ISO 9004:2018の概要10 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.162 ■□■
*** ISO 9004:2018の概要10 ***
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ISO 9004:2018 の概要についての説明の10回目です。
ISO 9004は2018年4月に改定版が発行されました。
今回はシリーズ最後になりますが、箇条11「改善、学習及び革新」(その2)
についてご説明をいたします。

■□■ 11.4 革新 ■□■

革新は,パフォーマンスの向上を画期的に上げるような活動
ですので、製品又はサービス,プロセスの価値を大幅に上げ
る活動であるべきです。

組織の外部及び内部の課題,並びに利害関係者のニーズ及び
期待によっては、改善ではなく革新を必要とすることがあり
ます。

革新を促進するためには次の事項を行うことが望ましいと
しています。

1.革新への固有のニーズを特定する。

2. 組織に革新的思考を奨励する。

3.効果的な革新を可能にするプロセスを確立する。

4.革新的なアイデアを実現する資源を提供する。

また、革新は次の分野で適用することができます。

1.技術

2.製品又はサービス

3.プロセス(実現のしかたの革新)

4.組織(組織構造、体質、文化における革新)

5.組織のマネジメントシステム(競争優位の革新)

6.事業モデル(顧客価値、変化市況への対応における革新)

■□■ 11.4.3 タイミング及びリスク ■□■

革新にはリスクが伴いますが、リスクを恐れていては、革新は
できません。リスクを考慮しながらも革新にチャレンジする
ためには、革新の計画におけるリスク及び機会を評価しなけれ
ばなりません。

組織は,革新によって起こるかもしれない変更を明確にし、その
変更を運営管理する場合にどのような影響が組織のどこにありえ
るのかを配慮し,必要な場合には,(緊急時対応計画を含む)
リスクを軽減するための計画を準備することが必要であるとして
います。

また革新を行うタイミングは重要な事柄であり,その革新の実施
タイミングについてのリスク評価も行うべきことでしょう。
タイミングは,通常,革新が必要とされる緊急性と,革新の展開
のために利用可能な資源とのバランスを考慮して決めることが
よいでしょう。

革新は優先順位を付ける必要があり、実施したならば、革新を定期
的にレビューすることが必要です。このレビューが組織に新たな
学習を経験させることになり、そこから新しい組織の知識が得られ
ることも多いはずです。

■□■ 自己評価ツール ■□■

組織は,改善及び革新の機会を特定し,優先順位を付け,持続的
成功の目標に向けての行動計画を策定するために,自己評価を
利用するとよいでしょう。

ISO 9004には、組織のパフォーマンス及びマネジメントシステムの
成熟度について総合的な見解を得ることができる自己評価ツールが
付いています。

自己評価のアウトプットは,組織の強み・弱み,関係する改善の
ためのリスク及び機会,組織の成熟度レベル,及び自己評価が
繰り返される場合には,長期にわたる組織の進捗状況を示すもの
として活用できます。

ISO 9004の附属書に記述されている自己評価ツールは,ISO 9004
規格に記載されている手引に基づくものであり,改善の枠組みを
提供しています。

表A.2~A.32は,ISO 9004規格に基づいた5段階の成熟度レベルに
よる自己評価基準です。

表A.1には,パフォーマンス基準が成熟度レベルにどのように関わって
いるかを表形式で示しています。

組織は,特定の基準に照らしてそのパフォーマンスをレビューし,
組織の現在の成熟度を特定し,その強み・弱み,並びに関連するリスク
及び機会の改善を明確にすることが望ましいとしています。

自身より高いレベルとして与えられた基準は,組織が検討すべき課題の理解,
高レベルの成熟度に達するうえで必要となる改善を明確にしています。

■□■ A.4 自己評価ツールの実施手順 ■□■

自己評価を実施するための手順は次のとおりです。

1.自己評価の範囲を決定する。

2.自己評価の責任者を決定する。

3.自己評価をどのように実施するのか,チームによるのか個人によるのかを
決定する。

4.組織の個々のプロセスの成熟度レベルを特定する。次の事項によって行う
ことが望ましい。

- 組織の現在の状況と表に記載したシナリオとの比較

- 組織が既に実施している要素に印を付けること。レベル1から始め,レベル3
及び4、5までをチェックする。

- 現在の成熟度レベルの決定

5.結果を報告書にまとめる。これは,今後の記録となり,組織内外の情報交換に
役立たせることができる。このような報告をグラフにすることは伝達に有用である。

6.組織のプロセスの現在のパフォーマンスを評価し,改善及 び/又は革新すべき
領域を特定する。

組織の成熟度レベルは,要素ごとに異なりことになります。レベルを規定している
要素と組織の現状とのギャップのレビューは,トップマネジメントが個々の要素を
より高いレベルに向上させるのに必要な改善及び/又は革新活動を計画し,優先順位
付けをすることに役立てることができます。

自己評価の完了は,この規格の要素に基づいて,改善及び/又は革新のための行動計画の
策定につながり,それがトップマネジメントによる計画の策定及びレビューへのインプット
として利用されることが推奨されます。