品質不祥事に思う ― 文書化6 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.182 ■□■    
*** 品質不祥事に思う ― 文書化6 ***
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文書(記録含む)はマネジメントシステムを形にしたものです。
ISO 9001:1897年版(初版)においては、規格が規定したことすべては
文書にすることを求めていました。
1994年版から文書に対する要求が変化し、2000年版では5,6種類の文書の
要求に絞られました。

記録も文書の一部ですがその要求は約20種ありましたので、すべてでも
25種くらいがISO 9001における文書要求の種類数でした。

■□■ 組織が必要とする文書 ■□■

規格に詳しい方は、いやそうではない明示的に規定されているものが25種
であって、規格はその他組織が必要とする文書を要求している、とおっしゃる
と思います。そのとおりですね、最新2015年版でも、7.5.1文書化した情報・一般で

「組織の品質マネジメントシステムは,次の事項を含まなければならない。
a) この規格が要求する文書化した情報 
b) 品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が決定した,文書化した情報」

と規定しています。

■□■ 組織にはどのくらいあるのか ■□■

組織の文書の種類を数で表すとなると、実はほとんど把握できていない組織が
多く存在します。数も把握できていないのでは、文書管理のイロハのイが
できていないということになるのですが、それが今日の日本の産業界の実態の
ようです。

ある調査によると、中小企業(300人以下)で200~500種、大企業になると優に
2,000くらいの文書が存在するといわれています。この数字は組織に存在する
すべての文書についてですが、その7,8割はQMSに関係するであろうと私は
思っています。

■□■ 文書管理におけるチェックポイント ■□■

Vol.179 において、組織の文書管理のチェックすべきポイントを22項目上げました。

1.文書管理プロセスの運用状態
2. 文書管理プロセスに必要な資源及び情報
3.文書管理プロセスの監視、測定及び分析
4.監視、測定結果の評価
5.プロセスの改善
6.文書承認のポイント
7.管理文書のレビュー
8.レビュー及び改訂の手順
9.文書変更、改訂
10.文書変更の識別
11.旧版文書の利用可能性
12.要員の文書理解
13.文書識別の確実性
14. 外部文書の識別
15.配布管理の確実性
16.文書の廃止処理
17. 保管文書と廃止文書の区分
18. 記録すべき文書の確認
19. 要員の記録理解
20. 記録の識別可能性
21. 記録の検索容易性
22. 記録の管理方法

前回は、「3.文書管理プロセスの監視、測定及び分析」について述べました。
続きである「4. 監視、測定結果の評価」は3.に含まれますので、今回は
「5.プロセスの改善」について述べます。

■□■「5. プロセスの改善」■□■

組織は常に改善を強いられています。
自分たちから改善を欲すること及び市場から改善を求められることの
2種類の動機がありますが、現在は圧倒的に後者の例が多いと思います。

それは改善には大きな意味で変化も含まれるからです。改善するとは
前の姿と今日の姿を変えることを意味します。

かつて、私の上司は職場が昨年と同じ姿であったならば、改善されて
いないことになると変化を部下に奨励しました。
もちろん、いわれのない変化はあってならないのですが、市場からは
常に変化を要求されているのが今日の組織に課せられた大きな宿題です。

改善とか変化は、いろいろな方法を伴って行われますが、最後に落ち着く
ところはプロセスの分析、評価、実践です。表層的な変化では今日市場から
要求されている改善はその目的を達成しません。
どうしても、実践すなわち活動を変えなければ改善したとはいえません。

■□■ プロセス改善における文書管理 ■□■

このような状況においては、プロセスの改善をどのように文書に反映
させるのかは、組織にとって重要な要素です。
現在の文書を修正で済ませることで良いのであれば、即刻修正に
踏み切るべきです。

問題は新しいプロセスが誕生し、それに関する文書を作成する場合です。
私は新しい文書を作成したならば、それと同じ数の文書を廃止すべきで
あると思っています。
荒っぽい言い方ですが、そうしないと文書の数は増えるばかりで、
文書管理はその内に迷路のなかに入って行ってしまいます。

プロセスの改善に伴う文書管理の要点は文書の廃止にあります。