2026年4月1日
———————————————————————————
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.551 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「内部監査」:AIエージェントの活用7 ***
———————————————————————————
X社設計部のナレッジを教え込む続きです。この3つ目の記録はAIエージェントによる内
部監査の成否を決める重要ナレッジです。記録には2種類あります。組織が標準書で規定
している記録が1つです。2つ目は標準書で規定されてはいないが、組織内に記録として
扱える可視化されたメール、会議チャット、帳票、図表などです。今回はISO規格に準拠
した内部監査を想定していますので、前回監査から今日監査までの設計部の規定された記
録、すなわち1つ目の記録をAIに教え込みます。ただ、AIに実施させる内部監査によっ
ては(不適合分類、内部統制監査、不祥事監査など)2つ目の記録の活用が必要になりま
す。
■□■ 前回~今日までの設計部記録を教え込む ■□■
AIエージェントによる内部監査の成否を決める重要プロセスです。ここは客観的証拠を
AIが取り扱える状態にする作業で、ここを簡単に行うと監査報告書類は単なる読み物に
なってしまい、現場の実態を反映させた監査にならなくなります。
(1) 規定された記録をすべてを網羅(漏れ・過剰の防止)
「設計部記録」といっても、企画書、要求仕様、設計計算、図面、変更通知、DR議
事録、試作指示、試験成績、FMEA、レビューコメント、承認ワークフロー、会議録、
教育記録、力量評価、外注往復文書など多岐にわたります。ISO規格並びに社内で規
定さている記録をすべてピックアップし、それら要求されている標準書との関係を一
覧表にします。
(2) メタデータ付与(突合可能性の確保)
AIは突合/照合に強いのですが、その特性を活かすにはキーが必要です。記録に、プ
ロジェクト案件ID、機種、日付、版、担当、承認者、関連図面番号、関連標準条項、
工程(企画/設計/試作/DR/量産認定)などのタグを付けておくと、規定と実際
のギャップ抽出が確実にできるようになります。
(3) 文書化した情報の管理(ISO9001 7.5)
標準の改訂記録も重要です。業務を行う標準が最新化されていないと実施記録があっ
ても無意味になる場合があります。実施記録は「ある」だけでは不十分で、何のため
に記録しているかの背景も確認します。標準の改訂記録を読み込ませ、一定以上の期
間(例えば5年)改訂がされていない文書をピップアップさせます。
(4) 機密・個人情報・知財の取り扱い
設計記録には多くの機密が含まれています。AIエージェントを活用する常識として、
運用ではアクセス制御(最小権限)、持ち出し禁止、匿名化、モデル学習への利用禁
止などを事前に決め、「監査目的の範囲でのみ処理する」ことを手順化します。
■□■ ギャップを不適合として取り上げる ■□■
ナレッジ教え込みのステップの次は、発見したギャップの取り扱いをAIに教え込むステ
ップになります。
AIがギャップを取り扱う場合、2つの考え方があります。
(1) すべてのギャップを一覧表にする。
その後は人間がギャップの重要度に応じた分類をします。例えば、次のような3つの
分類です。
・不適合:要求事項に対して行った証拠が無い。
・観察事項:要求逸脱と断定できないがリスク兆候や弱点がある。
・改善提案:要求事項は満たすがより有効・効率的にできる。
(2) AIにギャップの分類までさせる。
3つの分類をAIにさせるためにはAIに証拠(記録)の強さをスコア化させる必要が
あります。記録には2種類あると言いましたが、この場合には2つ目の記録が必要に
なります。
1つ目(A)、2つ目(B、C)の記録を次のように格付けします。AからCと格付けは
低くなります。
格付けにそれぞれスコアを付けてギャップの重要度を決めさせます。
A:公式記録(1つ目の記録)
B:準公式記録(2つ目の記録、メール、チャット、個人メモなど)
C:口頭記録(2つ目の記録、インタビューなど)
■□■ AIが設計部スタッフにインタビューする ■□■
上記、(2)Cのインタビューについて考えます。AIが設計部スタッフにインタビューす
る目的は、記録だけでは見えない「運用実態、認識、例外処理、暗黙知」などを確認する
目的で行います。ISO9001 7.3「認識」、7.2「力量」、8.1「運用の計画・管理」などにある
要求事項を念頭にインタビューでの質問を設計します。
AIには次のような質問を設計スタッフにしてその答えに基づいてギャップの重要度を決め
るよう教え込みます。
・直近の案件を指定して「その時どうしたか」を時系列で答えてもらう。
・急ぎの案件で省略することはあるのかなど例外について教えてもらう。
・失敗しそうなことを聞く(最近ヒヤリとしたことは?)
インタビュー中に、実際のシステム画面、最新版フォルダ、承認ワークフロー、図面管理
台帳、試験データの元ファイルなどをその場で見せてもらうことで、口頭記録(C又はB)
を公式記録(A)に引き上げることができます。
