ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-5 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.225 ■□■    
*** ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-5 ***
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前回は、ISO 9004:2018箇条5「組織の状況」について話をしました。
組織の能力を的確に把握するには、組織を取り巻く状況を理解して、
社会、利害関係者から求められている期待を達成するには、どのような
能力が必要になるかを明確にしなければなりません。

■□■  組織の能力 ■□■

この箇条5は「組織の状況」というタイトルで、持続的成功を達成するための
組織の能力について記述しています。多くの経営者は、組織の状況を理解せずに
組織の能力を過信して、即ち的確に把握せずに事業を行い、その結果失敗する
ことになってしまっています。

中條先生編集の「ISO 9004:2018 解説と活用ガイド」には、組織の能力について、
5つの変化に対応する能力が求められるとして、それぞれの変化に対する組織能力と
品質マネジメントの強化点が上げられています。

■□■  組織能力1 ■□■

変化:事業環境が大きく絶え間なく変化する。

組織能力:
・変化の中で長期的に目指す姿を定める能力
・変化に対応した機動的な経営と組織能力の獲得を同時に実現できる能力

QMの強化点:
・組織の状況を踏まえ、顧客及び利害関係者のニーズを満たすことを中心に
据えた方針、戦略、目標を定める。
・QMを有効なツールと位置付け、推進計画を明確にし、中長期的な視点で推進
・方針、戦略、目標の展開、集約による課題、問題の共有と確実な取組みを強化する。

■□■  組織能力2 ■□■

変化:社会が成熟するにつれ、新たな価値の創造が求められる。

組織能力:
・潜在ニーズを発見する能力
・必要な技術を明確にし、計画的に開発する能力 
・ニーズとシーズを結び付け価値を創造する能力

QMの強化点:
・顧客の声を集め、潜在的なニーズを把握し、新製品、新サービスの開発に
積極的に取り組む。
・技術開発ロードマップ等を策定し、従来の枠組みを打ち破る新技術の開発へ
計画的に取り組む。
・顧客価値創造に向けた組織、部門間の密接な連携を図る。

■□■  組織能力3 ■□■

変化:安全、安心への関心が高まり、高度な品質保証が求められる。

組織能力:
・トラブルを予測し、未然防止する能力
・標準に従って業務を安定的に継続的に行う能力

QMの強化点:
・ノウハウの活用の失敗が増えていることを認識し、安全、安心な社会の
実現に向け、一段上を目指したプロセス/システムの実現に取り組む。
・従業員を巻き込んだ、起こり得るトラブルの洗い出しと未然防止活動、
異常や変化点に対する日常管理の徹底を図る。

■□■  組織能力4 ■□■

変化:従来と異なった部門、職種で改善を実践することが求められる。

組織能力:
・様々な職場における問題、課題の発見能力
・複数の異なる知識、能力をもつ人が連携し、問題、課題を解決する能力

QMの強化点:
・顧客満足度、自工程完結、TPS(トヨタ生産方式)、TPM(予防保全)、
ロス、ばらつき、自然災害リスクなどの新たな視点を加えることで
既存のプロセス/システムの問題、課題を顕在化
・複数の異なる形態の小集団改善活動を組み合わせることで、全員の参画を
引き出し、問題、課題に応じた柔軟な改善活動と自己実現を実現

■□■  組織能力5 ■□■

変化:IoT 等の情報技術が進み、新事業や生産性革新が期待される。

組織能力:
・多種多様で膨大な量の情報を分析、活用する能力
・次々に生まれてくる新たなノウハウを確実に蓄積、活用する能力

QMの強化点:
・ICTを活用し複数の組織・部門の間で情報を共有することで、
価値創造に役立てるとともに、方針管理、日常管理、改善活動等の
スピード、精度を向上する。
・改善活動を通じて得られたノウハウをデータベース化することで、
ノウハウの共有、活用と相互学習を促進する。