Category Archives: つなげるツボ

ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」5 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年5月20日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.557 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」5 ***
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「ヒューマンエラーを防止するための処置」の一つとして、手順書の見える化がありま
す。手順書には誰もが理解できるように写真を張り付けたり、イラストを付けたり、又は
動画で手順を説明するなどの工夫がされます。要点は「手順書を作ること」ではなく、人
間の迷いを無くし、解釈差が出ないようにし、記憶に依存しない作業の進め方を支援する
ことです。誰がやっても同じ結果に近づけるような「情報設計」された標準を作ることで
す。

■□■ 手順書の詳細さ ■□■
手順書の詳細さとは、作業者が迷わず再現できるために必要な情報が過不足なく揃ってい
る状態を指します。ISO9001の8.5.1 a)では、製造・サービス提供を管理された状態で実
行するために、1)「特性」2)「達成すべき結果」を定めた文書化した情報を利用できるよ
うにすることが求められます。つまり手順書は「やり方(How)」だけでなく、「何を満た
すべきか(What/Acceptance)」まで含めて初めて機能します。
手順書をどこまで細かく書くべきかは次の3つの要素を考えることで決まってきます。
(1)初心者でも単独でできる:初見で迷わない、手戻りしない。
(2)熟練者でも省略できない:慣れによる“飛ばし”が起きにくい構造である。
(3)監査で検証可能:標準が守られているか、結果が担保されているかが追える。

■□■ 3要素の決め方 ■□■
3要素を満たすためには、手順書の「粒度」とその「判断ポイント」を決めなければなり
ません。粒度とは、仕事の1ステップの細かさを言います。例えば「部品Aを取り付け
る」を1ステップとするか、もっと細かくして「部品Aを刻印面を上にする」「部品Bの
ピンに合わせる」「カチッと音がするまで押し込む」のように3ステップに分けるか、と
いうことです。
どこまで細かくするのかの判断ポイントは、作業者が迷う箇所があるか、ミスが起きる可
能性があるか、の2つです。手順書に手の動きすべてを書くことは特別の例を除いてはか
えって煩雑になるので、「全部を書く」のではなく、間違えやすい箇所を重点的に見える化
することが効果的です。見える化(動画、写真、イラスト)を使う意義は、煩雑さを減ら
し人による解釈差を無くすことにあります。
文章だけだと、作業者は頭の中でイメージを描きますが、その描き方が人によって違って
しまいます。動画、写真やイラストは、正しい状態(OK)と間違った状態を(NG)をよ
り万人に伝えやすくします。
特に動画は、工具の動かし方、速度、姿勢、手の順番など、文章、写真、イラストでは伝
え難い欠点を的確に改善します。ただし、動画は確認するに時間がかかるため、現場では
「短いクリップ動画+要点の静止画+チェック項目」の組合せが実務的です。

■□■ 手順書における見える化 ■□■
手順書における見える化で特に効果を発揮する例をミスのタイプ別に説明します。
(1)取り違え、向き間違いに効く例
 ・部品の向き(表裏・左右)のOK/NG写真
  「刻印が見える側が上」「爪の位置が右」など、文章だけでは誤解が起きる箇所を、
  OK/NGで並べて提示。似た部品の識別点もアップ写真で示します。
 ・ラベル貼付位置のテンプレート図
  ラベルの位置ズレは多い不良要因です。製品外形図に貼付位置を寸法入りで示し、許
  容範囲(枠線)も描く。貼付後のチェック項目(剥がれ、気泡、傾き)を写真で示し
  ます。
(2)抜け(未実施)に効く例
 ・手順ステップの“完了条件”を明記したチェックリスト
  「締付ける」ではなく「トルクレンチのクリック音を確認」「締付け完了マーキング
  を付ける」など、完了判定を標準に埋め込みます。
 ・治具・工具の使い方を動画で示す
  工具の当て方、角度、力の入れ方は、文章より動画が有効。10~20秒の短いクリップ
  をQRで手順書に紐づけると現場で使われやすいです。
(3)設定・段取りミスに効く例
 ・設定画面のスクリーンショット+入力例
  設備条件やシステム入力は桁ミスが起きやすい。画面キャプチャに赤枠で入力欄を示
  し、正しい値の例、単位、NG例(0の数が違う等)を示します。
 ・段取り替えの“戻し忘れポイント”一覧
  段取り替え後に戻し忘れや設定残りが起きやすい箇所を、写真付きで「ここを必ず戻
  す」リスト化。作業者の記憶に頼らない。
(4)検査・判定ばらつきに効く例
 ・外観判定の限度見本(写真集)
  キズ、汚れ、色ムラなど、文章で規定しにくい特性を写真で基準化。OK/NG境界
  (限度見本)を作ると判定が揃います。
 ・測定姿勢・測定点のイラスト
  ノギス、マイクロ、ゲージの当て方、測定点がズレると値が変わります。測定点を図
  示し、「当てる角度」「ゼロ点確認」などをセットにします。
このように、見える化は「文章では誤解が起きる」「動きが伴う」「判断が分かれる」領域
で特に有効です。ヒューマンエラーを無くす手順書はつぎの要素と一体になって効果を発
揮します。
 ・目的(何を保証する作業か)
 ・準備(工具・治具・材料・安全)
 ・手順(写真付き、1ステップ短く)
 ・品質基準(OK/NG例、測定点)
 ・異常時対応(止める・呼ぶ・隔離)
 ・記録(何をどこに残す)
                                    以上

ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」4 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年5月13日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.556 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」4 ***
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ポカヨケの近代的な例としてコード照合の話をしています。コード照合は歴史的にバーコ
ードから始まりました。人は誰でも誤りを起こすので、それに対する解決策として、機械
に照合を実施させるという発想は今ではAIに繋がって生きています。バーコードの発明は
意外と古く、1948年に米国で考案されています。バーコード照合は今では想像以上に多く
の応用例があります。

■□■ 製造業のバーコード具体例 ■□■
モノつくりにおけるバーコード照合のポイントは次の3つにあります。
 1.どこで照合するか(ゲート)
 2.何を正しい値として持つか(指示)
 3.不一致時にどう止めるか(異常処理)
製造業における応用例を調べました。
(1)入荷ロット照合
 発注情報(品番・数量・ロット条件)と、納入ラベルのスキャン情報を照合します。誤
 納入・数量違い・ロット違いを発見して、エラーの場合にはその場で止めます。受入段
 階で止めることで後工程に影響を及ぼさないようにします。
(2)棚入れ・ロケーション照合
 棚(ロケーション)にバーコードを付け、品番とロケーションの組合せを照合します。
 棚入れのエラーはその後のピッキングミスを誘発するため、ここで正しい置き場を固定
 します。
(3)ピッキング照合(部品取り揃え)
 指示書の部品番号を正しい値として、ピックした部品をスキャンし、品番、数量を照合
 します。不一致ならその場で止めて出庫させない運用をします。多品種ほど効果が大き
 い例です。
(4)工程開始条件としての照合(作業指示×部品×設備)
 作業指示票のバーコード、部品ラベル、設備ID(設備にもバーコード)をスキャンし、
 正しい組合せでないと工程の開始を許可しない仕組みにします。段取り替えの時に起こ
 りがちな組み合わせエラーを防止します。
(5)投入照合(原材料・副資材)
 製造工程の途中で原材料などを投入する工程で、投入物の品番・濃度・ロットを照合し
 ます。原材料取り違えは重大問題に直結するため、スキャンは必須項目とし、かつ誰が
 いつ投入したかの記録を残します。
(6) 検査票・治具・測定器の照合
 工程内、最終工程などにおける検査で使用する治具や測定器をスキャンし、正しい検査
 が行われたか記録に残します。測定器の校正期限とも連携できるとさらに効果が高まり
 ます。
(7)梱包照合
 製品シリアルと箱ラベル、出荷伝票を照合し、誤梱包・誤出荷を抑えます。特に「似た
 製品」「同一顧客の複数仕様」が混在する場合に有効です。
(8)出荷ラベルの版数・宛先照合
 ラベル発行はミスが起きやすい工程です。受注番号をスキャンしてラベルを自動発行し、
 手入力を排除します。貼付後に製品とラベルを再スキャン照合し、誤貼付を検出します。

■□■ サービス業のバーコード具体例 ■□■
サービス業においても製造業における応用例がそのまま使えますが、書類、物などの取り
違え防止にもバーコードは応用されています。
(1)医療の検体、処方薬、事務の申込書類など、取り違えが重大事故につながる領域で
 は、IDスキャンで本人・対象・処理工程を照合し、誤処理を止めます。
(2)作業完了の証跡としてのスキャン(実施証明)
 点検作業で設備のタグをスキャンしないと完了登録できないようにする。やったつもり、
 巡回漏れを防ぎ、監査証跡にもなります。
 これらに共通するのは、照合の位置を「工程の節目(ゲート)」に置くことです。受入・投
 入・工程開始・梱包・出荷は、間違うと影響が大きく、戻しにくい。ISO9001の観点で
 は、「適切な段階での監視及び測定」という発想と整合し、管理された状態の説明がしや
 すくなります。

