Category Archives: つなげるツボ

品質マネジメントシステムの再設計 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.34 ■□■

*** 品質マネジメントシステムの再設計 ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

品質マネジメントシステム(QMS)についてその有効化の議論が盛んです。

「ISO9001(QMS)を構築してもその効果がはっきりしない。」

「ISO9001を維持していくコストを考えると
       現状のままでは継続していくことに疑問がある。」

このように感じている組織が増えているようです。

これにはいろいろな要因が絡んでいます。

いままでは「どうして効果が出ないのか」を議論してきましたが、
これからは「どうすれば効果が出るのか」を議論していくべきであると思います。

■□■ 現状は・・・ ■□■

ある講習会で「本業が忙しくてISOをやっていられない」という声を聞きました。
この嘆きは多くの組織の事務局の共感を呼ぶものであるようです。

ISO9001、あるいはISO14001の事務局の声として、
       現状を的確に表している声であると思います。

この声の後ろには、QMSが日常業務の中で必要なものとして
       扱われていないということがあると感じます。

本来日常的業務の中で機能しなければならないQMSが、
 現実には無視され、認証審査のときだけ思い起こすように
  システムが見直しされるという現実があるようです。

それでは、「どのようにすれば効果が出るのか!」・・・への答えは、
ズバリ、「効果の出るQMS(品質マネジメントシステム)を作ること!」につきます。

何か禅問答のように聞こえるかもしれませんが、考えても見てください。
  QMSのユーザーは誰でしょうか?
    ユーザーの期待とニーズ(必要性)は何でしょうか?

    当初のQMS設計においてのインプットは何だったのでしょうか?

QMSは、果たしてこのような問い掛けをして設計/構築されてきたのでしょうか?

      もし答えが「NO」であるならば、組織は「QMSの再設計」をすべきです。

ISO9001:2008序文0.1一般には
「品質マネジメントシステムの設計及び実施」について次のような記述があります。

■□■ ISO9001:2008序文0.1一般 ■□■ 

「品質マネジメントシステムの採用は、組織の戦略上の決定によることが望ましい。
 組織における品質マネジメントシステムの設計及び実施は、
 次の事項によって影響を受ける。

  a) 組織環境、組織環境の変化、及び組織環境に関連するリスク
  b) 多様なニーズ
  c) 固有の目標
  d) 提供する製品
  e) 用いるプロセス
  f) 規模及び組織構造」

序文においては「設計:design」という用語が使われています。
        この設計という作業が重要なのです。 

           設計にもいろいろなものがあります。

すなわち普通の製品(たとえば携帯電話)で言えば、
  まったくの新製品であったり、
    派生製品であったり幾つかの種類があります。

QMSという製品はすでに市場に出ています。
  最初は興味をもつユーザーがいたのですが、 
    徐々に価値が失われ今やユーザーが離れてしまい
      市場から撤退するか問われている状況にいます。

■□■ 誰がQMSのユーザーか? ■□■

「誰がQMSのユーザーか?」
   これは根源的な問いかけです。

QMSをひとつの製品と見立てた場合、
QMSという製品を使用するのは組織の全員です。

すなわち、QMSの購入者、ユーザーは組織の人です。

通常の製品・サービスにおいてユーザーは
  製品を使用したくて購入するわけですが、QMSという製品は
    ユーザーに強い購入意欲を感じさせるものではないようです。

    強い購入意欲を感じるどころか、そもそも組織の人は
    QMSを購入したいと思っているのでしょうか。

QMSの購入者、ユーザーは「組織の人です」・・・といいましたが、
  実は外部にもQMSのユーザーはいます。

  子会社、協力会社の人たちは組織のQMSに基づいて仕事をしていますから、 
    QMSという製品を使用しています。

また、組織の製品・サービスを買ってくれる顧客も間接的ではありますが
  QMSのユーザーといえます。      

(次回へ続く・・・平林)

モンゴルで植林・・・? | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.33 ■□■

    *** モンゴルで植林・・・? ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

先月9月20日に、経済産業省のある委託事業で
モンゴルへ行ってきました。

成田国際空港の57番搭乗口で、ミャット航空13:30発OM0502便に
搭乗するために同行の社員と待機中、「平林さん」と突然、
声をかけられました。

吃驚して振り返ると・・・・・・そこには?

