2026年6月24日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol. 562 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」10 ***
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製造・サービス提供の現場ではプロセス初期にいろいろな条件値を設定します。この設定
値を間違えると、「発見までに時間がかかる」ことからその影響には大きいものがあります。
例えば、温度設定をするときに0点以下でも数を間違えると、化学反応などに大きく影響
します。同様に、単位を間違える、品番を間違える、古い検査値にしてしまうなどは、プ
ロセスの中で気がつかず、結果として大量の製品が不適合になることがあります。これら
の設定値を「マスター管理」することはヒューマンエラー防止に役立ちます。
■□■ 設定値の自動化・マスター管理 ■□■
製造・サービス提供では、設備条件、処理条件、システム設定、検査条件など、多数の
「設定値(パラメータ)」が品質を左右します。温度、圧力、時間、回転数、送り速度、電
流、濃度、混合比、乾燥条件、ソフトの構成、検査しきい値などは、わずかな誤りでも不
適合につながりやすく、しかも多くはプロセスの中に見えにくいため、最終段階で発見さ
れ、組織に大きな損失を与えます。
設定値の「自動化・マスター管理」は、これらの設定値を「作業者の手入力、手書き、記
憶」に依存させない方法です。
・品番、仕様、工程に対応した標準パラメータを「マスター登録」する。
・工程開始時に呼び出し、自動設定する。
・設定値の変更は権限、承認、履歴で管理する。
・実績値をログとして残す。
という一連の仕組みを構築します。マスター管理の特徴を整理すると次のようになります。
(1)入力行為の削減 :手入力を減らせば、桁ミス、単位ミス、入力漏れが減る。
(2)条件の固定化、再現性 :誰がいつやっても同じ条件を再現できる。
(3)マスターの版数管理: 最新条件、顧客別条件、工程変更条件を区別する。
(4)権限、承認、履歴: 勝手な変更を抑え、変更のログを残し、変更のトレーサビリテ
ィ管理を行える。
ISO9001の8.5.1に「管理された状態」という要求がありますが、マスター管理はこの要
求に沿った仕組みと言えます。マスター管理の狙いは「人が注意深く入力する」ではなく、
そもそも入力しないことを考えます。現場では、入力欄が多いとショートカットで入力し、
結果として版違い、条件違いを起こすという失敗をします。
■□■ 入力ミスを根本から減らす ■□■
ヒューマンエラーの起こる確率は「やる回数」と「複雑さ」に比例します。入力機会を減
らし、選択肢を絞り、呼び出しに置き換えると、エラーの起きる頻度は減ります。
(1)多くの品種を扱うサービス業などでは「前の品番が残っていた」が典型事故です。マス
ターを品番に紐づけ、品物を移動する時に自動ロードする、あるいはロードしないと開始
できない(インターロック)ことにすると、前条件が残っているというミスを構造的に起
きにくくさせます。
(2)現場で条件を勝手にいじると、短期的に歩留りが上がっても、別の不良が増えたり、再
現できなくなったりします。マスター管理は、変更に承認が必要、変更履歴が残る、とい
う仕組みですので、属人的な「こっそり最適化」は出来なくなります。
(3)不具合が出たとき、「そのロットは温度何度で処理したのか」「どのマスター版を使った
のか」「途中で手動変更が入ったか」をログで追えると、原因究明が速くなります。逆にロ
グがないと、作業者の記憶に頼り、結局「注意徹底」で終わりやすいことになります。
■□■ 設定値の自動化・マスター管理の具体例 ■□■
設定の自動化及びマスター管理の例を以下に示します。
(1)サービス業
・見積計算にパラメータ使用(税率、割引、手数料)
担当者の手入力で誤計算が起きる領域を、商品コードで自動計算させる。割引は権限
者承認を求める。見積条件の履歴が残り、後日説明責任が果たせる。
・帳票・申請のテンプレート管理
顧客別の記載ルール、必須項目、選択肢をテンプート化し、誤記とか漏れを減らす。
入力の自由度を下げることで、ミスの機会を減らす。
(2)製造業
・加工設備、例えば熱処理炉のマスター管理
品番ごとに昇温曲線、保持温度、保持時間、冷却条件をマスター化する。作業者は品
番を選ぶだけである。
・射出成形、プレス機の条件設定
金型と製品の組合せに応じて、圧力、速度、冷却、型締力をマスター化。段取り替え
時は金型ID読み取りで自動的に対応マスターを呼び出す。
・薬液調合のマスター化
投入順序が品質に関係する場合、手順書だけではエラーが出やすい。秤、流量計と連
動し、投入量が規定に達しないと次ステップに進めないようにする。投入物の品番は
バーコードで照合させ、「順序違い」「投入量違い」を同時に抑える。
・画像検査のしきい値マスター
しきい値の要求が顧客ごと異なる場合、手動設定は危険である。仕様に応じた検査マ
スターを呼び出し、版数管理。検査ログには「マスター版」を必ず記録し、再現可能
にさせる。
・電気検査(テスト項目、判定基準の自動切替)
品番をスキャンしてプログラムを自動選択することで、誤プログラムで検査してしま
う事故を防ぐ。検査結果はシリアルNoに紐づけして保存し、未検査品は次工程へ流
れないようにする。
(つづく)
