品質不祥事に思う ― 文書化12 | 平林良人の『つなげるツボ』

—————————————————–
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.188 ■□■    
*** 品質不祥事に思う ― 文書化12 ***
—————————————————–

厚生労働省の毎月勤労調査の品質不祥事の原因の一つは、役所の
教育訓練体制にあると思います。
国家公務員試験に合格した日本のエリートたちがなぜこのような
問題を起こすのかを考えた時、仕事はこなせても仕事の質について
理解できていないのではないかと感じます。

自分の仕事の目的、その質をOJTなどの教育できちんと教えられて
いないのかもしれません。

■□■ 品質不祥事に思う-文書化 ■□■

品質不祥事に思うー文書化についてはこれで最後にしたいと思います。
本メール計22問の最後に残っているのは、まさしく紛失したと報道
されている記録のことです。

18. 記録すべき文書の確認
19. 要員の記録理解
20. 記録の識別可能性
21. 記録の検索容易性
22. 記録の管理方法

■□■ 記録に関する問題意識 ■□■

本メルマガのvol.179で掲げた記録に関する項目のNo.18~22は
次のようなものでした。
———————————————————
NO.18
項目:記録対象の確認
問題意識:記録対象は明確か
対応:記録にはどのようなものがありますか
———————————————————
NO.19
項目:記録の理解性の確認
問題意識:記録の内容が要員に理解できるか
対応:記録を理解するためにどのような方法をとっていますか
———————————————————
NO.20
項目:記録の識別可能性の確認
問題意識:記録の種類が明確で、区分できているか
対応:記録の種類の区別はどのようにしていますか
———————————————————
NO.21
項目:記録の検索容易性の確認
問題意識:記録は使用する場合にすぐに検索できるか
対応:記録を検索する場合の方法はどのようにしていますか
———————————————————
NO.22
項目:記録に対する必要な管理方法の確認
問題意識:記録の管理方法が要求事項を満たしているか
対応:記録の識別、保管、保護、検索、保管期間、廃棄については
どのような方法をとっていますか

■□■ NO.18 記録対象の確認 ■□■

今回の毎月勤労調査に関して、毎月勤労調査結果は記録になっていますか、
と聞けば答えはYesだろうと思います。

官庁には厳格な文書管理の規定がありこの種の基幹調査の記録は必ず
保管対象になっており、保管期間も決まっています。

■□■ NO.19 記録の理解性の確認 ■□■

今回の毎月勤労調査に関して、記録の内容を要員が理解できているか
といえば、これも答えはYesでしょう。
しかし、理解している内容、程度については疑問があります。

記録の使われ方、使用目的、精度、ルール逸脱の結果のダメージなど
について、担当者がきちんと理解していたとは思えません。

■□■ NO.20 記録の識別可能性の確認 ■□■

保管されている記録がそれぞれ識別されているか、ということですが、
厚生労働省でも当然保管用段ボール、あるいは電子情報に名前を付けて
記録を識別していると思います。

■□■ NO.21 記録の検索容易性の確認 ■□■

今回の毎月勤労調査に関して、記録の種類が明確で区分できているか
といえば、答えはこれもYesだと思います。

■□■NO.22 記録に対する必要な管理方法の確認■□■

今回の毎月勤労調査に関して、記録の保管、保護がきちんとしていたか
というと、冒頭述べたように一部の記録が廃棄されたり、紛失していた
ということから、システムは不完全であったと言わざるを得ません。

■□■ 考えられない記録の廃棄 ■□■

日本の官僚の優秀性からして規定されている記録を保管期間中に廃棄する
など考えられません。
今回の統計データの品質不祥事問題は、記録が無くなっているという結果
(これも考えられない状況であるが)よりは、なぜ起きたかの方がより
重要だと思います。要因は前号で述べたようにいろいろあるでしょう。

これらの要因とISO9001との関係を次号から述べたいと思います。