■□■ バーコードでも防げないヒューマンエラー ■□■
バーコード照合は強力ですが、万能ではありません。限界を理解し、補完策を設けること
が実務で重要です。
(1) スキャンしていない問題(運用逸脱)
 最大の弱点は、任意運用や、忙しさによるスキップです。対策は「スキャン必須化(イン
 ターロック)」、および例外解除の権限管理・ログ化です。
(2) 正しいものを正しくスキャンしたがラベルが間違っている問題
 誤ラベルが貼られていれば、スキャン照合は誤りを見抜けません。ラベル発行元のプロセ
 ス(印字内容、発行条件、版数管理)をポカヨケ化する必要があります。
(3) コードの品質問題(汚れ、擦れ、反射、曲面)
 読めないコードは現場での手入力を誘発し、ヒューマンエラーが復活します。印字品質管
 理、貼付位置の標準化、耐環境ラベル、読み取り機の選定が必要です。
(4) システム側の不備(品番紐付けミス)
 正しい値が間違っていれば、照合ロジック自体が誤ります。これはマスタ管理、変更管理
 に関する問題でありシステムの検証、整備が必要です。
(5) 例外処理での混乱(代替品、特採、返品、再投入)
 例外が多いと人による「とりあえず通す」運用が起きます。例外ルールを標準化し、例外
 時こそログを残す設計にします。
(6) 一致しているが別に問題がある
 バーコードは主に識別・取り違えには強いのですが、品質特性(外観、性能、期限、保管
 条件逸脱など)を保証するわけではありません。期限や温度履歴など、別の監視が必要に
 なります。
(7) セキュリティ/不正(意図的なすり替え)
 ラベルの貼り替えが許されたり、コードのコピーが可能な運用においては不正が入り込む
 余地ができます。重要な製品については番号のシリアル化、改ざん検知ラベル、権限管理、
 監視などと組み合わせます。

ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」3 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年4月29日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.555 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」3 ***
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前号でポカヨケの話をしました。その具体的な例として「QRコード、バーコード照合
(スキャン必須化)」を取り上げました。ポカヨケの原点はトヨタのモノつくりにあった
とお話ししましたが、 QRコード、バーコードについては、いつ頃、誰が考えたのかはあ
まり知られていません。バーコードから調べてみました。

■□■ バーコードの歴史的経過と名前の由来 ■□■
バーコードは「線(バー)と空白(スペース)の並びで情報を表し、機械で読み取る」技
術です。人が目で見て読む文字情報に比べ、読み取りが速い、誤読が少ない、システム連
携しやすいという利点があります。歴史的には、1948年、米国Drexel大学の学生であっ
たMr.WoodlandとMr.Silverが、Morse Code(モールス信号)を印刷して垂直に伸ばし、
太バーと細バーを作成することを考案しました。大量の商品を扱う流通・小売の現場では、
手入力や目視記録では処理速度が追いつかず、入力ミスが避けられにことから、商品を一
意に識別できる機械読取の仕組みが求められていましたので、バーコードは急速に普及し
ていきました。

「バーコード(bar code)」という名称は、記号の主要部が棒(bar)で構成され、棒の太
さや並び(一次元)で情報を符号化し、読み取り装置がそれを数値や文字列に符号化
(code)して機能させるという、きわめて直感的な命名です。その後、一次元バーコード
は小売の標準化(商品識別コード体系)とともに広がり、医療、製造、物流へとその応用
領域を拡大しました。製造業においては、単に「品番」だけでなく、ロット、シリアル、
作業者、工程、設備、検査結果などの紐付けが重要になり、トレーサビリティ要求の高ま
りとともに利用価値が増しました。
一方で、一次元バーコードは記載する「情報量」に限界があり、面積が小さい部品や複数
情報をコードに載せたい用途には限界がありました。そこで普及したのが、QRコード
(二次元コード)です。

