Category Archives: つなげるツボ

ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」3 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年4月29日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.555 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」3 ***
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前号でポカヨケの話をしました。その具体的な例として「QRコード、バーコード照合
(スキャン必須化)」を取り上げました。ポカヨケの原点はトヨタのモノつくりにあった
とお話ししましたが、 QRコード、バーコードについては、いつ頃、誰が考えたのかはあ
まり知られていません。バーコードから調べてみました。

■□■ バーコードの歴史的経過と名前の由来 ■□■
バーコードは「線(バー)と空白(スペース)の並びで情報を表し、機械で読み取る」技
術です。人が目で見て読む文字情報に比べ、読み取りが速い、誤読が少ない、システム連
携しやすいという利点があります。歴史的には、1948年、米国Drexel大学の学生であっ
たMr.WoodlandとMr.Silverが、Morse Code(モールス信号)を印刷して垂直に伸ばし、
太バーと細バーを作成することを考案しました。大量の商品を扱う流通・小売の現場では、
手入力や目視記録では処理速度が追いつかず、入力ミスが避けられにことから、商品を一
意に識別できる機械読取の仕組みが求められていましたので、バーコードは急速に普及し
ていきました。

「バーコード(bar code)」という名称は、記号の主要部が棒(bar)で構成され、棒の太
さや並び(一次元)で情報を符号化し、読み取り装置がそれを数値や文字列に符号化
(code)して機能させるという、きわめて直感的な命名です。その後、一次元バーコード
は小売の標準化(商品識別コード体系)とともに広がり、医療、製造、物流へとその応用
領域を拡大しました。製造業においては、単に「品番」だけでなく、ロット、シリアル、
作業者、工程、設備、検査結果などの紐付けが重要になり、トレーサビリティ要求の高ま
りとともに利用価値が増しました。
一方で、一次元バーコードは記載する「情報量」に限界があり、面積が小さい部品や複数
情報をコードに載せたい用途には限界がありました。そこで普及したのが、QRコード
(二次元コード)です。

■□■ QRコードの歴史的経過と名前の由来 ■□■
QRコードは、1994年に日本の自動車部品メーカーである(株)デンソー ウェーブの技術
者、原昌宏(はら まさひろ)氏らによって開発されました。名称の「QR」は“Quick
Response”の略として知られ、読み取りの迅速性(現場での即応性)を志向したものでし
た。
製造・物流現場での「高速読み取り」と「大容量データ」のニーズに応えるため誕生した
縦横方向に情報を持つQRコードは多くの情報を格納でき、汚れや欠けに対する誤り訂正
機能を持つものもあります。
結果として、現場では「一次元(JAN/Code128等)と二次元(QR/Datamatrix等)」を使
い分け、工程や識別粒度に応じた設計が行われるようになりました。

ISO9001の観点で見ると、バーコード/QRの普及は単なる技術導入ではなく、箇条8.5.2
(識別及びトレーサビリティ)や、箇条8.5.1の「管理された状態」を実現するための代
表的手段になっています。とりわけ「品番取り違え」「ロット混入」「誤出荷」といった重
大リスクは、人の目視確認だけでは残留リスクが大きく、機械照合による仕組みが強く求
められるようになっています。

■□■ バーコード/QRコードの論理的発想 ■□■
コード照合の本質は、ヒューマンエラー対策としての認知負荷の削減と、誤りの受理拒否
(インターロック)にあります。人が品番やロットを目視で読むときには、次のような典
型的なエラーが起こりえます。
 ・桁・文字の見間違い(Oと0、Iと1、8とB等)
 ・似た品番の取り違え(末尾違い、枝番違い)
 ・思い込みによるスキップ(「いつもの品番」と決めつける)
 ・焦りや割込みによる確認漏れ(見たつもり・読んだつもり)
 ・転記ミス(紙への書き写し、手入力)
コード照合は、次の3要素をポイントにして、「読む、比較する、入力する」という人の弱
い部分を、読み取り(機械)+照合(システム)に置き換えます。
(1)一意識別:対象(部品・材料・製品・伝票・箱)にIDを付与する
(2)機械読取:人が文字を読まず、スキャンでIDを取得する
(3)自動照合:作業指示(期待値)とスキャン値(実績)を比較し、一致しない限り次 
  工程へ進めない
ここで重要なのが「スキャン必須化」です。単にコードを貼って任意で読ませる運用だ
と、忙しい時や慣れた人ほどスキップし、結局は目視運用に戻ってしまいます。したがっ
て、ISO9001の「管理された状態」を維持するため工程の完了条件(done)=照合OKま
では先に進めないインターロック化が要点です。
コード照合は「検出型ポカヨケ」に分類できます。誤りを物理的に不可能にするのではな
く、誤りが起きてもその場で検出し停止させる。検出型の強みは、対象が多品種でも拡張
しやすく、データが残る点です。照合ログが残れば、次の改善が可能になります。
 ・どの工程で、何の取り違えが多いか(傾向分析)
 ・どの時間帯・どの班で多いか(負荷や教育の検討)
 ・どの品番群で多いか(似た品番設計や表示改善の検討)
つまりコード照合は、単なるエラー防止ではなく、再発防止のための事実データの獲得に
も役立ちます。ISO9001でいえば、10.2(不適合及び是正処置)や9.1(監視・測定・分
析・評価)と相性がよい仕組みです。

ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」2 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年4月22日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.554 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」2 ***
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「ヒューマンエラー」にはいろいろなタイプがあり、類型化することは難しいのですが、
典型的な例として、エラーには次のようなものがあります。
 ・取り違え(異品):品番、左右、ロット、顧客、宛先
 ・抜け(未実施):締付け、投入、貼付、測定、記録
 ・順序違い:工程順、混合順、熱処理条件、承認順
 ・設定ミス:数値、単位、桁、条件、版数
これらに対して、どのような「できない化」または「すぐ分かる化」を考察することが設
計の基本となります。

■□■ ポカヨケの具体例 ■□■
ポカヨケは「治具」だけでなく、帳票、ラベル、システムUI(User Interface)、物流案内
ガイド(色テープ貼付け線)まで対象になりえます。上で述べた「ヒューマンエラー」タ
イプ別に具体的な実施例を示します。
(1)取り違え防止(異品・誤組合せ)
 ●形状キー(非対称設計、キー溝、ピン配置)
  向きが逆だと入らない設計。左右部品が逆に付かない。電装コネクタの異形化が典型
  的な例である。 →担当者が確認するまでもなく「エラーそのものが成立しない」。
 ●色、表示、置き場の連動(定置管理+色分け)
  部品箱の色、棚番、現品票、指示書の色を一致させ、異なるものが混ざると違和感が
  出るようにする。→視覚により思い込みを減らす。
 ●QRコード、バーコード照合(スキャン必須化)
  部品、伝票、指示書、ラベルを照合し一致しないと先へ進めない。 →デジタルのイ
  ンターロックで「確認漏れ」を排除。
(2)抜け防止(入れ忘れ、締め忘れ、貼り忘れ)
 ●部品有無センサー/重量チェック
  投入後に重量が規定範囲に入らないと次へ進めない。ネジ箱を秤で管理し、取り出し
  本数が合わないとアラームで注意喚起。 →人のカウントに頼らない。
 ●トルクレンチの締付け完了記録(電子トルク)
  規定トルク、規定角度の達成を機器が判断し、完了ログが残る。 →締め忘れだけで
  なく、締め過ぎ/不足も同時に押さえる。
 ●チェックリストの“ゲート化”
  チェックリストは形骸化しやすい。工程の完了条件に組み込み、未チェックでは次工
  程へ払い出すことを不可にする。 →「やったはず」を排除する設計。
(3)順序違い防止(工程順、混合順、承認順)
 ●治具で順序を固定(Aを完了しないとBができない)
  セット治具や作業台の配置で自然に順序が決まる。 →手順書依存を減らす。
 ●システムで承認順序を固定(ワークフロー)
  サービス業や事務で承認済みでないと次へ進めない。
  →例外処理は“例外手順”として管理することが必要。
(4)設定ミス防止(数値、単位、版数)
 ●レシピ的管理(条件呼び出し方式)
  品番ごとに決められた条件を呼び出す。基準からの変更は権限設定と履歴管理で行
  う。→入力ミスを減らす。
 ●入力制約(範囲チェック、プルダウン化、単位固定)
  数値入力は上限下限を設定し、異常値は受け付けない。自由度は減らす。
  →注意不足であっても対象業務を“できない化”する。

