ナラティブ内部監査15 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.311 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ― 
*** ナラティブ内部監査15 ***
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ナラティブ内部監査を実践するには次の2つがポイントになります。
その1つは、内部監査員と被監査者とが良い関係になること、すな
わち相互理解とコミュニケーションが重要なポイントです。
2つ目は問題解決ですが、まず何が問題かを見抜く力が必要で、次
には要因を分析して、適切に課題を解決する力が必要になります。
この2つのことを念頭に置いてナラティブ内部監査実践のための5
ステップを実践することをお勧めします。

■□■ 第2ステップ : どのような内部監査を行いたいか、
行うべきかを組織内でコンセンサスを得る ■□■
ナラティブ内部監査実践のための5ステップの中でキーとなる重要な
ステップです。この第2ステップが成功裏にいけばナラティブ内部監
査実践の道は大きく開けると言ってよいでしょう。
ナラティブ内部監査と称していますが、内部監査の本質は今までと変
わりません。あくまでも方法論を模索した結果の工夫がナラティブ内
部監査です。内部監査の目的を達成するための活動がナラティブ内部
監査です。しかし、この本来やるべき活動は、いままでいつも先送り
されて来てしまっています。
「活動」を工夫しようと思ったら、まずは活動を吟味しなければなり
ません。活動は目的地へ行くための乗り物ですから、乗り物に行先を
明確に伝えなければなりません。ここで言う行先とは目的地を意味し
ますから、内部監査では何が目的かをはっきりさせるべきです。「ど
のような内部監査を行いたいか、行うべきかを組織内でコンセンサス
を得る」とは内部監査の目的の明確化を意味しています。

■□■ どのような内部監査を行いたいか ■□■
ここまで、お読みになっていただいている読者の皆様は、すでにナラ
ティブ内部監査実践の目的は十分に理解されていると思います。第2
ステップの課題は、この「十分に理解していることを組織全体のコン
センサスにする」ことの方法です。
第1に思いつくのはトップが理解して、組織全体に内部監査の重要性
を指揮し支援をすることです。ISO9001箇条5.1 h) にもトップへの要
求として「h) 品質マネジメントシステムの有効性に寄与するよう人々
を積極的に参加させ,指揮し,支援する。」とされています。
しかし、現実には組織のトップが内部監査の目的を理解するには多く
の障壁があります。この障壁を乗り越えてトップに内部監査の重要性
を説明して理解を得られたという話もありますが、多くの例はその反
対だったと聞きます。

第2の考えは「自分たちで事例を作ろう」というものです。世の中の
動きをみていますと、トップダウンで成功した例とボトムアップで成
功した例の2つがあります。第1の考えはトップダウンですが、第2
で展開したい考えはボトムアップです。

■□■ ボトムアップとはどんな活動? ■□■
文字通り下(ボトム)から上(アップ)にという動きの活動です。物
事で力があるのは実績であって、理屈はその裏付けでしかありません。
反対に力のないものは理屈であって、力を得るには事例、実績という
裏付けが必要です。
組織全体が内部監査の重要性の理解は、実行した結果の効果しだいで
あると言ってよいでしょう。
ナラティブ内部監査を実施してみて、組織パフォーマンス向上への効
果が見られれば、組織の(内部監査の目的についての)コンセンサス
への障壁は大変低いものになります。
内部監査に関与している人が一番内部監査のメリット、デメリットを
知っているわけですから躊躇せずに「隗(かい)より始めよ※」とば
かり、早速実行してみることをお勧めします。
※ 《中国の戦国時代の格言》
隗(かい)という王様に使えている家来が王様から「世の中の賢者の
求め方」を問われて、賢者を招きたければ、まず凡庸な私を重く用い
よ、そうすれば自分よりすぐれた人物が自然に集まってくる、と答え
た。
新しいことをするには、まず身近なことから始めよ。物事は言い出し
た者から始めよという意味である。