Category Archives: つなげるツボ

ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」7 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年6月3日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.559 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」7 ***
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ヒューマンエラー防止にはポカヨケ(vol.553、554)のように非常に効果的なものがあり
ますが、ポカヨケはある状況下には使えても異なった環境では使えないという限定的なも
のです。多くの仕事に有効なものにチェックリストとダブルチェックがあります。チェッ
クリストとダブルチェックは有効でないという人が多くいますが、工夫すればヒューマン
エラー防止に有効になると思います。

■□■ チェックリストの詳細さ ■□■
チェックリストの詳細さは、ヒューマンエラー防止に大きく影響を与えます。チェックリ
ストの詳細さがエラーを防ぐに必要なチェック情報が過不足なく揃っているかを確認する
ことが必要です。ISO9001の8.5.1では、管理された状態で製造・サービス提供を実行す
るため、(a)文書化した情報の利用(c)監視・測定(e)力量ある人の配置などを求めて
います。チェックリストは、このうち特に「c)適切な段階での監視・測定・検証」を、現
場で実践するツールです。しかし、チェックリストの詳細さが甘いと「形だけのチェッ
ク」になり、逆にチェックしているつもり、あるいは責任の曖昧化をまねきます。
チェックリスト詳細さは次の観点で決めることが良いと思います。
 (1)何をチェックするか:品番、ロット、数量、設定値、外観、締付け、ラベル、添付書
  類など
 (2)どのようにチェックするか:目視、スキャン、測定器、治具、記録照合、相互確認など
 (3)どうして合格なのか(基準):OK/NG判定基準、許容範囲、合否条件、例外条件

例えば製造業においては、チェックリストに「規定トルク(○N?m)」、及び「トルクレン
チのクリック確認」の2項目をチェックするという詳細さまで書くと、単に「締め付け確
認」と書くよりチェックの信頼性は高まります。さらに、チェックするポイントも重要で
す。人は、作業の最後にまとめてチェックしようとすることが多いのですが、その状況で
は記憶が薄れていて見落としが増えます。チェックのポイント(製造業)は次のように分
散させると良いと思います。
 ・受入時(材料・ロット)
 ・工程開始前チェック(設備設定・治具)
 ・重要工程後チェック(締付け・測定)
 ・梱包前チェック(ラベル・同梱物)
8.5.1 c)には「適切な段階で監視及び測定活動をする」という要求されていますが、「適切
な段階」は組織固有なものなので、組織が自分で明確にしなければなりません。さらに必
要なことは、3番目の「重要工程」とは何かも明確にするとよいでしょう。
 ・顧客に影響する工程
 ・安全に影響する工程
 ・発生頻度が高い工程  
 ・検出が難しい工程(後では気づかない)

チェックリストの詳細さを決める実務的な基準には「過去の不適合」にするとよいと思い
ます。多くのことを何でもチェック項目に入れると、現場はチェック疲れを起こし、形骸
化したチェックになりがちです。逆に、重大な取り違えや流出リスクがあるのに項目がな
いとエラーが流出する可能性が高くなります。

■□■ ダブルチェックの独立性 ■□■
ダブルチェック(2重確認)は、チェックリストの詳細さを補強する方法です。すべての
工程をダブルチェックすることは現実的ではありませんので、「失敗したら戻せない」「流
出すると重大」な工程をダブルにチェックします。ここでダブルチェック(2重確認)は2
番目の人の独立性が重要です。
 ・A:作業者が自己チェック(実施者視点)
 ・B:別の人が独立チェック(検証者視点)
独立性とは、前の人と異なる方法で同じ内容を確認することを意味します。むかし算数で
教えられた、「足し算したら引き算して答えが同じになるか確認する」と同様な考え方で行
うとよいと思います。独立性がないと、二人に同じ思い込みが共有され、チェックの意味
が薄れます。
ダブルチェックの変形に指差呼称があります。目で確認した上に声でも確認する方法です。
「注意を対象に向け、声を出して言語化して確認する」方法で、鉄道、航空、重工業、プ
ラントなどで事故防止に用いられてきた手法です。この方法はこれらの製造業に限らず、
サービス業でも推奨されるヒューマンエラー防止の方法です。

ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」6 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年5月27日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.558 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」6 ***
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ヒューマンエラーへの対応の一つとして手順書の作り方を工夫することが考えられます。
前回手順書の粒度の話をしましたが、書くだけでは効果的な防止にならないので、動画で
手順を説明することが多くの現場で活用されています。また手順書の使われる状況に応じ
て書き方を工夫することも必要です。

■□■「手順」と「基準」と「異常時対応」 ■□■
組織の標準書を「手順」と「基準」及び「異常時対応」に分けて考えてみます。
(1)手順:どのような順ですすめるか(工程順など)
(2)基準:どこまでできたら合格とするか(品質、安全、数量など)
(3)異常時対応:作業中迷ったらどうするか(止める、呼ぶ、隔離するなど)
標準書を読むものから、実践的に使うものにする工夫、即ち“現場を動かす仕組み”として
考えてみます。特に、(3)異常時対応がない標準書は考え直した方が良いと思います。現
場では必ず例外が起きるため、「異常の見つけ方」「止め方」「誰に連絡するか」「記録には
どう書くか」を標準書にはっきりさせておくことで、ヒューマンエラーを防いだり、拡大
させたりしないことに役立ちます。

■□■ 手順書と属人化について ■□■
属人化とは、仕事が特定の人の経験・勘・記憶に依存している状態を言います。その人が
いないと品質や納期が不安定になる状態です。手順書は属人化を減らすための基本手段で
すが、作り方を誤ると逆に属人化を助長します。例えば、標準が形式的で現場実態とズレ
ていると、作業者は標準を見ずに“できる人のやり方”を参考にし始めます。すると標準は
飾りになり、暗黙知が温存され、属人化が固定化されてしまいます。
属人化を減らす標準づくりのポイントは、標準を「熟練者のコツの翻訳」として扱うこと
です。熟練者は、作業の中で無意識に重要ポイントを見ています。例えば、締付けの感
触、音、振動、わずかなズレ、材料の状態などです。これらを、写真・NG例・注意点と
して言語化/視覚化することで、暗黙知が形式知化され、属人化が減ります。ここでの肝
は、標準を品質保証部門が机上で作るのではなく、現場と一体で作り、現場の言葉と現場
の絵を取り入れることです。
また、標準と属人化の関係で重要なのが「標準=最低ライン」ではなく「標準=最良のや
り方(現時点で)」という位置づけにすることです。標準が最低ラインだと、上手い人は標
準を無視して自分のやり方で作業をしてしまいます。標準が最良のやり方として更新され
続ければ、上手い人の工夫は標準に吸収され、組織能力になります。つまり、標準は固定
文書ではなく、改善の器にするべきです。ISO9001の10.3(継続的改善)と結びつけると
マネジメントシステムの定着に繋がります。

■□■ 手順書の限界と補完策 ■□■
(1)見ない、読まないという問題
 標準があっても、見ない人が多くいます。最初は読んでも慣れてくると見なくなりま
 す。それへの対策は、標準遵守を工程の完了条件に組み込むことです。標準をチェック
 したり、標準を記録に結び付けたりすることを完了の条件にします。
(2)例外処理、変化に弱い
 材料変更、設備変更、人員入替、特急対応などがあると標準が使い物にならなくなりま
 す。いろいろな変更をどのように管理するかについても標準に書き込むことが必要です。
(3)判断の良し悪しが求められる
 標準は通常の作業には強い一方、異常に弱いことは前述のとおりです。標準どおりにい
 かない場合の判断が重要になりますが、エラー、ミスにならないようにするには判断が
 適正であることが必要になります。場合によっては止めることも判断の一つです。
(4)標準自体が間違っている
 標準が誤っていれば、標準通りにやって不良が出ます。標準は検証(レビュー、現場試
 行、結果確認)とセットで運用しなければなりません。
(5)標準ではうっかりを防げない
 部品は正しいが締付けトルクが足りない、ラベルは貼ったが剥がれたり、組んだが表裏
 が反対などは標準だけでは防げません。前回までに述べたポカヨケで補完します。