■□■ QRコードの歴史的経過と名前の由来 ■□■
QRコードは、1994年に日本の自動車部品メーカーである(株)デンソー ウェーブの技術
者、原昌宏(はら まさひろ)氏らによって開発されました。名称の「QR」は“Quick
Response”の略として知られ、読み取りの迅速性(現場での即応性)を志向したものでし
た。
製造・物流現場での「高速読み取り」と「大容量データ」のニーズに応えるため誕生した
縦横方向に情報を持つQRコードは多くの情報を格納でき、汚れや欠けに対する誤り訂正
機能を持つものもあります。
結果として、現場では「一次元(JAN/Code128等)と二次元(QR/Datamatrix等)」を使
い分け、工程や識別粒度に応じた設計が行われるようになりました。

ISO9001の観点で見ると、バーコード/QRの普及は単なる技術導入ではなく、箇条8.5.2
(識別及びトレーサビリティ)や、箇条8.5.1の「管理された状態」を実現するための代
表的手段になっています。とりわけ「品番取り違え」「ロット混入」「誤出荷」といった重
大リスクは、人の目視確認だけでは残留リスクが大きく、機械照合による仕組みが強く求
められるようになっています。

■□■ バーコード/QRコードの論理的発想 ■□■
コード照合の本質は、ヒューマンエラー対策としての認知負荷の削減と、誤りの受理拒否
(インターロック)にあります。人が品番やロットを目視で読むときには、次のような典
型的なエラーが起こりえます。
 ・桁・文字の見間違い(Oと0、Iと1、8とB等)
 ・似た品番の取り違え(末尾違い、枝番違い)
 ・思い込みによるスキップ(「いつもの品番」と決めつける)
 ・焦りや割込みによる確認漏れ(見たつもり・読んだつもり)
 ・転記ミス(紙への書き写し、手入力)
コード照合は、次の3要素をポイントにして、「読む、比較する、入力する」という人の弱
い部分を、読み取り(機械)+照合(システム)に置き換えます。
(1)一意識別:対象(部品・材料・製品・伝票・箱)にIDを付与する
(2)機械読取:人が文字を読まず、スキャンでIDを取得する
(3)自動照合:作業指示(期待値)とスキャン値(実績)を比較し、一致しない限り次 
  工程へ進めない
ここで重要なのが「スキャン必須化」です。単にコードを貼って任意で読ませる運用だ
と、忙しい時や慣れた人ほどスキップし、結局は目視運用に戻ってしまいます。したがっ
て、ISO9001の「管理された状態」を維持するため工程の完了条件(done)=照合OKま
では先に進めないインターロック化が要点です。
コード照合は「検出型ポカヨケ」に分類できます。誤りを物理的に不可能にするのではな
く、誤りが起きてもその場で検出し停止させる。検出型の強みは、対象が多品種でも拡張
しやすく、データが残る点です。照合ログが残れば、次の改善が可能になります。
 ・どの工程で、何の取り違えが多いか(傾向分析)
 ・どの時間帯・どの班で多いか(負荷や教育の検討)
 ・どの品番群で多いか(似た品番設計や表示改善の検討)
つまりコード照合は、単なるエラー防止ではなく、再発防止のための事実データの獲得に
も役立ちます。ISO9001でいえば、10.2(不適合及び是正処置)や9.1(監視・測定・分
析・評価)と相性がよい仕組みです。

ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」2 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年4月22日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.554 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」2 ***
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「ヒューマンエラー」にはいろいろなタイプがあり、類型化することは難しいのですが、
典型的な例として、エラーには次のようなものがあります。
 ・取り違え(異品):品番、左右、ロット、顧客、宛先
 ・抜け(未実施):締付け、投入、貼付、測定、記録
 ・順序違い:工程順、混合順、熱処理条件、承認順
 ・設定ミス:数値、単位、桁、条件、版数
これらに対して、どのような「できない化」または「すぐ分かる化」を考察することが設
計の基本となります。

