2026年7月1日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol. 563 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」11 ***
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ヒューマンエラーを減らすアプローチの一つに「色分け、形状分け、置き場管理」があり
ます。作業標準とかチェックリストのような「文書、手順書」による管理とは異なり、作
業環境そのものを工夫する方法で、ISO9001の8.5.1 d)「適切なインフラストラクチャ及
び環境を使用する」ことに沿う方法です。
■□■ 色分け、形状分け、置き場管理 ■□■
「色分け」とは、例えば「工程別」「品種別」「用途別」「合格/不合格」「校正済み/期限
切れ」などを色で区別し、視覚的に識別できるようにすることです。
「形状分け」とは、似たものを誤って選ばないように、容器、トレイ、治具、コネクタな
どを形状で区別し、物理的な取り違えを起こしにくくすることです(ポカヨケ)。
「置き場管理」とは、「何が」「どこに」「いくつ」あるべきかを決め、置き場を固定し(定
置管理)、在庫や工具の状態を即時に分かるようにすることです。
色分け、形状分け、置き場管理の特徴は次のようです。
(1) 視覚による管理:正しい状態、間違った状態が一目で分かる。
(2) 選択の削減:迷う余地を減らし、取り違えを起こしにくくする。
(3) 異常の顕在化:欠品、混在、置き間違いを見える化する。
(4) 探し物の削減:探す時間が減ることで「焦り」というミスの誘因を減らす。
これらは単体でも効きますが、共通する考えは「情報を書くのではなく現場の環境に埋め
込む」ことです。作業者が手順書を見なくても、置き場と色を見れば判断できる状態を作
っておくことです。これは、ヒューマンエラー対策として効果のある方法です。
これ等の方法は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)と同じで、しばしば精神論と見
なされがちです。しかし、正常を見える化し、標準状態を維持するための仕組みとして
「整理(不要物の排除)」は、取り違えの温床を無くす重要な要素です。不要物がなければ
選択肢が減り、取り違えは起こりにくくなります。
■□■ 色分け、形状分け、置き場管理の有効性 ■□■
色分け、形状分け、置き場管理がヒューマンエラーに効く理由は、人間の認知特性と作業
現場の現実にあります。人は、忙しいときほど、探す、選ぶ、確認する、戻すという行為
をスキップします。色分け、形状分け、置き場管理の有効性を具体的に考えてみます。
(1)「取り違え」の選択肢を減らす
部品棚に似た部品が混在している、工具箱に同じような工具が複数入っている、ラベルが
見えにくいというような状態では、取り違える可能性は高くなります。整理整頓で不要物
を排除し、定置化で置き場を固定し、色や形で区別すると間違えることが少なくなります。
(2) 異常がすぐ見える
定置管理の重要な効果は、異常が目に入ることです。工具が欠品している、在庫が減って
いる、違う箱が置かれている、合格品エリアに未検査品が混じっている――これらが一目
で分かれば、間違えは早期に止められます。バーコード照合は「機械で検出」ですが、定
置管理は「環境で検出」するという考えです。
(3) 探す時間が減ると焦りも減る
現場のヒューマンエラーは、作業者の技能よりも、時間のプレッシャーによることが多い
と言われています。探し物が多い現場は、常に焦りを生みます。定置化により探し物が減
れば、作業が落ち着き、確認行為が決められたとおりに行われやすくなります。これは見
落とされがちですが、ヒューマンエラー対策として大きい効果です。
(4) 標準化しやすい
置き場が決まっていれば、標準状態が明確になります。標準状態が明確なら、監査や巡回
で「崩れているかどうか」を誰でも判断できます。属人化が減り、維持の仕組みが回りま
す。
ただし、ヒューマンエラー対策としての有効性を最大化するには、定置管理を「決めた」
だけで終わらせず、守らことができる仕組みにすることが必要です。例えば、置き場表
示、定量表示、影絵(工具の影)、色帯、ラインマーキング、補充ルール(カンバン)など
をセットにして、元に戻す行為が自然にできるように設計します。「しつけ」は精神論では
なく、仕組みとしてやることになる構造を作ることがポイントになります。
(つづく)
