環境問題への取り組み | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.15  ■□■
 
  *** 環境問題への取り組み ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

今日、環境問題は毎日のように新聞を賑わしています。

では今回も宜しくお願いいたします。

■□■ 地球規模で考え、足元から行動しよう ■□■

“Think Globally, Act Locally.” 5,6年前に誰が言い始めた
言葉か不明だそうですが、すっかり有名になりました。

50年前、日本の環境問題は、「事業活動によりもたらされる害」
を意味した「公害」で代表されていました。例えば、工場からは
有害な物質を含んだ粉塵が大量に大気に放出されていました。

近隣に住む人々の洗濯物はススで汚れ、有害物質は付近の田畑
に降り注ぎ土壌汚染の原因になったりしました。更に、工場密集
地域である川崎、四日市などでは大気汚染が原因となった
光化学スモッグが発生したり、住民に気管支喘息が発病したり
しました。

これらに対する対策の一つは、煙突を高くして汚染物質を広く、
遠くに拡散することでした。しかし、この対策では汚染物質が
薄まっただけで総量が減ったわけではないので、当時の対策は
近視眼的な対症療法であり、根本対策ではなかったといえます。

公害から環境問題へと言葉の変化に伴い、我々の意識も地域規模
から地球規模に変化してきました。自分達の近隣だけでなく、
地球規模で物事を考える、すなわち有害物質の総量を規制する、
削減することなどが必要ですが、逆にいくら地球規模で考えても
一人ひとりが何かを実践しなければ何も変わりません。

今日の環境問題はともすると地球規模に拡大して考えられるため、
現実感が薄まり、問題の所在が自分達の足元にあるにも
かかわらず昔の公害のように見ることができず、問題を分かり
づらくしているといえます。

■□■ 明日のエコでは遅すぎる ■□■ 

“Think  Tomorrow, Act Today.” 明日のために今日やろう、
明日のエコでは遅すぎる、TVのコマーシャルでこれも有名に
なりました。

地球には約14億立方kmの水がありますが、その内、地球の表面積の
約70%を占める海にある海水が約13.6億立方km(97%)です。
ですから我々が飲み水として使用できる淡水は、0.4億立方kmすなわち
約3%しかありません。

しかもこの淡水の約70%、約0.3億立方kmは南・北極地域の氷として
存在しているので、実際には使用できません。我々が飲食用に
利用できる飲み水は地球上の水のわずか約0.1億立方km、0.8%で
しかありません。

その多くは地下水、川の水や湖・沼などに存在し、私たちの生活に
密接するところに存在します。この地球上にわずか0.8%しかない
淡水を我々は長い間汚染してきました。

貴重な水を汚染するのは、工場からの重金属、農場、ゴルフ場
などからの化学物質、家庭からの雑排水などですが、1970年に
成立した水質汚染防止法はさまざまな汚染物質の排出規制を
続けてきました。しかし、未だに栄養負荷の増大(肥料分や栄養塩
の増大)などによる湖沼、河川の汚染は続いています。

今できることをすぐやり、未来の子孫にきれいな地球を残して
いきたいものです。

■□■ 環境について学ぶなら ■□■

テクノファでは、環境問題に関する基礎知識を学ぶための
コースをご用意しております。ご参照下さい。

9月4日開催 ISO14001規格入門コース(TE51)
http://www.technofer.co.jp/training/iso14000/te51.html

9月9日~10日開催 ISO14001中小企業のためのシステム構築
コース(TE61)
http://www.technofer.co.jp/training/iso14000/te61.html

9月18日開催 「わかりやすい環境関連法規制」セミナー(TE73)
http://www.technofer.co.jp/training/iso14000/te73.html

■□■ 今何ができるのか ■□■

“What can we do ?”自分達に今できることはどんなこと
でしょうか。

日本での土壌汚染への対策は他の対策に比べて遅れましたが、
アメリカでは1980年にスーパーファンド法ができています。
これは1978年に起きた「ラブキャナル事件」がきっかけとなって
います。

