JIS法改正に向けて― 標準化戦略3 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.201 ■□■    
*** JIS法改正に向けて ― 標準化戦略3 ***
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第4次産業革命の領域では、研究開発・知財化、標準化、規制、
認証などの相互関係がますます重要になってきます。いままでは、
研究開発・知財化、標準化、規制、認証などは段階的に行われて
きました。これからは、コンカレント(concurrent)同時並行的
に行われるようになり、今まで2~3年かかっていた国内標準を
1年でJSA規格(JSAスタンダード:BSIのPASに相当する)にする
制度が動き始めています。

■□■ 新市場創造型標準化制度 ■□■

日本規格協会(JSA)は、中堅・中小企業などが開発した優れた
技術や製品を、国内外に売り込む際の市場での信頼性向上や差別化
などの有力な手段として、新市場創造型標準化制度を創設しました。

企業の優秀な技術開発を今後のマーケット戦略上の一つとする場合、
その技術を国内標準、国際標準にするステップをJSAが支援する制度
です。当然ですが、独自の技術をノウハウとして社内に留め置く、
特許にする、あるいは公開して標準にするという選択は技術戦略上
きわめて重要です。JSAが支援するとしている次のケースは、
いずれも組織の技術戦略上の結論が出た後のことになります。

 ・制定しようとする規格の内容を扱う業界団体が存在しない場合
 ・制定しようとする規格の内容を扱う業界団体が存在するものの、
  その規格作成の検討が行われていない、あるいはその規格作成
  の検討が行われる予定がない場合
 ・制定しようとする規格の内容が複数の業界団体にまたがるため
  調整が困難な場合

■□■ 日本再興戦略 ■□■

「日本再興戦略」では、重要指標KPIとして、2015年においては
「2020年までに中堅・中小企業などの優れた技術・製品の標準化を
100件実現する」としています。また、2016年においては「国際標準
化機関の幹事国引受件数を2020年までに100件超へ引き上げる」
としています。
日本再興戦略とは、第二次安倍内閣が2013年閣議決定した「成長戦略」
をいいます。2013年の後、2018年まで毎年日本再興戦略の改訂が行わ
れています。

ここでいう成長とは、組織に留まらず、国家そのものを成長させる
ことを意味しています。日本再興戦略は、英語では“JAPAN is BACK”
と表記され、2013年当初は産業競争力の向上を目的とする以下の3つ
のアクションプランによって構成されました。

・日本産業再興プラン – 日本の産業再生と雇用創出を目指す。
・戦略市場創造プラン – 未来産業の育成を目指す。
・国際展開戦略 – 日本経済の国際化発展を支援する。

■□ 国際市場における標準化の位置づけの変化 ■□■

国を上げての成長戦略に同期化して、日本の標準化もJIS法の改正に
合わせて、次のようなサービス分野に拡大しようとしています。

 ・観光(ISO/TC228)
 ・飲料水・下水(ISO/TC224)
 ・公式教育外学習(ISO/TC232)
 ・市場調査(ISO/TC225)
 ・金融(ISO/TC68)
 ・情報技術(ISO/IEC JTC1)
 ・電気自動車充電システム
 ・スマートシティなど

■□■ 自動走行の国際標準化 ■□■

このように多くのサービスの標準化が注目を集めています。トヨタ
自動車は、アメリカに自動運転技術の開発会社トヨタ・リサーチ・
インスティテュートアドバンスト・デベロップメント
(Toyota Research Institute-Advanced Development, Incを
立ち上げました。

トヨタは2015年10月に同社がこれまで取り組んできた自動運転の考え
方を「Mobility Teammate Concept」と命名し、その具現化となる
自動運転技術「ハイウェイ チームメイト」搭載の実験車を公開し
ました。自動車専用道路での合流、車線維持、レーンチェンジ、
分流を自動運転するクルマを2020年に実用化したいとしています。
標準化の世界で今最も注目を集めているのが、この自動走行の標
準化です。