■□■ モンゴルで植林ボランティア ■□■

声をかけてくれた人は、当社テクノファの講師「花田さん」でした。

「えー、どうしてここに、・・・モンゴルへ行くのですか?」
以下は、花田さんの一大奮闘記です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

花田さんは、モンゴルに植林をしようと思い立ち、今年の始めから
たった一人で8,000本のポプラと楡の木を、ウランバートルから
南へ100Kmのハヤの町、デンデギルという丘に植え始めたそうです。

私は昨年12月にもモンゴルへは行ったのですが、そういえばウランバートル
空港から、市内までの間、樹木が1本も無いことを思い出しました。

丘陵地帯であるといえば疑問を感じませんが、実は、緑が急激に減少し、
自然が毎年失われて、砂漠化が進んでいたのです。

そのモンゴルに緑を増やし自然を復活させるためには、植林が極めて
有効なのです。

まず、植林した木が育つにしたがい、地中に根が張ることで砂漠化が
防止できます。

次に緑の葉っぱが増えるにしたがって昆虫が集まり、大きな樹木には
鳥達が集まって来ます。

鳥達が集まってくると、鳥の糞からいろいろな種が蒔かれることになり、
雑草から花までが芽を出すことになります。

このように植林は、緑の増加に加えて自然循環の復活に大きな
可能性を秘めており、植林は生物多様性の維持に極めて大きな
役割を果たしております。

□■ 植林の問題 ■□■ 

8,000本ものポプラと楡の木を植林した花田さんですが、
植林すればそれで終わりというわけにはいきませんでした。
モンゴルは家畜の放牧が盛んです。

放牧されている、ヤギや羊は若木の芽を好んで食べます。
芽ばかりでなく、幹の皮まで好んで食べるのです。
そこでどうしたらよいか、いろいろな人に相談をしたそうです。

花田さんは、退職する前は土木関係会社で、エンジニアリング関係の
仕事をしていたので、建設関係の知人も多くいろいろなアドバイスを
貰ったようです。

特に、花田さんのように個人でボランタリーをしている姿は評価されて、
いろいろな方面の方々からアドバイスを貰えたようです。

そこから得られた結論は、まず植林した木の周りに柵を張り巡らせ
家畜からの被害を守ること、そしてその後の灌漑の観点から井戸を
掘ることだったそうです。

今回、花田さんがモンゴルに来たのは、この柵の手配だそうです。
柵といっても木の柵ではなく、金網を考えているとのことでした。
ただ、材料を日本から輸送するとコストが高くつくため、
なんとかモンゴル国内で、金網を調達したいとのことでした。

「どのくらいの量が必要なのですか?」と聞きますと、
「植林した土地の周囲が約8Kmあるので、それをカバーする量の
買い付けをするために、これから内モンゴルへ行くのです・・・」

「車ですか?」と・・・「いいえ、電車ですよ・・・8時間ほど乗って
エレンという町まで行ってきます」ということでした。

□■ どうやって柵を作り、井戸を掘る ■□■ 

「なぜ、ポプラと楡の木を植林したのですか」と聞きますと
「ポプラは、ロシア原産で寒さに強いのですよ。
また、楡はアカシアに似てやはり北国の木なんです」との返答でした。

異国の地に植林するということは、いろいろと事前に調査を
しなければならないようです。

それにしても私にとって不思議なことは、一人でどうやって8000本もの
木を植林したかです。
また、これから「柵を8Kmも作る」、「井戸を掘る」といろいろな仕事が
次から次に起こってくるのですが、これらをどうやって実現させている
のでしょうか?

