Monthly Archives: 5月 2021

平林良人の『つなげるツボ』Vol.310

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.310 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ― 
*** ナラティブ内部監査14 ***
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ナラティブ内部監査を実践するには次の2つがポイントになります。その
1つは、内部監査員と被監査者とが良い関係になること、すなわち相互理
解とコミュニケーション(ラポール)が重要なポイントです。
2つ目は問題解決ですが、まず「何が問題か」を見抜く力が必要で、次に
要因を分析して、適切に課題を解決する力が必要になります。この2つの
ことを念頭に置いてナラティブ内部監査実践のための5ステップを実践す
ることをお勧めします。

■□■ ナラティブ内部監査実践のための5ステップ ■□■
ナラティブ内部監査実践のための5ステップは次のとおりです。
・第1ステップ :今行っている内部監査をレビューする。
・第2ステップ :どのような内部監査を行いたいか、行うべきかを組織
        内でコンセンサスを得る。
・第3ステップ :内部監査員、被監査者の共同作業の基盤を作る。
・第4ステップ :発見された課題(不適合、観察事項、気づき事項)
        などを問題解決する。
・第5ステップ :問題解決したことを水平展開、歯止めして改善する。
        さらに、改善したことを革新へのインプットにする。

■□■ 第1ステップ:今行っている内部監査をレビューする ■□■
文字どおりいま行っている内部監査について見直しを行います。
見直しのポイントは次の通りです。
(1).過去3年くらいの内部監査の記録を確認する。
(2).過去3年間に発見された不適合、観察事項、気づき事項などの
  フォローアップの状態を調べる。
(3).過去3年の内部監査のフォローアップの結果から、内部監査が
  組織パフォーマンスに与えた影響を把握する。
(4).内部監査責任者は内部監査が組織パフォーマンスに与えた影響
  を評価し、今後のアクションを考える。

■□■ 内部監査が組織パフォーマンスに与えた影響 ■□■
第1ステップの(3)について説明します。内部監査の目的は2つあります。
共通テキスト(附属書SL)9.2内部監査に関しての次の要求事項があり
ます。

「a)次の事項に適合している。
 -XXXマネジメントシステムに関して,組織自体が規定した要求事項
 -この規格の要求事項
 b)有効に実施され,維持されている。」

ナラティブ内部監査ではこれまで何回も述べてきたように、「b) 有効に
実施され,維持されている」ことを目的にしています。
上述の(3)で確認したいことは、有効に実施され,維持されている結果、
すなわち組織のパフォーマンスに効果的な影響を与えたかどうかという
ことです。
もし組織パフォーマンスに効果的な影響を与えたとするならば、
(4)「内部監査責任者は内部監査が組織パフォーマンスに与えた影響を
評価し、今後のアクションを考える。」ことに進みます。

ここまで、ナラティブ内部監査実施の「第1ステップ : 今行って
いる内部監査をレビューする。」について説明しました。
次回は「第2ステップ:どのような内部監査を行いたいか、行うべき
かを組織内でコンセンサスを得る。」についてお話をしたいと思います。

平林良人の『つなげるツボ』Vol.309

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.309 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ― 
*** ナラティブ内部監査13 ***
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ナラティブ内部監査のポイントは次の2つです。
(1)内部監査員と被監査者の共同作業 (2)問題解決 の2つです。
書けば簡単ですが、この2つをクリアすることは大変なことです。
前回ディスコース(discourse)という言葉を紹介しましたが、組
織の中には「当たり前」という組織内世論があります。それを克
服しなければならないので、長期的な戦略が必要になると思います。

