再発防止策を考える4 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.404 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
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*** 再発防止策を考える4 ***
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(一社)日本品質管理学会では2023年1月、JSQC-TR 12-001:2023
「テクニカルレポート品質不正防止」全65頁を発行しましたが、
その中には,学会が選んだ品質不正の18社の事例について、調査
報告書からの抜粋の形でなぜ品質不正が行われたかの要因、原因が
書かれています。

■■ 説明されている要因,原因 ■■
18社の第三者報告書で説明されている要因,原因は次の8項目に
集約されます。
1.コンプライアンス意識がない。(401号)
2.品質保証部門が機能不全を起こしている(402号)。
3.人が固定化され,業務が属人化されている(403号)。
4.収益偏重の経営がされている。
5.監査が機能していない。
6.工程能力がないのに生産している。
7.管理がされていない。
8.教育がされていない。
これからその1つずつについて検証していきたいと思います。

■■ 収益偏重の経営がされている ■■
今回は4つ目についてですが、18社中の10社(56%)が「収益偏
重の経営がされている」を品質不正の要因としています。
「収益偏重の経営」を品質不正の要因の一つとして挙げている各社
の説明は次のようなものである。
-収益偏重の経営が行われる中で検査員が不足になった,また設備
 が更新されず劣化した。
-赤字が続き工場への人的投資,設備投資は抑制され,製造設備の
 老朽化,陳腐化が進んでいった。
-業務量の増加に応じた検査員の育成・増員計画がなされないまま,
 納期が優先された。
-人員合理化により人員が削減され,検査工程上の時間的余裕がな
 くなった。
-売上至上主義に基づく収益重視に偏った経営が行われた。

■■ 収益を求めることは経営の要である ■■
収益偏重という言葉は誤解を招くようです。収益を求めることは企
業であれば当然のことであり、逆に収益を上げられない会社は社会
からの離脱を余儀なくされます。
「偏重」という言葉にポイントがありそうです。収益という結果に
執着してプロセス(結果を出す経過)にポイントを置かない経営で
あることが品質不正の要因であると説明しているようです。
その内容を見ますと、赤字経営になったので検査員とか設備とかの
資源に必要な資金を投資しなかった、あるいはコストダウンの名前
の下に必要である資源を投下しなかったという様な事がいろいろな
表現で述べられています。

事の因果関係を考えてみましょう。
赤字経営になったのはなぜでしょうか?必要な経費を投じてこなか
ったからではないでしょうか。必要な経費とは検査員、設備だけで
はないでしょう。営業、企画、設計あるいは研究開発にも必要な資
金投資をしなかった結果が赤字経営という結果になったという推論
が適切な因果関係であると思います。

■■ 赤字になった時に打つ手は? ■■
「窮すれば鈍する」という格言があります。
以下、いま話題のチャットGPT※に聞いてみました。

「窮すれば鈍する」という言葉は、日本の諺であり、経済的に困窮
することや環境が厳しい状況に置かれることが、人の能力や才能を
鈍らせる傾向があることを指しています。つまり、困窮や苦境に陥
ると、人間の能力や判断力が低下し、鈍くなってしまうという意味
があります。
この言葉は、人間がストレスや負担を抱える状況に置かれると、集
中力や創造性、判断力などの認知的な能力が低下し、結果的に鈍く
なってしまうことを指摘しています。例えば、経済的な困窮や人間
関係のトラブル、健康上の問題などが原因でストレスを感じた場合、
それによって人間の能力が十分に発揮されず、鈍い状態になると言
われています。
この言葉は、困難な状況に置かれた際には冷静に対処し、能力を最
大限に発揮することが重要であることを教えています。自己管理や
ストレス対処法を身につけることで、困窮や苦境にも冷静かつ的確
に対処することができ、能力を鈍らせることなく、より良い結果を
出すことができるでしょう。

すなわち、経済的に困窮すると能力や判断力が鈍るという事を意味
しています。そして、貧したときこそ冷静に正しい手(自己管理,
ストレス対処)を打つべきであるとチャットロボットは答えてくれ
ています。

赤字になったからコストを削減するのではなく、コスト削減を始め
とする日常管理による効率経営があって赤字経営を避けることが出
来るという正しい因果関係で品質不正の要因分析を進めていかなけ
ればならないと思います。

※ チャットGPTは(Generative Pre-trained Transformer)
「生成可能な事前学習済み変換器」という意味である。