私の疑問を花田さんは、いとも簡単に答えてくれました。
「村長に頼むのですよ」と、
「村長と仲良くなって、彼が植林は村のためになると分かって
もらえれば、70~80人の村人を集めてくれるのですよ」

「えぇ~!」でも、どうやってやり方を教えるのか?
日当は払わないのか?
植林の後のケアーはどうするのか?など、私の疑問は
次から次へと浮かんできますが・・・・・。

そんなこんなで、30~40分話をしていたらもう搭乗の時間に
なってしまいました。

残念ながら、機内では席が離れていたために、私の疑問は
持越しとなってしまいましたが・・・・。

■□■ ? ■□■

空路一路、ウランバートルに到着しました。

到着ロビーには、花田さんを迎える2人のモンゴル人が
車で迎えに来ていました。

「これから市内の駅に行って、列車に乗ります。そして、
明日金網を貨車1台分買い付けて戻ってきますが・・・」

「市内まで、一緒に乗っていきますか?」と誘ってくれましたが、
私達にも政府関係の組織から迎えが来ていましたので、

お名残惜しい気持ちを伝え、帰国したら後日談を聞かせて
いただく約束をして、花田さんと別れました。

(平林)

コミュニケーション2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.32 ■□■

    *** コミュニケーション ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

コミュニケーションの目的は信頼感を深めることにあるといいますが、
どんな方法があるのでしょうか。
コミュニケーションの方法にはいろいろなものがあると思いますが、
Vol.30に引き続き、今回はコミュニケーションについて考えてみたい
と思います。

今回も宜しくお願いいたします。

■□■ コミュニケーション ■□■

ビジネスにおけるコミュニケーションは極めて重要です。
お互い相手を知ることによって、初めてビジネスはスタート
できるからです。

コミュニケーションにはいろいろな方法、手段があります。
お互いが信頼感を深める一番よい方法は、face to faceと
いわれる、お互いが顔をみておこなうコミュニケーションです。

一般にpersonalな手段による方法がコミュニケーションに適していると
いわれます。
反対にprocess志向な手段はコミュニケーションには適していません。
その代表がE-mailによるコミュニケーションでしょう。
E-mailではあまり信頼感を深めることはできないのです。

中間に位置するのが電話です。コミュニケーションの方法として
直接相手と接触するのではないのですが、声を聞くことによって、
E-mailでは得られない感触を得ることができます。

感触を得るといいましたが、この感触にはいろいろなものがあります。
つまり感触とは、「相手の言動からそれとなく感じとること」をいいます。

したがって次のようなことから、感触が得られるでしょう。
 ・表情から 
 ・身振りから
 ・手振りから
 ・体の動きから
 ・声の抑揚から

よくbody language といいますが、体全体を使っての表現は
人により多くの感触を与えることができます。

■□■ Webinar ■□■ 

webinar(web seminarが語源)というコミュニケーションの方法が
あります。
発想は20年前からありました。
その当時は、ビデオ会議とよんでいました。
遠隔地にいる者が、たとえば東京本社と大阪支社との間で、
電話回線を使って画像を送りながら会議をするという方法です。

当時のビデオ会議は、10秒ごとにお互いの静止画像を見て
議論をするというものでしたから、議論している内容と顔の
表情とがずれてしまい、なんと言うか本物の感触は
得られませんでした。

あれから20年、回線は銅線から光ファイバーにかわり、
送信できる情報量は飛躍的に大きくなりました。
10秒ごとの静止画面がいつしか動画にかわり、
それも連続動画になりました。

