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図書の整理-内部診断と内部監査26 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.283 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 図書の整理-内部診断と内部監査26 ***
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前回から小骨の診断についてお話しを始めました。小骨とは日常
の仕事である身近なプロセスを意味しています。最初は整理整頓
についてです。我々は小学校のころから整理整頓をするようにと
繰り返し言われてきましたが、なかなか身につかないようです。
組織内部には多くの整理整頓すべきものがありますが、それらが
期待されたとおりになっているかを内部で診断することについて
述べてみたいと思います。

■□■ 整理整頓-図書 ■□■
整理整頓すべきものには、頭の中、仕事、文書、記録、図書など
その対象は多岐にわたります。
頭の中はともかくとして、身の周りにある多くの物は整理整頓さ
れているのと、いないとでは仕事の効率が大きく変わります。
整理とは、まず必要であるものとそうでないものを区分すること
です。整頓は必要でないとされたものを捨てることです。
今回は整理整頓する対象を「図書」にして、それをどのように診
断するかを述べてみたいと思います。

■□■診断1 どこに保管されているか ■□■
図書を保管する部門の数は組織の規模により異なります。小規模
の組織ですと、会社の中に一か所、図書の保管場所があるのが普
通です。大きな組織になると、部門ごとに図書の保管場所がある
でしょう。図書の保管方法もオープンな棚、本棚、書架など色々
あると思います。

しかし、現実は随分異なるのではないでしょうか?図書は一か所
にまとめて保管されていないことが多くあります。個人、グルー
プなどに分散して保管されているケースが多いかもしれません。
一か所に保管されていても、ある使用者が持ち出してそのまま個
人保管にしているなど多く見られることです。そうなると、散逸
する危険性が多く必要な図書が必要な時に利用できません。
診断のポイント1は、図書の保管場所です。

■□■診断2 どんな図書が保管されているか ■□■
どんな図書が保管されているでしょうか。診断のポイント2は、
保管されている図書の内容の確認です。
次のような図書が保管されている可能性があります。
 ・個人の図書
 ・取引先からの贈呈図書(取引先の歴史・沿革など)
 ・カタログ
 ・展示会パンフ
 ・広告宣伝資料など
ただでさえ狭い保管スペースを有効に活用するには、使用目的に
合った図書の保管に絞ることが大切です。

■□■診断3 図書の使用目的は ■□■
では保管されている図書の使用目的は何でしょうか。使用目的別
に保管図書を区分することは図書の探し出しを効果的にします。
できれば図書棚にインデックスを付けておくと良いと思います。
図書の使用目的は一般に次の区分によって決まってきます。
 ・部門別
  -営業
  -設計
  -技術
  -調達
  -製造
 ・機能用
  -法規
  -品質
  -環境
  -安全
  -人事
  -福祉
  -CSR

■□■診断4 図書の保管方法は ■□■
診断のポイント4は保管方法についてです。

一般的に、図書を保管する場所及び方法には以下の例が考えられ
ます。
 1.決まった一か所に集中させて保管(診断1参照)
 2.数か所に分けて保管(同上)
 3.特別な例として、外部場所に保管

いずれの場所、方法を選択するにしても、診断で重要となるのは、
「保管管理」と「保管図書の把握」です。
保管図書基準を定め、基準に則って保管すると決めた図書の目録
を作成しておくと、たとえ保管場所が分散していても、図書が
「どこに、何が」保管されているか把握し、利用することができ
ます。

小骨の診断_内部診断と内部監査25 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.282 ■□■
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*** 小骨の診断_内部診断と内部監査25 ***
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新型コロナウイルス終息後の世界について、予測も含めてこれ
からの変化を注視していく必要があります。そうした変化に備え
る意味でもこの機会に自組織の内部診断(内部監査)を行ったら
どうでしょうか。前回はサポート(支援)分野の総務プロセスに
ついてお話しをしましたが、今回からは小骨の診断についてお話
しをしてきたいと思います。

■□■大骨と小骨の診断■□■
内部診断には大骨の診断と小骨の診断があると「つなげるツボ」
Vol.256でお話ししました。繰り返しになりますが、組織の大骨の
診断は今まで20数回にわたり話をしてきました。
1.経営分野
 ・中期経営計画
 ・方針管理
 ・働き方改革
 ・SDG’s
2.プロフィットセンター(主要)分野
 ・研究開発プロセス
 ・企画プロセス
 ・設計プロセス
 ・生産技術プロセス
 ・購買プロセス
 ・製造プロセス
 ・サービス提供プロセス
 ・品証プロセス
 ・営業プロセス
3.サポート(支援)分野
 ・情報セキュリティプロセス
 ・会計プロセス
 ・総務プロセス

