ナラティブ内部監査23 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.319 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査23 ***
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ナラティブ内部監査実践のための第3ステップ「内部監査員、被監
査者の共同作業の基盤を作る」について話を進めています。「内部
監査員、被監査者の共同作業の基盤を作る」ためには、次の事項を
進めることが大切です。
1.コミュニケーション
2.自己理解
3.他者理解
4.よく聴く
5.よく伝える(アサーション)
6.個人と組織の共生

前回から、3.他者理解についてお話をしています。

■□■ 他者理解への道筋 ■□■
他者理解は、他人の気持ちを理解しようとすることですが、その前
に、自分を理解する、常に自分の気持ちを把握するように努力する
ことが大切であるとお話ししました。
子供時代に他人を叩いた経験のある人は、親から「他人(ひと)の
痛みを分かりなさい」と言われたのではないかと思います。同じよ
うに「他人(ひと)の気持ちを分かる人になりなさい」とも言われ
たかもしれません。子どもの頃、私は優等生でした?が、弟はしょ
っちゅう乱暴な振る舞いをして、親から「そんなことをされたらど
んな気持ちになるか少し考えなさい」と他人の気持ちを「分かるよ
う」叱られていました。
乱暴な振る舞いは叱られて当然ですし、自分がされて嫌なことは他
人にしないことは極めて大切なルールだと思います。しかし「そん
なことをされたらどんな気持ちになるか少し考えなさい」といって
も弟には意味不明だったと思います。
親は「他者の身になって考えられる人になって欲しい」と思って怒
っていたのでしょうが、小さい子供にとっては自分がそのような状
況に現実に置かれなければ、分かれと言っても無理だと思います。

■□■ 他人の気持ちを分かる ■□■
他人の気持ちを分かることは簡単なことではありません。多分、分
からないということが正解だと思います。この「分からない」とい
うことが、分かろうとする努力につながるのだと思います。
他人の気持ちの中には、事実、要望、感情などが含まれています。
他人の気持ちを分かるということは、それらすべの要素を分かるこ
とに通じます。とすると、とても他人の気持ちをその人が感じてい
る通りに感じることはできません。もちろん部分的、あるいは相当
な部分までは分かるとは思いますが、それでも想像する部分が残さ
れています。
内部監査でもそうですが、問題は想像する部分にあります。他人の
感情や気持ちを自分のことのように想像するその行為に「ずれ」が
生じます。
他人が思っている、まさにその感覚を正確にその通りに分かるとい
うことはできないのです。ましてや、他人の痛みをそのまま感じる
ことなどできません。

■□■ 絵に描いた餅 ? ■□■
ここまで論じてきて、では他者理解などはできないではないか、絵
に描いた餅ではないかと言う方もいらっしゃるかもしれませんが、
私はそうだからこそなお「他者理解」に努める必要があると思って
います。
自分が他人にしたことと同じことを他人からされても、他人が感じ
たように自分が感じるかというと、多分異なるでしょう。感じ方が
違うのです、人としては同じでも、前回も掲げましたように人には
個性があります。この個性が感じ方を異なるものにしているのです。
人の持って生まれた性質、考え方、感情の表現、利点、欠点、喜怒
哀楽の感じ方、体格、風貌、容姿、話し方など自分が他人と違うす
べてのことは個性です。中でも喜怒哀楽の感じ方・感覚は人それぞ
れ大きく異なります。誰でも思い当たるところでは、暑い・寒い感
覚、食べ物の嗜好、音楽の好みなどの違いは感覚からきています。
この個性を意識すると、他人の思い、感覚は「自分には本当のとこ
ろは分からない」ということが分かります。
このことが「他者理解」で一番大切なことであると思います。