■□■ ポカヨケの具体例 ■□■
ポカヨケは「治具」だけでなく、帳票、ラベル、システムUI(User Interface)、物流案内
ガイド(色テープ貼付け線)まで対象になりえます。上で述べた「ヒューマンエラー」タ
イプ別に具体的な実施例を示します。
(1)取り違え防止(異品・誤組合せ)
 ●形状キー(非対称設計、キー溝、ピン配置)
  向きが逆だと入らない設計。左右部品が逆に付かない。電装コネクタの異形化が典型
  的な例である。 →担当者が確認するまでもなく「エラーそのものが成立しない」。
 ●色、表示、置き場の連動(定置管理+色分け)
  部品箱の色、棚番、現品票、指示書の色を一致させ、異なるものが混ざると違和感が
  出るようにする。→視覚により思い込みを減らす。
 ●QRコード、バーコード照合(スキャン必須化)
  部品、伝票、指示書、ラベルを照合し一致しないと先へ進めない。 →デジタルのイ
  ンターロックで「確認漏れ」を排除。
(2)抜け防止(入れ忘れ、締め忘れ、貼り忘れ)
 ●部品有無センサー/重量チェック
  投入後に重量が規定範囲に入らないと次へ進めない。ネジ箱を秤で管理し、取り出し
  本数が合わないとアラームで注意喚起。 →人のカウントに頼らない。
 ●トルクレンチの締付け完了記録(電子トルク)
  規定トルク、規定角度の達成を機器が判断し、完了ログが残る。 →締め忘れだけで
  なく、締め過ぎ/不足も同時に押さえる。
 ●チェックリストの“ゲート化”
  チェックリストは形骸化しやすい。工程の完了条件に組み込み、未チェックでは次工
  程へ払い出すことを不可にする。 →「やったはず」を排除する設計。
(3)順序違い防止(工程順、混合順、承認順)
 ●治具で順序を固定(Aを完了しないとBができない)
  セット治具や作業台の配置で自然に順序が決まる。 →手順書依存を減らす。
 ●システムで承認順序を固定(ワークフロー)
  サービス業や事務で承認済みでないと次へ進めない。
  →例外処理は“例外手順”として管理することが必要。
(4)設定ミス防止(数値、単位、版数)
 ●レシピ的管理(条件呼び出し方式)
  品番ごとに決められた条件を呼び出す。基準からの変更は権限設定と履歴管理で行
  う。→入力ミスを減らす。
 ●入力制約(範囲チェック、プルダウン化、単位固定)
  数値入力は上限下限を設定し、異常値は受け付けない。自由度は減らす。
  →注意不足であっても対象業務を“できない化”する。

■□■ ポカヨケでも防げないヒューマンエラー ■□■
ポカヨケは有効であっても限定的なので。限界を理解して他の仕組みと組み合わせると活
用範囲が広がります。
(1)例外運用(緊急対応、代替、手作業切替)
 ポカヨケは標準状態の作業には強い反面、例外処理には弱い構造を持っている。したが
 って、例外的な運用を避けることが難しい場合には、ポカヨケは効果が無いことを前提
 に工程を管理する。
(2)意図的な逸脱
 センサーを塞ぐ、インターロックを解除する、後で記録を書く、などの逸脱行為は現場
 で現実的に起きやすい。個人のモラルだけでなく、納期プレッシャーや評価制度、過負
 荷などの組織要因が原因となって意図的な逸脱が誘発される。日常のコミュニケ―ショ
 ン、風通しの良い文化づくりが必要である。
(3)複合タスクによる認知エラー(割込み、同時作業)
 ポカヨケは単発エラー防止には有効であるが、複合化された作業には弱い特性がある。
 多能工化、段取り替えの頻繁化、役割分担の変更などは極力減らす業務のやり方に工夫
 が必要である。
(4) ポカヨケ装置自体の故障、設定不良
 「ポカヨケを付けたから安心」ではなく、ポカヨケの健全性を維持する仕組みが必要で
 ある。センサーのなど保全計画、点検、校正、ソフト変更管理、フェールセーフ設計
 (安全側に倒す)などが重要である。

このように、ポカヨケは「工程内の誤作業」を大きく減らしますが、設計、要求、例外運
用、組織要因、装置健全性、変更といった別領域におけるリスク回避には限界があります。
ISO9001の運用においては、8.5.1 g)を単独な要求として扱うのではなく、6.1(リスクと
機会)、7.2(力量)、7.5(文書化した情報)、8.6(リリース)などの要求と連動させて、
管理された状態を確立するとマネジメントシステムは強靭な仕組みになります。

ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」1 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年4月15日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.553 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」1 ***
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今回からISO9001キーワードとして「ヒューマンエラー」を取り上げたいと思います。
ISO9001箇条8.5.1製造及びサービス提供の管理 には次の要求があります。
「g) ヒューマンエラーを防止するための処置を実施する。」