土地開発を行う事業者は開発資金の数%の信託基金(スーパー
ファンド)を米国環境保護庁に土地汚染の浄化費用として積み
立てなければなりません。

ラブキャナル事件とは、米国ナイアガラ滝近くのラブキャナル運河
(ニューヨーク州)の周辺で奇形児が多く生れた事件です。
原因を探っていったら、ある化学合成会社が土地に廃棄した
投棄農薬・除草剤に含まれていたBHCやDDM、TCP、ベンゾクロライド、
ダイオキシンやトリクロロエチレン等の有害な化学物質が原因でした。

今、無農薬、有機栽培が話題になっていますが、近隣のゴルフ場
では芝生を雑草から守るために大量に散布した枯葉剤が雨水に
混ざって流れ、せっかく無農薬で行っている田畑を汚染させて
しまっているそうです。

■□■ もったいない ■□■

“Save Energy, Make Mottainai.”「もったいない」は今や
世界共通語になりつつあります。

ワンガリ・マータイさんはケニアの副環境大臣ですが、2005年
に国連の総会において、日本語の「もったいない」精神をエネルギー
の枯渇に対する言葉としてピッタリだと紹介してくれました。

彼女は2005年京都議定書に関する基調講演会出席のため来日
しましたが、このとき日本独特の「使いまわし」や、「ものを大切に
する」精神を知り、いつか世界にこの言葉を発信したいと決めた
そうです。ちなみにマータイさんは2004年度のノーベル平和賞
受賞者です。

東京都では「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」
を開始しました。2010年~2014年に8%の温室効果ガス排出削減
を目標としたプロジェクトです。これは、東京都環境確保条例の
規則改正に伴う罰則を伴う一種の規制であるといえます。

7月下旬には基準排出量を検証する検証主任者の研修/試験も
行われます。
検証主任者になるためには、次のどれかの業務経験が必要と
されています。
 ・省エネ診断業務
 ・ISO14001審査業務
 ・CDM有効化審査業務
 ・試行排出量取引/国内クレジット/JVETS/JVER検証業務

東京都内の約1300事業場が対象になるといわれていますが、
組織の全員が「もったいない」精神を発揮しないと8%ものCO2削減
は難しいのではないでしょうか。

人の話を聞く | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.14  ■□■
 
  *** 人の話を聞く ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

人というものは、「自分の聞きたいことしか聞こえない、自分
の見たいものしか見えない」と、よくいわれますが、人の話を
聞くということについて考えてみたいと思います。

では今回も宜しくお願いいたします。

■□■ 上の人は話を聞かない ■□■

人の話を聞くということは意外と難しいことです。特に日頃、
人から指示されることの少ない上の人は、人の話を聞かないと
よくいわれます。

部下に「話を聞くから言え」という管理者に限って、途中まで
聞いて「わかった、わかった」といって、かえって部下に
フラストレーションを与える人が多いようです。

多くの管理者は、「話を聞かない人」とならないようにいろいろな
努力をしているようですが、一番の問題はある時は話しを聞く、
しかしある時は話しを聞かないといったムラをどのように
無くすかということです。

どんな場面でも必ず話を聞くということは、その人の骨身にまで
染みた心構えがなくてはならないのですが、このことは大変
むずかしいことです。

人間は自分にメリットがあることには興味をもちますから、
まずは、話を聞くことがどんなメリットに繋がるかをよく知っておく
ことが重要だろうと思います。

■□■ 最良の道を選べる ■□■

当然のことですが組織にはそれぞれに目標があります。トップ
には会社経営における目標がありますし、管理者には部署に
与えられたミッションを果たす目標が存在します。

人の話を聞くメリットの第一は、この目標を果たすための道を
間違ったものにしないということです。目標を達成する手段には
幾つものもの道が考えられます。一番効率のよい道を選ば
ねばなりませんが、一度間違えた道は大きな回り道に
なってしまいます。

人は自身が気に入っている道と異なる道を提案されると、
聞く耳を持たなくなります。話を聞かないことによって、もし、
より効果的な別の道があるにもかかわらず、見逃したとすると
その代償は大きなものになります。