結論として、手順書の見える化は「理解」と「再現性」を大きく高めますが、見ない、読
まない、守らない、例外に弱い、判断が必要など限界があります。手順書を単独で活用す
るのではなく、バーコード照合やポカヨケ、工程内検査、力量管理、変更管理などと組み
合わせて「管理された状態」を構築することが必要です。

ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」5 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年5月20日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.557 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」5 ***
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「ヒューマンエラーを防止するための処置」の一つとして、手順書の見える化がありま
す。手順書には誰もが理解できるように写真を張り付けたり、イラストを付けたり、又は
動画で手順を説明するなどの工夫がされます。要点は「手順書を作ること」ではなく、人
間の迷いを無くし、解釈差が出ないようにし、記憶に依存しない作業の進め方を支援する
ことです。誰がやっても同じ結果に近づけるような「情報設計」された標準を作ることで
す。

■□■ 手順書の詳細さ ■□■
手順書の詳細さとは、作業者が迷わず再現できるために必要な情報が過不足なく揃ってい
る状態を指します。ISO9001の8.5.1 a)では、製造・サービス提供を管理された状態で実
行するために、1)「特性」2)「達成すべき結果」を定めた文書化した情報を利用できるよ
うにすることが求められます。つまり手順書は「やり方(How)」だけでなく、「何を満た
すべきか(What/Acceptance)」まで含めて初めて機能します。
手順書をどこまで細かく書くべきかは次の3つの要素を考えることで決まってきます。
(1)初心者でも単独でできる:初見で迷わない、手戻りしない。
(2)熟練者でも省略できない:慣れによる“飛ばし”が起きにくい構造である。
(3)監査で検証可能:標準が守られているか、結果が担保されているかが追える。

■□■ 3要素の決め方 ■□■
3要素を満たすためには、手順書の「粒度」とその「判断ポイント」を決めなければなり
ません。粒度とは、仕事の1ステップの細かさを言います。例えば「部品Aを取り付け
る」を1ステップとするか、もっと細かくして「部品Aを刻印面を上にする」「部品Bの
ピンに合わせる」「カチッと音がするまで押し込む」のように3ステップに分けるか、と
いうことです。
どこまで細かくするのかの判断ポイントは、作業者が迷う箇所があるか、ミスが起きる可
能性があるか、の2つです。手順書に手の動きすべてを書くことは特別の例を除いてはか
えって煩雑になるので、「全部を書く」のではなく、間違えやすい箇所を重点的に見える化
することが効果的です。見える化(動画、写真、イラスト)を使う意義は、煩雑さを減ら
し人による解釈差を無くすことにあります。
文章だけだと、作業者は頭の中でイメージを描きますが、その描き方が人によって違って
しまいます。動画、写真やイラストは、正しい状態(OK)と間違った状態を(NG)をよ
り万人に伝えやすくします。
特に動画は、工具の動かし方、速度、姿勢、手の順番など、文章、写真、イラストでは伝
え難い欠点を的確に改善します。ただし、動画は確認するに時間がかかるため、現場では
「短いクリップ動画+要点の静止画+チェック項目」の組合せが実務的です。

