会議です。
この会議からは「紛争ダイヤモンド」の規制が議論されてきました。

デビアス社の推計によると世界総産出量の4%程度が紛争地からのもので
あるとして、紛争地からはダイヤモンドの買い付けをしないとしています。
「紛争ダイヤモンド」産出国は,アンゴラ, シエラレオネ,リベリア,
コンゴの4力国ですが,シエラレオネ反政府勢力制圧地域からは密輸品が
多く、この規制が有効ではないとの見方もあります。

■□■ ルール形成の影響 ■□■

ルール形成は関係する企業に多大な影響を及ぼします。
アドビシステムズ(米)は、PDFのデファクトスタンダード確立に成功した
企業です。

2008年、アドビはルールが世界に行き渡ったとして、ISO32000-1の提案、
成立に成功しました。アドビリーダー(読み取りソフト)は無料配布して、
それに付随するPDF作成ソフト、使用なども公開しました。
しかし、仕様の拡張を特許や著作権で制限することで、拡張に対応した製品は
自社でしか市場投入できない環境を作り市場を独占しました。

■□■ 電気脱水機 ■□■  

日本は昔から二槽式の洗濯機を開発、製造してきました。
ところが、国際的には、1993年イギリスより電気脱水機の安全性についての
規格提案がIECに対してなされ、国際規格が成立しました。

これにより、二槽式の洗濯機の脱水槽の二重ぶた構造が規格から外れて
しまいました。アジア諸国への洗濯機の輸出において、二重ぶた構造の
安全性は個別に交渉して認めてもらう必要が出てきてしまいました。

2008年にようやく安全性が国際的に認められ、IEC規格に採用されましたが、
それまでの影響は大きいものでした。