■□■ 内部監査のマンネリ化 ■□■
内部監査のマンネリ化については、10年以上前からいろいろなと
ころから相談を受けてきました。「永らく」有効的な内部監査を
しましょうと呼びかけてきましたが、ではどのようにやるのかと
いう段になると具体的な提案ができないまま10年が経ってしま
いました。
そうはいってもいくつも提案をしてはきました。まず10年前に
提案したことはISO規格の箇条に基づいた監査から自社の標準に
基づいた内部監査に変えましょう、ということでした。しかし、
その前提となる自社の標準にISO要求事項を組み込む、というこ
とになるとそれをクリアできる組織が少ないという課題にぶつか
りました。
そのことを言い続けてすぐに5年が経ってしまいました。ここで
も書けば簡単ですが、自社の標準にISO要求事項を組み込むこと
の難しさを思い知らされました。

■□■ 内部監査の概念は変わらない ■□■
組織で内部監査が始まったのは1994,5年頃からです。そのきっ
かけはISOマネジメントシステムに内部監査の要求事項があるか
らでした。当時誰も内部監査のやり方を知らなかったので、テク
ノファでは今の内部監査の原型を1993年に坂本、平林の2人講
師で2日間コースとして始めました。以来30年近く経ちますが基
本的なやり方は変わっていないと思います。なぜならば、内部監
査の概念は一貫して変わっていないからです。組織では毎年内部
監査を改善したいと思っていますが、とても内部監査のやり方を
考え、改善するという時間が取れないというのが組織の実情のよ
うです。内部監査を専任業務で行うという配置をほとんどの組織
で取っていない現状を見ると、これは致し方ないと思います。

■□■ 認証審査は毎年やってくる ■□■
内部監査の専任制がほとんどの組織で取られていないことから、
内部監査を改善したいが時間的余裕がない、というのは偽らざる
ところだと思います。そうこうしているうちに、認証審査はまた
すぐそこに来ます。
更新審査の実施に間に合わせるには、社内標準に基づくよりISO
規格に基づいた方が早い、実務的である、ということで私が提案
したことは残念ながら中途半端で終わってしまったという組織が
多いと思います。組織でISOを担当する方も世代交代するので、
長期的にマンネリを打破する改善、そのための戦略を維持するこ
とが難しい、ということも一つの要因になっています。

■□■ この反省から何が言える ■□■
この10年の反省からいえることは、頭で考え、理屈を唱えても
事態は進まないということでした。会社における行動変異には理
屈が必要ですが、理屈だけで組織は動かないということです。故
に正解は、「まずは実行してみる」ということになります。正攻
法で行くならば、組織のトップに有効性監査の説明し、組織とし
て新しい内部監査の実施についてコンセンサスを取る、そして実
行するということですが、多くの組織の今までの挫折を見るにつ
けこの正攻法は実践的ではありません。数少ない例外(トップが
有効性監査のリーダーシップをとる)を除いては、まさしく頭で
考えた机上の空論では事態を切り開くことはできないと言わざる
を得ません。
したがって、まず実践するにはどうすればいいのかということに
なります。

■□■ ナラティブ内部監査で行うこと ■□■
ナラティブ内部監査行うことを提案します。まず、内部監査員は
被監査者と仲良くなってください。仲良くなるとは俗な言い方で
すが、仕事をしている人の目で見て、仕事をしている人の頭で考
えるようにしていくと良いと思います。と同時に少し離れて客観
的に見てください。
そのためのポイントは次の通りです。
 ・よく聞く
 ・よく見る
 ・よく交換する
 ・よく考える
 ・一緒に評価する
 ・一緒に分析する
 ・一緒に物語る
 ・一緒に意見を言う
 ・一緒に検討する

平林良人の『つなげるツボ』Vol.308

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.308 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ― 
*** ナラティブ内部監査12 ***
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前回、ディスコース(discourse)という言葉を紹介し、ディス
コースの日本語訳として「言葉による思想の伝達」をお伝えしま
した。東北大震災の時にいろいろなことが伝達されたという事例
を説明させていただきました。しかし、ディスコースとは何かよ
く分からないという声がありましたので、さらに実務的な意味、
使い方を紹介したいと思います。