■□■ 小骨の診断対象例 ■□■
組織の大骨のプロセスの下には、業務展開された小骨のプロセス
が沢山あります。アメリカの大統領が表彰する品質管理のマルコム
ボルドリッジ賞事務局は、上位12の大骨のプロセスを下層の活動
へと3階層展開して一般的な組織のプロセス(活動)約400の活動
を示しています。

組織の第一線のプロセスにはこのように多く(約400)ありますので、
診断の対象としてより日常管理を取り上げる場合には多くのプロセス
から今課題になっている或いは強化すべきプロセスを対象とすべきだ
と思います。
この選択は組織の診断者がしなければならないのですが、テクノファ
では日常活動で常に問題視される整理整頓、文書管理、仕事の手順を
取り上げていますので、これからは次の小骨サンプリング例について
一つずつ説明をしていきます。
1.整理整頓
 -図書
 -文書
 -PC
 -プロジェクタ
 -規格
 -机上
2.文書管理
 -検索容易性
 -登録ルール
 -サーバーホルダー構造
 -タグ名
3.業務手順
 -個人が管理する活動
 -課長が管理する活動
などです。

診断者の心掛け-内部診断と内部監査24 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.281 ■□■
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*** 診断者の心掛け-内部診断と内部監査24 ***
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新型コロナウイルス終息後の世界について、予測も含めてこれ
からの変化を注視していく必要があります。そうした変化に備
える意味でもこの機会に自組織の内部診断(内部監査)を行っ
たらどうでしょうか。今回は診断者の心がけをお伝えします。

■□■ 診断者 ■□■
前回内部診断を行う人は社長が望ましいとお話ししました。社長
は多くの仕事をしなければなりませんが、多くの仕事の中から社
長自身が行う仕事を何にするのかは社長自身の選択です。
しかし、50年、100年も続いている企業には長い歴史の中で作ら
れてきた不文律、慣習、文化などがあります。社長が何をするの
かは企業の規定で決まっています。更に上場企業になると金融
庁、東京証券取引所から発行されている「Corporate Governance
Code(企業統治規定)」に定められたいろいろな事柄を管理しな
ければなりません。

社会に存在を許される企業の活動、行動は当然のことながら、
社長の一存では変えることはできません。社長が自分の仕事を変
えることが出来るのは、限定された範囲に限られます。しかし、
その決定は組織全体に大きな影響を与えることを自覚しておく
必要があります。その限定された条件の中から、できれば内部
診断を行うことを取り上げることをお奨めします。勿論、既に
内部診断を実施している社長さんもおられますので老婆心から
のおすすめです。

■□■ 診断の展開 ■□■
今まで診断者を社長一人に限定して話を進めてきましたが、
組織全体に診断の網を張り巡らそうとすると、役員、部長など
に診断業務を展開することになります。
しかし、診断者が組織部門の第一線に近くなればなるほど、
診断の意義が少なくなっていきます。例えば課長にまで診断
を展開した場合、診断業務は日常管理におけるチェック業務
と変わらなくなります。
かといって、社長一人でカバーできる範囲は少ないですから、
役員、部長レベルにまでに展開することは適切なやり方です。

筆者の経験では、現場を事業部単位、工場単位、管理部門単位
など組織の実態に応じて分け、年2、3回現場診断会を開催して
いました。私が経験した組織の規模は大きかったので、全社を
診断するには3年くらいかかりました。診断者は社長、役員
10名位で、被診断者は部門責任者及び部課長でした。診断には
原則1日を使いましたが、本社から地方の移動時間を考慮して、
10:00~16:00が実質の診断時間でした。
また、近年日本企業は海外に多くの工場を持っていますが、海外
工場にまで内部診断を行っている企業は少ないようです。しかし、
金融商品取引法による内部統制による財務監査は海外拠点にも
適用しなければなりませんので、それとジョイントして実践す
ると良いと思います。