■□■ 信頼のおける部下を持てる ■□■

人の話を聞く第二のメリットは、信頼のおける部下を持てる
ということです。NHK大河ドラマで今はやりの「直江兼続」では
ありませんが、彼のような腹を割って話し合える部下をもつこと
のメリットには大きなものがあります。

もっとも、腹を割って話し合えるようになるには、話を聞く
だけではなく、話を聞く際の心構えも重要になります。それは
「私心」を持たないということです。

私心を持たない、私利私欲のためでなく大義のためと言い換え
てよいと思います。すなわち、個人でいえば自分のためでなく
組織のため、組織でいえば会社のためでなく公(社会)のため
ということになります。

上の人が部下の話を聞くことができても、そこに私利私欲が
あるとしたら、良好な人間関係を築くことは困難でしょう。私心
を持っていては腹を割って話し合える人間関係を作り出せません。

■□■ 信頼の満ち溢れた職場ができる ■□■

上の人だけでなく、組織の全員が人の話を聞くようになると、
職場は信頼感の満ち溢れた気持ちのよい雰囲気になります。

しかも、一人ひとりが個人のことよりも、集団のことを優先的に
考えられるようになると、お互いの間に目的が共有化され腹を
割って話し合えるようになります。

腹を割って話し合う、すなわち本当の対話が信頼感を醸成して
いきます。このことは、聞く側の問題ばかりでなく、話をする方
の問題へと繋がっていきます。

話をする方が、遠慮したり、本当とは裏腹のことを言って
いると、せっかく相手が聞く態度になっているのに何にもなり
ません。関係が悪くなると思っても本当のことを言わなければ
なりません。相手が聞く態度にいる時に本当のことを言わない
と、相手に誤解を与えることになります。

対話(コミュニケーション)は話をすることではなく、「聞くこと」
からはじまるといわれますが、話す人が本当のことを言うことが
重要です。聞く方は、相手が何を訴えたいのか、話す言葉だけ
ではなくその裏にある気持ちも汲み取ろうとして一生懸命な
わけですからそれに応えなければなりません。こうして、
居心地のよい職場ができていくのです。

■□■ コミュニケーションについて学ぶには ■□■

「コミュニケーション・トレーニングコース」をご案内します。

お互いを理解しあうための「傾聴トレーニング」及び、異なる
意見・考えからお互いに納得して結論に導くための「アサー
ション(発信)トレーニング」を通じてコミュニケーション能力を
高めるコースです。

詳細はテクノファホームページをご覧ください。
http://www.tfcc.jp/category/1250770.html

■□■ ものごとにこだわらない ■□■

対話(コミュニケーション)していても、つい言葉尻を捕らえて
つまらない方向に議論がいってしまうことがよくあります。
話をする人が言葉を慎重に選ぶことも必要ですが、聞く方が
相手は何を言いたいのかを汲み取る姿勢がより重要です。

心を真っ白にしていると言葉尻は気にならなくなります。心を
真っ白にしているとは、ものごとにこだわらないことをいいます。
しかし、心を真っ白にして聞く、すなわちものごとにこだわらずに
聞くということは本当に難しいことです。

職場の対話には必ず大なり、小なりの対立があります。すなわち、
立場の違いがあります。目標を達成しようとするとその目標に
こだわらなければなりません。

目標を達成しないでいいというならば、こだわる必要もなくなり、
自由に和気あいあいと対話(コミュニケーション)していれば
よいのですが、現実はそのようなわけにいきません。

自分の立場は相手の立場と異なりますから、こだわっていると
人の話はほとんど聞こえてきません。多くの人が、人の話を
聞かないで、どのへんを落し所にしようかばかりを考えています。
それでは冒頭に言った「自分の聞きたいことしか聞こえない、
自分の見たいものしか見えない」ということになります。

自分の目標にはこだわるがやり方にはこだわらない、自分の信念
にはこだわるが行動にはこだわらない、自分の性格にはこだわる
(変えられないから)が表現の仕方にはこだわらないなど、
一度じっくりと考えてみるべきではないでしょうか。