■□■ 手順書における見える化 ■□■
手順書における見える化で特に効果を発揮する例をミスのタイプ別に説明します。
(1)取り違え、向き間違いに効く例
 ・部品の向き(表裏・左右)のOK/NG写真
  「刻印が見える側が上」「爪の位置が右」など、文章だけでは誤解が起きる箇所を、
  OK/NGで並べて提示。似た部品の識別点もアップ写真で示します。
 ・ラベル貼付位置のテンプレート図
  ラベルの位置ズレは多い不良要因です。製品外形図に貼付位置を寸法入りで示し、許
  容範囲(枠線)も描く。貼付後のチェック項目(剥がれ、気泡、傾き)を写真で示し
  ます。
(2)抜け(未実施)に効く例
 ・手順ステップの“完了条件”を明記したチェックリスト
  「締付ける」ではなく「トルクレンチのクリック音を確認」「締付け完了マーキング
  を付ける」など、完了判定を標準に埋め込みます。
 ・治具・工具の使い方を動画で示す
  工具の当て方、角度、力の入れ方は、文章より動画が有効。10~20秒の短いクリップ
  をQRで手順書に紐づけると現場で使われやすいです。
(3)設定・段取りミスに効く例
 ・設定画面のスクリーンショット+入力例
  設備条件やシステム入力は桁ミスが起きやすい。画面キャプチャに赤枠で入力欄を示
  し、正しい値の例、単位、NG例(0の数が違う等)を示します。
 ・段取り替えの“戻し忘れポイント”一覧
  段取り替え後に戻し忘れや設定残りが起きやすい箇所を、写真付きで「ここを必ず戻
  す」リスト化。作業者の記憶に頼らない。
(4)検査・判定ばらつきに効く例
 ・外観判定の限度見本(写真集)
  キズ、汚れ、色ムラなど、文章で規定しにくい特性を写真で基準化。OK/NG境界
  (限度見本)を作ると判定が揃います。
 ・測定姿勢・測定点のイラスト
  ノギス、マイクロ、ゲージの当て方、測定点がズレると値が変わります。測定点を図
  示し、「当てる角度」「ゼロ点確認」などをセットにします。
このように、見える化は「文章では誤解が起きる」「動きが伴う」「判断が分かれる」領域
で特に有効です。ヒューマンエラーを無くす手順書はつぎの要素と一体になって効果を発
揮します。
 ・目的(何を保証する作業か)
 ・準備(工具・治具・材料・安全)
 ・手順(写真付き、1ステップ短く)
 ・品質基準(OK/NG例、測定点)
 ・異常時対応(止める・呼ぶ・隔離)
 ・記録(何をどこに残す)
                                    以上

ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」4 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年5月13日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.556 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」4 ***
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ポカヨケの近代的な例としてコード照合の話をしています。コード照合は歴史的にバーコ
ードから始まりました。人は誰でも誤りを起こすので、それに対する解決策として、機械
に照合を実施させるという発想は今ではAIに繋がって生きています。バーコードの発明は
意外と古く、1948年に米国で考案されています。バーコード照合は今では想像以上に多く
の応用例があります。

■□■ 製造業のバーコード具体例 ■□■
モノつくりにおけるバーコード照合のポイントは次の3つにあります。
 1.どこで照合するか(ゲート)
 2.何を正しい値として持つか(指示)
 3.不一致時にどう止めるか(異常処理)
製造業における応用例を調べました。
(1)入荷ロット照合
 発注情報(品番・数量・ロット条件)と、納入ラベルのスキャン情報を照合します。誤
 納入・数量違い・ロット違いを発見して、エラーの場合にはその場で止めます。受入段
 階で止めることで後工程に影響を及ぼさないようにします。
(2)棚入れ・ロケーション照合
 棚(ロケーション)にバーコードを付け、品番とロケーションの組合せを照合します。
 棚入れのエラーはその後のピッキングミスを誘発するため、ここで正しい置き場を固定
 します。
(3)ピッキング照合(部品取り揃え)
 指示書の部品番号を正しい値として、ピックした部品をスキャンし、品番、数量を照合
 します。不一致ならその場で止めて出庫させない運用をします。多品種ほど効果が大き
 い例です。
(4)工程開始条件としての照合(作業指示×部品×設備)
 作業指示票のバーコード、部品ラベル、設備ID(設備にもバーコード)をスキャンし、
 正しい組合せでないと工程の開始を許可しない仕組みにします。段取り替えの時に起こ
 りがちな組み合わせエラーを防止します。
(5)投入照合(原材料・副資材)
 製造工程の途中で原材料などを投入する工程で、投入物の品番・濃度・ロットを照合し
 ます。原材料取り違えは重大問題に直結するため、スキャンは必須項目とし、かつ誰が
 いつ投入したかの記録を残します。
(6) 検査票・治具・測定器の照合
 工程内、最終工程などにおける検査で使用する治具や測定器をスキャンし、正しい検査
 が行われたか記録に残します。測定器の校正期限とも連携できるとさらに効果が高まり
 ます。
(7)梱包照合
 製品シリアルと箱ラベル、出荷伝票を照合し、誤梱包・誤出荷を抑えます。特に「似た
 製品」「同一顧客の複数仕様」が混在する場合に有効です。
(8)出荷ラベルの版数・宛先照合
 ラベル発行はミスが起きやすい工程です。受注番号をスキャンしてラベルを自動発行し、
 手入力を排除します。貼付後に製品とラベルを再スキャン照合し、誤貼付を検出します。