■□■ 診断の準備 ■□■
診断の目的は「自組織の実態を知り組織の強さと弱さをあぶり
だす」ことにあります。組織の実態は、報告されてきたことだけ
では十分に分かりません。社長、役員、部長などが現場を観る
ことで報告の裏付けを取ることができます。
内部診断を行う場合には、診断者は全員「診断の基本姿勢」を
理解しておくことが良いと思います。次のようなものが例とし
てあります。
1. 内部診断は、業務推進の弱さ及びそれを支えるマネジメント
システムの弱点を見つける目的で行うものであって、個人を
評価するものではない。
2. 内部診断では、議論はしても論争はしない。指摘することに
よって、業務を追加したり、手順を追加したりする場合は、
診断者、被診断者両者の合意が必要である。
3. 内部診断の目的は、問題点を発見し、解決策や改善策を検討し、
実行に移し、最終的に改善を図ることである。
4. 内部診断では、お互いに(診断者、被診断者共に)、I及び
You ではなく、Weの姿勢をとる。

■□■ 診断のプロセス ■□■
ISO19011は内部監査の指針ですが、診断の指針としての参考に
なります。
ISO19011「箇条6.4.1 一般」には、「図 1-監査プログラムの
管理フロー」が掲載されていますが、それを診断プロセスに置き
換えると次のようなステップになります。
・診断の目的の明確化
・診断プログラムの策定
・診断プログラムの実施
・診断プログラムのレビュー及び改善

誰が診断するか-内部診断と内部監査23 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.280 ■□■
 ― つなげるツボ動画版はじめました ―    
*** 誰が診断するか-内部診断と内部監査23 ***
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新型コロナウイルス終息後の世界について、予測も含めてこれ
からの変化を注視していく必要があります。そうした変化に備え
る意味でもこの機会に自組織の内部診断(内部監査)を行ったら
どうでしょうか。いままで経営分野のプロセス、主要分野のプロ
セス、支援分野のプロセスについて話しをしてきました。それで
はこれらの診断は誰が行うのが良いでしょうか。今回は内部診断
を行う人は誰がいいのかについてお話をします。

■□■ 診断する人 ■□■
内部診断は本来社長がすべきです。しかし、社長は忙しく時間が
取れませんので、一般には役員あるいは部長が大骨の診断をする
ことが多いようです。
今から40年前に遡りますが、私がセイコーエプソンに勤務して
いた頃、会社では社長診断が行われていました。今でこそ理解で
きますが、会社のトップである社長にはとてつもない多くの仕事
があります。勿論会社の規模にもよりますが、社長が自身の目で
確認したいと思う事柄は無限とは言いませんが、間違いなく2人
分、3人分の仕事量になると思います。

■□■ 権限移譲 ■□■
当然のことですが、組織は社長一人の力で運営管理することはで
きません。社長は組織の運営管理の役割分担を決め、役員に権限
を委譲します。権限移譲しても、最終責任は社長にあり、総ての
責任までを役員に移譲することはできません。
社長は最終責任を負えるように権限委譲した仕事の結果をチェック
する必要があります。しかし、総てをチェックすることは時間的、
物理的に無理があります。
必然的に、総てをチェックするのではなく、効果的、効率的に権限
移譲した仕事をチェックする方法を考えざるを得ません。その方法
の一つが現場を見るということです。

■□■ 現場を見ること、診断 ■□■
現場を見ることでどんなチェックができるでしょうか?
社長には既にいろいろな情報が入っています。売り上げが伸びた、
減った、お客様からのクレームがある、無災害が途切れた、事故が
起きた、パワハラがあるなど日常あらゆる情報がその気になれば
入ってきます。
多くの小企業では、日常茶飯事に社長が現場を見ますので、その
ような情報の真偽、要因、状況などは手に取るように分かります。
しかし、組織規模が100人を超え、中小企業規模300人くらいに
なりますと、社長が現場を見る機会がめっきりと減り、人員が
1,000人を超えるようになると社長が現場を見ることはほとんど
なくなるのが現状のようです。
現場を見ると、当然ですが現場で起きていることが分かります。
 ・活動
  -物づくりならば、機械の稼働、材料の在庫、人の動き
  -サービス業ならば、接客態度、雰囲気、
  -食品関係ならば、味わい
  -倉庫関係ならば、物流、サプライチェーン
  -情報セキュリティならば、サーバー、PC、IoT
 ・設備 
  -メンテナンス状態
  -スペース
  -活動環境、室温、明るさ、騒音
  -エネルギー、電気、油
 ・環境
  -5S
  ―廃棄物
  ―排気、排水、屋外貯蔵、外溝美観
  -駐車場
 ・人々
  -活力、明るいか暗いか、笑顔があるか
  -挨拶、態度
  -服装、身なり

