目に見えない穴、目に見える突起 | 平林良人の『つなげるツボ』

—————————————————–
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.124 ■□■
*** 目に見えない穴、目に見える突起 ***
—————————————————–

■□■ リスクは目に見えない穴 ■□■

ISO9001:2015には、2008年版にはない、新しい要求としてリス
ク及び機会への取組み」が規定されています。

「6.1.1 品質マネジメントシステムの計画を策定するとき,組織は,
4.1 に規定する課題及び4.2 に規定する要求事項を考慮し,次
の事項のために取り組む必要があるリスク及び機会を決定しな
ければならない。

a) 品質マネジメントシステムが,その意図した結果を達成でき
るという確信を与える。

b) 望ましい影響を増大する。

c) 望ましくない影響を防止又は低減する。

d) 改善を達成する。」

ここで、リスクは「不確かさの影響」と定義されているように、計
画を作る時になんとなく心配になる事柄をいいます。

リスクは、例えれば目的を達成しようと歩いている道に開いてい
る穴のようなもので、穴が大きいと落ちて大きな怪我をすること
になります。

a)~d)はリスクと機会を決定する時の糸口を与える項目ですが、
そのリスクと機会を決定する際には、4.1で決定を要求されて
いる外部及び内部の課題を考慮しなければなりません。

■□■ 課題は目に見える突起 ■□■

ISO9001:2015には、2008年版にはない、新しい要求としての
「外部及び内部の課題」が規定されています。

「4.1 組織及びその状況の理解

組織は,組織の目的及び戦略的な方向性に関連し,かつ,その
品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能
力に影響を与える,外部及び内部の課題を明確にしなければな
らない。」

組織の能力に影響を与える課題とは何でしょうか。まず、規格
は、組織の能力とはQMSが意図した結果を達成する能力である
と規定しています。

QMSの意図した結果を達成するには、組織の能力が必要にな
るのですが、その能力は油断しているとどんどん劣化していっ
てしまう、したがって、劣化しないように課題として捉えて解決を
しなければならない、ということがここにおける規格の意図であ
ると思います。

外部及び内部の課題は、目に見えるように明確になっていなけ
ればなりません。そうでなければ解決することはできません。

ちょうど、歩いている道の前にはっきりと見える突起みたいな、
越えなければならない障害と例えることができます。

■□■ リスクと課題 ■□■

このように、ISO9001;2015 で新しく規定された、リスクと課題は
似たようなものですが、本質は違います。

組織の想定するリスクを時々拝見する時がありますが、課題が
リスクとして取り扱われている場合が多くあります。

課題は目に見えており、それが目標を達成する上の障害になっ
ているので取り除かなければならないものです。目に見えてい
るから、どのようにすれば取り除くことができるのかが分かり、
基本的には解決することができる性質のものです。

しかし、リスクは、時、場所、人、状況などを特定することがなか
なかできません。
誰でも一度は、何かを計画するとき、何か起きそうだという不確
かなことを心配したことがあると思います。その漠然とした不安
みたいな性質のものがリスクであると思います。