■□■ サービス業のバーコード具体例 ■□■
サービス業においても製造業における応用例がそのまま使えますが、書類、物などの取り
違え防止にもバーコードは応用されています。
(1)医療の検体、処方薬、事務の申込書類など、取り違えが重大事故につながる領域で
 は、IDスキャンで本人・対象・処理工程を照合し、誤処理を止めます。
(2)作業完了の証跡としてのスキャン(実施証明)
 点検作業で設備のタグをスキャンしないと完了登録できないようにする。やったつもり、
 巡回漏れを防ぎ、監査証跡にもなります。
 これらに共通するのは、照合の位置を「工程の節目(ゲート)」に置くことです。受入・投
 入・工程開始・梱包・出荷は、間違うと影響が大きく、戻しにくい。ISO9001の観点で
 は、「適切な段階での監視及び測定」という発想と整合し、管理された状態の説明がしや
 すくなります。

■□■ バーコードでも防げないヒューマンエラー ■□■
バーコード照合は強力ですが、万能ではありません。限界を理解し、補完策を設けること
が実務で重要です。
(1) スキャンしていない問題(運用逸脱)
 最大の弱点は、任意運用や、忙しさによるスキップです。対策は「スキャン必須化(イン
 ターロック)」、および例外解除の権限管理・ログ化です。
(2) 正しいものを正しくスキャンしたがラベルが間違っている問題
 誤ラベルが貼られていれば、スキャン照合は誤りを見抜けません。ラベル発行元のプロセ
 ス(印字内容、発行条件、版数管理)をポカヨケ化する必要があります。
(3) コードの品質問題(汚れ、擦れ、反射、曲面)
 読めないコードは現場での手入力を誘発し、ヒューマンエラーが復活します。印字品質管
 理、貼付位置の標準化、耐環境ラベル、読み取り機の選定が必要です。
(4) システム側の不備(品番紐付けミス)
 正しい値が間違っていれば、照合ロジック自体が誤ります。これはマスタ管理、変更管理
 に関する問題でありシステムの検証、整備が必要です。
(5) 例外処理での混乱(代替品、特採、返品、再投入)
 例外が多いと人による「とりあえず通す」運用が起きます。例外ルールを標準化し、例外
 時こそログを残す設計にします。
(6) 一致しているが別に問題がある
 バーコードは主に識別・取り違えには強いのですが、品質特性(外観、性能、期限、保管
 条件逸脱など)を保証するわけではありません。期限や温度履歴など、別の監視が必要に
 なります。
(7) セキュリティ/不正(意図的なすり替え)
 ラベルの貼り替えが許されたり、コードのコピーが可能な運用においては不正が入り込む
 余地ができます。重要な製品については番号のシリアル化、改ざん検知ラベル、権限管理、
 監視などと組み合わせます。

ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」3 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年4月29日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.555 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」3 ***
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前号でポカヨケの話をしました。その具体的な例として「QRコード、バーコード照合
(スキャン必須化)」を取り上げました。ポカヨケの原点はトヨタのモノつくりにあった
とお話ししましたが、 QRコード、バーコードについては、いつ頃、誰が考えたのかはあ
まり知られていません。バーコードから調べてみました。

■□■ バーコードの歴史的経過と名前の由来 ■□■
バーコードは「線(バー)と空白(スペース)の並びで情報を表し、機械で読み取る」技
術です。人が目で見て読む文字情報に比べ、読み取りが速い、誤読が少ない、システム連
携しやすいという利点があります。歴史的には、1948年、米国Drexel大学の学生であっ
たMr.WoodlandとMr.Silverが、Morse Code(モールス信号)を印刷して垂直に伸ばし、
太バーと細バーを作成することを考案しました。大量の商品を扱う流通・小売の現場では、
手入力や目視記録では処理速度が追いつかず、入力ミスが避けられにことから、商品を一
意に識別できる機械読取の仕組みが求められていましたので、バーコードは急速に普及し
ていきました。