■□■ 職場での最重要課題は ■□■

周りから見たら職場の雰囲気を壊しているとしか思えないのに、
自分では気がつかないタイプの人がいます。

1.理屈で人は動くと信じている。
2.人から学ぶことをしない。
3.人と相談することができない。
4.決して謝ることをしない。
5.人の気持ちが理解できない。

上の人は常に自分を自戒していなければなりません。
自戒していてもこうなってしまう人には、どこかに行ってくださいと
お願いせざるを得なくなります。職場の雰囲気を良好に保つという
ことは、それくらい重要なことです。

私にもこういう傾向がないとはいえません。私の部下から
見ればたぶんこういう傾向があると言うでしょう。常に自分は
今どういう状態でいるか、昨日までは人の話を聞けていたが
今日も本当に聞けるか、自問自答しなければなりません。

本質がそうでないのにそのようになろうとすることは大変な
ことです。でも常に自分との闘いをしていかざるをえないのです。

環境プランナー・ベーシック資格 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.13  ■□■
 
  *** 環境プランナー・ベーシック資格 ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

今回は東京商工会議所「eco検定」のセカンドステップ「環境
プランナー・ベーシック」資格のお話をさせていただきます。
では宜しくお願いいたします

■□■ 環境に関する話題 ■□■

環境に関する最近の話題は何といっても地球温暖化の進行、
そして温暖化ガスの削減についてのものです。地球の気温上昇が
気候、農作物、そして生態系に大きな影響を及ぼすと懸念されて
います。

IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:国連の
気候変動に関する政府間パネル)5次レポート(2008年発行)
では、すでにその現象が現れていると述べています。

その原因は空気中の温暖化ガスの増大にあるというのが大方の
学者の主張です。温暖化ガスにはいろいろな種類(国連では6種
類を指定)がありますが、それら内でもCO2(二酸化炭素)に関
する排出が最大の議論となっています。

■□■ 日本の2020年目標 ■□■

日本政府は2020年における温暖化ガスの削減目標を2005年比
15%減(1990年比8%減)にすると発表しました(6月10日)。

京都議定書(国連気候変動枠組み条約)の基づく第一次国別
目標(2008年~2012年)において、日本は1990年比6%減という
数字を負わされています。

しかし、なぜ1990年比なのか、なぜアメリカは離脱したのか、
なぜ開発途上国は数値目標を持たないのか、特に中国、インドは
CO2を大量に排出しているにも拘らずなぜ規制の網に掛から
ないのか、など第一次国別目標にはいろいろな議論があります。

今年12月に予定されているデンマーク・コペンハーゲンCOP15
(第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議)において、ポスト
京都議定書の国際交渉がいよいよ始まろうとしています。

■□■ 東京都温暖化ガス削減及び排出権取引制度 ■□■

東京都では2008年の東京都議会で「都民の健康と安全を確保
する環境に関する条例」の改正を可決しました。その中には、
「温室効果ガス総量削減義務及び排出量取引制度」という日本で
初めてとなる制度が入っています。

東京都ではこの条例に基づき、2015年時点で8%減、2020年時点
で25%減のCO2を削減するという野心的な目標を掲げています。

対象となるのは、年間で燃料、熱及び電気を一定以上(原油換算
1500Kl)使用する事業所であり、都内には約1300事業所があると
みられています。

基準排出量は、過去5ヵ年度(2002年~2006年)の中から事業者
の都合のよい連続した3ヵ年度を選び、その平均値を取ってよい
となっています。事業者がもし目標値を達成できなかった場合
には罰則があります。

東京都では目標とする削減量の実現を支援するため、いろいろ
な削減手段を提供しようとしています。例えば、グリーン証書
の活用、また排出量取引も適用させようとしています。また、
太陽エネルギーバンクと称して住宅用太陽エネルギー機器の
導入のための補助金支給も決めています。

■□■ 民生用CO2削減も大きなテーマ ■□■

現在日本では何種類かの温暖化ガスの削減計画が進んでいます。
環境省主導のもの、経済産業省主導のもの、東京都主導のもの
などです。CO2は、従来、産業分野、運送分野で多く排出されて
いましたが、最近では業務分野(事務所)、民生分野(家庭)
での伸びにも著しいものがあります。

