2026年7月22日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol. 566 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」14 ***
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ヒューマンエラー防止には、前回述べたように、「業務プロセスを核にした教育訓練と技能
認定の実践」が有効ですが、そのためには事前に現場で運用できる仕組みを構築する必要
があります。今回は、製造業とサービス業の双方で使える具体的な仕組みをお話しします。
■□■ 教育訓練と技能認定の仕組み ■□■
製造業とサービス業の双方で使える具体的な仕組みの例は次のようなものです。
1. スキルマップの作成
◆ 工程ごとの技能マトリクス
マップの縦軸:工程(受入、加工、組立、検査、梱包など)
マップの横軸:作業者
評価軸は、未経験0、補助可1、監督下で可2、単独可3、指導可4とします。このス
キルマップを現場に掲示したり、電子回覧板に掲載することで、現場管理者が作業者の
配置判断に活用します。重要工程(重要特性、法的規制など)への配置は「3以上のみ」
などの配置制約を設けます。
2.OJT記録の作成
◆ OJTチェックシート
以下の項目ごとにチェックする記録作成ルールを作ります。
・手順遵守(順序、工具、治具など)
・品質基準理解(OK/NG、限度見本など)
・重要ポイント(取り違え防止、締付け、清掃など)
・異常時対応(止める、呼ぶ、隔離など)
・記録の付け方(トレーサビリティ)
作業ごとに各項目を評価し、合格基準に達するまで繰り返します。評価者は指導者認定を
受けた人に限定すると信頼性が上がります。
3.実技試験による技能認定制度
◆ 模擬作業での実技試験
例)締付け工程なら、規定トルクやマーキングなどの評価項目を満たしているかを確認
します。
検査工程なら「測定点、測定方法、記録」が正しいかを確認します。合格したら資格
を付与し、認定番号や有効期限を設定します。そうすることで期限までは有効な仕組
みになることが期待できます。
4. 変更・新製品立上げ時の再認定
◆ 変更点の教育と限定付きの認定
新製品、材料変更、設備更新のときは、従来認定を自動的に流用せず、変更点に関する
短い訓練と確認を行い「限定認定」を付与します。ISO9001箇条8.5.6(変更管理)と
箇条7.2(力量管理)の要求に応えることができます。
5.指導者認定(教える人の品質保証)
◆ トレーナー制度
教える人のばらつきがあると、育成品質が不安定になります。一定レベル(4=指導がで
きる)の人を指導者として認定し、教え方(手順の分解、フィードバックの方法、評価の
基準)も標準化します。これにより教育の属人化を減らすことができます。
6.サービス業の例
◆ 電話応対、契約処理の認定
決められた応対文で応答するだけでなく、相手の本人確認、個人情報の取扱い、例外時
の上司への報告などを訓練し、ロールプレイで実務能力を評価します。合格した人だけ
が単独で電話応対や契約処理を行なえるようにします。
■□■ それでも防げないヒューマンエラー ■□■
教育訓練は重要ですが万能ではありません。訓練して認定しても、次のようなエラーは残
ります。
(1) 疲労、焦り、割込みによるミス
力量があっても、過負荷や割込みが多いとミスは起きます。対策は、作業量平準化、休
憩、段取り時間確保など、作業環境・運用側の改善が必要です。
(2) 知っているのにやらない
教育訓練を行うことは「知識・技能」を増やすことになりますが、納期圧力や評価制度
が歪むとルール逸脱が起きます。文化、マネジメントの領域ですが、作業を止めることを
評価する、例外作業を可視化する、内部監査で起こりそうな逸脱を抽出する、などの対応
が必要です。
(3) 標準、設備、材料が変わったのに教育が追いつかない
変更が多い現場では、教育が遅れると旧知識で作業をすることになりミスが起きます。変
更管理と教育の連動が必要で、改訂点の教育は最優先で行う仕組みが必要です。
(4) 認定の形骸化
認定が一度取得しただけで終わりにすると、技能は劣化します。更新制度、抜き打ち観
察、再認定が必要です。評価者のばらつきも形骸化要因なので、評価基準を統一する必要
があります。
(5) 教育で扱えない潜在的問題
作業者が正しくやっても、設備が不全だと不良は出ます。作業内容に応じて設備保全、校
正、工程能力管理、ポカヨケ、ゲート化などで潜在問題を顕在化します。教育だけで品質
は守れません。
結論として、教育訓練と技能認定は、「できる人を任命する」ための根拠づくりとして非常
に有効で、属人化を減らし、変化に強い現場を作ります。しかし、状況要因(疲労、焦り
など)により、ルール逸脱、変更の遅れ、認定の形骸化、設備不全などの潜在的な問題は
避けられません。こうした問題が常に存在し得ることを認識し、教育訓練だけに頼らず、多
面的な対策を講じることが重要です。
(つづく)
