タグアーカイブ: プロセスアプローチ

平林良人の『つなげるツボ』Vol.153

—————————————————–
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.153 ■□■    
*** ISO9004:2018の概要2 ***
—————————————————–

■□■ 箇条8 プロセスマネジメント ■□■

ISO 9004:2018 の概要説明の2回目です。
今回は箇条8のプロセスマネジメントについてです。

ISO 9001:2015では、プロセスアプローチという用語を使用していますが、
ISO 9004:2018では「プロセスマネジメント」という用語を使用しています。
プロセスアプローチよりも広い概念であると思います。

ISO 9004:2018では、外部から提供される(外部委託)プロセスを含むすべての
プロセスを最適化(組織の目的とプロセスの様々な目的との間のバランス)して
運用管理することをプロセスマネジメント(プロセスの運用管理)と呼んでいます。

プロセスは、組織の中にネットワークとしてつながって価値を伝達しています。
そのプロセスは、ネットワークを通じて有機的なシステムとして
機能している場合に、より効果的、効率的に組織の目標達成に貢献します。

また、プロセスはそれぞれの組織に固有のものであるので,組織ごとに製品、
組織構造、規模などに応じてプロセス内の活動の諸要素を決定しなければ
なりません。

■□■ 箇条8.2 プロセスの決定 ■□■

組織は、目的とする利害関係者のニーズ及び期待を満たしたアウトプットを
提供するために、必要なプロセスを決定する必要があります。

決定すべきプロセスは、次のような分野・領域に渡ることが推奨されています。

a)製品・サービスに関する運用

b)利害関係者のニーズ及び期待の充足

c)資源の提供

d)監視,測定,改善、改革等の運営管理

■□■ 箇条8.2.2 プロセス決定の配慮事項 ■□■

箇条8.2.2では決めたプロセスが対処すべき所(areas)を次のように
上げています。

a)プロセスの目的

 ISO9001:2015箇条4.4.1 には要求されていない項目です。プロセスには
当然目的があるはずですが、その目的を明確にするべきであるという事項です。
プロセスの目的を明確にしておかないと、提供すべきアウトプットが決まりません。

b)達成すべき目標及び関連するパフォーマンス指標

 ISO9001:2015箇条4.4.1c)に該当する項目です。達成すべき目標とは
プロセスの活動における目標で、次項c) 提供すべきアウトプットにつながるものです。

c)提供すべきアウトプット

次工程(プロセス)へ引き渡すもの(アウトプット)です。
b)項の目標及びパフォーマンス指標に合致したものがアウ
トプットにならなければなりません。

d)利害関係者のニーズ及び期待並びにその変化

e)運用,市場,技術の変化

ISO9001:2015箇条4.4.1g)に該当する項目です。経営環境
の変化に対応しなければなりません。

f)プロセスの影響

原文は“the impacts of the processes”です。

g)必要となるインプット,資源及び情報並びにその利用可能性

ISO9001:2015箇条4.4.1a)に該当する項目です。

h)実施する必要のある活動及び使用できる方法

ISO9001:2015箇条4.4.1c)に該当する項目です。

i)プロセスにおける制約条件

原文は“constraints for the process”です。

j)リスク及び機会

ISO9001:2015箇条4.4.1f)に該当する項目です。

■□■ 箇条8.3 プロセスの責任及び権限 ■□■

各箇条8.3には、“プロセスオーナ”という言葉が登場します。
プロセスマネジメントを扱う場合、プロセスオーナという概念はよく使われます。
該当プロセスに責任を持つ組織の個人又はチームですが、決定した
プロセスにプロセスオーナを任命することに言及しています。

プロセスオーナは、プロセスの相互作用を明確にし,維持し,管理し,
改善する責任及び権限を持ち、そのことが組織全体を通して認識されることが
必要であるとしています。

プロセスマネジメントは9004の肝ですので、次号でも説明したいと思います。

平林良人の『つなげるツボ』Vol.139

—————————————————–
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.139 ■□■
    *** 2015年版への移行 ***
—————————————————–