今までは、工場、発電所、製鉄所、化学プラントなどがCO2排出
の主たる源と思われていましたが、過去10年事務所、家庭から
の排出が急激に増加してきています。

東京商工会議所が2006年から始めた「eco検定」は、このような
CO2排出に代表される環境問題を国民に広く知らしめる役割をも
って登場しました。そして狙い通り環境問題を理解する人々の
拡大に成功しています。2008年にはエコピープル(eco検定保有
者の総称)が5万人に達しました。

これからは、CO2排出だけでなく、それらを取り巻く環境問題を
多くの人が知り、何らかの活動に繋げていくことが大切です。
例えば、家電製品購入に付加されるエコポイント、省エネルギ
ー、廃棄物管理、水質問題、生物種の絶滅、緑化運動、無農薬
栽培など、実の多くのニュースが我々に提供されています。

しかし、知っただけでは何も変わりません。一人ひとりが何ら
かの行動を始めることが大切です。

ダブルスタンダード | 平林良人の『つなげるツボ』

 ■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.12  ■□■
 
      *** ダブルスタンダード ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

「ダブルスタンダード」は、組織の中に2つの仕組みができて
しまい、目的達成の支障になるとされていますが、最近ダブル
スタンダードこそが日本の生きる道であるとの論調があります。

では宜しくお願いいたします。

■□■ ダブルスタンダードが必要? ■□■

先月(2009年4月)行われた環境省、日本経済新聞社などが主催
する「環境コミュニケーションシンポジューム」で“世界二制度:
ダブルスタンダード”の提案がありました。

環境問題というと対症療法的な技術論と抽象的な文明論が中心
ですが、両者の間にあるべき社会の仕組みを作ることが重要で
あるという論調のなかでの提案でした。

20世紀、我々はローカルよりグローバル、遅いより速い、安定より
成長が優れていると考えてきました。

しかし、これでは環境問題が解決されないのは明らかです。
しかし、両者が共存できる仕組みでなければ世界全体も個人も
存在していけないのではないか、すべての経済活動に関して
「ローカルでスローなルール」と「グローバルでファーストな
ルール」 といった二階建てルール、すなわちダブルスタンダー
ドが必要である という意見です。

スピードを抑制し、多様性を維持できる仕組みづくりの具体的な
ものとして提案されたのが「ダブルスタンダード」です。

■□■ 日本はダブルスタンダードの国? ■□■

日本はもともとダブルスタンダードの国であった、という説が
あります。

古来から日本は、中国からいろいろな文化を取り入れていました。
その都度、日本にあったものと中国からきたもの、すなわち
ダブルスタンダードを上手に取扱ってきました。

例えば、稲作、律令、街並み、文字、焼き物、織物、食べ物など
多くのものが中国からきましたが、日本人は2つのものを程よく
融合させ独自の文化をつくってきました。

典型的なものは宗教です。日本には古来から自然崇拝の宗教-
神道がありました。日本人は、石から草木までに八百万の神が
いるとして森羅万象を神と見立ててきました。

中国から仏教が入ってきたとき、時の天皇は深く仏教に帰依
しましたが、だからといって神道が途絶えたわけではありません
でした。

2つの宗教、神道と仏教、すなわちダブルスタンダードをうまく
取り扱ってきたのです。

■□■ 一神教と多神教 ■□■

日本は多神教の国です。それに対してよく引き合いに出されるのが
西欧の宗教です。キリスト教、イスラム教、ユダヤ教などいずれの
宗教も自身以外の宗教を認めません。

一神教は排他的ですから、西欧では宗教の違いによる戦争が
何回も引き起こされてきました。それも絶対に妥協することのない
厳しい戦いです。

日本では聖徳太子の「和をもって尊しとする」という教えもあってか、
宗派が異なるかといって徹底的に争うということはありませんでした。

それどころか、2つのそれぞれいいところを取り込んで、
より良いものに 仕立て上げていくという文化を作り上げて
いきました。

日本人は、2つの異なるものを融合することに長けているのです。
古くは和魂漢才、新しくは和魂洋才という言葉が示すように、
ダブルスタンダードを混合することに得意であったのです。

