統合化―ISO 9001-1 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.216 ■□■    
*** 統合化―ISO 9001-1 ***
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前回まで、ISO 9001箇条4.3適用可能性について述べてきました。
この適用可能性に関して関係が深いのが、箇条5.1c)「組織の事業
プロセスへの品質マネジメントシステム要求事項の統合を確実にする」
という要求事項です。

この「事業プロセスへのQMS要求事項の統合」は、「箇条4.3適用可能性」
の決定をQMS要求事項と組織の事業プロセスとの相互関係のギャップ分析
により的確に実現することができます。

■□■ QMS要求事項と事業プロセスとの相互関係 ■□■

QMS(品質マネジメントシステム)要求事項は、前回まで説明してきた
ISO(技術専門委員会)から見た企業への要求です。ISOから見たと
言いましたが、ISOが「顧客の立場に立って」購入先の企業に要求を
するという構図で、品質管理(マネジメント)に関する重要事項を
一般化したものです。

国際規格の位置付けから、世界中のどのような企業(大小の規模、
業種に拘らず)でも使えるという抽象化した要求事項となっています。
ISOマネジメントシステム規格は、このような生まれながらの性質(抽象的)
を持っていますので、自分たちの組織にどのようにISOの要求事項を
適用させようとするかが、ISO活用のカギとなります。

■□■ 箇条4.3適用可能性」の決定 ■□■

ISOの要求事項を自分たちの組織にどのように適用させようとするかを
決定した活動結果が、箇条5.1c)「組織の事業プロセスへの品質
マネジメントシステム要求事項の統合」の実現になります。

では組織の事業プロセスとは何でしょうか。詳しく説明を始めると
「事業プロセス」の説明だけで数回の説明を重ねそうですが、
このメルマガでは3回位に分けて説明します。現在操業している
企業には、組織が発展してきた歴史に沿っての経営の仕組みがあります。

■□■ 新入社員教育 ■□■

誰しも学校を卒業して初めて社会人として入社した会社のことは
よく覚えていると思います。私が入社したセイコーエプソン(当時は諏訪精工舎)
での新人教育は、3か月の集合教育、その後、9か月の現場実習で
構成されていました。4月から始まった集合教育では約100人の新入社員が、
会社の沿革、理念、方針、就業規則などを研修しました。

研修で今でも座右の銘にしているものがあります。

「自分の考えに注意しよう、それは言葉になるから。
 自分の言葉に注意しよう、それは行動になるから。
 自分の行動に注意しよう、それは習慣になるから。」

■□■ 新入社員教育2 ■□■

会社には独自の歴史があります。私の入ったセイコーエプソンは服部
時計店の工場部門でした。明治時代に服部金太郎という創業者が当時
スイスを始め海外から輸入した時計、宝石などの販売から身を起こし、
その後時計を国内生産始めるまでの苦難の道、そしてその過程で生まれた
理念などを研修しました。
当時は「ふーん」という程度にしか思わなかったのですが、今から
思うとそれらの中にセイコー独自の風土があり、就業規則をはじめ
各種の業務規定に色濃く反映されています。

例えば、技術開発に関してはスイスが小さい国土でありながら欧州で
一定の地位を確保しているのは、国内に確固たる固有技術があるからで
あるとして、技術開発には一方ならぬ力の入れようでした。

■□■ 新入社員教育3 ■□■

そのような風土でしたから、品質管理についても新入社員の時代から
それなりの研修が行われました。当時から品質管理の7つ道具は
SQC(統計的品質管理)の基本でしたが、それらを理系、文系問わず
カリキュラムに組み込んでありました。文系の新入社員にはちょっと
きつかったかもしれません。

私の新入社員時代の話を持ち出したのは、「事業プロセス」の説明を
するためです。ISO 9001が抽象的な一般論で要求事項を構成している
ことから、その要求事項を事業プロセスに統合するのですが、まずは
会社にどのような事業プロセスがあるのか、その事業プロセスはどのような
風土から形作られたのかを、私の経験から述べたいと思ったからです。

次回は、事業プロセスにもう少し踏み込んで述べます。