「バーコード(bar code)」という名称は、記号の主要部が棒(bar)で構成され、棒の太
さや並び(一次元)で情報を符号化し、読み取り装置がそれを数値や文字列に符号化
(code)して機能させるという、きわめて直感的な命名です。その後、一次元バーコード
は小売の標準化(商品識別コード体系)とともに広がり、医療、製造、物流へとその応用
領域を拡大しました。製造業においては、単に「品番」だけでなく、ロット、シリアル、
作業者、工程、設備、検査結果などの紐付けが重要になり、トレーサビリティ要求の高ま
りとともに利用価値が増しました。
一方で、一次元バーコードは記載する「情報量」に限界があり、面積が小さい部品や複数
情報をコードに載せたい用途には限界がありました。そこで普及したのが、QRコード
(二次元コード)です。

■□■ QRコードの歴史的経過と名前の由来 ■□■
QRコードは、1994年に日本の自動車部品メーカーである(株)デンソー ウェーブの技術
者、原昌宏(はら まさひろ)氏らによって開発されました。名称の「QR」は“Quick
Response”の略として知られ、読み取りの迅速性(現場での即応性)を志向したものでし
た。
製造・物流現場での「高速読み取り」と「大容量データ」のニーズに応えるため誕生した
縦横方向に情報を持つQRコードは多くの情報を格納でき、汚れや欠けに対する誤り訂正
機能を持つものもあります。
結果として、現場では「一次元(JAN/Code128等)と二次元(QR/Datamatrix等)」を使
い分け、工程や識別粒度に応じた設計が行われるようになりました。

ISO9001の観点で見ると、バーコード/QRの普及は単なる技術導入ではなく、箇条8.5.2
(識別及びトレーサビリティ)や、箇条8.5.1の「管理された状態」を実現するための代
表的手段になっています。とりわけ「品番取り違え」「ロット混入」「誤出荷」といった重
大リスクは、人の目視確認だけでは残留リスクが大きく、機械照合による仕組みが強く求
められるようになっています。

■□■ バーコード/QRコードの論理的発想 ■□■
コード照合の本質は、ヒューマンエラー対策としての認知負荷の削減と、誤りの受理拒否
(インターロック)にあります。人が品番やロットを目視で読むときには、次のような典
型的なエラーが起こりえます。
 ・桁・文字の見間違い(Oと0、Iと1、8とB等)
 ・似た品番の取り違え(末尾違い、枝番違い)
 ・思い込みによるスキップ(「いつもの品番」と決めつける)
 ・焦りや割込みによる確認漏れ(見たつもり・読んだつもり)
 ・転記ミス(紙への書き写し、手入力)
コード照合は、次の3要素をポイントにして、「読む、比較する、入力する」という人の弱
い部分を、読み取り(機械)+照合(システム)に置き換えます。
(1)一意識別:対象(部品・材料・製品・伝票・箱)にIDを付与する
(2)機械読取:人が文字を読まず、スキャンでIDを取得する
(3)自動照合:作業指示(期待値)とスキャン値(実績)を比較し、一致しない限り次 
  工程へ進めない
ここで重要なのが「スキャン必須化」です。単にコードを貼って任意で読ませる運用だ
と、忙しい時や慣れた人ほどスキップし、結局は目視運用に戻ってしまいます。したがっ
て、ISO9001の「管理された状態」を維持するため工程の完了条件(done)=照合OKま
では先に進めないインターロック化が要点です。
コード照合は「検出型ポカヨケ」に分類できます。誤りを物理的に不可能にするのではな
く、誤りが起きてもその場で検出し停止させる。検出型の強みは、対象が多品種でも拡張
しやすく、データが残る点です。照合ログが残れば、次の改善が可能になります。
 ・どの工程で、何の取り違えが多いか(傾向分析)
 ・どの時間帯・どの班で多いか(負荷や教育の検討)
 ・どの品番群で多いか(似た品番設計や表示改善の検討)
つまりコード照合は、単なるエラー防止ではなく、再発防止のための事実データの獲得に
も役立ちます。ISO9001でいえば、10.2(不適合及び是正処置)や9.1(監視・測定・分
析・評価)と相性がよい仕組みです。