個人向けとしても、スカイプというコミュニケーション手段が
無料で提供されるようになり、格別に便利になりました。

webinarは、多数の人が参加できる画像つきのセミナー
(電話会)です。東京本社と大阪支社の間にのみならず、
香港支社、US支社など、グローバルにコミュニケーションを
とる方法として、ここ1、2年急速に利用が進んでいます。

webinarはパソコンをつないで、パワーポイントを映すことが
できるので、多数の人が参加するセミナー、会議、教育研修など
に適しているといえます。

■□■ 研修のあたらしいスタイル ■□■

研修会で、webinarを使用するスタイルが急速に進んでいます。
日本でも始まっていますが、海外、特に欧米では活発に
使われています。

講師は事務所にいて、受講生は自分のworking placeで、
visualな画像によるon line授業を受けることができるのです。

一箇所に集まる必要がないので、コストパフォーマンスは
高いと企業には評判のようです。

私も実は、先週シンガポールで試す機会がありまして、
なかなか工夫されていると感じました。

しかしながら問題は、コミュニケーションの感触です。
講師としては受講生の反応をon timeで得たいのですが、
感触は声の抑揚からでしか得られません。
その点が、授業中受講生に質問を促しようと思っても、
限界があることを身をもって知らされました。

■□■ 電話はできるだけ短く? ■□■

コミュニケーションの手段として電話が盛んなころ、私は製造会社に
いましたが、電話について繰り返し注意されたことがありました。

「電話は短く!」というものでした。
電話で5分以上も話しをしていると、上司から睨まれたものです。
ところがある時、この話を知合いのAさんにしたら、
「自分の会社では『ようやくきみも、1時間話ができるように
なったね』と誉められた」というのです。

この話を聞いたとき、私は何を言っているのか
意味が分かりませんでした。

Aさんは、「電話で顧客に自分の話を聞いてもらうにはいろいろな
工夫がいる。時勢のトピックス、経済情勢、今後の見通し、故事来歴
など、いろいろなことを知らなかったら自社商品の説明を聞いてもらう
ところまで、たどり着けない」と・・・

Aさんは、15年前に証券会社で富裕層顧客に電話セールスをして
いたそうです。

5分間では感触を得ることが難しい電話でも、1時間も話せば
確かに期待する感触が得られると思いました。

(平林)

京都議定書 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.31 ■□■

    *** 京都議定書 ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

IPCCの第4次レポートが出されて2年が経ちましたが、世界の
GHG排出量削減、排出量取引については、依然として混沌として
います。

今回も宜しくお願いいたします。

■□■ COP15の開催 ■□■

COP15は昨年12月に2週間弱デンマークのコペンハーゲンで開かれ
ました。

COPはConference of the Party ~ の略で、締約国会議と訳されて
います。1992年に国連が定めたUNFCCC(United Nations
Framework Convention on Climate Change:気候変動枠組条約)への
加盟国約190カ国の国際会議です。

COP15とは第15回締約国会議ということです、1995年に第1回が
スタートしました。以来毎年1回開催されていますが、1997年に
京都で開催されたCOP3は京都議定書が作成されたことで有名です。

このCOP3で日本を含む先進国のCO2削減の数値目標が決定され
ました。日本は1990年比-6%という高い数値目標を課せられました。

■□■ 京都議定書の2012年以降が決まらない ■□■

今回のCOP15は先進国と途上国の対立が激しく、ほとんど何も
決まりませんでした。

今回は約130カ国、40,000人が参加したそうです。4万人という
国際会議は想像を絶します。本会議に参加できるのは130カ国の
国を代表する10,000人くらいで、残りの30,000人はいろいろな
サイドイベントへの参加者の数だそうです。

まあ、NGO、環境団体、環境に興味のあるいろいろな各国の人々が
年に1回大集合するお祭りのようなものになっているそうです。

それにしても、中国、インドなどのBRICsと呼ばれる新興勢力の
排出量はぐんぐんと増加してきています。

新興勢力にも削減の数値目標を持ってもらうことが先進国の
一貫しての主張ですが、途上国を含めて新興勢力は「それでは
いままでの先進国の責任を放棄して、途上国に現在の排出増大の
責任を押し付けるものである」として強行に反対しています。

結果、「・・・・・の合意について留意する」という訳のわからない
決議になってしまいました。採択が期待されていた2012年以降の
取り決めは棚上げになってしまったことから、CO2排出権の値段は
下降してしまいました。つい最近まではCO2:1トンが4,000円
という時もありましたが、最近はその半分位になっているようです。