■□■ ポカヨケでも防げないヒューマンエラー ■□■
ポカヨケは有効であっても限定的なので。限界を理解して他の仕組みと組み合わせると活
用範囲が広がります。
(1)例外運用(緊急対応、代替、手作業切替)
 ポカヨケは標準状態の作業には強い反面、例外処理には弱い構造を持っている。したが
 って、例外的な運用を避けることが難しい場合には、ポカヨケは効果が無いことを前提
 に工程を管理する。
(2)意図的な逸脱
 センサーを塞ぐ、インターロックを解除する、後で記録を書く、などの逸脱行為は現場
 で現実的に起きやすい。個人のモラルだけでなく、納期プレッシャーや評価制度、過負
 荷などの組織要因が原因となって意図的な逸脱が誘発される。日常のコミュニケ―ショ
 ン、風通しの良い文化づくりが必要である。
(3)複合タスクによる認知エラー(割込み、同時作業)
 ポカヨケは単発エラー防止には有効であるが、複合化された作業には弱い特性がある。
 多能工化、段取り替えの頻繁化、役割分担の変更などは極力減らす業務のやり方に工夫
 が必要である。
(4) ポカヨケ装置自体の故障、設定不良
 「ポカヨケを付けたから安心」ではなく、ポカヨケの健全性を維持する仕組みが必要で
 ある。センサーのなど保全計画、点検、校正、ソフト変更管理、フェールセーフ設計
 (安全側に倒す)などが重要である。

このように、ポカヨケは「工程内の誤作業」を大きく減らしますが、設計、要求、例外運
用、組織要因、装置健全性、変更といった別領域におけるリスク回避には限界があります。
ISO9001の運用においては、8.5.1 g)を単独な要求として扱うのではなく、6.1(リスクと
機会)、7.2(力量)、7.5(文書化した情報)、8.6(リリース)などの要求と連動させて、
管理された状態を確立するとマネジメントシステムは強靭な仕組みになります。

ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」1 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年4月15日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.553 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」1 ***
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今回からISO9001キーワードとして「ヒューマンエラー」を取り上げたいと思います。
ISO9001箇条8.5.1製造及びサービス提供の管理 には次の要求があります。
「g) ヒューマンエラーを防止するための処置を実施する。」

■□■ ヒューマンエラーを防止するための処置 ■□■
ヒューマンエラー防止に日本の製造現場で発達した方法の一つに「ポカヨケ」がありま
す。今日では、医療、物流、サービス業などにも広く応用されています。日本では品質
づくりを「検査で不良を見つける」方法ではなく、「工程で不良を作らない」方法に着目
し経営をしてきました。結果を確認するより、過程でミスを起こらなくさせることで後
工程での手戻り、納期遅延または不良品流出リスクを押さえました。日本ではそのメリ
ットに早くから気づき、産業界上げて「工程での品質作り込み」による品質管理を実践
してきました。
日本の現場改善の流れ(QC活動、標準化、5S、ライン改善など)の中で、ポカヨケは
「誰がやっても同じ品質」になる方法として発展しました。ここで強調すべきは、ポカ
ヨケが単なる「器具の工夫」ではなく、品質管理の思想 人を責めず仕組みを変える 
という考えで発展してきたという点です。人の注意力には限界があり、熟練者でも疲労
や焦り、割込みでミスをします。「気を付けろ」と言っても決して治らない、「気を付け
なくても間違えない」方法はないか、「間違えたらその場で止まる」方法はないか、50,
60年前に最初に考えたのがトヨタでした。

■□■ バカ除けと呼ばれた? ■□■
名称の由来については、もともと現場で「バカヨケ(馬鹿除け)」と呼ばれていたものが、
言葉の持つ侮蔑的ニュアンスを避け、改善文化を損なわないように「ポカ(うっかり)
ヨケ(避け)」へ言い換えられた、という経緯が広く知られています。ここに、ポカヨケ
の価値観が表れています。対象は「能力の低い人」ではなく、誰にでも起きる「うっか
り」であり、目的は「人の矯正」ではなく、工程設計・情報設計・環境設計の改善です。
ISO9001の8.5.1 g)が求めるのは、まさにこうした考え方で、教育や注意喚起(人的対
策)に偏らず、管理された状態(controlled conditions)として工程に埋め込むことです。
審査で「それは個人依存ではないか」「属人化していないか」「忙しいときでも同じように
守れるか」と問われ時にポカヨケは正鵠を得た回答になりえます。
さらに、近年のデジタル化によってポカヨケの概念が拡大されてきています。従来は治
具・形状・物理的制約が中心でしたが、現在はQRコード(バーコード)、電子承認、レ
シピ管理、センサー、画像認識など、「情報システムのポカヨケ」が一般化しています。
つまり、ポカヨケは歴史的に「現場の知恵」から始まり、今は「工程設計+データ設計」
へ広がっています。

