標準化―ISO 9001-2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.208 ■□■    
*** 標準化―ISO 9001-2 ***
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前回、ゴルフクラブを新調しても、使い方を工夫しないと結果は
良くならいことを話しましたが、ISO 9001も全く同じです。
組織がISO 9001を導入すれば製品及びサービスの品質が良くなるか
というと、ISO 9001の使い方次第です。

■□■ テーラリング ■□■

ISO 9001の活用の仕方にテーラリング(tailoring)という言葉が
あります。“tailor”とは洋服屋さんのことで、tailoringとは洋服を
仕立てることをいいます。洋服屋さんは、洋服を仕立てる時、お客さんの
体形を測りその体形に合わせて服を作ります。

ISO 9001を導入する組織も同様なことを行うことをテーラリングと
いっています。組織は、さしずめ洋服を仕立てるときと同じように、
組織の状況に合わせて規格要求事項を修整(tailoring)することが
必要です。

□■適用可能性■□■

ISO 9001:2015には、“適用可能性(applicability)”の要求があります。
この用語はISO 9001の2015年版で初めて出てきた言葉です。
この意味・意図を議論した機会は、残念ながら無いのですが、
重要な要求であると思います。

この用語がでてくる箇条4.3は、組織のISO 9001の適用範囲を決める
要求をしています。適用範囲を明確にするには、境界と適用可能性を
決定しなければならない、としています。

■□■ 具体的には次のような表現です ■□■

ISO 9001:2015規格を読むと、次のような表現に出会います。
この表現はあちらこちらに沢山出てきます。

1.~するため
2.該当する場合には
3.必要に応じて
4.は66か所に“~するため”と出てきます。
2は7か所、3は6か所出てきます。

■□■ 1.~するため ■□■

66か所もありますので、とりあえず箇条4について、
“~するため”を当たってみましょう。

・4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
次の事項は,顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を
満たした製品及びサービスを一貫して提供する組織の能力に影響
又は潜在的影響を与えるため,組織は,これらを明確にしなければ
ならない。

・4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定
組織は,品質マネジメントシステムの適用範囲を定めるために,
その境界及び適用可能性を決定しなければならない。

4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス
4.4.1 組織は,この規格の要求事項に従って,必要なプロセス
及びそれらの相互作用を含む,品質マネジメントシステムを確立し,
実施し,維持し,かつ,継続的に改善しなければならない。
組織は,品質マネジメントシステムに必要なプロセス及びそれらの
組織全体にわたる適用を決定しなければならない。
また,次の事項を実施しなければならない。

c)これらのプロセスの効果的な運用及び管理を確実にするために
必要な判断基準及び方法(監視,測定及び関連するパフォーマンス
指標を含む。)を決定し,適用する。

g)これらのプロセスを評価し,これらのプロセスの意図した結果の
達成を確実にするために必要な変更を実施する。

4.4.2  組織は,必要な程度まで,次の事項を行わなければならない。

a)プロセスの運用を支援するための文書化した情報を維持する。

b)プロセスが計画どおりに実施されたと確信するための文書化した
情報を保持する。

■□■ 2.該当する場合には ■□■

“該当する場合には”の英語は、“as applicable,where applicable”
であり、JIS Q 9001:2015の解説には次のように書かれています。

「旧規格において,“as applicable”及び“where applicable”は,
組織の都合又は組織の主観的な判断で事案対象を“できる”又は“できない”と
決定してよいと受け取られることを懸念し,原則“該当する場合”と訳していた。
他方,附属書SL の共通和訳では,一貫して“該当する場合には,必ず”と
なっている。附属書SL の共通和訳の訳を用いた方が,前述の組織の都合又は
組織の主観的な判断をできるだけ取り除くという立場がより明確になるという
理由から,“該当する場合には,必ず”と訳した。」

標準化―ISO 9001-1 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.207 ■□■    
*** 標準化―ISO 9001 ***
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これまで8回にわたって、来る7月のJIS法改正に関して、
日本の標準化戦略に関する話をしてきましたが、ISO 9001も標準化
そのものを目的に作られた規格です。

