2026年7月15日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol. 565 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」13 ***
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今回は、8.5.1 g)「ヒューマンエラーを防止するための処置」の重要な柱としての教育訓
練、技能認定についてお話しします。「教育を実施した」だけでは、ヒューマンエラーは
無くならないとおっしゃる方も多いのですが、力量を見える化し、任せてよい作業と任せ
てはいけない作業を線引きすることで、ヒューマンエラーを減らすことができます。
■□■ 教育訓練と技能認定 ■□■
教育訓練は、ISO9001の7.2(力量)において、「適切な教育,訓練又は経験に基づいて,
それらの人々が力量を備えていることを確実にする」ことが求められています。
8.5.1 e)でも「必要な適格性を含め力量を備えた人々を任命する」と明記されており、教育
訓練と「力量を備えた人の任命」は一体となる要求です。ここでのポイントは、単なる座
学やOJTの実施ではなく、技能認定(資格付与)とその記録によって、誰がどの作業を実
施できるかを組織として保証することにあります。
教育訓練と技能認定の組み合わせは、次の5点に整理できます。
(1)任命の根拠
基準に基づいて力量のある人を任命したことを示す記録(証拠)を残す。
(2)属人化の抑制
熟練者の暗黙知を標準化し他者へ移転する仕組みをつくる。
(3)作業の線引き
認定されていない作業はできないようにする。
(4)変化に強い
人の入れ替え、応援などの変化に対応できるようにする。
(5)継続性
時間とともに劣化する技能を維持させていく。
■□■ 教育訓練と技能認定の区分け ■□■
当然のことですが「教育訓練」と「技能認定」は違います。教育訓練は学ぶ機会ですが、
技能認定はその結果の証明です。教育を受けても、実務ができるとは限りません。ヒュー
マンエラー対策としては、認定基準(合否)と評価方法(試験・実技評価)の厳格な適用
によって、認定されるまで単独作業を許可しないという運用が核になります。
訓練におけるOJTの役割も重要で、単に「実施しました」という記録ではなく、どの作業
要素をどのレベルで習得したかを記録に残すことが必要です。例えば「OJT実施:○月○日
」だけではなく、次の内容を含む記録が望まれます。
・対象作業(工程、設備、製品群)
・教育内容(手順、品質基準、異常時対応、安全)
・実施回数、立会い回数
・評価結果(合格、要再訓練)
・評価者(認定者)の署名
・次の課題(改善点)
「力量の見える化」は、個人の能力を序列化するためではありません。目的は、品質と安
全を守るために、適切な人を適切な作業に配置することです。見える化がないと、現場は
経験年数や雰囲気で配置を決めがちで、特に繁忙期や欠員時においては無理が出ます。
技能マトリクス(スキルマップ)を用い、工程ごとの必要能力と個人の保有レベルを可視
化し、リスクの高い工程ほど厳格に運用するのが実務におけるポイントになります。
■□■ なぜヒューマンエラーが減るのか ■□■
教育訓練は一般に「知識が増える」効果として語られますが、ヒューマンエラー対策とし
ての有効性は構造的なものです。教育訓練と技能認定がヒューマンエラー対策として機能
するためには、次の4つのメカニズムを構築する必要があります。
(1) できない人が行わない状態を作る。
エラーの多くは、未熟な作業者が単独で実施したとき、または新しい作業に急に投入され
たときに増えます。技能認定があると、「この工程は認定者のみ」「認定が取れるまで監督
下で実施」というルールが成立し、誤作業の入口が塞がれます。これはポカヨケの一種と
考えることができ、人的資源面のポカヨケ、すなわち「できない化」です。
(2) 暗黙知を移転し、ばらつきを減らす。
熟練者は、手順書に書かれていない“勘所”を知っています。教育訓練では、この勘所を言
語化・視覚化し、標準に落とし込みながら伝えます。技能認定で評価項目に組み込めば、
勘所は適切に移転され、個人差が縮まります。結果として、作業のばらつきが減り、工程
が安定することで、ヒューマンエラーも減ります。
(3) 異常対応を早くする。
多くの品質事故は「異常に気づいたが止めなかった」「迷ったがそのまま進めた」から重
大化します。教育訓練に異常時対応(止める、隔離、連絡、記録)を組み込み、技能認定
においても評価することで、異常を早期に止める行動を定着させます。これは8.5.1 g)の趣
旨に直結します。
(4) 配置の意思決定を合理化する。
繁忙期や欠員時、現場は「誰でもいいから入れる」判断をしがちです。スキルマップをベ
ースに必要力量を満たす人を客観的に選び、リスクの高い工程は認定者を優先配置するこ
とができます。結果として、突発的な配置変更によるミスを減らすことができます。
さらに、教育訓練と技能認定は、品質だけでなく安全やコンプライアンスにも波及しま
す。危険作業や法規制のある作業は、認定なしにやらせない仕組みが必須です。
(つづく)
