SDGインパクト基準5 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.352 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** SDGインパクト基準5 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

350号で17目標の全体像をお伝えしましたが、前回から一つひとつ
の目標に関してお話をしています。今回は目標2についてです。

■■ 目標2.飢餓 ■■
目標2. 「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持
続可能な農業を促進する。」
<2030年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼
児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を
十分得られるようにする。>

国連世界食糧計画(WFP)によると「飢餓」とは、「身長に対して
妥当とされる最低限の体重を維持し、軽度の活動を行うのに必要な
エネルギー(カロリー数)を摂取できていない状態」と定義をして
おり、必要なカロリー数は、年齢や性別、体の大きさ、活動量等に
よって変わるとしています。

もっと分かり易く言えば、飢餓とは「栄養不良に陥り、健康で活動
的な暮らしを営むための十分な食糧が得られない」ことです。

日本で生活をしている私たちにとっては「飢餓」という言葉を聞い
ても、具体的なイメージが湧きませんが、国連が2019年7月に発
表した報告書によると、推計8億2,000万人が飢餓状態にあり、
3年連続で増加しているという深刻な事態にあります。

世界の9人に1人がこの問題に直面してとり、今でも飢餓が原因で
1日に何万もの人が命を落としており、世界規模での社会問題とな
っています。

■■ 飢餓人口の分布 ■■
飢餓人口8億2,000万人(9人に1人)の世界地域別の分布は以下
の通りです。
– アジア:5億1,600万人
– アフリカ:2億5,800万人
– ラテンアメリカ・カリブ海地域:4,600万人

世界で最も飢餓人口の多い地域は、アジアで、5億人を超える人が
飢餓に苦しんでいるということです。

アジアに飢餓に苦しむ人が一番多くいるというのは驚きです。私は
何回かユニセフに寄付をしていますが、ユニセフからの飢餓寄付へ
の広告はアフリカのイメージ写真が多く、私は圧倒的にアフリカの
飢餓人口が多いと思っていましたが、事実はアジアそれも南アジア
だということです。

■■ 飢餓が起こる原因 ■■
なぜ飢餓が起きるのでしょうか。その原因は、自然災害によるもの、
紛争によるもの、貧困によるものの3つに分類されます。

<自然災害による飢餓>
地震、津波、洪水、干ばつなど、自然災害は飢餓の原因になります。
農作物や田畑が被害を受け、家や仕事などの生活基盤も失われるか
らです。経済的にも物理的にも食糧を手に入れることができなくな
ります。飢餓に苦しむ8割以上の人々は、自然災害が発生しやすい
場所で生活していることが分かっています。

<紛争/戦争による飢餓>
2018年のWFPとFAOが国連安全保障理事会への報告によると、
紛争/戦争による飢餓がチャド湖周辺地域ほか16カ国で起きていま
す。
紛争/戦争が起きると、家や農地など全て捨てて避難しなければな
りません。避難せずに残ったとしても、危険なので農作業や仕事を
することができなくなり、食糧の確保が困難になり、そして飢餓状
態に陥ってしまうのです。現在進行中のウクライナ戦争もこの例に
なっていくかもしれません。

<貧困による飢餓>
飢餓は目標1.貧困と直接的に関係しています。貧困が長く続く
「慢性的貧困」によって飢餓が生じます。貧しい農民は農業を行
うための土地や水、種などを確保する資金が無いために、自給自
足が困難で、貧困や飢餓から抜け出すことができません。子ども
の世代にも続くという、貧困の連鎖を断ち切ることができないと
いう問題もあります。

■■ 食料は十分ある ■■
飢餓問題でいつも疑問に思うことがあります。それは世界規模で
どのくらい食糧が足りないのかという問題についてです。食料が
足りないから飢餓が起きるというのが江戸時代の「天保の大飢餓」
を知っている人の常識です。「天保の大飢餓」では、食べ物が無く
20~30万人が亡くなったと記録されています。
「食べ物が足りないのでは」と思っていましたが、実はそうでは
ないということが報告されています。
飢餓に苦しんでいる人は、世界の9人に1人の割合でいますが、
人間1人あたりの年間の食料消費量は約180kgであり、現在その
2倍近くの穀物が世界で生産されています。
世界には一人あたりに必要な食糧が十分にあるというのに、実際
には飢餓で苦しむ人、特に子どもたちが後を絶たないというとこ
ろにこの問題の難しさがあります。
(出典: 「世界の食糧安全保障と栄養の現状2018」
(出典:「第I章 2015/16年度の穀物等の需給動向」

どうしてそのような状況になってしまうのでしょうか。
私たちが口にしている食べ物は、生産されてから食べられるまで
に、加工・運搬・販売・購入といったたくさんの工程があります。

飢餓が問題になっている地域では、運搬や衛生環境など必要なイ
ンフラが整っていないことが多く、世界規模で見れば十分な食糧
が生産されているにも関わらず、そういった地域にまで届けられ
ない現状があります。

そうであれば、ユニセフは寄付もいいですが、余った食品をアフ
リカへ送る物流を呼びかけることも有用な解決方法になると思い
ます。

■■ 食品ロス ■■
開発途上国に対して食糧支援を行うことも大切ですが、「先進国
の食糧廃棄を減らす」ことも大切です。
世界では食用に生産される食糧のおよそ3分の1に当たる13億
トンが毎年廃棄されます。
そして、この廃棄された食糧を処分するために排出される温室効
果ガスは36億トンで、これは世界の温室効果ガス排出量の約8%
に達します。
食品ロスの問題は、私たちにいろいろなアクションが存在するこ
とを教えてくれます。