■□■ 何を標準化するのですか ■□■

組織のマネジメントを標準化します。
それも製品及びサービスの品質を管理し、保証するマネジメント
システムの標準化です。

■□■標準化にISOを使うかは組織の勝手でしょう■□■

そのとおりです。経営者はマネジメントする方法を自分で決め、
競争に勝ち抜いていかなければなりません。
経営者がISO 9001の規定を有効であると判断し、要求事項に基づいた
マネジメントシステムを構築すると決めたならば、9001の標準を適用
すればよく、すべての組織が必ずISOを品質マネジメントシステムの
基準に活用しなければならないルールはありません。

■□■でも顧客は9001を求めています ■□■

ISO規格の定めた品質保証の要求事項を運用している組織だったら、
そこから産み出される製品及びサービスの品質は良いと考えられます。
顧客は自分で組織に出かけて購入する製品及びサービスの品質を
チェックする代わりに、ISO 9001 に適合するマネジメントシステムの
構築を要求します。

■□■ すべての顧客が要求しますか ■□■

いいえ、これも顧客の勝手です。要求する顧客もいれば、要求しない
顧客もいます。有名な顧客としては、自動車メーカー、航空機メーカー
などがいます。自動車メーカーは、アメリカのビックスリー
(フォード、GM、クライスラー)及び欧州自動車メーカー
(ベンツ、BMW、ボルボ、ルノー、アウディなど)は要求していますが、
トヨタ、ホンダなどの日本の自動車メーカーは要求していません。

■□■ 経営者の考え方 ■□■

先に述べたように、顧客から要求されなくてもISO 9001の内容に魅力を
感じる経営者もいます。誰からも要求されなくても、製品及びサービスの
品質を保証するシステムを標準化して、今の良い状態を今後とも継続して
維持したいと考える経営者がいます。あるいは、今はあまり良い状態では
ないので、工程内不良を無くし、クレームを削減し、不良コストを低減
させることに悩んでいる経営者が、ISO 9001の標準を活用して改善したいと
考えるケースもあります。

■□■ ISO 9001を活用すれば良くなる ■□■

経営者がISO 9001を活用すれば製品及びサービスの品質が良くなるかと
いうと、ISO 9001の使い方次第です。
何事もそうですが、可能性あるものから実益を取り出すにはそれなりの
ノウハウがあります。

若いころ、私はテニスをスポーツとして愛好していました。年を重ねるに
したがってゴルフに転向しました。毎月1,2回ゴルフコースに出て体を
動かしています。
あるとき、知人から有名なゴルフクラブメーカーからシニアでも距離が
出るクラブが発売されたと聞き、早速購入をしました。

■□■さぞ距離が出るようになったでしょう■□■

いいえ、期待に反して今までと同じで、新しいクラブの効果はありません
でした。
知人にその旨話したところ、「たぶん使い方が悪いと思う、今度の
ウイークエンドに練習しよう」と誘われました。

■□■ 結果はどうでしたか ■□■

2つのことを得ました。

・道具には特徴がある。特徴は目的に合うように決められている。
・目的と特徴を理解して、クラブの使い方を変える。

新しいクラブは軽くて底が広くなっているので、芝生の上を滑らすように
振ることをアドバイスされました。それまでは、芝生に食い込むような
振り方でしたので、慣れるまでに時間がかかりました。
自分では変えたつもりでも、知り合いから見ると変わっていない、と
6か月にわたり指導を受けました

JIS法改正に向けて― 標準化戦略8 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.206 ■□■    
*** JIS法改正に向けて ― 標準化戦略8 ***
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前回、標準化とは“自由に放置すれば、多様化、複雑化、無秩序化する
事柄を少数化、単純化、秩序化すること” だといいました。
ISO 9001も国際的な標準の一つです。組織の製品・サービスの質を
管理するためのマネジメントシステムの標準です。