■□■ 排出権を買う ■□■

私は時々ISOの国際会議に出席しますが、今年のある国際会議で
旧知のオーストラリア人から次のような質問をされました。

「IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に
関する政府間パネル)は日本では信用されていますか?」
というものでした。

私は「日本ではIPCCは世界の科学者の集まりで絶大な信用とは
いわないが、ほどほど信頼感のある組織であると思われている」
と返事をしました。

彼は、「なるほどそれで頷ける。私は一昨年日本政府が何百億円も
出してウクライナから排出権を購入するというニュースを
聞いたが、なぜ単なる空気を何百億円も出して買うのか理解
できなかった。」というのです。

私は、この「・・・単なる空気を何百億円も出して買う・・・」
という言葉に引っかかりました。「たしかに空気ではあるが
CO2を削減した権利を買うのだから価値はあると思う。」と反応
しました。

■□■ そもそもIPCCレポートは信用されていない? ■□■

彼は「だから最初IPCCについて聞いてみたんだよ。多分日本政府は
IPCCの第4次レポートを信用しているのだね。あれは相当割り引いて
読まないといろいろ問題を含んでいるよ。」と言うのです。

私もIPCCの第4次レポートは概略ですが読んでいました。
「二酸化炭素は最も重要な人為起源の温室効果ガスである。
二酸化炭素の世界的な大気中濃度は、工業化以前の約280ppm から
2005 年には379ppmに増加した。2005 年における大気中二酸化
炭素濃度は、氷床コアから決定された、過去約65 万年間の自然
変動の範囲(180~300ppm)をはるかに上回っている。」と始まって、
故に地球の大気は温暖化していて、今後いろいろな影響が起きると
結論付けています。

彼は「大気のCO2が増加していることは間違いないが、それが地球
温暖化の原因になると決め付けるのにはまだまだ早計だよ。」
というのです。

「例えば、地球46億年の歴史の中で、氷河期と間氷期が繰返されて
きたことは有名な話だが、この原因は地球の軸が少し傾いていること、
太陽活動が活発化/停滞化することなどから起きていることは長い
歴史が証明していて、必ずしも人為的なCO2増加が温暖化の原因に
なるとはいいきれないよ。」

「IPCCの議長はインドのチャーリーだが、彼はインドに得になること
しか考えていないのだから・・・」

「昨年、オランダからの気象データが改ざんされIPCCの第4次
レポートに都合のよいデータとして使用されたスキャンダルも
あったし・・・」

と、まあ我々日本人があまり知らない情報を随分くれました。
事の真偽はこれまた分かりませんが、少なくとも海外の人は
日本人の人のよさを若干批判的にみていると感じました。

コミュニケーション1 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.30 ■□■

    *** コミュニケーション ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

先日ISO/TC176の国際会議(総会)で1週間コロンビアのボコタへ
行ってきました。

今回も宜しくお願いいたします。

■□■ コロンビア、ボコタ ■□■ 

コロンビアでは入国前に考えていたほど英語が通じませんでした。
入国審査では、スペイン語ができなければきちんとした意志疎通が
できないことがわかりました。スペイン語ができない私にとって、
空港では苦労の連続でしたが、ホテルのフロントでやっと英語が
通じ、ほっとしました。

出発時にボコタは標高2600mの高地にあると聞かされていましたが、
思った以上に寒く体調管理に苦労しました。平均気温が15度との
情報があったので、セーターも用意していきましたが、朝晩は
もっと厚手の衣類が必要でした。

富士山の6合目という高地では、酸素が薄く、アルコールを飲めば
酔いは早く回るし、時差ボケはなかなか取れないし、いつも
何となく疲れた気分でしたが、体調管理に慣れた頃には帰国という
1週間でした。

ボコタでは10年前位に商社の幹部が拉致された事件もあり、
事務局からはできるだけ市街には出ないようにと言われて
いましたので、1週間専用バスによるホテルと総会会場との
往復だけで一切市街地には出ませんでした。

