ISO45001/DIS2の承認 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.136 ■□■   
*** ISO45001/DIS2の承認 ***
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■□■ 労働安全衛生マネジメントシステム規格 ■□■ 

ISO/PC283は2013年にILOとの協調が成立し、「労働安全衛生
マネジメントシステム(OHSMS)規格45001」の開発にスタート
を切りました。

それから4年経ち、先週ISO45001/DIS2は投票の結果可決承認
されました。

■□■ 投票結果 ■□■

国際規格のDIS可決条件は、賛成票が2/3以上、反対票が1/4
以下の両方の条件をクリアすることです。

投票結果は、賛成が88%と判定基準66.7%をクリア、反対が11%
で判定基準25%より少なく「承認」となりました。日本は、コ
メント付き賛成の投票をしています。

■□■ ILOとISOの主導権争い ■□■

労働安全衛生マネジメントシステム規格の国際規格標準化には
長い歴史があります。

最初にISOがこの分野での国際規格化を提案したのは何と1994年
です。当時ISO14001(環境マネジメントシステム規格)の開発
中であったTC207でにおいて労働安全衛生マネジメントシステム
OHSMSに関するの国際標準化の議論が始まりました。

環境マネジメントシステムもOHSMSも劇物毒物、有機溶剤、騒音、
廃棄物等などの管理をカバーするが、環境と労働安全衛生との区
別がはっきりしなません。

外に対しては環境マネジメントシステムで、内に対してはOHSMS
でという原則で規格開発をしようとの見解が当時の大方の理解
でした。

■□■ ISOもILOの申し入れを断る ■□■

ISO/TMB(技術管理評議会)はカナダからの提案を受けて、1995年
にOHSアドホックグループの設置を決めました。アドホックグルー
プは、1995年から1996年にかけて都合3回の会合を開き、OHSMSの
今後の方向について協議をしました。

1996年にはジュネーブで各国の利害関係者を集めてワークショップ
を開催しましたが、このワークショップには各国の関心が強く、
44カ国、6国際機関から約400人の専門家が集まりました。

日本からも通産省、労働省、産業界、関係団体から19名が参加して
います。2日間に及ぶ議論の中でOHSMSのISO規格化には賛否両論に
意見が分かれましたが、ILOの意向が功を奏して反対という結果にな
りました。

その後、しばらくしてILOは「非認証用OHSMS規格(ガイドライン)
作成について協力をしたい」ことをISOに申し出ましたが、今度は
ISOが「ILOとの協同作業は辞退する」ことを決めました。

■□■ ISOはOHSASグループを支援 ■□■

とISOがILOの申し出を断ったいうのは、当時BSI(英国規格協会)は
OHSMS規格の私的制定を各国に呼びかけており、ISOはこれを黙認
(支援?)していたのです。

これはILOが労働安全衛生関係はISOが扱うべきでなくいと明確に
OHSMS国際標準規格化に明確に反対をしていたからであると言われ
ています。BSIの呼びかけに呼応じした組織は世界で約30機関あ
りました。

日本からも、財団法人日本規格協会、高圧ガス保安協会、中央労働
災害防止協会、株式会社テクノファなどが参加を表明しました。
このグループはその後OHSASグループと呼ばれ、OHSMSの審査登録
用基準の制定にむけて協議を始め1999年4月にOHSAS18001を制定
しました。

この規格はその後制定されたOHSAS18002と合わせて、コンソーシ
アム規格OHSAS18001/18002と呼ばれるようになりました。

■□■ ともあれ承認された今後は? ■□■

ISO45001はISOマネジメントシステム規格の共通テキスト
(ISO/IEC Directives Part1, Annex SL)をベースに、OHSAS 18001,
ILO-OSHガイドライン、諸外国の国家規格の要素を取り入れ参考に
しながら開発をしてきました。

今回のDIS2投票結果は、投票したPメンバーの2/3以上が賛成し、
かつ、反対は投票総数の1/4以下で圧倒的な賛意に支えられてあり、
承認されましたが、コメントがなんと1626件も寄せられました。

コメント数が多いため、9月のマラッカ(マレーシア)会議6日間で
コメント検討を完了することほぼ困難な見通しです。そのため、最終
国際規格案(FDIS)の投票に進む可能性が高いと思われます。

もしFDISに進むことになれば、国際規格の発行は、2018年3月以降
にずれ込むのではないかと予測されています。