内部診断と内部監査7 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.261 ■□■
*** 内部診断と内部監査7 ***
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新型コロナウイルス終息後の世界について、予測も含めてこれからの変化を注視していく必要があります。そうした変化に備える意味でもこの機会に自組織の内部診断(内部監査)を行ったらどうでしょうか。前回は経営分野におけるSDG’sについてお話しをしましたが、今回はプロフィットセンターにおける研究開発プロセスについてお話しします。研究開発プロセスがプロフィットセンターに入るかどうかは組織の決定です。組織によっては、経営プロセス又はサポートプロセスに入れているかもしれません。

■□■ プロフィットセンター‐研究開発プロセス■□■
内部診断をするためには、研究開発プロセスでどのような活動が行われているのかを理解していなくてはなりません。むろん、会社によってそれぞれ異なりますが、私がセイコーエプソン在籍の頃の経験からは、次のような業務が研究開発部門(プロセス)に与えられていました。
・研究は、基礎研究と応用研究に分かれており、基礎研究は世の中の
調査が中心業務で、研究に占める割合は2割くらいで、残り8割は応用研究でした。ここで、基礎研究とは自然・社会現象に関する科学的知識の獲得を目的とした活動で、応用研究は獲得した知識を新事業に展開することを目的とした活動です。両者とも事業化に直結しない新知識の獲得活動といえます。
・開発は、応用研究から上がってきたテーマを事業化することを目的に、要素技術開発、試作、実験、分析評価及び製品化のための工程設計を担っていました。

■□■ 研究開発プロセス診断の観点 ■□■
過去30年、日本においては新しい製品・サービスが出ないと言われ続けてきました。その理由に上げられてきたことは、イノベーション(革新)を起こす環境が整えられていないというものです。
その意味で診断の観点の第一に掲げたいことは、研究開発プロセスの独立性です。独立性は次の3つから成り立ちます。
①人事の独立性
②予算の独立性
③活動の独立性
観点の2番目は、研究開発のテーマの適切性です。研究開発プロセスの独立性を上げながら、その懐に手を入れるような「研究開発のテーマの適切性」を上げるのは矛盾しますが、診断においては許されると思います。
観点の3番目は、研究開発プロセスに従事する人の力量です。これも研究開発プロセスの独立性からは矛盾しますが、第三者が診断するときには重要な観点です。

■□■ 診断チェックリスト ■□■
診断をするときには事前にチェックリストを作成しておくことが有効です。
診断の観点ごとにチェックリストの例を上げてみます。
1.研究開発プロセスの独立性
・経営トップは研究開発プロセスの独立性を理解しているか。
・研究開発プロセスの責任者の責任権限は他のプロセスから独立しているか。
-他の業務との兼務があるか。
-もしあれば、独立性をどのように担保しているか。
2.研究開発のテーマの適切性
・テーマの展開目標は明確になっているか。
・定期的にテーマの見直しを行っているか。
-ニーズの見直し
-シーズの見直し
・研究開発プロセスの結果は出ているか。
-過去10年に事業化されたものはなにか。
3.研究開発メンバーの力量
・研究開発メンバーの力量評価基準はあるか。
・定期的に力量評価をしているか。
・他部門との人事交流はあるか。
・外部機関と連携しているか。

■□■ ISO56002規格 ■□■
昨年、ISOからISO 56002イノベーションマネジメントシステム規格が発行されました。ISO 56002:2019 では、その箇条8.3でイノベーションのプロセスを次のように説明しています。

・ニーズ(機会)の発見
・コンセプトの創造
・コンセプトの検証
・ソリュ-ションの開発
・ソリュ-ションの実装
まずは、どんなところに革新を起こすことが出来るのかを決めなければなりません。それが最初の「ニーズの発見」です。次に必要なことは「コンセプトの創造」です。既存のアイディア、新しいアイディア、潜在的なソリューション、創造性などを駆使してコンセプトを作ります。
新規性、リスク、実現性、実行性、望ましさ、持続可能性の程度及び知的財産権などに関してアイディア、潜在的なソリューションを評価します。
次は「コンセプトの検証」ですが、前のプロセスで創造したコンセプトをインプットにして、例えばテスト、実験、パイロット試験および調査などを駆使して検証をします。重要なことは、利用者、顧客、パートナーなどの目で検証するということです。
その後に、ソリュ-ションの開発、ソリュ-ションの実装と続きますが、詳しくはテクノファNews No.145 をご覧ください。研究開発プロセスの診断に役立つと思います。