■□■ トップが診断する意義 ■□■
以上のようなことはほんの例にすぎません。私が思いついたこと
を羅列しただけです。トップ診断の意義は「現場はうそをつかな
い」ことにあります。大企業になればなるほど、トップは間接的
な情報に頼らざるを得ません。しかし、間接的な情報には次の
3種類が一体混然となっていることを知っておかなければなり
ません。
  ・事実
  ・要望
  ・感情
トップが現場を見ることは現場にもある種の緊張、抑制を生みま
す。事前に情報を出して準備させることが良いか、急に訪問して
事実を直視する方がいいかは、組織の置かれた状況によって変わ
ると思います。

総務プロセス-内部診断と内部監査22 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.279 ■□■    
*** 総務プロセス-内部診断と内部監査22 ***
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新型コロナウイルス終息後の世界について、予測も含めてこれ
からの変化を注視していく必要があります。そうした変化に備える
意味でもこの機会に自組織の内部診断(内部監査)を行ったらどう
でしょうか。前回は会計プロセスについてお話をしましたが、今回
は総務プロセスについてお話しします。

■□■ 総務プロセス ■□■
どこのプロセスにも属さないで、組織に必要なことを遂行するのが、
総務プロセスであるとよく言われます。
管理部門の代表的な仕事が「企画」、「人事」、「経理」そして最近
では「情報」と呼ばれるものですが、組織の規模によってはこれら
すべての仕事を総務部門で行っている場合もあります。
総務プロセスに属しそうな仕事は、一般に以下のようなものが考え
られます。
・社会保険業務
・入退社管理
・福利厚生
・健康診断
・労働安全衛生
・防災訓練
・環境保全
・ホームページ管理
・秘書業務
・株主総会管理
・株式管理
・来客対応
・契約書管理
・社印管理
・慶弔業務
・備品、消耗品管理
・会社行事、イベント業務
・社有車管理
・営繕
・設備保全
・社内・社外広報
・官公庁との渉外
・地域との渉外
・社会貢献活動
・業務委託管理
このように、ざーっと考えただけでいろいろな仕事が浮かんできます。
内部診断の最初のポイントは上に列挙したような仕事が組織に必要で
あるか、列挙した以外の仕事で必要なものはどんな仕事か、必要である
と判断した仕事はどの部門で行われているのか、の現状確認です。

■□■ 仕事と部門 ■□■
ここで、仕事と部門の関係について考えてみたいと思います。仕事と
部門の関係は、目的と手段に置き換えることが出来ます。即ち仕事には
必ず目的があります。何のためにその仕事をやるのかを忘れていては
効果的な仕事をしたことになりません。効果的な仕事をするためには
目的を忘れてはなりませんが、仕事を効果的に、効率的に行うには
いろいろな工夫が必要です。この工夫の一つに仕事の専門性ごとに
人々のグループ(部門)を作るというものがあります。仕事には専門
性が必要になりますが、この専門性は組織の規模が大きくなればなる
程、幅と深さが大きくなっていきます。その結果、仕事の専門性ごと
にグループを作ることが仕事の目的を達成させる上で得策であるとい
う考えが出てきます。

いままで仕事と呼んできましたが、ISO ではプロセスと呼んでいます。
附属書SLではプロセスを「インプットをアウトプットに変換する、
相互に関連する又は相互に作用する一連の活動」と定義をしています。

■□■ 仕事へのインプットとアウトプット ■□■
前々節で例として上げた多くの仕事の最初の社会保険業務につ
いてインプットとアウトプットを考えてみます。
【社会保険業務】へのインプット
 ・該当する従業員の属性
 ・健康保険、雇用保険の制度
 ・会社の社会保険の栞
【社会保険業務】からのアウトプット
 ・社会保険事務所からの通知
 ・従業員健康保険証
 ・社会保険手続き記録

一つ一つの仕事(上の例で25種類)にそれぞれ固有のインプットと
アウトプットがありますが、それぞれのインプットとアウトプットに
ついて次の観点から内部診断をします。
 1.インプットとアウトプットの明確化
 2.インプットとアウトプットの保管
 3.インプットとアウトプットの個人情報管理
 4.インプットとアウトプットの保管期限と廃却管理 など

■□■ 仕事の管理状態 ■□■
総務プロセスの仕事の種類は大変に多いので、担当者が変わる可能性
が高いと思います。そこで、内部診断のポイントとして担当者交代
管理が大切になってきます。
前項のインプットとアウトプットを含めて、仕事を適切に後任者に
引き継いでいけるかの視点で内部診断をします。
その時の診断の対象は次のようなものになります。
 ・分担表
 ・手順書
 ・記録
 ・管理者 など