■□■ 標準の使われ方 ■□■

標準は作り方も重要ですが、使い方はもっと重要です。前回交通標識の例を
上げましたが、交通標識は誰にも理解できるように工夫して作っていますが、
守ってもらえない標準もたくさんあります。

よく見かける例として、車が1台も通らない道の赤信号を歩行者が平気で
渡っているという風景がありますが、これは守らなくても使用者に不便で
ないからです。といって、これが習慣化するといつの日か事故に会うという
リスクを抱えての行動です。

■□■ 標準の種類 ■□■

何を標準にしているかによって、標準は使われ方が変わります。
5W1Hごとに考えてみましょう。

・Who 責任権限を決めたもの
・What 役割、守備範囲を決めたもの
・When スケジュールを決めたもの
・Where 工場、職場、場所を決めたもの
・Why 目的を決めたもの
・How 手順を決めたもの

■□■ 標準書の分類 ■□■

組織の中に5W1Hの視点からどんな標準があるのでしょうか。
組織は、5W1Hごとに標準書を作成するなんてことはしませんので、
あくまでも標準書のもつ「主要目的」からの分類をしてみます。

1.Who 責任権限を決めたもの
 ―組織図、職務権限規程、品質保証体系図、資格認定基準など
2.What 役割、守備範囲を決めたもの
 ―業務分掌規程、機能展開表、業務フロー図、要因割当表、
  工事請負書、売買契約書など
3.When スケジュールを決めたもの
 ―スケジュール表、実施計画書、ダイヤグラムなど
4.Where 工場、職場、場所を決めたもの
 ―施設・機能一覧表、主要機械配置図、拠点案内図など
5.Why 目的を決めたもの
 ―創業理念書、方針書など
6.How 手順を決めたもの
 ―QC工程表、契約手順書、見積手順書、定期点検手順書など

■□■ 標準書の目的 ■□■

ここでの分類はあくまでも事例であり、中には的を得ていないものも
あるかもしれません。標準書はその目的に応じて、記述すべき力点が
変わってきます。作成者はその力点をよく認識して作成しなければ
なりません。

例えば、1.Who(責任権限を規定する)標準書に、6.How(手順を規定する)
を書くと標準書の焦点がぼけてしまいます。
1.Who(責任権限を規定する)には当然のこととして、業務の責任権限者を
規定しますが、そこへのHowの記述は最低限に絞らなければなりません。
同様に、6.Howの標準書は、仕事の手順を中心に記述します。
手順に関連してWhoも書きますがあくまでも部分的要素であると考えることが
よいと思います。
 

■□■ 品質保証体系図 ■□■

なぜ、標準書の分類、目的などに言及するかと言いますと、品質保証体系図が
適切に作られていないケースを散見するからです。
最近、品質保証体系図に関する検討が組織の中であまり行われていません。
そのためか、1.の標準書の一つである品質保証体系図の目的が理解されて
いないケースが多くあります。

品質保証体系図は顧客からの注文をスタートに一連の節目となる業務を時系列に
書き、最後の顧客への納品まで誰が責任を持って実施するのかを一覧表にした
ものです。
品質保証体系図の目的が責任権限のWhoにあると理解すれば、Howは最低限に
すべきである、ということが分かります。
Howは品質保証体系図とは異なる標準書に規定することになり、例えば、
業務フロー図などに規定することがよいでしょう。

JIS法改正に向けて― 標準化戦略7 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.205 ■□■    
*** JIS法改正に向けて ― 標準化戦略7 ***
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JIS法改正に向けて、標準化について話をしてきましたが、改めて
標準化について考えてみたいと思います。

標準化とは、“自由に放置すれば、多様化、複雑化、無秩序化する事柄を
少数化、単純化、秩序化すること” をいいます。
<JISハンドブック2006(日本規格協会)>

■□■ 無秩序化する ■□■

自由に任せて何もしなければ、多様化、複雑化、無秩序になってしまう
事柄について、秩序が保たれる状態を実現するために、関係する誰もが
共通して使用できる一定の基準を定めることを標準化といいます。