■□■ ポカヨケの論理的発想 ■□■
ポカヨケの論理は「人間は必ず間違える」という現実認識から出発する設計論です。すな
わちエラーの原因に対する対策の考え方をそれまでと大きく変えました。
人が行う作業の場合、不良製品に対する原因の一つに「注意不足」がありますが、ポカヨ
ケはエラーへの対策を従来とは異なった発想で対策を考えます。つまり「注意を増やす」
のではなく、不良が作られない条件を工程に埋め込むことに変えるという発想です。この
転換がポカヨケの核心です。
ポカヨケは大きく二つに分類できます。
(1) 防止(Prevention)型
 誤操作を物理的/論理的にできないようにする(できない化)
(2)検出(Detection)型
 誤りが起きても即時に検知し、次へ流さない(すぐ分かる化)
防止型は最も強い対策です。なぜならエラーそのものが「起きない」からです。検出型
は、エラーが「起きる可能性」を許容しつつ流出を止めます。現実にはコストや工程制約
などの個別状況によるリスクベースで2つの型を選びます。基本的な考え方は、重大リス
クには防止型、頻度が高いものには検出型がよいと思います。

■□■ ポカヨケの深堀り ■□■
ポカヨケは「人間の認知特性の分析」と「工程条件の工夫」に分解できます。人間は、
(1)慣れによる省略
(2)思い込み
(3)同時作業による注意分散
(4)焦り
(5)疲労
(6)情報過多
(7)例外処理
などのためエラーを引き起こします。そこで、工程を次のように設計します。
(a)選択肢を減らす(迷う余地をなくす)
(b)判断を不要にする(条件の固定化・自動化)
(c)正しい行為に誘導する(形状、色、順序、配置でガイドする)
(d)誤りは即座に顕在化する(異常停止、エラー表示、アラーム)
審査で強い説明は「対策がある」のではなく、工程に組み込まれている」という言い方で
す。例えば「照合OKでないと次画面へ進めない」「規定トルクで締付けないと完了登録
できない」など、工程の成立条件として設計されていることが、ポカヨケの論理的強みで
す。

ISO9001キーワード 「内部監査」:AIエージェントの活用 最終 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年4月8日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.552 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「内部監査」:AIエージェントの活用 最終 ***
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AIエージェントが設計部においてスタッフにインタビューする話をしています。内部監査
の証拠の一つに口頭によるインタビューがあります。文書記録を確認することに加えて、
インタビューにおける口頭回答も指摘の証拠にすることで監査の信頼性を高めることがで
きます。

■□■ AIのインタビュー質問 ■□■
スタッフにインタビューする要点は、ISO9001 7.3「認識」、7.2「力量」、8.1「運用の計
画・管理」などに書かれています。
まずは ISO箇条7.3「認識」にある要点を元に次のような質問を考えてみます。
 ・品質方針を自分の業務に置き換えるとどんな表現になりますか?
 ・自分の工程にミス(不適合)があると顧客にどう影響しますか?
 ・その場合の顧客とは具体的に誰になりますか?
 ・標準から逸脱しそうになって時、あるいは逸脱した時、誰に相談し何を根拠に判断し
 ますか?
規格にある要求事項を自分の業務に置き換えた時、日常業務にどのように反映させるのか
を考えなければなりません。この置換え力を測ることでギャップの重要性を決める判断の
一つが得られます。
Vol.551において、記録の証拠力としてA(公式記録)、B(準公式記録)、C(口頭記録)
をあげ、Cに行くほど証拠力が落ちると言いましたが、A,B,Cのスコアは単独で評価
せず、組み合わせて評価するとより信頼性が上がります。例えば、次のような言行不一致
は検出しやすくなります。
 ・記録(A)はある、しかし業務の実態(C)は違う。
 ・担当者はやっているつもりであるが(C)、記録(AorB)には残っていない。