■□■ 「ISO/TC176の総会」とは ■□■

ISOにはTC(Technical Committee:専門委員会)と呼ばれる委員会が
数百あります。TCは3万近いISO発行の規格(標準)を最新化したり、
新規格を審議したりする役割を担い、最終的に国際規格の発行にまで
こぎつける機能を持っています。

私の属しているTCはTC176と呼ばれ「品質マネジメントシステム
:ISO9001」の規格を審議しています。TC176は1981年に176番目の
専門委員会として組織化されました。ちなみに、TC1は1927年に
組織化された「ねじ」の規格を審議する専門委員会だそうです。

それぞれの総会は、原則1年に1回開催されることになっていますが、
今回のTC176の総会は昨年の東京総会(2009年2月)に続くものです。

今回は実質1年半ぶりの総会で、今後のISO9001規格のあるべき姿、
next 10years strategy が大きなテーマでした。

■□■ 今後のISO9001はどうなる ■□■

さて、次回に改訂が予定される9001規格はどのようなものになる
のでしょうか?
既に今年2月には、ロンドンで次回9001規格に関する会議が開催
されています。日本からは出席しませんでしたが、ロンドンでは
次期ISO9001規格をどのようなものにすべきかの議論が行われ
ました。2009年2月の東京総会におけるブレーンストーミングに
つぐ議論でした。

2月ロンドン会議では幾つかの要素についてコンセプトを議論
しましたが、今回はそれらを継続して行うこととISO9001規格への
影響についての考察をまとめる会議となりました。

私は、プロセスの結果/改善/効果性(Results/improvement/
effectiveness) について議論をするグループのリーダーに
なりました。

私のチームは総勢5名、国籍はインド、香港、メキシコ、チェコの
非英語圏(インド、香港は英語圏か?)のグループです。たまたま、
非英語圏の委員だけが集まったわけで、最初からメンバー構成が
決っていたわけではありません。

英語圏の委員はつい自分のペースで話をするために他の委員が
ついていけないことがありますが、今回はお互いがそうした経験を
活かし、じっくりとテーマについて検討することができました。
非英語圏のグループだとはいっても、インド、香港の委員の英語は
他の委員の英語より流暢です。

■□■ 国際会議でのポイント ■□■

言葉の問題は国際会議についてまわる基本的な問題ですが、相手の
言っていることが理解できなければ、そこで即刻「わからない」
と言うことがポイントです。

この「分からない」と言い出すことは若干勇気がいるのですが、
その後ずーっと議論の道筋から外れていってしまうことを考えると、
分からないと思ったタイミングで一言発言することです。

「聞くは一時の恥」とかいいますが、恥でもなんでもなく、
聞いている人の権利であると思わなくてはいけないと感じます。

この点、日本人は奥ゆかしい、遠慮しがち、消極的、内向的など、
いろいろな表現がありますが、兎に角そこで質問する事が重要なの
です。
 

■□■ 大したことを言っていない ■□■

質問すると丁寧な回答が帰ってきますが、こちらの聞き間違え
だったり、相手が勘違いしていたりといろいろなケースがあり
ますが、私のケースでは相手が勘違い、あるいは論理の飛躍、
筋の通らないケースが多くありました。

勿論、相手の発音が不明瞭だったり、こちらの聞き取りが充分で
なかったりするケースも多いのですが、日本語の会話と同じで、
意味が通じなかったらそこで意思疎通を図っていくという
ことが重要であるということが言えます。

それにしても、英語という言葉の飾りに惑わされ、内容の吟味が
されないケースがよくあります。

英語で話されるとなんとなく立派に感じてしまうのは、英語
コンプレックスを持っている日本人の常ですが、内容を確認すると
「たわいもない」ことを言っていることが多くあります。

我々、日本人は論理的な考えで筋を通して議論することに慣れて
いないとよく言われてきましたが、私の経験から言うとそれは
個人的な属性であって、国ごとに傾向があるとはとても思えません
でした。