■□■ 二重構造が組織を強くする ■□■

実はものごとは二重にすることで強くすることができます。
家でも 車でも物理的な強さは二重にすることで達成されて
いることが 多くに見つけられます。

生物の遺伝子が二重構造であることは有名です。アデニン(A)・
チミン(T)・グアニン(G)・シトシン(C)の4つの塩基がらせん状に
二重に絡みついた構造をとっています。

文化も日本のように2つのものを組み合せたり、お互いに補強
し合ったりしたほうが1つのものより強固にすることができる
と思います。

企業の組織もそうだと思います。金太郎飴のようにどこを切っても
同じ顔が出てくるような組織は一見強いように見えますが、
意外ともろいものです。

違った意見を持つ人々がお互いに意見を交換しながら目まぐるしく
変化する外界に立ち向かうイメージが、長い期間継続して
存在できる組織像であると思います。

■□■ そして多様性 ■□■

ダブルスタンダードには、多様性が必要です。いろいろな考え方が
あって初めてダブルスタンダードが成り立ちます。

多様性とはお互いがその存在を認めて成り立つ性質です。もし、
片一方が相手を認めないと多様性は成り立ちませんし、ダブル
スタンダードも成立しません。

ここで重要なことはお互いを認める多様性がダブルスタンダードを
成り立たせているという点です。

お互いが認めない、すなわち一方が明らかに偽者、いつわり、
悪性のものは多様性とはいいませんし、ここでいうダブルスタ
ンダードの概念にはいりません。

■□■ ISOのダブルスタンダード ■□■
      
ISO9001認証制度の弊害としてよく指摘されることに「ダブル
スタンダード」があります。いままで述べてきたものと言葉は
同じでも、ISOでいうダブルスタンダードは概念が違うものです。

QMS(品質マネジメントシステム)を構築しても、会社の中に
二重の仕組みができてしまって、言っていることとやっている
ことが違う、というダブルスタンダードは避けなければなりま
せん。

ISO9001規格が要求していることは、“What”すなわち「何を
やりなさい」ということだけです。「このようにやりなさい」
すなわち“How”ということは要求しておりません。

しかるに、組織のISO9001事務局は、“What”を理想的に展開して、
組織の部署に頭で考えた実施すべきことを規定書にして
トップダウンで指示をしています。

現場では、従来からの先輩から脈々と引き継がれてきた仕事の
やり方がありあます。自分たちが慣れ親しんできたやり方は
そう簡単に変えることはできません。

「ダブルスタンダード」という言葉でお互いが繋がっているように
みえても、一方は肯定的なもの、一方は否定的なものです。
このように、世の中には表面は同じように見えても内容が異なる
ということが多くあります。

研究テーマは「組織構造分析」 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.11  ■□■
 
      *** 研究テーマは「組織構造分析」 ***

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このメルマガは、(株)テクノファ及び平林良人が何らかの
ご縁でつながった皆様方にお送りさせていただいております。
このメルマガは1万名以上の方々にお読みいただいています。

■□■ 組織のプロセス分析 ■□■

テクノファ代表取締役の平林です。

今回は東京大学大学院工学系研究科の共同研究員のお話を
させていただきます。私は昨年から共同研究員になりましたが、
研究テーマは 「組織構造分析」です。

では宜しくお願いいたします。

■□■ 共同研究員とは ■□■

昨今は、日本の大学においても産学協同が盛んです。アメリカ
の大学は昔から産業界とのつながりを重要視して、大学で創造
されたこと、開発されたことを産業界のビジネスに結びつけて
きました。

大学と産業界の一体となったエネルギーがアメリカの新しい
ビジネスを起こしてきたのですが、一方で大学が実利に走り
すぎて真理探求への力が削がれているとの懸念、指摘もあり
ました。

