品質不祥事に思う ― 文書化2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.178 ■□■    
*** 品質不祥事に思う ― 文書化2 ***
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不祥事の背景には、経営者の責任から離れて、些細なことになりますが、
文書が多いということもあると思います。文書が多すぎると負の効果が
でてきます。

組織は本当に必要な文書だけを管理対象に限らないと、組織の中にどのような
SOP(Standard Operating Procedure:標準業務手順書)があるかが分からなく
なってしまいます。品質不祥事を起こした組織では、SOPに従わずいつのまにか
慣習になってしまっている方法で仕事をすることが許される状況になっていた
のではないかと想像します。

■□■ 組織が必要とする文書 ■□■

文書の数はできるだけ少ないことを勧めますが、マネジメントシステムに本当に
必要である文書(記録類は除く)を軽減化してしまうわけにはいきません。
組織は本当に必要とする文書は何かを考え、最小限必要な文書を管理対象にする
必要があります。文書が必要であるか、必要でないかを判断するには次のことを
明確にしておく必要があります。

1.決定責任者
2.必要とする基準
―文書の目的
 ・全社の規則、規律、基本的ルール、部門の役割分担
  定款、株主総会、取締役会規則、就業規則、業務分掌などを定めた基本規程
 ・部門のルール
  業務分掌を受けて、企画、営業、購買、設計、技術、品質、製造、サービス、
  出荷、アフターサービス、人事、総務、営繕、経理、IT、ロジステックなどの
  部門の業務規程
 ・SOP
  個人レベルの仕事の手順を決めたもの
―必要な期間
 ・無期限 管理文書にする。
 ・有期限 6か月、1年、3年など(1年未満だったら管理文書にせず、資料扱い
  として期限が過ぎたら廃棄する。)
―他の組織内文書との関係
 ・他の文書との重複を避けるチェックをする。
―外部文書との関係
 ・出典と管理期間を明確にする。

■□■ 組織によって異なる判断 ■□■

本当に必要な文書を見極めることは難しい仕事ではありますが、かならず判断
しなければなりません。承認されない文書が組織内で使用されているとすると、
それは責任者が判断を怠った結果であると考えられます。
ISOでは“マネジメントシステムの文書化の程度は、次の理由から組織によって
異なる”と説明しています。

a ) 組織の規模及び活動の種類
b ) プロセス及びそれらの相互関係の複雑さ
c ) 要員の力量

ここでは手順書に限って、具体的にどんな文書がその対象になるのか、筆者が
考える例を上げてみます。

1.品質作り込みの重要ポイントとなる業務の手順書
2.多くの要員が関係する業務の手順書
3.断続的(たとえば、年に数回、数年に1 回)行う業務の手順書
4.定例的SOP(検査標準、点検標準、チェック標準、サービス標準など)

■□■ 文書管理のIT化 ■□■

最近の文書管理は、PCシステムの中に組み込まれています。紙への印刷は
あくまでも補助的なものであって、主役はPCシステムとなってきています。
こうしたPCシステム化にともなって、文書管理の面からは注意点が出てきます。
それは、新規文書の発行あるいは文書の改訂などを多くの人が無視をするという
問題です。

社則など大きな変更がある場合は、発行責任者が説明会を主催して職制を通じて
全員に周知徹底をはかりますので、知らないでは通らなくなります。
しかし、手順書などの関係者が限られるような文書改訂の場合では、PC上だけの
周知徹底だとPCを見ない人が多く出てきます。文書改訂についてのPCによる
周知徹底の方法を考えておく必要があります。

方法の一つは、見ましたという確認メールを責任者宛て送ってもらうように
することでしょう。
その他、文書管理のIT化では以下のようなことも考慮するとよいと思います。

1.PCシステムによる文書管理責任者
2.バックアップとその基準
3.PCシステムの情報量
4.ファイルの改廃基準
5.記録媒体の持ち出し基準、機密保持
6.サイバーテロ、ウイルス