■□■ ヒューマンエラーを防止するための処置 ■□■
ヒューマンエラー防止に日本の製造現場で発達した方法の一つに「ポカヨケ」がありま
す。今日では、医療、物流、サービス業などにも広く応用されています。日本では品質
づくりを「検査で不良を見つける」方法ではなく、「工程で不良を作らない」方法に着目
し経営をしてきました。結果を確認するより、過程でミスを起こらなくさせることで後
工程での手戻り、納期遅延または不良品流出リスクを押さえました。日本ではそのメリ
ットに早くから気づき、産業界上げて「工程での品質作り込み」による品質管理を実践
してきました。
日本の現場改善の流れ(QC活動、標準化、5S、ライン改善など)の中で、ポカヨケは
「誰がやっても同じ品質」になる方法として発展しました。ここで強調すべきは、ポカ
ヨケが単なる「器具の工夫」ではなく、品質管理の思想 人を責めず仕組みを変える 
という考えで発展してきたという点です。人の注意力には限界があり、熟練者でも疲労
や焦り、割込みでミスをします。「気を付けろ」と言っても決して治らない、「気を付け
なくても間違えない」方法はないか、「間違えたらその場で止まる」方法はないか、50,
60年前に最初に考えたのがトヨタでした。

■□■ バカ除けと呼ばれた? ■□■
名称の由来については、もともと現場で「バカヨケ(馬鹿除け)」と呼ばれていたものが、
言葉の持つ侮蔑的ニュアンスを避け、改善文化を損なわないように「ポカ(うっかり)
ヨケ(避け)」へ言い換えられた、という経緯が広く知られています。ここに、ポカヨケ
の価値観が表れています。対象は「能力の低い人」ではなく、誰にでも起きる「うっか
り」であり、目的は「人の矯正」ではなく、工程設計・情報設計・環境設計の改善です。
ISO9001の8.5.1 g)が求めるのは、まさにこうした考え方で、教育や注意喚起(人的対
策)に偏らず、管理された状態(controlled conditions)として工程に埋め込むことです。
審査で「それは個人依存ではないか」「属人化していないか」「忙しいときでも同じように
守れるか」と問われ時にポカヨケは正鵠を得た回答になりえます。
さらに、近年のデジタル化によってポカヨケの概念が拡大されてきています。従来は治
具・形状・物理的制約が中心でしたが、現在はQRコード(バーコード)、電子承認、レ
シピ管理、センサー、画像認識など、「情報システムのポカヨケ」が一般化しています。
つまり、ポカヨケは歴史的に「現場の知恵」から始まり、今は「工程設計+データ設計」
へ広がっています。

■□■ ポカヨケの論理的発想 ■□■
ポカヨケの論理は「人間は必ず間違える」という現実認識から出発する設計論です。すな
わちエラーの原因に対する対策の考え方をそれまでと大きく変えました。
人が行う作業の場合、不良製品に対する原因の一つに「注意不足」がありますが、ポカヨ
ケはエラーへの対策を従来とは異なった発想で対策を考えます。つまり「注意を増やす」
のではなく、不良が作られない条件を工程に埋め込むことに変えるという発想です。この
転換がポカヨケの核心です。
ポカヨケは大きく二つに分類できます。
(1) 防止(Prevention)型
 誤操作を物理的/論理的にできないようにする(できない化)
(2)検出(Detection)型
 誤りが起きても即時に検知し、次へ流さない(すぐ分かる化)
防止型は最も強い対策です。なぜならエラーそのものが「起きない」からです。検出型
は、エラーが「起きる可能性」を許容しつつ流出を止めます。現実にはコストや工程制約
などの個別状況によるリスクベースで2つの型を選びます。基本的な考え方は、重大リス
クには防止型、頻度が高いものには検出型がよいと思います。

■□■ ポカヨケの深堀り ■□■
ポカヨケは「人間の認知特性の分析」と「工程条件の工夫」に分解できます。人間は、
(1)慣れによる省略
(2)思い込み
(3)同時作業による注意分散
(4)焦り
(5)疲労
(6)情報過多
(7)例外処理
などのためエラーを引き起こします。そこで、工程を次のように設計します。
(a)選択肢を減らす(迷う余地をなくす)
(b)判断を不要にする(条件の固定化・自動化)
(c)正しい行為に誘導する(形状、色、順序、配置でガイドする)
(d)誤りは即座に顕在化する(異常停止、エラー表示、アラーム)
審査で強い説明は「対策がある」のではなく、工程に組み込まれている」という言い方で
す。例えば「照合OKでないと次画面へ進めない」「規定トルクで締付けないと完了登録
できない」など、工程の成立条件として設計されていることが、ポカヨケの論理的強みで
す。