アメリカはいろいろと言われてはきましたが、日本の産学協同
はアメリカと比べると、掛け声ばかりで、今日に至るまであま
り成果が上がっていないというのが通り相場です。

日本でも、アメリカほどでなくてもよいから、もっと大学と産
業界の結びつけを強くして、お互いが補完し合いながら成果を
上げていくことが期待されているのです。

大学における共同研究員制度は、そのような背景のもとかなり
以前から存在している制度です。

■□■ 組織構造分析とは ■□■

組織とはふしぎな存在で、放っておけばいろいろな問題が起き
ますが、まったくだめな方向に行くかといえばそうでもなく、
誰かがリーダーシップをとってほどほどのところで落ち着き
ます。

組織とは、生物学的にいうと「ほぼ同形・同大で、働きも似通
った細胞の集団で集まって器官を構成する」ものですが、社会
学的には、「社会を構成する各要素が結合し有機的な働きを有
する統一体」であるといわれています(広辞苑)。

また品質管理においては、「責任、権限及び相互関係が取り決
められている人々及び施設の集まり」と定義されています
(ISO9000)。

一般的な広範な概念から個別な品質管理における概念まで
いろいろありますが、共通に言えることに次のようなことがあ
ります。

1.同じものの集まり
  (ほぼ同形・同大で・・・、各要素が結合・・・、人及び
  施設の集まり)。
2.つながっている
  (集団で集まって・・・、有機的な働き・・・、相互関係
    が・・・)。
3.目的をもっている
  (器官を構成する、働きを有する・・・、取り決められて
    いる・・・)。

我々の企業組織も、1、2、3という要素は同じですが、一つ
付け加えなければならないものに「効果的」という要素があり
ます。

「組織とはふしぎな存在で放っておいても誰かがリーダー
シップをとるようになる」と言いましたが、誰かがリーダー
シップをとってくれるのを待っていては競争に負けてしまい
ます。

■□■ 効果的とは ■□■

そこで企業組織には普通ピラミッド型の組織構造があります。
これは古今東西の軍隊組織を真似たもので、組織の最高指揮官
のもと一糸乱れず目標に向かって、組織全体として成果を上げ
ようとするものです。

ただ、軍隊は単純に物理的強さを求めますが、企業組織は経済
的強さを求めるがため、いろいろな要素がからんできます。

企業は市場で勝たねばなりませんが、そのためには収益を
上げ、その収益を投資にむけ、顧客から支持される製品を
開発し、また売上を伸ばすというサイクルを継続しなければなり
ません。

企業が市場で勝つとは、これら一連のことを競争相手よりも
効果的に行うことです。

そのための組織構造とはどのようなものがよいのでしょうか。
必ずしもピラミッド型の組織構造がよいとはいえないのです。

■□■ 最重要課題は「製品」をつくる固有技術 ■□■

他の視点も組織にとって重要です。組織構造はあとからついて
くる課題であって、競争に勝つためにはまず「製品」が優れて
いなければなりません。
市場で顧客から評価される製品、すなわち顧客が買いたくなる
製品・サービスを継続的に市場に提供することが最重要課題
です。

顧客は気まぐれです。市場はいつも動いています。経営環境は
時代と共に変化していきます。

常に変化していく環境に適合した製品を市場に提供し続ける
ことはそれなりの戦略がないと実現することはむずかしいで
しょう。

まずは、製品を開発し、製造(又はサービス提供)していく
固有技術がないと企業は市場で勝つどころか、存在すること
さえ許されなくなってしまいます。

■□■ そして業務の進め方に焦点を当てる管理技術 ■□■

更にいえば、継続的に顧客から評価される製品、サービスを
市場に提供する業務の進め方が重要です。

ここで思い出されるのはISO9001のプロセスアプローチです。
プロセスとは何かという難しい定義は今後のメルマガに譲る
として、プロセスとは簡単に言えば業務のことです。業務の
進め方に焦点をあてる、すなわちプロセスアプローチも私の
共同研究員としての課題です。

そういうことで、私の東京大学共同研究員としての課題と
ISO9001プロセスアプローチとはしっかりとつながっていま
した。