Monthly Archives: 4月 2022

平林良人の『つなげるツボ』Vol.357

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.357 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました
*** SDGインパクト基準10 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

350号で17目標の全体像をお伝えしましたが、その後から一つひと
つの目標に関してお話をしています。今回は目標5についてです。

■■ 目標5 ■■
目標5 . ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワ
ーメントを行う<あらゆる場所におけるすべての女性及び女児に対す
るあらゆる形態の差別を撤廃する。>

最近「ジェンダー(Gender)」という言葉を聞きます。単なる「男女、
性別、性差或いは性」とは異なる意味を持っているようです。

ジェンダーは、社会的・文化的に形成される性別、つまり、特定の社
会で共有されている価値観を元に決められる役割からくる性別のこと
です。

男は強い、女は弱いなどが一般的な社会的概念ですが、強くても弱く
ても両性は平等であるので与えられる機会も平等であることが目標5
の意味するところです。

私が子供の頃、祖母から男はお勝手(台所)に入ってはいけないと教
えられました。日本には昔から「男子厨房に入るべからず」と言われ
てきた名残りがまだ残っていた時代に育ちました。

■■ ジェンダーギャップ ■■
日本では30,40年の間に男性と女性の区別はずいぶんと是正されて
きました。「男子厨房に入るべからず」なんて言ったら笑われる時代
になっており、「イクメン」と言われる若い人にとっては、料理する
ことは当たり前になっています。

しかし、世界と比べると日本のジェンダー平等はまだランキング下
位にいます。
世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)では、各国に
おける男女格差を測るジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index:
GGI)を発表しています。

内閣府男女共同参画局総務課によると、この指数は、「経済」「政治」
「教育」「健康」の4つの分野のデータから作成され、0が完全不平
等、1が完全平等を示しています。

2021年の日本の総合スコアは0.656、順位は156か国中120位(前
回は153か国中121位)でした。前回と比べて、スコア、順位とも
に、ほぼ横ばいとなっていますが、先進国の中で最低レベル、アジア
諸国の中で韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果となりました。

日本は、特に、「経済」及び「政治」における順位が低くなっており、
「経済」の順位は156か国中117位(前回は115位)、「政治」の順
位は156か国中147位(前回は144位)となっています。これは、
各国がジェンダー平等に向けた努力を加速している中で、日本がこ
の分野で遅れを取っていることを示しています。

経済分野では、管理職の女性の割合が低いこと(14.7%)、パートタ
イムの職に就いている女性の割合は男性のほぼ2倍であり、女性の
平均所得は男性より43.7%低くなっていることが指摘されています。

■■ エンパワーメント ■■
目標5には「エンパワーメント」という用語が使われています。
empower(エンパワー)とは、「力(権限)を与える」という動詞
ですが、その名詞形で、一人ひとりが本来持っている力を発揮し、
自らの意思決定により自発的に行動できるようにすることを意味し
ます。

エンパワーメントは、従来自由公民権運動、フェミニズムなど市民
運動の場面で使われた言葉でしたが、現在は社会、組織の中で教育、
福祉、保健医療に関しても使われるようになっています。
組織でエンパワーメントは、「権限委譲」といった意味で捉えられ、
人材育成やマネージメントに関わる言葉の一つになっています。

「権限委譲」した結果、部下が能力を発揮するようになり仕事の遂
行能力が向上すると、組織では部下が「能力を発揮」したと言いま
すが、目標5のエンパワーメントは「すべての女性及び女児」が能
力を発揮することを目標としています。

平林良人の『つなげるツボ』Vol.356

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.356 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました
*** SDGインパクト基準9 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

350号で17目標の全体像をお伝えしましたが、前回から一つひとつ
の目標に関してお話をしています。今回は目標4についての2回目
です。

■■ 目標4 つづき ■■
目標4.すべての人々への、包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、
生涯学習の機会を促進する。

