人の話を聞く | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.14  ■□■
 
  *** 人の話を聞く ***

———————————————————-

テクノファ代表取締役の平林です。

人というものは、「自分の聞きたいことしか聞こえない、自分
の見たいものしか見えない」と、よくいわれますが、人の話を
聞くということについて考えてみたいと思います。

では今回も宜しくお願いいたします。

■□■ 上の人は話を聞かない ■□■

人の話を聞くということは意外と難しいことです。特に日頃、
人から指示されることの少ない上の人は、人の話を聞かないと
よくいわれます。

部下に「話を聞くから言え」という管理者に限って、途中まで
聞いて「わかった、わかった」といって、かえって部下に
フラストレーションを与える人が多いようです。

多くの管理者は、「話を聞かない人」とならないようにいろいろな
努力をしているようですが、一番の問題はある時は話しを聞く、
しかしある時は話しを聞かないといったムラをどのように
無くすかということです。

どんな場面でも必ず話を聞くということは、その人の骨身にまで
染みた心構えがなくてはならないのですが、このことは大変
むずかしいことです。

人間は自分にメリットがあることには興味をもちますから、
まずは、話を聞くことがどんなメリットに繋がるかをよく知っておく
ことが重要だろうと思います。

■□■ 最良の道を選べる ■□■

当然のことですが組織にはそれぞれに目標があります。トップ
には会社経営における目標がありますし、管理者には部署に
与えられたミッションを果たす目標が存在します。

人の話を聞くメリットの第一は、この目標を果たすための道を
間違ったものにしないということです。目標を達成する手段には
幾つものもの道が考えられます。一番効率のよい道を選ば
ねばなりませんが、一度間違えた道は大きな回り道に
なってしまいます。

人は自身が気に入っている道と異なる道を提案されると、
聞く耳を持たなくなります。話を聞かないことによって、もし、
より効果的な別の道があるにもかかわらず、見逃したとすると
その代償は大きなものになります。

■□■ 信頼のおける部下を持てる ■□■

人の話を聞く第二のメリットは、信頼のおける部下を持てる
ということです。NHK大河ドラマで今はやりの「直江兼続」では
ありませんが、彼のような腹を割って話し合える部下をもつこと
のメリットには大きなものがあります。

もっとも、腹を割って話し合えるようになるには、話を聞く
だけではなく、話を聞く際の心構えも重要になります。それは
「私心」を持たないということです。

私心を持たない、私利私欲のためでなく大義のためと言い換え
てよいと思います。すなわち、個人でいえば自分のためでなく
組織のため、組織でいえば会社のためでなく公(社会)のため
ということになります。

上の人が部下の話を聞くことができても、そこに私利私欲が
あるとしたら、良好な人間関係を築くことは困難でしょう。私心
を持っていては腹を割って話し合える人間関係を作り出せません。

■□■ 信頼の満ち溢れた職場ができる ■□■

上の人だけでなく、組織の全員が人の話を聞くようになると、
職場は信頼感の満ち溢れた気持ちのよい雰囲気になります。

しかも、一人ひとりが個人のことよりも、集団のことを優先的に
考えられるようになると、お互いの間に目的が共有化され腹を
割って話し合えるようになります。

腹を割って話し合う、すなわち本当の対話が信頼感を醸成して
いきます。このことは、聞く側の問題ばかりでなく、話をする方
の問題へと繋がっていきます。

話をする方が、遠慮したり、本当とは裏腹のことを言って
いると、せっかく相手が聞く態度になっているのに何にもなり
ません。関係が悪くなると思っても本当のことを言わなければ
なりません。相手が聞く態度にいる時に本当のことを言わない
と、相手に誤解を与えることになります。

対話(コミュニケーション)は話をすることではなく、「聞くこと」
からはじまるといわれますが、話す人が本当のことを言うことが
重要です。聞く方は、相手が何を訴えたいのか、話す言葉だけ
ではなくその裏にある気持ちも汲み取ろうとして一生懸命な
わけですからそれに応えなければなりません。こうして、
居心地のよい職場ができていくのです。

■□■ コミュニケーションについて学ぶには ■□■

「コミュニケーション・トレーニングコース」をご案内します。

お互いを理解しあうための「傾聴トレーニング」及び、異なる
意見・考えからお互いに納得して結論に導くための「アサー
ション(発信)トレーニング」を通じてコミュニケーション能力を
高めるコースです。

詳細はテクノファホームページをご覧ください。
http://www.tfcc.jp/category/1250770.html

■□■ ものごとにこだわらない ■□■

対話(コミュニケーション)していても、つい言葉尻を捕らえて
つまらない方向に議論がいってしまうことがよくあります。
話をする人が言葉を慎重に選ぶことも必要ですが、聞く方が
相手は何を言いたいのかを汲み取る姿勢がより重要です。

心を真っ白にしていると言葉尻は気にならなくなります。心を
真っ白にしているとは、ものごとにこだわらないことをいいます。
しかし、心を真っ白にして聞く、すなわちものごとにこだわらずに
聞くということは本当に難しいことです。

職場の対話には必ず大なり、小なりの対立があります。すなわち、
立場の違いがあります。目標を達成しようとするとその目標に
こだわらなければなりません。

目標を達成しないでいいというならば、こだわる必要もなくなり、
自由に和気あいあいと対話(コミュニケーション)していれば
よいのですが、現実はそのようなわけにいきません。

自分の立場は相手の立場と異なりますから、こだわっていると
人の話はほとんど聞こえてきません。多くの人が、人の話を
聞かないで、どのへんを落し所にしようかばかりを考えています。
それでは冒頭に言った「自分の聞きたいことしか聞こえない、
自分の見たいものしか見えない」ということになります。

自分の目標にはこだわるがやり方にはこだわらない、自分の信念
にはこだわるが行動にはこだわらない、自分の性格にはこだわる
(変えられないから)が表現の仕方にはこだわらないなど、
一度じっくりと考えてみるべきではないでしょうか。

■□■ 職場での最重要課題は ■□■

周りから見たら職場の雰囲気を壊しているとしか思えないのに、
自分では気がつかないタイプの人がいます。

1.理屈で人は動くと信じている。
2.人から学ぶことをしない。
3.人と相談することができない。
4.決して謝ることをしない。
5.人の気持ちが理解できない。

上の人は常に自分を自戒していなければなりません。
自戒していてもこうなってしまう人には、どこかに行ってくださいと
お願いせざるを得なくなります。職場の雰囲気を良好に保つという
ことは、それくらい重要なことです。

私にもこういう傾向がないとはいえません。私の部下から
見ればたぶんこういう傾向があると言うでしょう。常に自分は
今どういう状態でいるか、昨日までは人の話を聞けていたが
今日も本当に聞けるか、自問自答しなければなりません。

本質がそうでないのにそのようになろうとすることは大変な
ことです。でも常に自分との闘いをしていかざるをえないのです。