■□■ ディスコース実際編 ■□■
臨床心理士である国重浩一氏の「ナラティブ・セラピーの会話術」
(金子書房)には次の一説があります。
「血液型によって性格が判断できるということは、日本以外の国
ではあまり信じられていません。血液型が性格を決める要因であ
るとみなすのが「本当」であれば、他の国の人たちが間違ってい
ることになります。この真偽はどうなっているのでしょうか?
このような時に社会的な解釈は、どこにも「真実」はないとします。
ただ、その時の社会に存在する一連の意味付け、表象、イメージ、
ストーリー、声明文などが私たちにある特定の理解をするように
もたらすのです。

血液型について、大変多くのストーリーが語られており。それを
説明するためのテキストも相当量存在します。また、社会的に「人
の性格を血液型で判断すること」が許容されているので、非科学
的なことを話す人と見下されることはありません。そのような理
解が当然とされているのです。筆者はあまり信じないようにして
いますが、時に、あまりにも見事な実例だと思わされる場面に遭
遇すると、なるほどと思ってしまうことがあります。
このとき、これは日本における「血液型におけるディスコース
なのだという表現をすることができます。このディスコースは、
あたかもそれが真実であるかのように、私たちに迫ってきます、
時には人間関係やカップルの人間関係の行く先まで予言します。
そして、実際にうまくいかなかったときなど、それを主たる原因
とみなすこともできます。」

この日本における血液型で性格を判断するという「通説」をディ
スコースといいます。

■□■ ディスコースとは世間体 ■□■
国重氏の説明からディスコースとは真実、論証、証明などとは関
係なく社会で広く信じられている言説をいうようです。内部監査
は認証審査のための記録作りであるという言説もディスコースと
いってよいようです。内部監査は監査の1種類です。監査は利害
を持つ人が自分の立場から相手の状況を調査する方法です。国税
調査はその代表的なものですが、小企業でも地元の税務署から時々
監査を受けることがあります。
ISOマネジメントシステム監査は税務監査に比較すれば、その厳
しさは相当の違いがありますが、何かの基準をもってその基準通
りに仕事を行っているかを確認するという本質は何ら変わりあり
ません。

■□■ 内部監査のディスコース ■□■
内部監査の目的をどこに置くのかによって活動の中身は変化します。
組織が内部監査をどんな目的で行おうとするかは組織の決定ですの
で、実施の仕方もおのずから変わってきます。
ナラティブ内部監査はその目的を組織のパフォーマンス向上に置い
ていますが、ある組織にとっては従来もパフォーマンス向上を目的
において内部監査を実施してきたとすると、ディスコースはそのま
ま同じであるということになります。しかし、ある組織にとっては
少し変わるかもしれません。この場合従来の内部監査しだいですが、
もし認証審査のために実施していたとすると、内部監査のディスコ
ースは「認証審査のための記録作り」ということになります。
この「認証審査のための記録作り」というディスコースを一度考え
直してみたいという視点が心療内科などで活用しているナラティブ
セラピーにおける応用ということになります。

■□■ ディスコースに反することは難しい ■□■
再び国重氏の著書からです。
「ディスコースが、ものごとの理解の仕方や考え方に影響を及ぼし
ているという側面を見てきましたが、もう一歩踏み込んで私たちの
行動にさえも影響を及ぼしているとみなしていきます。社会にある
特定の考え方(ディスコース)が存在するとき、私たちがそのディ
スコースに反して行動することは難しくなります。ディスコースの
中にも、少数派的な存在感しか示さないものもありますが、圧倒的
な存在感を示すものがあります。この、世の中に強力にはびこって
いる存在であるディスコースを「支配的なディスコース」と呼びま
す。このような存在感のあるディスコースが言わんとしていること
に反して行動することは、私たちはたいへん難しく感じられます。」
支配的ディスコースは世の中で当たり前と思われていることなので、
それに反した行動をとることは抵抗が大きいのでなかなかできな
いことである、と著者は言っています。