前回は目標4について、開発途上国の教育機会が与えられない子供た
ちの話をしましたが、今回は日本における義務教育について話をした
いと思います。

言うまでもありませんが、教育制度は豊かな人間社会をつくるために
無くてはならないものです。教育が社会に行き渡ることによって、民
主的合意も、勤労者の雇用や、職業の選択・転換も、社会全体におい
て比較的円滑に行われることになります。

教育があってこそ、活発で自由な言論、多様で創造的な発想、多くの
人びとが参加するベース作りなどが可能となります。
 
国民一人ひとりが、教育という公共インフラについて自分で考え、自
分で発信し、たえず教育を「自分たちのもの」として改善していく努
力を続けることが重要です。

自由経済社会にあっては、競争によって個人が抑圧される、貧富に格
差が付くなどの制度的デメリットが存在しますが、そのことで教育機
会に影響がないようにしなければなりません。公共インフラとしての
基盤がしっかりしたものであれば、お金がこの世で一番大切なもので
あるという錯覚もなくなるはずです。

■■ 教育という公共財産 ■■
公共インフラには、学校教育のほか社会保障、保健所、警察、消防、
郵便、公園、上下水道、ゴミ処理、道路や交通などがあり、我々の生
活に不可欠な公共サービスを提供しています。

公共サービスは営利事業とちがって、効率性や利潤を第一目的とする
ものではなく、サービスを如何に向上させるかを意識し第一義とする
ことが重要であると認識されています。

このような公共サービスの中で教育は他の公共サービスと全く異なる
特質を持っています。

鉄道、水道などの社会資本の整備と教育サービスの違いは何でしょう
か。一番大きな違いは、対象が「人の内面」にあるということです。
他のサービスもその対象は基本的には「人」に関することですが、あ
くまでも人の外面であって人の内面にサービスの重点を置くのは教育
だけです。

■■ 教育という公共財産 ■■
公共サービスは、自我の育っていない幼児から、多くのことを経験し
た成人までが対象であり、対象ごとに特化したサービスを提供しなけ
ればならないというのも大きな特徴です。

小学校の学習指導要領には「生きる力を育む」とあります。生きる力
は多くの要素から成り立っています。集団生活や社会の中で生きてい
く為には多くのことを学ばねばなりません。

中学生になると「自分を知る」ことが学習指導要領には出てきます。
中学生にとってみると、自分は曖昧模糊としたもので、自分の思いが
第三者からどう見えるのかはなかなか見えてきません。

自分の心の動き、常に揺れ動く判断、他者からの働きかけで変わって
しまう自分の考えなど、自分とは何者かを考え始めると焦点の結ばれ
た像がどんどん離れて行ってしまいます。

■■ 学校という公共財産 ■■
学校は必ずしも学問を教えるところではありません。本質的には、生
きていく為に必要最小限の事を教えるところです。ところが、学校を
卒業しても満足に生きていくことができない、生活ができない人たち
が増えています。

微分積分ができないからと言って、生きていく上で、支障があるわけ
ではありません。しかし、挨拶ができなければすぐに困ります。学校
で教えるべき事は、「生きていく」為には、何が必要なのかということ
です。

生きるとは生命力の全体的な発揮であり、偏った部分的な発揮では豊
かな人生を送れません。私たちは食べること、眠りにつく家を持つこ
と、愛し愛されることなどを通じて、社会の中につながった基盤を持
って自己実現を図ることができ、そうしたことが生きるということで
あると思います。学校はそのことを教えていく場であると思います。

雄大な山を見たり、森の中を歩いたり、太陽の輝きを浴び、樹々がき
らめくのを見たりする時に生きていることを実感します。学校はそん
なことを教える場になってほしいと思います。

平林良人の『つなげるツボ』Vol.355

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.355 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました
*** SDGインパクト基準8 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

350号で17目標の全体像をお伝えしましたが、以降一つひとつの目
標に関してお話をしています。今回は目標4についてです。

■■ 目標4 ■■
目標4 .すべての人々への、包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、
生涯学習の機会を促進する。
<2030年までに、すべての女児及び男児が、適切かつ効果的な学習
成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修
了できるようにする。>