■□■ 監査における3つの要素 ■□■
内部監査に限りませんが、監査には3つの証拠があると言われています。それが上記のA
(公式記録)、B(準公式記録)、C(インタビュー記録)です。AIにナレッジとして教え
込む記録3つにISO要求事項を紐付けることができます。
 ・記録A(標準に基づく公式記録)
 ・記録B(メールなど準公式記録)
 ・記録C(インタビューによる記録)

記録による事実の把握

この3点がAIに教え込むナレッジになります。
AIがギャップとして摘出する不適合には3つの典型があります。
 ・標準が要求していることを実行していない。(例外扱いの常態化、標準が古い)
 ・標準は改訂済みであるが現場では旧版を運用している(周知・配布の不全)
 ・記録は整っているが運用はされていない(代理、後追いチェック)
AIにこの型を教え込み、分類させることで「事実」と「推定原因(仮説)」が分けられて
是正処置へと繋げることができます。

■□■ 不適合の根拠を可視化する ■□■
インタビューによる口頭記録は、後から「言っていない」となる可能性があるので、可能
な限りその場で確認できる証拠に落とし込みます(画面・ファイル・現物など)。
AIエージェントのインタビュー質問も「それを示す記録(画面など)を見せてください」
を常に加えることが大切です。
インタビュー回答に基づく指摘は、個人攻撃に見えやすいので、「誰が」については表現
せず、「どのプロセスで、どの要求が、どう満たされていないか」を表現します。
このようにしてAIエージェントが不適合を指摘した次には、不適合を個別に是正処置要
求するステップに行きます。監査を「指摘して終わり」にさせずに不適合を再発させない
重要な過程です。ここで重要なのは、1件の不適合に対して「原因分析→修正→是正(再
発防止)→効果確認」までの筋道を、過不足なく表現することです。
不適合原因は多くの場合「教育不足、認識不足」で終わらせがちですので、AIには事前
に原因の典型的なパターンを教え込んでおく必要があります。もちろん原因はいくつかの
組合せによる場合も多いので単純ではありません。
 ・標準の不備(要求が曖昧である)
 ・周知の不備(最新化が徹底されていない)
 ・ツールの不備(メンテ不足、出来るようになっていない)
 ・責任権限不明確(確認チェックがされていない)
 ・監視測定の不足(異常が検出されていない)など
これらの原因のパターンを教え込み、原因候補を人・方法・設備・測定・環境・管理など
のカテゴリと組み合わせることを覚えさせ、不適合と推定原因をセットで表現するように
させます。
是正処置で重要なことは 修正と是正(再発防止)を分けることです。
 ・修正:起きた問題の解消(欠落記録の補完、未承認の是正など)
 ・是正(再発防止):仕組み変更(標準改訂、チェック機構、教育、監視指標など)
AIにはこの区別を強制的に実行させ、期限・責任者・成果物(改訂版、教育記録、監視ロ
グ)まで書かせると、効果的な内部監査となります。
効果確認(いつ、何を見るか)は後回しにされがちです。AIには「次回DRで確認」、「次
回監査で確認」などと曖昧に書かせず、例えば「次期の2案件で設計審査の必須項目を
100%実行したかを確認する」など、評価が可能な表現で報告書を書かせます。
最後に;
アメリカのテック企業からいろいろなAIエージェントが次から次と売り出されています。
そのような大規模なAIエージェントではなく、ごく小規模なAIエージェントを自分たち
で作成するとよいと思います。

ISO9001キーワード 「内部監査」:AIエージェントの活用7 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年4月1日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.551 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「内部監査」:AIエージェントの活用7 ***
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X社設計部のナレッジを教え込む続きです。この3つ目の記録はAIエージェントによる内
部監査の成否を決める重要ナレッジです。記録には2種類あります。組織が標準書で規定
している記録が1つです。2つ目は標準書で規定されてはいないが、組織内に記録として
扱える可視化されたメール、会議チャット、帳票、図表などです。今回はISO規格に準拠
した内部監査を想定していますので、前回監査から今日監査までの設計部の規定された記
録、すなわち1つ目の記録をAIに教え込みます。ただ、AIに実施させる内部監査によっ
ては(不適合分類、内部統制監査、不祥事監査など)2つ目の記録の活用が必要になりま
す。