無秩序化する例としては交通ルールがあります。
日本では車は左側を走りますが、アメリカでは右側を走ります。
日本とアメリカではルールが違いますが、それぞれの国内では左側
あるいは右側どちらかに標準化されていますので、秩序が保たれる
わけです。

ちなみにイギリスは日本と同じ左側通行ですので、日本からイギリスへ
行って車を運転するのはずいぶん楽でした。

■□■ 国ごとに異なる ■□■

車の通行ルールは国ごと異なっても何とかなりますが、交通標識が
国ごと違ったら相当混乱します。通行ルールは1つの決め事だけですが、
交通標識は沢山あるからです。
これは国を超えての標準化の必要性を意味します。

交通標識に限らず、製品やサービスの品質、性能、試験・評価方法などは
グローバル社会においては必須なことです。
ここには、国内標準、国際標準の違い、どちらを選択するのかの
基準が示されています。
その基準は、安全性、互換性、利便性の観点から統一する必要性の
程度である、と理解されています。

■□■ 組織ごと異なる ■□■

では企業の単位で考えてみましょう。
日本は法治国家であり、2、3000件に及ぶといわれる法律があります。
日本企業はこれらの法律を遵守しなければなりません。

法律さえ守っていれば何をしてもよいかというと、これまた社会の常識、
明文化されていない慣習などがあり、かつ業界の自主ルールなどがあり、
企業の標準化は多くの規制を考慮して進める必要があります。

■□■ 企業内標準化のすすめ ■□■

国際標準、国内標準と違って、企業内標準は規制を守ってさえいれば、
組織の判断、基準で作ることができます。
その基準となるのは、利便性あるいはメリットの程度です。

多様化、複雑化、無秩序になってしまう事柄について、秩序が保たれる
ようにすることでどんなメリットがあるかを考えます。
ある事柄を標準化することで、企業間競争にどんな影響を及ぼすのかを
考えます。

サッカー11メンバーが、どの程度統率(標準化)されているかによって、
試合に勝つか負けるかが決まることを考えると、数百名の従業員の統率は、
企業の競争力に大きく影響します。

■□■ 何をどの程度、標準化するか ■□■

企業には多くの標準化すべきことがあります。
一般に上位職の仕事は標準化の程度が小さく、下位職へ行くほど標準化の程度は
大きいといわれます。

また、開発職、設計職、技術職のような創意工夫を必要とする職種の標準化は
程度が小さく、現場職の繰り返し作業の多い職種は標準化の程度が大きいと
いわれます。

■□■ 何を標準化するのか ■□■

上位職の仕事の標準化、開発職、設計職、技術職のような創意工夫を必要とする
職種の標準化の程度は小さいというのは、仕事の中味についてでしょう。
仕事はいろいろな要素で構成されていますが、ではタイミング、順序、フォーマット、
周知範囲、示達手順などについてはどうでしょうか。

標準化についても、固有技術と管理技術の両面があります。
上位職の仕事、創意工夫職?の仕

JIS法改正に向けて― 標準化戦略6 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.204 ■□■    
*** JIS法改正に向けて ― 標準化戦略6 ***
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今日から新年度がスタートです。これからも「つなげるツボ」を
よろしくお願いいたします。

引き続きJIS法改正に向けてのお話です。
去る3月25日、日本規格協会からJSA-S(ジェイサス)規格が
2件発行されました。

JSA-S1号は、JSA-S 1001(ヒューマンリソースマネジメント
-従業員満足- 組織における行動規範のための指針)です。
2号はJSA-S 1202(シェアリングエコノミー-オンラインプラット
フォームの運用-仕様)です。

■□■ 社会的影響と規制 ■□■

シェアリングエコノミーは、モノのシェア、空間のシェア、
移動のシェア、スキルのシェアそしてお金のシェアなどが
具体的に推進されています。これらはいずれもサービス業が
手掛けている事業ですが、いろいろな規制がかかっています。
サービスはその機能が停止すると社会的に大きな問題になる
からです。