世界の総ての子どもが教育を受ける権利があるにもかかわらず、貧困、
紛争、人種偏見、国家予算などの理由から多くの子どもたちが教育を
受けられていない現状があります。

2017年時点で、世界では6~14歳の1億2,400万人の子どもたちが
学校に通えていないそうです。

学校に通えない子どもたちは、計算や文字の読み書きができないまま
大人になってしまい、各種の格差を持ったまま人生を送ることになっ
てしまいます。

■■ 教育を受けられない国  ■■
識字率の低いアフリカ地域の国には子供が教育を受けられない国が多
く存在します。東ヨーロッパと中央アジアの国々の識字率は男性が
100%、女性が99%と高いのですが、南アフリカなどの途上国では識
字率が低く、したがって教育に対する認識が低い傾向があります。

識字率は教育を受けているかどうかで大きく変わるため、識字率で男
女格差のある途上国では男女間の教育格差があることが問題視されて
います。

■■ 女子だからという理由  ■■
貧困層が多い国では、男子が女子よりもいろいろな面で優遇される慣
習が多く残っています。そのため、家庭が貧困な場合は女子よりも男
子を優先的に学校に通わせます。

なぜ、女子が教育を受けられないのかと言うと、「児童婚」の文化があ
るからです。貧困層の女子は、体が未熟なうちから児童婚を強いられ
ることがあるため、「女子に教育はいらない」という解釈が広まってい
るのです。

女子が学校に通えない理由の1つにトイレ問題もあります。貧困や教育
不足で悩んでいる国は、インフラが整っていないため、水を引くことが
できずトイレがありません。

それを理由に、学校に通えない女子も多いのです。子どもが教育を受け
られるようにする支援の中には、学校に女子トイレを設置する取り組み
が多く見られます。

■■ 児童労働も学校へ行けない理由  ■■
途上国の多くの場所では家事や幼児の子育ては子どもが担っています。
貧困な家庭が多い途上国では、両親が揃って働いていることも多く、家
のことや小さなきょうだいの世話などの労働をしなければなりません。

そのため、学校へ通っている時間がなく、教育を受けられない状況に陥
ってしまいます。

家事関係の中で多くの時間を要するのが水汲みです。この労働の担い手
も子どもであることがほとんどです。

飲み水などを確保するのに水道や井戸がない地域が多く、池や川、湖ま
で水を汲みにいく必要があります。

水を汲むためには片道多くの時間のかかる場所に行く必要があり、しか
も家族が1日に使う量を確保するために何往復もしなければいけません。

■■ 戦争も大きな理由  ■■
現在ウクライナ戦争が目の前で行われています。TVでがれきの山となっ
てしまった街をみれば学校へ行くどころではないことは一目瞭然です。

学校に通えない子どもが暮らしている国では、戦争が長期化しているケ
ースが多いのです。

そのような国では、学校を訓練所や避難所に指定しています。学校が頑
丈に作られていることと、学校が町の中心部に位置しているのが理由です。

軍の訓練が行われているすぐ横で、子どもたちが勉強しています。そん
な最中、学校が攻撃されることがあり、子どもたちが命を落とす事例が
後を絶ちません。

学校に通う途中や帰宅する途中で攻撃に巻き込まれることもあり、安心
して学校に通える環境ではないのです。

■■  学校の建設  ■■
途上国では子どもの人数に対して学校の数が足りていません。1番近い学
校まで数十km離れているケースは珍しくなく、子どもたちはその道のり
を何時間もかけて徒歩で通っています。

その現状を変えるべく、学校を建設する支援も進んでいます。学校の建設
や教師の質向上を行っても、子どもたちが学校に通ってくれなければ意味
がありません。

そのため、現地で暮らす子どもや親に、教育の必要性を理解してくれる試
みも大切です。教育を受けないことの危険さや受けるメリットなどを指導
する必要があります。

教育は世界中のすべての人にとって人生を充実させる基盤となるため、な
くてはならないものです。

平林良人の『つなげるツボ』Vol.354

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.354 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました
*** SDGインパクト基準7 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