■□■ 前回~今日までの設計部記録を教え込む ■□■
AIエージェントによる内部監査の成否を決める重要プロセスです。ここは客観的証拠を
AIが取り扱える状態にする作業で、ここを簡単に行うと監査報告書類は単なる読み物に
なってしまい、現場の実態を反映させた監査にならなくなります。
(1) 規定された記録をすべてを網羅(漏れ・過剰の防止)
  「設計部記録」といっても、企画書、要求仕様、設計計算、図面、変更通知、DR議
  事録、試作指示、試験成績、FMEA、レビューコメント、承認ワークフロー、会議録、
  教育記録、力量評価、外注往復文書など多岐にわたります。ISO規格並びに社内で規
  定さている記録をすべてピックアップし、それら要求されている標準書との関係を一
  覧表にします。
(2) メタデータ付与(突合可能性の確保)
  AIは突合/照合に強いのですが、その特性を活かすにはキーが必要です。記録に、プ
  ロジェクト案件ID、機種、日付、版、担当、承認者、関連図面番号、関連標準条項、
  工程(企画/設計/試作/DR/量産認定)などのタグを付けておくと、規定と実際
  のギャップ抽出が確実にできるようになります。
(3) 文書化した情報の管理(ISO9001 7.5)
  標準の改訂記録も重要です。業務を行う標準が最新化されていないと実施記録があっ
  ても無意味になる場合があります。実施記録は「ある」だけでは不十分で、何のため
  に記録しているかの背景も確認します。標準の改訂記録を読み込ませ、一定以上の期
  間(例えば5年)改訂がされていない文書をピップアップさせます。
(4) 機密・個人情報・知財の取り扱い
  設計記録には多くの機密が含まれています。AIエージェントを活用する常識として、
  運用ではアクセス制御(最小権限)、持ち出し禁止、匿名化、モデル学習への利用禁
  止などを事前に決め、「監査目的の範囲でのみ処理する」ことを手順化します。

■□■ ギャップを不適合として取り上げる ■□■
ナレッジ教え込みのステップの次は、発見したギャップの取り扱いをAIに教え込むステ
ップになります。
AIがギャップを取り扱う場合、2つの考え方があります。
(1) すべてのギャップを一覧表にする。
  その後は人間がギャップの重要度に応じた分類をします。例えば、次のような3つの
  分類です。
  ・不適合:要求事項に対して行った証拠が無い。
  ・観察事項:要求逸脱と断定できないがリスク兆候や弱点がある。
  ・改善提案:要求事項は満たすがより有効・効率的にできる。
(2) AIにギャップの分類までさせる。
  3つの分類をAIにさせるためにはAIに証拠(記録)の強さをスコア化させる必要が
  あります。記録には2種類あると言いましたが、この場合には2つ目の記録が必要に
  なります。
  1つ目(A)、2つ目(B、C)の記録を次のように格付けします。AからCと格付けは
  低くなります。
  格付けにそれぞれスコアを付けてギャップの重要度を決めさせます。
   A:公式記録(1つ目の記録)
   B:準公式記録(2つ目の記録、メール、チャット、個人メモなど)
   C:口頭記録(2つ目の記録、インタビューなど)

■□■ AIが設計部スタッフにインタビューする ■□■
上記、(2)Cのインタビューについて考えます。AIが設計部スタッフにインタビューす
る目的は、記録だけでは見えない「運用実態、認識、例外処理、暗黙知」などを確認する
目的で行います。ISO9001 7.3「認識」、7.2「力量」、8.1「運用の計画・管理」などにある
要求事項を念頭にインタビューでの質問を設計します。
AIには次のような質問を設計スタッフにしてその答えに基づいてギャップの重要度を決め
るよう教え込みます。
 ・直近の案件を指定して「その時どうしたか」を時系列で答えてもらう。
 ・急ぎの案件で省略することはあるのかなど例外について教えてもらう。
 ・失敗しそうなことを聞く(最近ヒヤリとしたことは?)
インタビュー中に、実際のシステム画面、最新版フォルダ、承認ワークフロー、図面管理
台帳、試験データの元ファイルなどをその場で見せてもらうことで、口頭記録(C又はB)
を公式記録(A)に引き上げることができます。