例えば、電気、ガス、交通、銀行などのサービスが止まると
その影響は大変大きなものになるでしょう。
しかし、タクシーを共同利用してコストをシェアしようとする
ことまで規制が必要であるかは議論の余地があると思います。

もしかすると、消費者を守るための規制が、いつしか業界を守る
規制、新規事業者の参入を防ぐ規制になっているかもしれません。
JSA-Sは、従来の制度にとらわれない規格開発ニーズが高まって
いることから、多様なステークホルダーのニーズに迅速かつ柔軟に
応えるため、企業等の依頼を受け、透明性・公平性及び客観性を
確保した上で民間規格を発行する制度です。

■□■ 業者が自ら決める ■□■

政府は内閣官房が主導して、業法に縛られない業界独自の
「モデルガイドライン」の策定を推進しています。
2016年7月より、内閣官房IT 総合戦略室長(政府CIO)の下に、
シェアリング エコノミー検討会議が開催されています。

同検討会議では、インターネット上でマッチング機能を提供する
事業者(以下、シェア事業 者)とシェアリングエコノミーの
活用に取り組んでいる自治体へのヒアリング結果や、会議の構成員や
関係省庁から提供されたさまざまな情報を基に、活発な議論が
なされています。

例えば、「シェア事業者が担う責任」についての議論では、サービスの
提供者と利用者の行為の責任をシェア事業者がどこまで負うかが論点となり、
消費者側からは「シェア事業者に責任を持ってほしい」という声が
上がる一方、事業者側からは「シェア事業者の責任について、一定の
限度を示すことが必要ではないか」等、さまざまな意見が出ています。

■□■ シェアリングエコノミー協会 ■□■

2016年1月、日本国内でのシェアリングエコノミーの普及、業界の
健全な発展を目的に設立されました。
2016年10月末現在、会員数125社、安全安心にシェアサービスが
使われるためのガイドライン作成のほか、事業者間の交流や勉強会なども
主催し、シェアリングエコノミー推進のための活動を続けています。

活用されていないヒト・モノ・カネを第三者がマッチングするビジネスは、
従来から存在していましたが、スマートフォンやSNSの普及により、
「シェアリングエコノミー」と呼ばれるサービスが進展しつつあります。

シェアリングエコノミーは、民泊やライドシェアが有名ですが、
その他にも駐車場や会議室などのスペースシェア、ITスキルや家事・育児
などの労働力のシェアなど、さまざまな分野で新たなサービスが
登場してきています。

■□■ モデルガイドライン ■□■

このようなシェアサービスは、十分に活用されていない資産や個人のスキル、
隙間の時間などの有効活用を促し、社会全体の生産性向上につながるものですが、
一方で安全、安心などについて、シェア事業者に責任を持ってほしいという声も
多くあります。

シェアリングエコノミーは、従来型のサービスモデルとは異なる特性を持った
黎明期にあるサービスモデルであり、健全な発展に向けて整理すべき課題が
多いところから、次の基本理念に合致したところにシェアリングエコノミー認証を
与える制度が動き出しています。

・安全であること
・信頼、信用は見える化できること
・責任分担の明確化により価値共創をすること
・持続可能性が向上すること

■□■ 国際標準化 ■□■

認証制度は持続性がなければなりません。認証の品質・信頼性は
手間・コストと比例します。モデルガイドラインに沿った認証基準が
必要となります。

国際的には、フランス、カナダが中心となり、シェアリングエコノミーの
国際標準が必要であるという声が高まり、2017年にはIWA27:2017
(Guiding principles and framework for the sharing economy)が
成立しました。IWA(International Workshop Agreement)が成立すると、
次には新しい技術委員会(TC)が設立されることが多くあります。

日本は2018年BSIと連携してPAS(Publicity Available Specification)を
作成し、ISO標準を策定する新TC設立を提案しました。
2019年1月にTC324 Sharing Economy 設立が承認されました。
日本が議長国になり、Pメンバーとして11か国が集まっています。
6月には第一回の総会が日本で開催される見込みです。