■□■ ISO9001:2015への移行 ■□■

ISO9001:2015が発行されてから早くも2年が過ぎました。
IAF(International Accreditation Forum : 国際認定機関
フォーラム)からは、移行は2015年9月からの3年間で
実施しなければならないとの指針が出されていますので、
2018年8月には移行期間が終了し、旧規格ISO9001:2008は
廃止となります。

■□■ 移行審査で確認すべきこと ■□■ 
この2年間にISO9001:2008規格から2015年版への移行審査
は約4割弱進んでいると聞きますが、その認証審査の実態は
「全体の一部である」とは思いますが、次のような状況で
あると見聞します。

2015年版で大きく変わったとされる要求事項のポイントを
審査されないという話を聞きます。認証審査はサンプリング
で行いますので、当然のこととして、総てを一回の移行審査
で確認できません。

しかし、JABから示されている重点確認事項は、この機会に
審査されなければならないでしょう。

■□■ 移行への重点変更箇所 ■□■ 

JABから示されている重点確認事項は次の通りです。

1.組織の状況の強調(箇条4.1)
2.適用範囲の決定(箇条4.3)
3.プロセスアプローチの理解(箇条4.4)
4.リーダーシップの強化(箇条5.1)
5.リスクに基づく考え方(箇条6.1)
6.パフォーマンス向上の強調(箇条9.1)
7.文書化した情報
8.サービスの強化
9.外部提供者の管理
10.組織の知識
11.変更管理 など

特に1.~6.までは必須事項であると思います。

しかし、「プロセスアプローチの理解」とか「リーダー
シップの強化」について、対象箇条(4.1.1、5.1.1)の
要求事項について、ほとんど審査されなかったという話
を聞きます。

■□■ プロセスアプローチ ■□■
ISO9001箇条44.1で要求されている「QMSに必要なプロセス」
への質問が無かった、少しはあったがプロセスの順序及び
相互作用については審査されなかったという事例がいくつか
ありました。

また、プロセスのインプット、アウトプット、判断基準、
方法などについて説明する用意をしていたが肩すかしを
食らった(審査されなかった)という不満も寄せられました。

■□■ リーダーシップの強化 ■□■
社長のリーダーシップの強化が含まれている箇条5.1.1も
「社長に審査されるからと事前に進言し、勉強していただ
いていた」にも拘らず、トップインタビューでほとんど
聞かれなかったという不満の声もありました。

箇条5.1.1のトップへの要求事項とは次のようなものです。

「トップマネジメントは,次に示す事項によって,品質
マネジメントシステムに関するリーダーシップ及びコミット
メントを実証しなければならない。」

a) 品質マネジメントシステムの有効性に説明責任(accountability)
を負う。

b) 品質マネジメントシステムに関する品質方針及び品質目標を確立し,
それらが組織の状況及び戦略的な方向性と両立することを確実にする。

c) 組織の事業プロセスへの品質マネジメントシステム要求事項の
統合を確実にする。

d) プロセスアプローチ及びリスクに基づく考え方の利用を促進
する。

e) 品質マネジメントシステムに必要な資源が利用可能であることを
確実にする。

f) 有効な品質マネジメント及び品質マネジメントシステム要求事項への
適合の重要性を伝達する。

g) 品質マネジメントシステムがその意図した結果を達成することを
確実にする。

h) 品質マネジメントシステムの有効性に寄与するよう人々を積極的に
参加させ,指揮し,支援する。

i) 改善を促進する。

j) その他の関連する管理層がその責任の領域においてリーダーシップを
実証するよう,管理層の役割を支援する。

■□■ リーダーシップの強化 ■□■
組織が2015年版への移行に際して、新しい要求事項であると認識し、
社内で規格の意図を勉強し2008年版に追加しての仕組みを構築している
にも拘らず、肝心の認証審査の場面でそれらの事項の確認がされないと
なると、組織はどう思うか、明明白白であると思います。

そのような体験をした組織は、第三者認証制度の本質を誤解し、この程度
の内容で「認証書」は交付されると考えるでしょう。また、調達要件として
ISO9001認証を要求している川上組織もそのような実態を聞くに及んでは、
もはや調達要件としてISO9001認証を要求しても意味がないと考えるでしょう。