SDGインパクト基準17 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.364 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** SDGインパクト基準17 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

今回は目標9についてです。

■■ 目標9 ■■
目標9. 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能
な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る

<9.1 すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発
展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の
高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを
開発する>

■■ レジリエントなインフラ ■■
インフラは“infrastructure”の略語です。“infrastructure”は基盤、下
部構造などの意味で、電気、水道、道路、トンネル、鉄道、港湾、
空港、河川、橋、下水道、通信など人々が快適な生活を送るのに不
可欠な多様な設備類を総称して呼んでいます。
レジリエンス(resilience)は、「弾性(しなやかさ)」を意味する英
語です。元々は物理的な意味を持つ言葉でしたが、「しなやか」とい
う意味から回復できるという意味を持つようになり、壊れても直ぐ
に元に戻る意味で使用されています。
「レジリエント」という言葉は日常ではあまり使われませんが、ビ
ジネスの世界でよく使われています。ビジネスの世界では、組織に
対しては危機に遭遇しても「効果的に処置するしたたかさ」を、組
織人には「逆境に強い折れない心」などを意味します。

■■ インフラの寿命と数 ■■
時々地震でもないのにビルが倒壊したり、橋が崩落したりするシー
ンを見ることがあります。インフラの寿命にはバラツキがあります
が、50年が一つの目安と言われています。建設後50年以上経過し
た日本のインフラの主な例を示します。
・橋(道路にかかっている2m以上の橋)  約700,000本
・トンネル               約11,000本
・河川水門               約10,000施設
・下水道                総延長470,00km
・港湾岸壁               約5,000施設
高度経済成長期1964年に行われた東京オリンピックを中心に、日本
のインフラ整備は一気に進み、このような膨大な橋やトンネル、河川
管理施設、下水道などが50年前に建設されています。

■■ インフラ耐用年数への対策 ■■
アメリカでは、1930年代、ルーズベルト大統領は世界恐慌に対する
景気回復策として積極的な公共事業を行い、その結果社会インフラ
は一挙に近代化されました。しかし1980年代になると、道路や橋
の老朽化による事故が続発することになり、「荒廃するアメリカ」の
象徴となりました。
インフラの耐用年数を実証したものとして、2012年に中央自動車道
で起きた笹子トンネル天井板崩落事故が上げられます。この事故を
受けて、政府は2013年に「インフラ老朽化対策の推進に関する関
係省庁連絡会議」が設立し、国土交通省は、同年を「社会資本メン
テナンス元年」として、点検・診断等を集中的に実施しました。
2014年に国土交通省は、「インフラ長寿命化計画(行動計画)」を立
案し、8つの政策を発表しました。メンテナンスサイクル構築、トー
タルコスト平準化、地方公共団体支援などをベースに高速道路会社や
水資源機構、都市再生機構などに働きかけ、個別施設ごとに2020年
度までに全施設の計画を策定することを掲げました。

■■ メンテナンス費用 ■■
インフラのメンテナンスには、莫大な費用がかかります。国土交通省
試算では、2014年度のインフラをそのまま維持しようとすると補修・
更新費は、2054年時点で年約16兆円かかると見込んでいます。
一方、国土交通省は全国のインフラを点検した結果、空港や河川、病
院、電力など約30分野の計132項目で、現状に不備があることを確
認しました。
増加が予想されるインフラのメンテナンス費用については増加を抑え
るための取り組みも大変重要になっています、国土交通省は、「道路
の老朽化対策の本格実施に関する提言」の中で「ファーストステージ」
と「セカンドステージ」の2つのステージを提言しました。
2015年から始まったファーストステージでは、インフラの保守管理者
の義務を明確にし「点検→診断→措置→記録」という4つの業務を1
サイクルとして、橋やトンネルを5年に1度点検するメンテナンスサ
イクルの確立を目指しました。2017年から始まったセカンドステージ
は、より効率的で戦略的なメンテナンスを目指し、「道路点検における
ICTの活用」や「非破壊検査(赤外線調査)によるスクリーニング」な
どを実施しました。また、ドローンやAIを活用した点検を行うとしま
した。
インフラには地方公共団体が管理するものも多く、費用や人材育成、
技術に関する支援なども重要です。日本のインフラ老朽化対策は、この
ように多方向から推進されていますが、なお「荒廃する日本」にしない
ために継続した政策の遂行が非常に大切になっています。