ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」4 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年5月13日
———————————————————————————
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.556 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」4 ***
———————————————————————————
ポカヨケの近代的な例としてコード照合の話をしています。コード照合は歴史的にバーコ
ードから始まりました。人は誰でも誤りを起こすので、それに対する解決策として、機械
に照合を実施させるという発想は今ではAIに繋がって生きています。バーコードの発明は
意外と古く、1948年に米国で考案されています。バーコード照合は今では想像以上に多く
の応用例があります。

■□■ 製造業のバーコード具体例 ■□■
モノつくりにおけるバーコード照合のポイントは次の3つにあります。
 1.どこで照合するか(ゲート)
 2.何を正しい値として持つか(指示)
 3.不一致時にどう止めるか(異常処理)
製造業における応用例を調べました。
(1)入荷ロット照合
 発注情報(品番・数量・ロット条件)と、納入ラベルのスキャン情報を照合します。誤
 納入・数量違い・ロット違いを発見して、エラーの場合にはその場で止めます。受入段
 階で止めることで後工程に影響を及ぼさないようにします。
(2)棚入れ・ロケーション照合
 棚(ロケーション)にバーコードを付け、品番とロケーションの組合せを照合します。
 棚入れのエラーはその後のピッキングミスを誘発するため、ここで正しい置き場を固定
 します。
(3)ピッキング照合(部品取り揃え)
 指示書の部品番号を正しい値として、ピックした部品をスキャンし、品番、数量を照合
 します。不一致ならその場で止めて出庫させない運用をします。多品種ほど効果が大き
 い例です。
(4)工程開始条件としての照合(作業指示×部品×設備)
 作業指示票のバーコード、部品ラベル、設備ID(設備にもバーコード)をスキャンし、
 正しい組合せでないと工程の開始を許可しない仕組みにします。段取り替えの時に起こ
 りがちな組み合わせエラーを防止します。
(5)投入照合(原材料・副資材)
 製造工程の途中で原材料などを投入する工程で、投入物の品番・濃度・ロットを照合し
 ます。原材料取り違えは重大問題に直結するため、スキャンは必須項目とし、かつ誰が
 いつ投入したかの記録を残します。
(6) 検査票・治具・測定器の照合
 工程内、最終工程などにおける検査で使用する治具や測定器をスキャンし、正しい検査
 が行われたか記録に残します。測定器の校正期限とも連携できるとさらに効果が高まり
 ます。
(7)梱包照合
 製品シリアルと箱ラベル、出荷伝票を照合し、誤梱包・誤出荷を抑えます。特に「似た
 製品」「同一顧客の複数仕様」が混在する場合に有効です。
(8)出荷ラベルの版数・宛先照合
 ラベル発行はミスが起きやすい工程です。受注番号をスキャンしてラベルを自動発行し、
 手入力を排除します。貼付後に製品とラベルを再スキャン照合し、誤貼付を検出します。

■□■ サービス業のバーコード具体例 ■□■
サービス業においても製造業における応用例がそのまま使えますが、書類、物などの取り
違え防止にもバーコードは応用されています。
(1)医療の検体、処方薬、事務の申込書類など、取り違えが重大事故につながる領域で
 は、IDスキャンで本人・対象・処理工程を照合し、誤処理を止めます。
(2)作業完了の証跡としてのスキャン(実施証明)
 点検作業で設備のタグをスキャンしないと完了登録できないようにする。やったつもり、
 巡回漏れを防ぎ、監査証跡にもなります。
 これらに共通するのは、照合の位置を「工程の節目(ゲート)」に置くことです。受入・投
 入・工程開始・梱包・出荷は、間違うと影響が大きく、戻しにくい。ISO9001の観点で
 は、「適切な段階での監視及び測定」という発想と整合し、管理された状態の説明がしや
 すくなります。

■□■ バーコードでも防げないヒューマンエラー ■□■
バーコード照合は強力ですが、万能ではありません。限界を理解し、補完策を設けること
が実務で重要です。
(1) スキャンしていない問題(運用逸脱)
 最大の弱点は、任意運用や、忙しさによるスキップです。対策は「スキャン必須化(イン
 ターロック)」、および例外解除の権限管理・ログ化です。
(2) 正しいものを正しくスキャンしたがラベルが間違っている問題
 誤ラベルが貼られていれば、スキャン照合は誤りを見抜けません。ラベル発行元のプロセ
 ス(印字内容、発行条件、版数管理)をポカヨケ化する必要があります。
(3) コードの品質問題(汚れ、擦れ、反射、曲面)
 読めないコードは現場での手入力を誘発し、ヒューマンエラーが復活します。印字品質管
 理、貼付位置の標準化、耐環境ラベル、読み取り機の選定が必要です。
(4) システム側の不備(品番紐付けミス)
 正しい値が間違っていれば、照合ロジック自体が誤ります。これはマスタ管理、変更管理
 に関する問題でありシステムの検証、整備が必要です。
(5) 例外処理での混乱(代替品、特採、返品、再投入)
 例外が多いと人による「とりあえず通す」運用が起きます。例外ルールを標準化し、例外
 時こそログを残す設計にします。
(6) 一致しているが別に問題がある
 バーコードは主に識別・取り違えには強いのですが、品質特性(外観、性能、期限、保管
 条件逸脱など)を保証するわけではありません。期限や温度履歴など、別の監視が必要に
 なります。
(7) セキュリティ/不正(意図的なすり替え)
 ラベルの貼り替えが許されたり、コードのコピーが可能な運用においては不正が入り込む
 余地ができます。重要な製品については番号のシリアル化、改ざん検知ラベル、権限管理、
 監視などと組み合わせます。