SDGインパクト基準16 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.363 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** SDGインパクト基準16 ***
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目標8. 「包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全
かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・
ワーク)を促進する」の続きです。
目標8には、前回お話ししたようにイノベーションに関する奨励
記述がありますが、それに関連してISO56002のお話をします。
2019年4月、経済産業省は ISOが発行したISO56002:イノベー
ションマネジメント規格(指針)に準拠した「日本企業における価
値創造マネジメントに関する行動指針」を発表しました。

■■ ISO56002:2019イノベーションMS規格 ■■
2019年、国際標準化機構(International Organization for
Standardization : ISO)はイノベーションマネジメント規格-指針
ISO56002を発行しました。
現在2022年時点での周辺規格の状況は次のようになっています。
1.発行済
 ・ ISO56002:イノベーションマネジメント規格-- 指針
 ・ ISO56003:イノベーションマネジメント?イノベーション
        パートナーシップのためのツール及び方法?指針、
 ・ ISO/TR56004:イノベーションマネジメント評価?指針
2.予定
 ・ ISO56000 イノベーションマネジメント-基本及び用語
 ・ ISO56005 イノベーションマネジメント-知的財産管理のツール
       及び方法-指針
 ・ ISO56006 イノベーションマネジメント-戦略情報管理-指針
 ・ ISO56007 イノベーションマネジメント-アイデア管理

「イノベーション」と聞くと、多くの人は創造的なイメージを持ち
ますので、MS(マネジメントシステム)とイノベーションは関係が
無いと頭を傾げます。なぜISOは独創性が特長の「イノベーション」
をMS規格の対象にしたのか、私にも不思議に思えました。

■■ イノベーションをMS規格にした背景 ■■
ISO56002を読むと私の疑問は解けました。ISOでは次のように解説
しています。
・創造性の追求は個人技から組織技に変わりつつある。イノベーショ
 ン活動はもはや個人に頼る活動ではなく、経営が組織的に追及して
 いかなければならない活動になってきている。
・世界の経営のルールが大きく変わりつつある。ISOは「大きく変
 わったゲームのルール」と言っていますが、経営の焦点が「効率
 性の追求」から「創造性の追求」に変化してきている。
・「効率性の追求」はデジタル化、シェアリングエコノミーなどで推
 進されている。
・「創造性の追求」はプロセスで追及されていく。

■■ ISO56002マネジメントシステム規格の構造 ■■
ISO56002は「附属書SL(共通テキスト)」の構造に沿っています
ので、ISO9001、14001に馴染んでおられる方には読みやすいので
はないかと思います。
参考に箇条6、8の目次を掲げます。

6 計画
  6.1 機会及びリスクへの取組み
  6.2 イノベーションの目標及びそれを達成するための計画策定
  6.3 組織構造
  6.4 イノベーションのポートフォリオ

8 活動
  8.1 活動計画及び管理
  8.2 イノベーションの取組み
  8.3 イノベーションのプロセス
     
■■ イノベーションのプロセス ■■
以上の一連の項目の中で重要であると思われるのが箇条8.3の「イ
ノベーションのプロセス」です。イノベーションのプロセスには次
の特徴があると説明されています。
 1.非線形的な順序であり、反復的である。
 2.組織内の他のプロセス内において又は他のプロセスとは独立
  して実施される。
 3.組織内の他のプロセスとつながっている。
 4.イノベーションの創造・実験のプロセスは、知識を獲得する
  ための探求を重視する。
 5. 知識創造プロセスである。

経済産業省は、ISO56002 に沿ったオープンイノベーションを日本
に起こすプロジェクトを次のように進めています。
●イノベーションのプレイヤーは急激に変化している。次の産業の
担い手として期待されるスタートアップが自律的・連続的に大規模
に創出・成長するための支援や環境の整備が重要である。
●大企業がノンコア事業を行う場合、経営面での支援を行う起業家
候補人材支援事業(NEP)を含めたNEDOのスタートアップ支援
事業を抜本的に強化する。
●大企業の人材が、大企業で蓄積した知見や社会課題解決に係る内
発的動機等に基づき、大企業の意思決定が及ばない場で、新規事業
を創出できる環境を整備する。
●多様性やスピードに対応するためには、自前だけでなく他者の人
材・技術・資本といった経営資源の活用(オープンイノベーション)
が重要である。
●この動きは日本においてもみられるが量もスピードも圧倒的に不
足している。急激に変化する状況に対応するためには、あらゆる手
段を活用し、一層企業の意識改革・行動変容を促す。
●イノベーションを創出する方向に経営者の意識・行動を促すため、
イノベーション経営に挑戦する大企業が資本市場等から評価される
施策を行う。
●企業のオープンイノベーションの取組(行動指針7)を推進する
ため、国内最大のオープンイノベーションプラットフォームJOIC
(オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会)の周知活動を
行う。