SDGインパクト基準10 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.357 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** SDGインパクト基準10 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

350号で17目標の全体像をお伝えしましたが、その後から一つひと
つの目標に関してお話をしています。今回は目標5についてです。

■■ 目標5 ■■
目標5 . ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワ
ーメントを行う<あらゆる場所におけるすべての女性及び女児に対す
るあらゆる形態の差別を撤廃する。>

最近「ジェンダー(Gender)」という言葉を聞きます。単なる「男女、
性別、性差或いは性」とは異なる意味を持っているようです。

ジェンダーは、社会的・文化的に形成される性別、つまり、特定の社
会で共有されている価値観を元に決められる役割からくる性別のこと
です。

男は強い、女は弱いなどが一般的な社会的概念ですが、強くても弱く
ても両性は平等であるので与えられる機会も平等であることが目標5
の意味するところです。

私が子供の頃、祖母から男はお勝手(台所)に入ってはいけないと教
えられました。日本には昔から「男子厨房に入るべからず」と言われ
てきた名残りがまだ残っていた時代に育ちました。

■■ ジェンダーギャップ ■■
日本では30,40年の間に男性と女性の区別はずいぶんと是正されて
きました。「男子厨房に入るべからず」なんて言ったら笑われる時代
になっており、「イクメン」と言われる若い人にとっては、料理する
ことは当たり前になっています。

しかし、世界と比べると日本のジェンダー平等はまだランキング下
位にいます。
世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)では、各国に
おける男女格差を測るジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index:
GGI)を発表しています。

内閣府男女共同参画局総務課によると、この指数は、「経済」「政治」
「教育」「健康」の4つの分野のデータから作成され、0が完全不平
等、1が完全平等を示しています。

2021年の日本の総合スコアは0.656、順位は156か国中120位(前
回は153か国中121位)でした。前回と比べて、スコア、順位とも
に、ほぼ横ばいとなっていますが、先進国の中で最低レベル、アジア
諸国の中で韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果となりました。

日本は、特に、「経済」及び「政治」における順位が低くなっており、
「経済」の順位は156か国中117位(前回は115位)、「政治」の順
位は156か国中147位(前回は144位)となっています。これは、
各国がジェンダー平等に向けた努力を加速している中で、日本がこ
の分野で遅れを取っていることを示しています。

経済分野では、管理職の女性の割合が低いこと(14.7%)、パートタ
イムの職に就いている女性の割合は男性のほぼ2倍であり、女性の
平均所得は男性より43.7%低くなっていることが指摘されています。

■■ エンパワーメント ■■
目標5には「エンパワーメント」という用語が使われています。
empower(エンパワー)とは、「力(権限)を与える」という動詞
ですが、その名詞形で、一人ひとりが本来持っている力を発揮し、
自らの意思決定により自発的に行動できるようにすることを意味し
ます。

エンパワーメントは、従来自由公民権運動、フェミニズムなど市民
運動の場面で使われた言葉でしたが、現在は社会、組織の中で教育、
福祉、保健医療に関しても使われるようになっています。
組織でエンパワーメントは、「権限委譲」といった意味で捉えられ、
人材育成やマネージメントに関わる言葉の一つになっています。

「権限委譲」した結果、部下が能力を発揮するようになり仕事の遂
行能力が向上すると、組織では部下が「能力を発揮」したと言いま
すが、目標5のエンパワーメントは「すべての女性及び女児」が能
力を発揮することを目標としています。