2026年4月22日
———————————————————————————
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.554 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」2 ***
———————————————————————————
「ヒューマンエラー」にはいろいろなタイプがあり、類型化することは難しいのですが、
典型的な例として、エラーには次のようなものがあります。
・取り違え(異品):品番、左右、ロット、顧客、宛先
・抜け(未実施):締付け、投入、貼付、測定、記録
・順序違い:工程順、混合順、熱処理条件、承認順
・設定ミス:数値、単位、桁、条件、版数
これらに対して、どのような「できない化」または「すぐ分かる化」を考察することが設
計の基本となります。
■□■ ポカヨケの具体例 ■□■
ポカヨケは「治具」だけでなく、帳票、ラベル、システムUI(User Interface)、物流案内
ガイド(色テープ貼付け線)まで対象になりえます。上で述べた「ヒューマンエラー」タ
イプ別に具体的な実施例を示します。
(1)取り違え防止(異品・誤組合せ)
●形状キー(非対称設計、キー溝、ピン配置)
向きが逆だと入らない設計。左右部品が逆に付かない。電装コネクタの異形化が典型
的な例である。 →担当者が確認するまでもなく「エラーそのものが成立しない」。
●色、表示、置き場の連動(定置管理+色分け)
部品箱の色、棚番、現品票、指示書の色を一致させ、異なるものが混ざると違和感が
出るようにする。→視覚により思い込みを減らす。
●QRコード、バーコード照合(スキャン必須化)
部品、伝票、指示書、ラベルを照合し一致しないと先へ進めない。 →デジタルのイ
ンターロックで「確認漏れ」を排除。
(2)抜け防止(入れ忘れ、締め忘れ、貼り忘れ)
●部品有無センサー/重量チェック
投入後に重量が規定範囲に入らないと次へ進めない。ネジ箱を秤で管理し、取り出し
本数が合わないとアラームで注意喚起。 →人のカウントに頼らない。
●トルクレンチの締付け完了記録(電子トルク)
規定トルク、規定角度の達成を機器が判断し、完了ログが残る。 →締め忘れだけで
なく、締め過ぎ/不足も同時に押さえる。
●チェックリストの“ゲート化”
チェックリストは形骸化しやすい。工程の完了条件に組み込み、未チェックでは次工
程へ払い出すことを不可にする。 →「やったはず」を排除する設計。
(3)順序違い防止(工程順、混合順、承認順)
●治具で順序を固定(Aを完了しないとBができない)
セット治具や作業台の配置で自然に順序が決まる。 →手順書依存を減らす。
●システムで承認順序を固定(ワークフロー)
サービス業や事務で承認済みでないと次へ進めない。
→例外処理は“例外手順”として管理することが必要。
(4)設定ミス防止(数値、単位、版数)
●レシピ的管理(条件呼び出し方式)
品番ごとに決められた条件を呼び出す。基準からの変更は権限設定と履歴管理で行
う。→入力ミスを減らす。
●入力制約(範囲チェック、プルダウン化、単位固定)
数値入力は上限下限を設定し、異常値は受け付けない。自由度は減らす。
→注意不足であっても対象業務を“できない化”する。
■□■ ポカヨケでも防げないヒューマンエラー ■□■
ポカヨケは有効であっても限定的なので。限界を理解して他の仕組みと組み合わせると活
用範囲が広がります。
(1)例外運用(緊急対応、代替、手作業切替)
ポカヨケは標準状態の作業には強い反面、例外処理には弱い構造を持っている。したが
って、例外的な運用を避けることが難しい場合には、ポカヨケは効果が無いことを前提
に工程を管理する。
(2)意図的な逸脱
センサーを塞ぐ、インターロックを解除する、後で記録を書く、などの逸脱行為は現場
で現実的に起きやすい。個人のモラルだけでなく、納期プレッシャーや評価制度、過負
荷などの組織要因が原因となって意図的な逸脱が誘発される。日常のコミュニケ―ショ
ン、風通しの良い文化づくりが必要である。
(3)複合タスクによる認知エラー(割込み、同時作業)
ポカヨケは単発エラー防止には有効であるが、複合化された作業には弱い特性がある。
多能工化、段取り替えの頻繁化、役割分担の変更などは極力減らす業務のやり方に工夫
が必要である。
(4) ポカヨケ装置自体の故障、設定不良
「ポカヨケを付けたから安心」ではなく、ポカヨケの健全性を維持する仕組みが必要で
ある。センサーのなど保全計画、点検、校正、ソフト変更管理、フェールセーフ設計
(安全側に倒す)などが重要である。
このように、ポカヨケは「工程内の誤作業」を大きく減らしますが、設計、要求、例外運
用、組織要因、装置健全性、変更といった別領域におけるリスク回避には限界があります。
ISO9001の運用においては、8.5.1 g)を単独な要求として扱うのではなく、6.1(リスクと
機会)、7.2(力量)、7.5(文書化した情報)、8.6(リリース)などの要求と連動させて、
管理された状態を確立するとマネジメントシステムは強靭な仕組みになります。