350号で17目標の全体像をお伝えしましたが、351号から一つひと
つの目標に関してお話をしています。今回は目標3のつづきです。

■■ 目標3.健康、福祉 ■■
目標3健康について、前回、中世ヨーロッパの王妃の話をしました
が、残っている記録に基づいて再度お話をします。人々の暮らしは
今からは想像がつかないくらい劣悪な状態に置かれていました。

イングランド王エドワード1世の王妃エリナー(1241-1290)は
16人の子どもを授かりました。エリナーの子どもたちは中世ヨーロ
ッパで望みうる最高の条件のもと、最高の養育環境で育てられまし
た。彼らは宮殿で暮らし、好きなだけ食べ、暖かい服もたっぷりあ
り、当時とすれば最高にきれいな水を飲み、大勢の召使いや腕利き
の医師たちに囲まれて生活していたと当時の宮殿生活から推察でき
ます。

■■ 王妃エリナーの不屈の人生 ■■
しかし、そのような最高の養育環境にあったにも関わらず、彼女の
16人の子どもたちの生涯は次のようなものでした。
 1.1255年 娘(名前は不詳) 出産時に死亡
 2.娘 キャサリン 1歳あるいは3歳で死亡
 3.娘 ジョーン 6カ月で死亡
 4.息子 ジョン 5歳で死亡
 5.息子 ヘンリー 6歳で死亡
 6.娘 エリナー 21歳で死亡
 7.娘(名前は不詳) 5カ月で死亡
 8.娘 ジョーン 35歳で死亡
 9.息子 アルフォンソ 10歳で死亡
 10. 娘 マーガレット 58歳で死亡
 11.娘 ベレンガリア 2歳で死亡
 12.娘(名前は不詳) 出産時に死亡
 13.娘 メアリー 53歳で死亡
 14.息子(名前は不詳) 出産時に死亡
 15.娘 エリザベス 34歳で死亡
 16.息子 エドワード 43歳で死亡(殺される)

なんと、16人のうち成人にまで育った子はたったの6人です。

息子で子供時代の危険な年月を生き延びた末子のエドワードは、父
親が亡くなると王位を継承して、イングランド王エドワード2世と
なりました。言い換えれば、エリナーは、夫エドワードの後継とな
る男子を育成するという、イングランド王妃として根本的な使命を
果たすのに、16回もの試みを重ねなければならなかったのです。

■■ エドワード2世の運命 ■■
末子として生まれたエドワードは、それまで後継王と見なされてい
たアルフォンソが10歳でなくなったため、生後1歳では後継者と
して育てられるようになりました。しかし、父親がスコットランド
などとの戦争でほとんど城に居なかったため君主としての教育であ
る帝王学を得る機会はありませんでした。

そればかりか、女子の兄弟の中で育ったため歪な人格となり、歴代
イギリス王の中で最低の王と言われるようになったと言われていま
す。当時欧州一の美貌の持ち主と言われたフランスのイザベルと結
婚しますが、彼女を顧みることがあまりなく、43歳にして彼女の
命を受けた騎士によって惨殺されてしまいます。

■■ エリナーとエドワード1世夫婦の子どもたち ■■
私たちが知る限り、エリナーとエドワード1世夫婦はすこぶる健康
で、子供たちに致命的な遺伝病を伝えることはありませんでしたが、
それでも、16人の娘と息子のうち62%に当たる10人が子供時代に
亡くなりました。11歳以上になるまで生きたのはわずか6人で、
全体の18%に当たる3人だけが40歳を超えました。

エリナーとエドワード1世夫婦は、平均すると3年に1人の割合で
10人の子どもを次から次と失ったのです。

■■ ギルガメッシュ・プロジェクト ■■
世界でも最古の神話の一つである古代シュメールのギルガメッシュ
神話のテーマは「永遠の生」だそうです。

21世紀の現代、人間ゲノムの解明、健康、環境、医療の進歩により、
人生150年は視野に入っているそうです。次世紀(22世紀)には、
ギルガメッシュ王の願いも叶えられるかも知れないそうです。