統合審査 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.132 ■□■   
*** 統合審査 ***
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■□■ 監査の定義 ■□■  

ISO9000:2015規格3.13.1「監査」には次の定義があります。
3.13.1 監査(audit):監査基準が満たされている程度を判定するため
に、客観的証拠を収集し、それを客観的に評価するための体系的で、
独立し、文書化したプロセス。

3.13.1には、定義に加えて5つの注記がありますが、その内の注記2に
は次の参考文があり、複合監査及び合同監査に触れています。
注記2 監査は、内部監査(第一者)又は外部監査(第二者・第三者)
のいずれでもあり得る。また、複合監査又は合同監査のいずれもあり
得る。

第三者審査も本質的には監査の一種類であることが、ここから理解で
きます。

■□■ 複合審査 ■□■

上記の複合監査については、3.13.2 に次のように次のように定義され
ています。

3.13.2 複合監査(combined audit)一つの被監査者(3.13.12)において
,複数のマネジメントシステム(3.5.3)を同時に監査(3.13.1)すること。

これと似たような概念が統合審査ですが、ISO9000:2015にはその定義
はありません。

■□■ 統合審査の定義 ■□■

統合審査は、ISO/IEC17025-1(第三者審査の標準として使用されて
いる)の箇条3「用語及び定義」3.4「認証審査(certification audit)」の
注記に出てきます。

注記6 統合審査とは,二つ以上のマネジメントシステム規格の要求
事項を単一のマネジメントシステムに統合して適用した依頼者を,二
つ以上の規格に関して審査する場合をいう。

統合審査は、組織への恩恵(統合審査を受けると審査費用が安価に
なる)があり、最近多くの機会で聞かれるようになりました。

■□■ 統合審査の意味 ■□■

ここで注記6の意味を確認したいと思います。「・・・二つ以上のマネジ
メントシステム規格の要求事項を単一のマネジメントシステムに統合
して・・・」という文章の中にある「統合して」の意味は、2つのもの、例え
ばAとBを一諸にするということです。

何がAであり、何がBであるかを明確にする必要があります。Aは「二
つ以上のマネジメントシステム規格の要求事項」であり、Bは「単一の
マネジメントシステム」です。

「単一のマネジメントシステム」とは組織が持つシステムすなわち事業
を推進するシステムです。ここで誤解が生じるのは、Aが一つの規格、
Bがもう一つの規格であるとする解釈です。

2つの規格は取り扱っている対象が異なるので、2つを一緒にすること
はできません。あくまでも2つの規格の適用の仕方を一緒にしようと考
えることがよいでしょう。

■□■ 附属書SL(共通テキスト)の出現 ■□■

附属書SLのポイントの一つは、箇条5.1 c)「組織の事業プロセスへのX
XXマネジメントシステム要求事項の統合を確実にする」の一節です。
たった一行の文章ですが、この意味するところはマネジメントシステム
適用の本質にかかわるものです。

箇条5.1には注記がありますが、そこには「組織の存在の目的の中核」
という言葉が使用されています。どんな組織も顧客の存在を考慮せず
に事業を営むことはできません。

組織が毎日行っている活動は、たとえば市場調査プロセスであったり
、商品/サービス企画プロセスであったり、最終的に製品及びサービ
スをお客様に届ける活動です。これらのお客様に繋がる活動はすべ
て事業プロセスです。

たとえば、研究開発プロセス、設計プロセス、技術プロセス、製造/サ
ービス提供プロセス、購買、品質保証プロセス、配送プロセス、クレー
ム対応プロセス、アフターサービスプロセスなどは当然事業プロセス
です。

■□■ より良いパフォーマンスを得るのは ■□■

組織にはいろいろなプロセスがありますが、附属書4.4では、「組織は,
この規格の要求事項に従って,必要なプロセス及びそれらの相互作
用を含む,XXXマネジメントシステムを確立し,実施し,維持し,かつ,
継続的に改善しなければならない」ことを要求しています。

マネジメントシステム構築の成果を組織にもたらす一つの方策は、箇
条5.1c)で要求されている、「事業プロセスにXXX MSS要求事項を統合
する」ことだと思います。